体を動かして上手に付き合う 変形性関節症
概要
変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)は、関節の表面をおおっている「軟骨(なんこつ)」というクッションのような部分が少しずつすり減り、関節の周りの骨やじん帯にも変化が起きてくる病気です。軟骨が減ると関節がスムーズに動かなくなり、動き始めの痛み、こわばり、腫れなどが出ます。ひざ、股関節(こかんせつ)、手指、首や腰の関節によく起こります。「年だから仕方ない」とあきらめられがちですが、運動や生活の工夫で痛みをやわらげ、動ける体を保つことは十分にできます。
重要な事実
- 変形性関節症は「使いすぎで壊れる病気」ではなく、軟骨が少しずつ変化していく病気です。年齢とともに誰にでも起こりうるものです。
- 治療の主役は運動です。筋力をつけて関節を支えることが、痛みを減らし、動ける期間を長くします。
- 痛みが強い日は無理をせず休み、調子のよい日に少しずつ動く——この繰り返しで少しずつ力がついていきます。
とてもよくある病気です。日本でも、ひざの変形性関節症だけで数百万人規模の人が抱えていると考えられており、年齢が上がるほど増えていきます。特別な人だけの病気ではありません。
主に40〜50歳以降の人に多く、年齢を重ねるほど増えます。女性は男性よりなりやすいといわれます。過去のけが、体重が多いこと、立ち仕事や重い物を扱う仕事、生まれつきの関節の形なども関係します。若い人やスポーツをする人でも、けががきっかけで起こることがあります。
症状
- 関節が急に赤く腫れて熱を持ち、高い熱が出て具合が悪い(関節の中に細菌が入った感染の可能性があります)
- 大きなけがや転倒のあと、関節が明らかに変形している、または体重をかけられない
- 強い痛みで関節をまったく動かせない
- 患部や足先の感覚がない、色が白や紫に変わっている、冷たい
- ⚠関節の腫れや痛みが数日で急に悪化している
- ⚠発熱を伴う関節の腫れ(当日の受診が必要です)
- ⚠急に歩けなくなった、日常生活が成り立たない
- ⚠転倒したあとから痛みが続いている、体重をかけると痛む
- ⚠ふくらはぎの痛みや腫れを伴う(別の病気の可能性があります)
一般的な症状
- 動き始めの痛み(立ち上がる、歩き始める、階段を下り始めるときなどに痛む)
- 休むと軽くなる痛み。進行すると歩き続けると痛む
- 朝起きたときや長時間同じ姿勢のあとの関節のこわばり(動かすと数分〜30分ほどで楽になることが多い)
- 関節の腫れ、熱っぽさ、押すと痛むところがある
- 関節を動かすと「きりきり」「ゴリゴリ」といった音や感触がある
- 正座・しゃがむ・階段の上り下りがつらい、歩く距離が短くなった
- ひざが曲がりきらない、伸びきらない、O脚になってきた
- 手指の関節が太くなった、物をつかむと痛む
子供の症状
- 子どもでは変形性関節症はまれです。子どもの関節の痛みは、けが、生まれつきの関節の形、炎症を起こす別の病気などが原因のことが多く、自己判断せず小児科や整形外科に相談してください。
- 子どもが関節の痛みで歩きたがらない、患部をさわられるのを嫌がる、熱がある場合は、早めに受診してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では、痛みが長く続くことで歩く距離が短くなり、足腰の筋力が落ちやすくなります。その結果、転びやすくなることがあります。
- 痛み止めを常用している、腎臓や心臓、胃の病気がある、ほかの薬をたくさん飲んでいるという方は、薬について自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
- 「年のせい」と決めつけず、装具や杖、手すりなどの道具も上手に使うことが、安全に動き続けるコツです。
原因
主な原因
- 関節の軟骨が長い時間をかけてすり減り、修復が追いつかなくなること。加齢に伴う変化が中心です。
- 関節にかかる力のバランスが偏ること(O脚、体重が多い、重い物を運ぶ動作の繰り返しなど)
- 過去のけが(半月板(はんげつばん)やじん帯の損傷、骨折など)がきっかけになること
- 遺伝的な体質や、関節の形の生まれつきの特徴
- 関節の炎症を伴う別の病気が関係している場合
リスク要因
- 年齢(40〜50歳以降で増える)
- 女性であること
- 体重が多いこと(ひざや股関節への負担が大きくなります)
- 過去の関節のけがや手術
- 立ち仕事、重い物を持つ仕事、しゃがむ姿勢の多い仕事
- 運動不足で太ももやおしりの筋肉が弱いこと
- 親やきょうだいに変形性関節症の人がいること
- 生まれつきのO脚・X脚など、脚の形の特徴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 関節が赤く腫れて熱を持ち、発熱や悪寒がある(できるだけ当日に受診してください)
- けがのあと、関節が変形している、体重をかけられない、動かせない
- 患部や足先の感覚がない、色が悪い、冷たい
- 痛みが急に強くなり、夜も眠れないほどになった
定期受診を予約すべき場合:
- 関節の痛みやこわばりが2〜3週間以上続いている
- 朝のこわばりが30分以上続く、または何度も腫れを繰り返す
- 階段の上り下り、正座、靴下をはくといった動作がつらくなってきた
- 痛みのせいで歩く距離が短くなった、外出を控えるようになった
- 市販の痛み止めを使っても改善しない、使い続ける量が増えている
- 手指の関節が太くなり、物をつかむのがつらい
診断
まず問診と診察で、どの関節が、どんなときに、どれくらい痛むのか、动き始めの痛みやこわばりの有無、生活や仕事の様子を聞きます。そのうえで関節の形、腫れ、動く範囲、圧痛(押したときの痛み)を診察し、必要に応じてレントゲンなどの画像検査を行います。血液検査で別の病気(関節リウマチなど)との区別をすることもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(痛みの出方、生活動作、仕事や運動の状況)
- レントゲン検査(軟骨の減り具合、骨の変化、関節の隙間をみます)
- 超音波(エコー)検査(関節の水がたまっていないか、炎症の有無)
- MRI検査(軟骨や半月板、じん帯の状態を詳しくみたいとき)
- 血液検査(炎症を伴う別の病気との区別のため)
- 関節液(かんせつえき)の検査(腫れが強いとき、感染や結晶による炎症を調べるため)
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で、痛むところを動かしたり押したりします。レントゲンは痛みのない検査で、数分で終わります。検査の結果は多くの場合その日のうちに説明を受けられます。「どこまで進んでいるか」だけでなく、「今の体で何ができるか」を一緒に考えるのが診療の目的です。遠慮せず、日常生活で困っていることを具体的に伝えてください。
治療
変形性関節症の治療は、大きく「運動と生活の工夫」「薬や装具などによる痛みのコントロール」「手術」に分かれます。中心になるのは運動と生活の工夫です。痛みが強い時期は無理をせず、状態が落ち着いてきたら少しずつ動く量を増やす、という流れで進めます。手術は、運動や薬で生活の支障が改善しない場合に検討される選択肢のひとつです。
自宅でのセルフケア
- 痛みの少ない範囲で、毎日少しずつ動く。ひざや股関節が楽なのは、歩く・自転車(サドル高め)・水中ウォーキング・椅子に座ってのストレッチなどです。
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))とおしりの筋肉を、椅子からゆっくり立ち上がる動作などで鍛える。痛みが増さない回数から始めましょう。
- 痛い日は休み、よい日に動く。1週間単位で調整してよい、と考えておくと続けやすくなります。
- 体重を適正に近づける。少し減らすだけでも関節への負担は軽くなります。極端な食事制限は筋肉を落とすので避けましょう。
- 杖、手すり、滑りにくい靴、低めの椅子、浴室のいすなど、道具の力を借りる。使うことは弱さではなく工夫です。
- 長時間の正座・しゃがみ込み・階段の昇り降りを減らす、荷物は両手で分けて持つなど、動作のやり方を変える。
- 温める・冷やすは好みでかまいません。気持ちよく感じるほうを、15〜20分ほど目安に。
- 急に運動量を増やさない(「週に10%まで」を目安に、少しずつ増やすのがおすすめです)。
医療治療
医師は症状に合わせて、痛みや炎症を和らげる薬(飲み薬・塗り薬・貼り薬)、関節に注射する治療、装具やサポーター、杖の使用などを組み合わせます。どの治療をどのくらい使うかは、年齢、ほかの病気、飲んでいる薬、生活の状況によって変わります。妊娠中・授乳中の方、腎臓・心臓・胃に病気がある方、ほかの薬を飲んでいる方は、必ず医師と薬剤師に伝えてください。薬は自己判断で量を増やしたり、長期間使い続けたりせず、効果と副作用を定期的に確認しましょう。理学療法士(りがくりょうほうし)による運動指導や、運動療法のプログラムが利用できる場合もあります。痛みの感じ方には気持ちの面も影響するため、睡眠やストレスへのケアも治療の一部として大切にされます。
手術が検討される場合
手術は、十分に運動や薬などの治療を続けても、強い痛みで眠れない、歩くのが難しいといった状態が続き、日常生活に大きな支障がある場合に検討されます。人工関節(じんこうかんせつ)に置き換える手術や、関節の負担を減らす手術など、いくつかの方法があります。年齢だけで決まるものではなく、体の状態、生活スタイル、本人の希望をふまえて、医師とよく相談して決めるものです。手術をしない選択も、その時点で手術を急がない選択も、尊重されます。
この病気と共に生きる
「今日はどこまで動けるか」を毎日少しずつ試しながら、自分のペースを作っていくのが現実的な付き合い方です。家の中の動線を整える、よく使う物を手の届く高さに置く、椅子を使う、買い物は一度に抱えずカートを使うなど、小さな工夫の積み重ねが負担を減らします。痛みの記録(いつ・何をしたときに・どのくらい)を数週間つけてみると、自分に合う動き方が見えてきます。
生活習慣のアドバイス
- 週に数回、無理のない範囲で有酸素運動(歩く、自転車、水中運動など)を続ける
- 週に2〜3回、太もも・おしり・体幹の筋力トレーニングを少しずつ
- 毎日、痛みの少ない範囲で関節を動かすストレッチ
- 長時間同じ姿勢を避け、30〜60分ごとに立つ・歩く
- 睡眠を十分にとる(疲れと痛みは関係しています)
- 喫煙は回復や全身の健康に不利なので、禁煙を検討する
- 仕事や家事の負担を家族や同僚に伝え、分担する
食事と運動
食事は特別な「関節に効く食品」に頼るより、バランスよく食べて体重を適正に近づけることが大切です。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品)、野菜、海藻、きのこなどを毎日の食事に取り入れ、極端な糖質制限や偏った食事は避けましょう。カルシウムとビタミンDを意識すると骨の健康にも役立ちます。運動は「痛みが2時間以上残る量」はやりすぎのサイン。翌日に響かない程度から始め、慣れてきたら少しずつ増やしてください。厚生労働省の身体活動・運動に関するガイドラインも参考になります。水中ウォーキングやエアロバイクなど、体重の負担がかかりにくい運動は始めやすい方法です。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと、眠れない、気分が落ち込む、外出がおっくうになる、人に会うのがつらくなる、ということが起こりえます。これは弱さではなく、痛みと付き合う中でよくある反応です。痛みと気分は互いに影響し合うため、気持ちのケアも体のケアと同じくらい大切です。つらい気持ちが2週間以上続く、何をしても楽しめない、眠れない日が続くといったときは、医師や看護師、地域の相談窓口、公的な相談電話などに早めに話してください。気持ちが追い詰められて「消えたい」と感じたときは、ひとりで抱えず、すぐに医療機関や地域の緊急の相談窓口、または救急(119)に連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しい病気ですが、痛みが出るのを遅らせたり、進行をやわらげたり、動ける状態を長く保ったりすることは十分に可能です。若い頃からの体重管理、定期的な運動で足腰の筋力をつけておくこと、けがを防ぐこと(準備運動、無理な動作を避ける、転倒予防)が役立ちます。すでに症状がある人も、今から始めることに意味があります。
検診プログラム
変形性関節症そのものを早期に見つける公的な健診はありません。ただし、自治体の健康診査や介護予防のための運動機能チェック、特定健診などで体重・血圧・血糖などを確認することは、関節への負担を減らすうえで役立ちます。気になる痛みや動きにくさがあれば、健診を待たずに整形外科などに相談してください。
合併症
治療しない場合
- 痛みを避けて動かなくなることで筋力が落ち、関節への負担がさらに増える悪循環
- 関節の変形が進み、歩ける距離や動く範囲が狭くなる
- 転びやすくなり、骨折などのけがのリスクが上がる
- 睡眠の乱れ、疲れやすさ、気分の落ち込み
- 外出や仕事、趣味、人との交流が減り、生活の満足度が下がる
- 痛み止めを自己判断で使い続けることによる、胃や腎臓などへの負担
長期的な見通し
変形性関節症は、多くの人にとって「つきあいながら暮らしていける病気」です。レントゲンの変化が大きくても痛みが軽い人もいれば、その逆もあります。運動と生活の工夫、必要なときの医療の助けを組み合わせることで、痛みは和らぎ、できることは増えていきます。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ自分のペースをつくっていく——それが現実的で、希望のある付き合い方です。
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最終更新: 2026年10月24日
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