サルモネラによる胃腸炎(食あたり)
概要
サルモネラという細菌が口から体に入ることで起こる、胃腸の感染症です。たいていは食べ物や飲み物を通じて菌が入り、数時間から数日たってから下痢や腹痛、発熱などが始まります。「食あたり」や「食中毒」と呼ばれるもののひとつで、多くの人は水分をとりながら休むことで1週間ほどで自然に良くなります。
重要な事実
- サルモネラは主に鶏肉・卵・生の肉・加熱が足りない食べ物を通じて体に入ります。
- 菌が入ってから症状が出るまでの時間は、およそ12〜72時間(多くは1〜3日)です。
- 健康な大人は数日〜1週間ほどで回復することが多いですが、赤ちゃんや高齢者、体力が落ちている人は脱水(体の水分が足りなくなること)に注意が必要です。
日本でも、細菌による食中毒の原因としてよく報告される菌のひとつです。厚生労働省も、食中毒を防ぐための手洗いや食品の加熱を呼びかけています。年間を通して起こりますが、気温が高い時期に特に注意が必要です。
年齢を問わず誰でもかかります。特に、小さな子ども、65歳以上の高齢者、病気や治療で免疫(体を守る力)が弱っている人、妊娠中の人は、症状が重くなりやすいため注意が必要です。
症状
- 意識がない、または呼びかけても反応がぼんやりしている
- けいれんが起きた
- 呼吸が苦しい、顔色が青白い
- 大量の血便が出る、または便が黒くて血が混じっているように見える
- 半日以上おしっこが出ない、皮膚をつまむと戻らないなど、ひどい脱水のサインがある
- 高熱とぐったりした様子が同時にある
- ⚠水分をとろうとしても吐いてしまい、飲めない状態が続く
- ⚠38.5℃以上の熱が続く、または熱が下がらない
- ⚠血が混じった便が出た
- ⚠8時間以上おしっこが出ない、口の中がとても乾いている
- ⚠おなかの激しい痛みが続く、おなかが固く張っている
- ⚠症状が3日以上たっても良くならない、または悪くなっている
一般的な症状
- 水下のような下痢(1日に何度も続くことがあります)
- おなかの痛み、おなかがゴロゴロする感じ
- 吐き気、おう吐
- 発熱(38℃以上になることもあります)
- 寒気、頭痛、筋肉痛、だるさ
- 食欲がない、気持ちが悪くて食べられない
子供の症状
- 下痢やおう吐が多く、体の水分が失われやすい(脱水)
- 泣いても涙が出ない、口の中や唇が乾いている
- おしっこの回数が減る、半日以上おしっこが出ない
- ぐったりしている、機嫌が悪くてあやしても泣きやまない
- おなかが張っている、血が混じった便が出る
高齢者の症状
- 脱水が進みやすい(のどが渇かない、尿が少ない、皮膚がかさつく)
- 発熱が長引く、だるさが強い
- 持っている病気(心臓・腎臓・糖尿病など)が悪化しやすい
- 意識がぼんやりする、反応が遅くなる
- 転倒やふらつきが増える
原因
主な原因
- 加熱が足りない鶏肉・卵・肉料理を食べた(中心まで火が通っていないもの)
- 生の肉に触れた包丁・まな板・手を洗わずに、ほかの食品を触った(二次汚染)
- ペットや動物に触れたあとに手を洗わなかった(爬虫類・鳥・カメなどは特に注意)
- 井戸水や消毒されていない水、加熱していない乳を飲んだ
- 感染した人の手を介して、食べ物や食器に菌がついた
リスク要因
- 5歳以下の子ども、65歳以上の高齢者
- 免疫が弱くなる病気がある、または免疫を抑える治療を受けている
- 胃酸を抑える薬を長く飲んでいる(菌が胃で減りにくくなるため)
- 海外で食事をする機会が多い、または衛生状態が整っていない場所での食事
- 飲食店など、食べ物を扱う仕事をしている(周りの人に広げる心配があるため)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 水分がとれない、何度も吐いてしまう
- 血が混じった便、黒い便がある
- おしっこが極端に少ない、意識がぼんやりする
- 38.5℃以上の高熱が続く、または激しいおなかの痛みがある
- 赤ちゃんや高齢者で、元気がない・ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 症状は軽いが3日以上続いている
- 家族や周りの人にも同じような症状が出た
- 保育園・学校・仕事に戻ってよいか相談したい(特に食べ物を扱う仕事の場合)
- 妊娠中、または持病があり、心配なとき
- 症状は良くなってきたが、食欲が戻らない、だるさが続く
診断
まずは症状の経過と、最近食べたもの・飲んだもの、旅行やペットとの接触などを医師に伝えます。必要に応じて便の検査を行い、サルモネラ菌がいるかどうかを調べます。症状が軽い場合は、検査をせずに経過を見ることもあります。
行われる可能性のある検査
- 便の細菌培養検査(便を少しとって、菌が育つかどうかを調べる検査)
- 血液検査(脱水の程度や体の炎症の状態を見る)
- 尿検査や体重の測定(水分が足りているかを見る)
- 症状や経過の聞き取り(食べたもの、周りの人の症状、持病、飲んでいる薬)
- 重症の場合には、腹部の画像検査を行うことがあります
診察で予想されること
便の検査結果が出るまでには数日かかることがあります。結果を待つ間は、自宅で休み、こまめに水分をとってください。食べ物を扱う仕事をしている人は、結果が出るまで仕事を休むよう案内されることがあります。保健所から連絡が来る場合もありますが、これは感染の広がりを防ぐための大切な仕組みです。
治療
治療の中心は、失った水分と塩分(電解質)を補いながら、体が自然に菌を追い出すのを助けることです。多くの場合は安静と水分補給だけで回復します。薬の必要性は症状や体の状態によって変わるため、自己判断せず医師に相談してください。
自宅でのセルフケア
- 少量ずつ、何度もに分けて水分をとる(スプーン1杯からでも大丈夫です)
- 市販の経口補水液(水と塩分・糖分をバランスよく含んだ飲み物)を上手に使う
- 食事は、おかゆ、うどん、スープなど消化のよいものから少しずつ戻す
- 下痢止め薬は自己判断で使わず、まず医師や薬剤師に相談する
- 手洗いをこまめに行い、タオルは家族と分ける
- 入浴はシャワー程度にし、湯船の共用は症状が落ち着いてからにする
- 看病したあとは必ず石鹸で手を洗う
- 症状が続く間は、無理に仕事や学校へ行かない
医療治療
医療機関では、脱水が強い場合に点滴で水分と電解質を補うことがあります。症状に応じて吐き気や痛みをやわらげる薬が使われることもあります。菌を減らす薬(抗菌薬)は、症状が重い場合や、赤ちゃん・高齢者・免疫が弱っている人など重症化の心配がある場合に検討されます。使うかどうか、どの薬を使うかは医師が体の状態を見て決めます。
手術が検討される場合
通常は手術は必要ありません。ただし、非常にまれに腸に穴が開いたり、おなかの中に膿(うみ)の袋ができたりする重い合併症が起こることがあり、その場合は外科的な治療が必要になります。
この病気と共に生きる
症状がある間は、とにかく水分をこまめにとることが大切です。トイレのあとや食事の前には石鹸で手を洗い、家族にうつさないように気をつけましょう。症状が落ち着いても、しばらくは便に菌が出ていることがあるため、手洗いは丁寧に続けてください。仕事や学校に戻る時期は、医師や保健所の指示に従うと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 石鹸と流水で30秒ほどかけて手を洗う習慣をつける
- 肉や卵は中心までしっかり火を通す
- 生の肉を触った包丁・まな板は、ほかの食材に使う前に洗う
- ペットや動物に触れたあとは必ず手を洗う
- 調理台やふきんを清潔に保つ
- 疲れや睡眠不足は体力を落とすので、回復期はしっかり休む
食事と運動
回復期は、おかゆ、うどん、やわらかい野菜、スープなど、おなかにやさしいものを少量ずつ食べてください。脂っこいもの、辛いもの、アルコール、カフェインは、おなかの調子が戻るまで控えめにしましょう。激しい運動は、下痢や発熱がおさまって体力が戻ってから再開してください。歩くなど軽い動きは、体が楽な範囲で構いません。
精神的健康と心の健康
食あたりは、突然の下痢や嘔吐でとてもつらく、不安になるものです。家族にうつしてしまったのではないかと責任を感じたり、仕事を休むことで焦ったりすることもあります。子どもは具合が悪いこと自体に不安を感じやすいので、そばにいて安心させてあげてください。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の保健所、自治体の相談窓口に話してみてください。強い不安や落ち込みがあり、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や医療機関に連絡してください。
予防
はい、予防できます。ポイントは「手を洗う」「しっかり加熱する」「菌を広げない」の3つです。厚生労働省も、食中毒予防の基本として手洗いと食品の十分な加熱をすすめています。
ワクチン
サルモネラによる胃腸炎を防ぐために、日本で日常的に受けられるワクチンは一般的ではありません。予防は手洗いと食品の扱い方が中心になります。
検診プログラム
症状がない人のための定期検査はありません。ただし、食べ物を扱う仕事に就くときや、集団で症状が出たときなどに、便の検査が行われることがあります。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体の水分が足りなくなり、頭痛・めまい・尿が出ないなどの症状)
- 電解質のバランスが崩れることによる体のだるさや不整脈
- 菌が血液の中に入る状態(菌血症)
- まれに、腸の外(骨、関節、髄膜など)に感染が広がる
- 感染後に起こる関節の痛み(反応性関節炎)
- 非常にまれですが、腸に穴が開くなど重い合併症
長期的な見通し
多くの方は、水分をとって休むことで1週間ほどで元の生活に戻れます。つらい数日ではありますが、回復は十分に期待できます。赤ちゃん、高齢者、免疫が弱っている人は重症化しやすいため、早めに医療機関に相談することが安心につながります。症状が良くなったあとも手洗いを続けることが、自分と周りの人を守る第一歩です。
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最終更新: 2026年10月24日
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