神経節膠腫(ガングリオグリオーマ)ってどんな病気?
概要
神経節膠腫(しんけいせつこうしゅ)は、脳や脊髄の中にできる、ゆっくり育つタイプの腫瘍(できもの)です。脳の神経細胞に似た細胞と、それを支えるグリア細胞という細胞が混ざった形をしているのが特徴で、多くは良性(悪性度が低い)に分類されます。脳のどこにでもできますが、側頭葉(そくとうよう:記憶や言葉、感情に関わる部分)にできることが多いとされています。ゆっくり大きくなるため、気づくまでに時間がかかることもありますが、適切な治療でよい経過が期待できる腫瘍です。
重要な事実
- 脳の腫瘍のひとつで、多くは良性(悪性度が低い)に分類されます。
- 最も多い症状は、けいれん(てんかん発作)です。
- 手術で腫瘍を全部取り除けると、長期的によい経過が期待できます。
- ゆっくり育つため、急に悪くなることが少ないのも特徴です。
まれな腫瘍です。脳腫瘍全体の中でも数%程度といわれ、小児から若年成人に多い傾向がありますが、どの年齢でも起こる可能性があります。
小児から20〜30歳代の若い世代に多いとされています。生まれたばかりの赤ちゃんから高齢の方まで、どの年齢でも起こる可能性はありますが、高齢者では比較的まれです。性別による大きな違いは知られていません。
症状
- 初めてのけいれんが起きた、またはけいれんが5分以上続いている。
- けいれんが繰り返し起こり、意識が戻らない。
- 突然の激しい頭痛、何度も吐く、ぐったりしている。
- 体の片側が動かない、ろれつが回らない、言葉が出ない。
- 反応がない、呼吸が苦しい、意識がもうろうとしている。
- ⚠新しいタイプのけいれんが出てきた、発作の回数が増えた。
- ⚠頭痛が続く、または強くなってきた。
- ⚠視界の変化(見えにくい、視野が欠ける)が出てきた。
- ⚠吐き気や嘔吐が繰り返し起こる。
- ⚠手足の力が入りにくい、歩きにくい、字が書きにくい。
一般的な症状
- けいれん(てんかん発作):手足のけいれん、ぼんやりして反応がなくなる、変なにおいや感覚がするなど、いろいろな現れ方があります。
- 頭痛:特に朝に強くなったり、だんだん頻くなったりすることがあります。
- 吐き気や嘔吐(おうと):頭痛と一緒に起こることがあります。
- 手足の動きにくさ、力が入りにくさ。
- 言葉が出にくい、言葉が理解しにくい。
- 視界の変化(見えにくい、視野が欠ける)。
- 気分や性格の変化、物忘れ、集中しにくさ。
子供の症状
- けいれん発作。小児ではこれが最初の症状になることが多いです。
- 繰り返す頭痛、朝の嘔吐。
- 機嫌が悪い、元気がない、すぐ疲れる。
- 発達の遅れや、できていたことができなくなる変化。
- 学校での集中力低下や、先生・家族が気づく様子の変化。
- 小さな子どもは症状を言葉で伝えられないため、保護者の方が日常の変化に気づくことが大切です。
高齢者の症状
- 高齢者では比較的まれですが、起こらないわけではありません。
- けいれん発作。高齢者では「一瞬ぼんやりする」「手がピクッとなる」など目立たない形のこともあります。
- 物忘れや判断の変化。加齢による変化と混同されやすいです。
- 頭痛、吐き気、体の動きにくさ。
- 症状がはっきりしないことが多く、別の病気として検査中に見つかることもあります。
原因
主な原因
- はっきりした原因は分かっていません。
- 腫瘍の細胞の中で、細胞の増え方を調整する遺伝子に変化が見られることがあります。これは親から子へ受け継がれるタイプの変化ではなく、腫瘍の中で起きた変化です。
- 遺伝子の変化は、腫瘍の性質を知る手がかりや、治療方針を考える材料になることがあります。
- 神経線維腫症などの一部の遺伝性の症候群に伴ってできることがありますが、多くは特別な背景がない人に起こります。
リスク要因
- 特定の生活習慣や環境が原因になるとは考えられていません。
- 小児・若年成人に多いという年齢の傾向があります。
- 一部の遺伝性の症候群(神経線維腫症など)がある場合、脳の腫瘍ができやすくなることが知られています。
- 多くは、特別な危険因子がない人に起こります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めてのけいれんがあった。
- 頭痛が急に強くなった、または繰り返し吐いている。
- 手足が動きにくい、言葉が出にくいなど、急な変化があった。
- 意識がぼんやりする時間が増えた。
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛が何週間も続く、またはだんだん頻くなっている。
- 「一瞬ぼんやりする」「手がピクッとする」など気になる発作のような症状がある。
- 物忘れ、気分の落ち込み、性格の変化が続いている。
- 家族や周囲の人が、本人の様子の変化に気づいた。
- 小児で、発達の遅れや機嫌の変化、学校での様子の変化が気になる。
診断
まず問診(症状の経過や発作の様子を聞く)と神経の診察を行い、次に脳の画像検査をします。多くの場合、MRI(磁気共鳴画像)で見つかります。確定診断は、腫瘍の組織を採って細胞を顕微鏡で調べる病理検査(組織検査)で行います。手術で腫瘍を取り除いたときに、その組織で診断が確定することも多いです。
行われる可能性のある検査
- MRI検査:脳の様子をくわしく見る検査。腫瘍の場所や大きさを調べます。
- CT検査:頭蓋骨(ずがいこつ)や出血の有無を見るために行うことがあります。
- 脳波検査:けいれんの原因となる脳の電気の変化を調べます。
- 血液検査:体の状態を確認します。
- 病理検査(組織検査):腫瘍の一部を採って細胞を調べ、確定診断をつけます。
- 必要に応じて遺伝子検査:腫瘍の性質や治療方針の参考にすることがあります。
診察で予想されること
検査の多くは体への負担が少ないものです。MRIは大きな音がする装置の中で20〜40分ほど横になっている検査で、痛みはありません。画像検査は日帰りで行えることも多く、病理検査は手術や生検(組織を少し採る検査)のあとに行われます。結果が出るまでに数日から1週間ほどかかることがあり、待っている間は不安な気持ちになるかもしれません。分からないことは遠慮なく医療者に質問してください。
治療
治療の中心は手術で、安全に取り除ける範囲で腫瘍を摘出します。腫瘍を全部取り除ければ、再発が少なくよい経過が期待できます。取りきれない場合や再発した場合は、放射線治療や薬物治療などを組み合わせることがあります。けいれん発作がある場合は、そのコントロールも治療の大切な一部です。治療方針は、腫瘍の場所・大きさ・年齢・症状を考えて、脳神経外科の医師とよく話し合って決めます。
自宅でのセルフケア
- 処方された薬は、自己判断で量を変えたりやめたりしない。発作を抑える薬を急にやめると、かえって発作が起きやすくなることがあります。
- 発作があったときは、日時・前兆・様子・続いた時間を記録しておく。受診のときに役立ちます。
- 十分な睡眠をとり、疲れや寝不足を避ける。
- 飲酒は控えめにする。
- 入浴は浅めの湯にし、発作がある場合は家族が見守れるようにする。
- 運転や水泳など、発作が起きたときに危険が大きい活動は、主治医と相談してから行う。
- 頭痛や体調の変化をメモしておき、通院時に伝える。
医療治療
治療の選択肢には、手術、放射線治療、腫瘍の増殖を抑える薬物治療、遺伝子の変化に合わせた治療、発作を抑える治療、そして定期的な経過観察があります。どの治療をどの順番で行うかは、腫瘍の性質や場所、年齢、全身の状態によって変わります。使う薬の種類や量は医師が決めることなので、気になる点は主治医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
腫瘍による症状(けいれんなど)があり、安全に取り除けると判断された場合は手術が勧められます。手術には、腫瘍を取り除くことで症状が軽くなる、組織を調べて診断が確定できるという利点があります。脳の大切な働きを傷つけないように、手術中に脳の機能を確かめながら行うこともあります。手術が難しい場所にある場合は、別の治療を組み合わせることもあります。
この病気と共に生きる
定期的な通院と画像検査を続けながら、ふだんの生活を送ることができます。発作がある場合は、発作の記録をつけ、家族や学校・職場の身近な人に伝えておくと安心です。学校や仕事に戻るペースは、体力や症状に合わせて主治医と相談しながら少しずつ決めていくとよいでしょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠を心がけ、寝不足を避ける。
- ストレスをためこまず、無理をしすぎない。
- 飲酒は控えめに。
- 発作がある場合は、入浴・水泳・高所作業などに注意し、必要なら誰かに見守ってもらう。
- 運転については主治医の指示に従う。
- 発作や頭痛の記録をつける習慣を持つ。
- 予防接種や他の病気の治療についても、主治医に相談してから進める。
食事と運動
特別な食事制限は通常ありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動(散歩や軽いストレッチなど)は、体力を保ち気分を整えるのに役立ちます。発作がある場合は、水泳や自転車、高所での活動など、発作が起きたときに危険が大きい運動は主治医と相談してください。
精神的健康と心の健康
診断を受けた直後は、不安、落ち込み、眠れない、怒りなど、さまざまな気持ちになるのが自然です。それは弱さではなく、誰にでも起こることです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。気持ちのつらさが長く続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口、病院のソーシャルワーカーに相談を。自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに119番へ通報するか、地域の救急外来、または信頼できる人にすぐ連絡してください。
予防
今のところ、神経節膠腫を確実に予防する方法は分かっていません。生活習慣を変えれば防げるという種類の腫瘍ではありません。自分や家族を責める必要はありません。
検診プログラム
症状がない人に対する定期的な画像検査は、通常は行われません。神経線維腫症などの遺伝性の症候群がある場合は、主治医と検査の間隔について相談してください。気になる症状があるときは、検査の必要性をかかりつけ医に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 腫瘍がゆっくり大きくなり、頭痛や吐き気、神経の症状が強くなることがあります。
- けいれん発作が増えたり、コントロールしにくくなったりすることがあります。
- 腫瘍の場所によっては、言葉や動き、記憶などの働きに影響が出ることがあります。
- まれですが、腫瘍の性質が悪性度の高い方向に変化することがあります。
長期的な見通し
神経節膠腫はゆっくり育つ腫瘍で、手術で全部取り除けると、長期的に再発が少なくよい経過が期待できます。取りきれない場合や再発した場合も、放射線治療や薬物治療などで長く付き合っていく方法があります。定期的な通院を続けることが、安心と早期の発見につながります。一人で抱え込まず、医療者と一緒に歩んでいくことが大切です。
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最終更新: 2026年10月24日
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