カンピロバクター腸炎(細菌による胃腸炎)
概要
カンピロバクター腸炎は、カンピロバクターという細菌が口から入り、腸で増えることで起こる胃腸炎(おなかの感染症)です。主な症状は下痢、腹痛、発熱で、多くは数日から1週間ほどで自然に良くなります。ただし、水分が取れないほどの下痢や嘔吐があるときは、脱水(体の水分が足りなくなること)に注意が必要です。
重要な事実
- 原因の多くは、加熱が十分でない鶏肉や、鶏肉を扱った手・調理器具からの菌の移りです。
- 菌が体に入ってから症状が出るまでの潜伏期間は、おおよそ2〜7日程度といわれています。
- 多くの人は、水分をこまめにとり安静にして過ごすことで回復します。
- まれに、回復した後に神経や関節の症状が出ることがありますが、非常にまれなケースです。
日本でも報告数の多い食中毒(食べ物が原因で起こる病気)の原因のひとつです。年間を通して発生しますが、暖かい季節に増える傾向があります。
子どもから大人まで、どの年齢でも起こります。特に小さい子ども、高齢者、免疫力(体を守る力)が下がっている人は、脱水や重症化に注意が必要です。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い
- けいれんが起きた
- 息が苦しい、呼吸が速くて苦しそう
- 大量の血便が出る、出血が止まらない
- 強い脱水のサイン(ぐったりして動けない、半日以上おしっこが出ない、皮膚をつまんでも戻りが遅い)
- ⚠38.5℃以上の高い熱が続く
- ⚠便に血が混じる(血便)
- ⚠激しい腹痛が続く、おなかを押すと強く痛む
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠半日以上おしっこが出ない、口の中がとても乾いている
- ⚠下痢が1週間以上続く、または一度良くなってからまた悪くなった
一般的な症状
- 水っぽい下痢(回数が多い、ときに血が混じることもある)
- おなかの痛みや、ぎゅーっと締めつけられるような痛み
- 発熱(38℃前後が多い)
- 吐き気や嘔吐
- だるさ、頭痛、筋肉痛のような体の痛み
子供の症状
- 下痢や嘔吐が続いて脱水(体の水分が足りなくなること)になりやすい
- 泣いても涙が出にくい、口の中や唇が乾いている
- おしっこの回数や量がいつもより少ない
- ぐったりしている、元気がない、遊ばない
- 機嫌が悪い、眠ってばかりいる
高齢者の症状
- 下痢による脱水や、体の塩分バランスの乱れが起きやすい
- 発熱や下痢が長引きやすい
- 持っている病気(心臓病や糖尿病など)が悪くなることがある
- のどの渇きを感じにくく、気づかないうちに水分不足になることがある
原因
主な原因
- 十分に加熱されていない鶏肉を食べること(鶏わさ、たたき、生に近い状態の鶏肉など)
- 鶏肉を切った手・まな板・包丁・はしなどを通して、ほかの食品に菌が移ること(二次汚染)
- 洗浄が不十分な生野菜や果物を食べること
- ペット(犬・猫・鳥など)のふんに触れた手から口に入ること(まれ)
- 感染した人の便に触れ、手洗いが不十分なまま口に入ること(おむつ交換のときなど)
リスク要因
- 生の鶏肉や加熱が不十分な鶏肉料理をよく食べる
- 調理前後の手洗いが不十分
- 生肉用と加熱済み食品用でまな板や包丁を分けていない
- 小さい子ども、高齢者、免疫力が下がっている人(治療中や持病がある人など)
- 家族の中で下痢の症状がある人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便に血が混じる、または血便が出た
- 高い熱が続く、または熱が下がらない
- 激しい腹痛がある、痛みがどんどん強くなる
- 吐き気や嘔吐がひどく、水分がとれない
- 脱水のサインがある(おしっこが極端に少ない、ぐったりしている、口の中が乾いている)
- 症状が急に悪くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 下痢が3日以上続いている
- いったん良くなったのに、また症状がぶり返した
- 妊娠中、または持っている病気がある
- 食べ物を扱う仕事、保育や医療の仕事をしている(周りの人にうつさないための相談)
- 症状は軽いが、不安が強い、または長引いている
診断
まず、症状の経過と、ここ数日に何を食べたか(特に鶏肉料理)を医師に伝えます。症状や食事の内容からカンピロバクター腸炎が疑われることも多く、その場合は検査をせずに経過を見ることもあります。重症のときや、診断をはっきりさせたいときに便の検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 便の培養検査(便の中の細菌を育てて調べる検査)
- 便のPCR検査(菌の遺伝子を短時間で調べる検査)
- 血液検査(脱水や炎症の程度、体の塩分バランスを調べる)
- 脱水の程度をみる診察(口の中の乾き、皮膚の状態、尿の量など)
診察で予想されること
検査結果が出るまでに数日かかることがあります。軽い症状であれば、結果を待つ間も自宅で水分をとって休みながら過ごします。症状が強いときは、点滴などのために医療機関で過ごすことがあります。
治療
治療の中心は、失った水分と塩分を補い、体を休めることです。薬を使うかどうかは、症状の強さや持っている病気、年齢などをもとに医師が判断します。自己判断で市販薬を重ねて使うのは避け、薬について迷ったら薬剤師や医師に相談してください。
自宅でのセルフケア
- 少量ずつ、こまめに水分をとる(経口補水液が望ましい。スポーツドリンクは薄めて使うとよい)
- 食事は、おかゆ、うどん、具の少ないスープなど消化のよいものから少しずつ
- 脂っこい食べ物、乳製品、アルコール、カフェイン、刺激の強いものは回復するまで控える
- トイレの後、食事の前、おむつ交換の後は、石鹸と流水で丁寧に手を洗う
- タオルや食器は家族と共用しない
- 入浴はシャワー程度にし、湯船につかるのは症状が落ち着いてから
- 仕事や学校は、症状が良くなるまで休む。特に食べ物を扱う仕事の場合は、医師や保健所の指示に従う
医療治療
症状が強いときや水分がとれないときは、医療機関で点滴を行い、水分と塩分を補うことがあります。下痢や吐き気などのつらい症状をやわらげる薬が使われることもあります。細菌を減らすための薬(抗菌薬)は、重症のときや高齢者・免疫力が下がっている人などに限って、医師が必要性を判断して使うことがあります。薬の種類や使い方は医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
通常は手術は必要ありません。ごくまれに、腸に重い合併症が起きた場合に外科的な治療が必要となることがあります。
この病気と共に生きる
症状がある間は無理をせず、家で安静に過ごしましょう。トイレの後は必ず手を洗い、家族とタオルを分けると安心です。症状が良くなってきたら、少しずつ普通の食事に戻していきます。
生活習慣のアドバイス
- 鶏肉は中心まで十分に加熱する(生焼けは避ける)
- 生肉を扱ったまな板・包丁・はしは、すぐに洗剤で洗い、熱湯や消毒で清潔にする
- 生肉と、加熱済みの食品や生で食べる野菜は分けて置く
- 調理の前後、食事の前、トイレの後は手を洗う
- ペットのふんを触った後は手を洗う
- 家族に下痢の人がいるときは、タオル・食器を分ける
食事と運動
回復期は、おかゆ・うどん・柔らかく煮た野菜など、胃にやさしいものを少量ずつとります。一度にたくさん食べず、様子を見ながら量を増やしましょう。運動は、下痢や発熱がおさまって体力が戻ってから、ウォーキングなど軽いものから再開すると安心です。
精神的健康と心の健康
食中毒にかかると、つらい体調に加えて、家族や周りの人にうつしてしまったのではないかという不安や、仕事を休むことへの気がかりを感じることがあります。それは自然な気持ちです。ひとりで抱え込まず、信頼できる人に話したり、かかりつけ医に相談したりしてください。気持ちの落ち込みが続くときは、地域のこころの相談窓口を利用するのも一つの方法です。
予防
はい。カンピロバクター腸炎は、手洗いと食品の加熱を徹底することで、かなり防ぐことができます。鶏肉は中心までしっかり火を通し、生肉を扱った後は手と調理器具をよく洗いましょう。厚生労働省も、食中毒予防の基本として「つけない・増やさない・やっつける(加熱)」を呼びかけています。
ワクチン
人のためのカンピロバクターのワクチンは、日本では一般的に使われていません。予防は、手洗いと加熱が中心です。
検診プログラム
症状がない人に対して、カンピロバクターの検査を日常的に行うことはありません。症状があるときや、周りへの感染が心配なとき(食べ物を扱う仕事など)に、医師や保健所と相談して検査を考えます。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体の水分が足りなくなり、ぐったりする、尿が出なくなる)
- 体の塩分バランスの乱れ(だるさ、動悸、けいれんなど)
- まれに、回復した後に手足に力が入りにくくなる神経の病気(ギラン・バレー症候群)
- まれに、関節の痛みや腫れが続く状態(反応性関節炎)
- まれに、腸に重い炎症が起きる
長期的な見通し
ほとんどの人は、水分をとって休むことで1週間ほどで回復します。安心してよいことが多い病気ですが、血便や強い脱水のサインがあるときは早めに医療機関へ。回復後も手洗いと加熱を続けることで、再びかかることを防げます。
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最終更新: 2026年10月24日
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