胃を切除する手術(胃切除術)について
概要
胃切除術(いせつじょじゅつ)は、胃の一部または全部を手術で取り除く治療です。胃は、食べ物をいったんためて、少しずつ腸へ送り出し、消化を助ける働きをしています。胃を切除すると、これまでと同じようには食べられなくなりますが、残った胃や腸が少しずつ代わりをしてくれます。食べる量や回数、食べる速さを工夫しながら、時間をかけて体を慣らしていくことで、多くの人はふだんの生活を続けられるようになります。手術の主な目的は、胃のがんなど、体の中にある病気を取り除くことです。
重要な事実
- 胃の出口側を残す方法、入口側を残す方法、胃を全部取る方法など、病気の場所や広がりに合わせて手術の形が選ばれます。
- 胃がんで行われることが最も多く、良性の病気(出血や穴が開くなど)で行われることもあります。
- 手術後は、一度にたくさん食べずに少しずつ分けて食べる、よくかむ、といった食事の工夫が役立ちます。
- 手術のあとも、定期的な通院と栄養状態のチェックを続けることが大切です。
胃がんの治療として行われる手術で、日本では決してめずらしいものではありません。胃がんは日本人に多いがんのひとつで、胃切除術を受ける方は少なくありません。
胃がんで手術を受ける方は中高年に多く見られますが、若い世代でも起こることがあります。胃潰瘍の出血や穴が開くなど、良性の病気が理由で手術になることもあります。年齢や持病、体力によって、手術の方法や術後の過ごし方は一人ひとり違います。
症状
- 突然の激しい腹痛、おなか全体が硬く触れる(救急車を呼んでください・119)
- 大量の吐血、コーヒーの残りかすのような色の嘔吐(119)
- 血便が続く、黒い便が続く、顔面が青白く冷汗が出る(119)
- 意識がもうろうとしている、話しかけても反応が弱い(119)
- 手術後に高熱が出て、息苦しさや傷の強い腫れ・膿がある(119)
- ⚠水分も飲めない、嘔吐が続いて食事がとれない
- ⚠手術後の傷が赤く腫れる、痛みが強くなる、38度以上の発熱がある
- ⚠急に体重が減る、立ちくらみや強いだるさが続く
- ⚠食後に冷や汗や動悸がひどく、日常生活がつらい
一般的な症状
- 手術を考えるきっかけになる症状:みぞおちの痛みや不快感が続く
- 食後に胃がもたれる、少ししか食べていないのにおなかがいっぱいになる
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 胸やけ、吐き気、げっぷが増える
- 便が黒くなる(タール便)=消化管から出血しているサインのことがあります
- 貧血で疲れやすい、顔色が悪い
- 手術後に出やすい変化:食べるとすぐおなかが張る、下痢をする
- 食後すぐに動悸、冷や汗、気分が悪くなる(ダンピング症状=食べ物が腸に急に流れ込むことで起こる症状)
- 手術後の体重減少、疲れやすさ
子供の症状
- 小児で胃切除が必要になることはとてもまれで、特有の症状のパターンはありません。
- 手術が必要と判断された場合は、小児の手術と栄養管理に慣れた専門の医療機関で相談します。
高齢者の症状
- 高齢の方では、手術に耐えられる体力や栄養状態をあらかじめしっかり評価します。
- 術後の回復に時間がかかったり、食欲の低下や飲み込みにくさが出たりしやすくなります。
- 持病の管理や、食事・歩くリハビリを合わせて進めることが大切です。
- ご家族や身近な方のサポートが、回復の大きな支えになります。
原因
主な原因
- 胃がん(最も多い理由です)
- 胃の悪性リンパ腫など、胃にできる他の悪性の病気
- 胃潰瘍の出血、穴が開く(穿孔)、狭くなって食べ物が通らない(狭窄)
- 胃の良性の腫瘍や大きなポリープ
- 肥満の治療(減量手術)として行われることもあります
リスク要因
- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染
- 塩分の多い食事、塩漬けや加工肉の多い食事
- 家族に胃がんの人がいる
- 慢性胃炎がある、年齢を重ねている
- 飲酒の習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐血や黒い便がある、強い腹痛がある、高熱がある(この場合は救急車を呼ぶことも検討してください)
- 手術後に水分もとれない、嘔吐が止まらない
- 傷の腫れや痛みが急に悪くなる、膿のようなものが出る
定期受診を予約すべき場合:
- みぞおちの不快感や食欲低下、体重減少が続く
- 手術後の食事の量や回数で悩んでいる
- 食後の気分不良や下痢が続き、生活に支障がある
- 貧血気味、だるさが続く、骨が弱くなった気がする
- 気持ちが落ち込む、不安が強い日が続く
診断
胃切除術そのものを診断する検査はありません。手術が必要かどうかは、もとになる病気(多くは胃がん)を調べることで決まります。胃カメラで胃の中を直接見て、気になる部分の組織を少し取って調べます(生検)。さらに画像の検査で病気の広がりを確認し、体力や栄養状態も合わせて、手術の方法を検討します。手術のあとは、定期的な通院で回復の具合と栄養状態を確認します。
行われる可能性のある検査
- 上部消化管内視鏡(胃カメラ)と組織の検査(生検)
- 造影CT検査、腹部超音波検査
- 血液検査(貧血や栄養状態、腫瘍マーカーを含む)
- 上部消化管造影検査(バリウムを飲んで胃の形を見る検査)
- 手術前の心肺機能検査、栄養状態の評価
- 手術後の通院での血液検査、必要に応じて内視鏡やCT検査
診察で予想されること
検査は日帰りでできるものも多く、胃カメラは鎮静剤を使うと楽になることがあります。手術前には、主治医から手術の方法や利点、起こりうる合併症について説明があり、納得したうえで決めます。遠慮なく質問し、ご家族と一緒に話を聞くのもよい方法です。
治療
治療の中心は手術で、病気の部分と周りのリンパ節を取り除きます。病気の広がりに応じて、手術の前後に薬物療法(抗がん剤など)を組み合わせることがあります。手術後は、食事のとり方の指導と栄養管理を中心に、体を慣らしていく期間が続きます。
自宅でのセルフケア
- 一度にたくさん食べず、少量ずつ回数を分けて食べる
- よくかんで、ゆっくり時間をかけて食べる
- 水分と食事の時間をずらす(食前や食後の水分は控えめに)
- 食後すぐに横にならず、少し休むか軽く体を動かす
- 食べたものと体調を記録して、合う食べ方を見つける
- 禁煙を続ける、適度に体を動かす
- 体重の変化を定期的にチェックする
医療治療
手術の方法は、胃のどこを残すかによって大きく3つに分かれます(出口側を残す方法、入口側を残す方法、全部取る方法)。おなかに小さな穴をあけて行う腹腔鏡下手術が選ばれることもあります。手術の前後に、病気の再発を防ぐ目的で薬物療法を行うことがあります。また、手術後は不足しがちな栄養素(ビタミンや鉄など)を補うことがあり、定期的な血液検査で確認します。具体的な治療の内容は、病気の種類や広がり、体力に合わせて主治医と相談して決めます。
手術が検討される場合
胃がんなどで手術が勧められるのは、病気を取り除くことで治癒(治ること)が期待できる場合や、出血や食べ物が通らないなどの症状をやわらげる必要がある場合です。体力や持病、ご本人の希望も含めて、総合的に判断されます。手術を受けるか迷うときは、複数の選択肢とそれぞれの利点・負担について、遠慮なく主治医に確認してください。
この病気と共に生きる
手術後は、食事の量や間隔を自分に合わせて調整する毎日になります。最初は少しずつ試しながら、体が受け付けやすい食べ方や食材を見つけていきます。通院は続きますが、慣れてくると生活のリズムも整っていきます。
生活習慣のアドバイス
- 1日3回にこだわらず、少量を5〜6回に分けて食べる
- ゆっくり食べる習慣をつくる
- 食事の記録をつけて、体調との関係を把握する
- 十分な休養と睡眠をとる
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 体重を定期的に測る
食事と運動
食事は、たんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品など)を意識してとり、主食はやわらかく消化のよいものを選ぶと安心です。揚げ物や強い香辛料、炭酸飲料、甘すぎるものは、合わないことがあります。食事の直後は横にならず、食後少ししてから軽い散歩をすると調子が整いやすいです。無理のない範囲で、歩く習慣を続けましょう。栄養や運動の具体的な計画は、主治医や管理栄養士と一緒に考えると安心です。
精神的健康と心の健康
手術のあとは、食べられないもどかしさ、体重が減ることへの不安、再発への心配など、気持ちが揺れることがあります。これは自然な反応です。落ち込む日が続く、眠れない、涙が出る、何も楽しめないと感じるときは、がまんせずに早めに主治医や看護師に話してください。病院には、がんの相談にのってくれる相談支援の窓口が設けられていることが多く、ご家族だけが相談することもできます。つらい気持ちが強いときは、医療機関の窓口や、お住まいの地域の相談サービスにつながることをためらわないでください。
予防
胃切除術そのものを防ぐというよりも、手術が必要になる原因(多くは胃がん)のリスクを下げることが大切です。塩分を控えめにする、禁煙する、バランスのよい食事をとる、といった生活の工夫が役立ちます。ピロリ菌の感染が気になる場合は、医療機関で検査と対応について相談してください。
検診プログラム
厚生労働省の指針では、50歳以上の方に2年ごとの胃がん検診(バリウムを飲む検査、または胃カメラ)が推奨されています。職場やお住まいの自治体の検診も活用しましょう。気になる症状があるときは、検診を待たずに早めに医療機関を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 手術が必要な病気(胃がんなど)を放置すると、病気が進んで治療の選択肢が限られることがあります
- 出血や穴が開くなどの状態を放置すると、命に関わることがあります
- 手術後に食事の工夫や通院をやめてしまうと、貧血や骨が弱くなること、体重減少が進むことがあります
- ダンピング症状(食後の動悸や冷や汗、下痢)や逆流性食道炎(胃酸が食道に戻ることで胸やけがする状態)が続くことがあります
長期的な見通し
胃切除術は、日本で多くの経験が積み重ねられてきた治療です。手術後の食事の工夫や栄養管理の方法もよく知られており、多くの方は時間をかけて日常生活に戻っていきます。体の変化には個人差がありますが、困ったときに早めに相談することが、安心して過ごすための近道です。
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最終更新: 2026年10月24日
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