遺伝性の病気(遺伝子の変化による病気)について
概要
遺伝子は、体の設計図のようなものです。遺伝性の病気は、この設計図の一部が生まれつき少し違っていることで起こります。ただし、遺伝子に変化があっても、必ずしも症状が出るとは限りません。症状の重さも人によって大きく異なり、同じ変化を持つ家族でも違うことがあります。
重要な事実
- 遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、多くの人は知らないうちに何らかの変化を持っています。
- 遺伝性といっても、親から受け継ぐ場合と、その人自身の体の中で新しく生じる場合があります。家族に同じ病気の人がいなくても起こることがあります。
- 遺伝子の変化があっても症状が出ない人(保因者)も多くいます。
- 多くの遺伝性の病気は、治療や支援を受けながら、ふだんと変わらない生活を送ることができます。
遺伝性の病気は数千種類あるといわれ、一つひとつの病気は珍しくても、遺伝子の変化全体でみると決して珍しいものではありません。最近は遺伝についての相談や検査を受ける人も増えています。
年齢・性別・国籍を問わず、誰でも関係する可能性があります。生まれたときから特徴が出るもの、子どものころに気づかれるもの、大人になってから分かるものがあります。家族歴がある人も、ない人もいます。
症状
- けいれんが止まらない、意識がない、呼びかけに反応しない
- 呼吸が苦しい、顔色が青白い、唇が紫色に見える
- 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、体の片側が動かない(脳卒中のサイン)
- 大量の出血や、止まらない出血
- これらがあるときは、すぐに119番へ連絡してください。
- ⚠高い熱が続く、元気がない
- ⚠急に歩けなくなった、力が入らない
- ⚠強い痛みが続く
- ⚠食べられない・飲めない状態が続く
- ⚠いつもと違う様子が半日以上続く
一般的な症状
- 発育や成長の遅れ
- 筋肉の弱さ、疲れやすさ、歩きにくさ
- 視力や聴力の問題
- 心臓や内臓の形・働きの違い
- 皮膚、骨、関節の特徴的な変化
- 学習や発達の面での特徴
- 血液の病気(貧血など)
- 特定のがんになりやすい体質
- けいれん、手足のしびれ、動きのぎこちなさ
子供の症状
- 身長や体重の増え方がゆっくり
- 運動や言葉の発達の遅れ
- 繰り返す感染症や長引く発熱
- 哺乳(飲み方)や食べる量の問題
- 体の特徴(手足の形、顔つきなど)への気づき
- 筋力の弱さ、すぐ疲れる
- けいれん
- 定期的な健診で見つかる心雑音など
高齢者の症状
- 若い年齢でのがんが見つかる
- 心臓の病気(不整脈、心筋の病気など)
- 神経の病気による歩きにくさ、震え、筋力低下
- 視力・聴力の変化
- 繰り返す流産や、妊娠・出産に関する悩み
- 家族歴をたどって初めて分かることも多い
原因
主な原因
- 遺伝子(DNA)の変化。親から受け継ぐ場合があります。
- 受精の前後に新しく起こる変化。家族に同じ病気の人がいなくても起こります。
- 染色体(遺伝子が入っている束)の数や形の変化。
- 体質と環境の両方が関係するタイプのもの(生活習慣などと組み合わさる)。
- ミトコンドリアという細胞の中の小器官の遺伝子によるもの。
リスク要因
- 家族に同じ病気、または似た症状の人がいる
- 近い親族に、若い年齢でのがん、繰り返す流産、子どもの発達の遅れがある
- 血縁者どうしの結婚(一部の劣性遺伝の病気でリスクが高まることがある)
- 妊娠の年齢が高い場合(一部の染色体の変化)
- 特定の地域や民族に多くみられる病気がある
- ※リスクが特にないと思っていても、遺伝性の病気が起こることはあります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんが止まらない、意識がもうろうとしている
- 呼吸が苦しい、顔色が悪い
- 急に動けなくなった、力が入らない
- 強い痛みや、止まらない出血がある
- これらのときは119番、またはその日のうちに医療機関を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 家族に遺伝性の病気の人がいる、または家族歴が気になる
- 子どもの発達や成長のことで気になることがある
- 近い親族に若い年齢でがんになった人がいる
- 妊娠を考えている、または妊娠中で遺伝のことが気になる
- 繰り返す流産や、妊娠・出産の悩みがある
- 自分や子どもの体の特徴について相談したい
診断
まず診察と、家族歴(家族に同じ病気や似た症状の人がいるか)の聞き取り、体の診察から始まります。必要に応じて、血液などから遺伝子を調べる検査(遺伝学的検査)を行います。検査の前には、何が分かり何が分からないか、結果が家族にどう関係するかを専門家と話す時間が設けられます。これを遺伝カウンセリングといいます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査、尿検査などの一般検査
- 画像検査(レントゲン、超音波、CT、MRIなど)
- 染色体検査
- 遺伝子の検査(一つずつ調べる方法や、多くの遺伝子をまとめて調べる方法など)
- 新生児マススクリーニング(生まれた直後の赤ちゃんに行う検査)
- 必要に応じて家族の方の検査
診察で予想されること
結果が出るまでに数週間から数か月かかることがあります。結果が「はっきりした変化は見つからない」でも、症状の説明がつかないことはあります。逆に「変化がある」と言われても、必ず発症するとは限りません。結果をどう家族に伝えるか、誰に相談するかについても、専門家が一緒に考えてくれます。
治療
遺伝子そのものを変える治療はまだ限られていますが、症状をやわらげ、合併症を防ぎ、生活の質を保つための治療は年々進歩しています。多くの場合、いくつかの診療科がチームになって関わります。
自宅でのセルフケア
- 決められた通院を続ける
- 処方された薬は、医師の指示どおりに使う(自己判断でやめない)
- 睡眠と休養をしっかりとる
- 手洗いなど、感染予防を心がける
- 体調の変化を記録して、受診時に伝える
- 緊急時の連絡先や、かかりつけの医療機関を家族と共有しておく
- ストレスをためこまず、話せる人や相談先を持つ
医療治療
症状に合わせた治療を行います。内臓の働きを助ける治療、理学療法・作業療法・言語療法、栄養指導、痛みの緩和などです。定期的な検査で合併症を早く見つけることも大切です。病気によっては、特別な食事の管理や、体の中で足りない物質を補う治療などを行うこともあります。どの治療を選ぶかは、主治医とよく相談して決めましょう。
手術が検討される場合
心臓など内臓の形の違いや、合併症によっては手術が必要になることがあります。手術が必要かどうかは、専門医が一人ひとりの状態に合わせて判断します。
この病気と共に生きる
通院と日常生活のバランスをとりながら、できるだけふだんどおりに過ごすことが大切です。症状の出方は人によって大きく違うため、比べすぎないことも大切です。学校や職場には、必要な配慮を伝えておくと安心です。医療費の助成制度や福祉サービスを利用できる場合もあります。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活を心がける
- 感染予防のための手洗い・うがい
- 必要なワクチンについては医師に相談する
- 無理のない範囲で体を動かす
- たばこを避け、飲酒は医師に相談する
- 定期的な歯科受診
- 体調の記録をつけておく
食事と運動
病気によっては、特定の成分を控えるなど食事の工夫が必要なことがあります。自己判断で食事を極端に制限せず、必ず医師や管理栄養士に相談してください。運動は、無理のない範囲で続けることが体力づくりに役立ちます。疲れやすい場合は、休み休み行うなど、自分のペースを大切にしましょう。
精神的健康と心の健康
遺伝のことを知って、不安、悲しみ、怒り、罪悪感などを感じることは自然なことです。家族の中で気持ちに差が出ることもあります。気持ちがつらいときは一人で抱えず、医療機関や相談窓口に連絡してください。こころの不調が続くときは、迷わず専門家に相談を。つらい気持ちが強いときは、緊急の窓口や119番をためらわずに使ってください。
予防
遺伝子の変化そのものを完全に防ぐことは難しいのが現実です。ただし、生活の工夫や定期的な検査によって、発症を遅らせたり、重症化を防いだりできる病気もあります。妊娠を考えている段階で遺伝カウンセリングを受けて、選択肢をあらかじめ知っておくこともできます。
ワクチン
感染症にかかると重症化しやすい病気もあります。定期接種に加えて、医師と相談のうえで追加のワクチンを検討できる場合があります。ただし、病気によっては生ワクチンを使えないこともあるため、必ず主治医に相談してください。
検診プログラム
日本では、生まれた直後の赤ちゃんを対象にした新生児マススクリーニングが行われています。家族歴がある場合の遺伝学的検査や、特定のがんになりやすい家系での定期的ながん検診も、早期発見に役立ちます。どの検査が必要かは、医師と相談して決めましょう。
合併症
治療しない場合
- 症状が進み、心臓・腎臓・神経などの合併症が起こる可能性
- 発達の遅れへの対応が遅れる
- 感染症が重症化する
- 不安や孤立など、こころの負担が大きくなる
- 必要な支援制度や医療につながらない
長期的な見通し
遺伝性の病気の多くは、適切な医療と周りの支援によって、長く安定した生活を送れるようになってきています。研究や治療も日々進歩しています。経過は人によって異なりますが、あきらめる必要はありません。一人で抱えこまず、医療者や周りの人と一緒に歩んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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