糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)ってどんな病気?
概要
糸球体腎炎は、腎臓のなかにある「糸球体(しきゅうたい)」という小さなろ過装置に炎症が起きる病気です。糸球体は、血液中の老廃物や余分な水分をこしとって尿を作る、髪の毛より細い血管の束のような場所です。ここに炎症が起きると、ふつうは体に残しておきたいタンパク質や赤血球が尿にもれてしまったり、水分をうまく排泄できずに体がむくんだりします。症状の出方や進み方は、原因やタイプによって大きく異なります。
重要な事実
- 腎臓には糸球体が約100万個あり、血液をろ過して尿を作る役割を担っています。
- 尿に血が混じる(血尿)、尿が泡立つ(タンパク尿)、まぶたや手足のむくみが主なサインです。
- 原因は免疫の異常、感染症のあとの反応、全身の病気の一部などさまざまで、タイプごとに治療方針が変わります。
- 早期に見つけて適切に管理すれば、腎臓の働きを長く保てる場合が多くあります。
糸球体腎炎は非常にまれな病気ではありませんが、タイプによって頻度は大きく異なります。日本ではIgA腎症(アイジーエーじんしょう)というタイプが慢性の糸球体腎炎として最も多いとされています。小児にも大人にもみられます。
子どもから高齢者まで、どの年代でも起こりえます。IgA腎症は10〜30代に多いとされますが、健康診断の尿検査で初めて見つかるなど、症状がないまま大人になってわかることも少なくありません。
症状
- 息が苦しい、横になると呼吸が苦しくて眠れない
- 意識がもうろうとしている、けいれんが起きた
- 尿が半日以上まったく出ない
- 全身がひどくむくみ、呼吸が苦しい
- 突然の激しい頭痛、胸の痛み、ろれつが回らない
- ⚠コーラ色や赤い尿が続く
- ⚠まぶたや足のむくみが数日続く、どんどん強くなる
- ⚠尿の量が明らかに減った
- ⚠体重が数日で急に増えた
- ⚠発熱と腰の痛み、排尿時の痛みがある
- ⚠健康診断で尿タンパクや血尿を指摘された
一般的な症状
- 尿がコーラ色・紅茶色・赤みを帯びる(血尿)
- 尿が泡立つ、泡が消えにくい(タンパク尿)
- 朝起きたときにまぶたがむくむ
- 手足や顔のむくみ、数日で体重が急に増える
- だるさ、疲れやすさ、食欲の低下
- 血圧が高くなる
- 尿の量が減る、夜中に何度もトイレに行く
子供の症状
- かぜやのどの痛みのあと、数日〜数週間してコーラ色の尿が出る
- まぶたや顔のむくみが目立つ、朝に強い
- 腹痛、吐き気、発熱をともなうことがある
- むくみが強いときは、体がだるく動きにくくなる
高齢者の症状
- むくみや息切れ、疲れやすさが目立つ
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 夜間のトイレの回数が増える
- 症状がはっきりせず、健診の尿検査で初めて見つかることも多い
- 血圧の上昇や、もともとの持病の悪化として気づかれることがある
原因
主な原因
- 免疫の働きの異常により、糸球体に炎症が起きるもの(IgA腎症など)
- 細菌やウイルスによる感染症のあとに、免疫の反応として起こるもの(溶連菌感染後など)
- 血管炎など、体全体の病気の一部として糸球体が障害されるもの
- 遺伝的な体質によるもの(アルポート症候群など)
- 一部の薬や、他の病気にともなって起こるもの
リスク要因
- 家族に腎臓の病気の人がいる
- のどの痛みや皮膚の感染症にかかったあと
- 自己免疫の病気(関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど)がある
- 糖尿病や高血圧など、腎臓に負担をかける病気がある
- 鎮痛薬などを長期間、自己判断で使い続けている
- 喫煙、肥満、塩分の多い食事などの生活習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- コーラ色・赤い尿が続く、または繰り返す
- まぶたや手足のむくみが数日続く、強くなる
- 尿の量が減っている、ほとんど出ない
- 発熱、腰の痛み、排尿時の痛みがある
- 健診で尿タンパクや血尿を指摘され、再検査の指示がある
定期受診を予約すべき場合:
- 尿が泡立つことが増えた気がする
- 最近、血圧が高めだと言われた
- だるさやむくみが続いているが、生活に支障はない
- 家族に腎臓の病気の人がいて心配
- かかりつけ医に相談したいと思ったとき
診断
まずは尿検査で、尿に血やタンパク質がもれていないかを調べます。同時に血液検査で腎臓の働きを確認し、血圧の測定や腹部の超音波検査を行います。原因やタイプをはっきりさせるために、腎生検(じんせいけん)という、腎臓の組織を針で少し採取して顕微鏡で調べる検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(血尿・タンパク尿の有無、尿の沈査を顕微鏡で観察)
- 血液検査(腎臓の働きをみる数値、免疫に関する数値など)
- 血圧測定、体重測定
- 腹部超音波検査(腎臓の大きさや形を確認)
- 腎生検(入院して行うことが多く、組織を詳しく調べる検査)
- のどの細菌検査など、先行する感染症を調べる検査
診察で予想されること
外来での尿検査・血液検査は数分で終わり、結果はその日のうちか数日以内にわかることが多いです。腎生検は入院が必要な場合が多く、数日で退院できることが一般的です。検査結果が出るまでに少し時間がかかるので、その間に不安になったら遠慮なく医療者に質問してください。
治療
治療の目的は、糸球体の炎症をしずめ、腎臓の働きが低下していくのをできるだけ抑えることです。タイプや症状の強さによって方針が変わるため、同じ病名でも人によって治療内容は異なります。症状が軽い場合は、定期的な検査で様子をみながら生活の工夫を続けることもあります。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えめにし、加工食品や汁物の回数を意識して減らす
- 水分は医師の指示に従ってとる(むくみがあるときは制限が必要なことがある)
- 禁煙する
- 適正体重を保ち、急な体重変化に気をつける
- 自宅で血圧を測り、記録しておく
- 風邪や感染症を予防するため、手洗い・うがいを習慣にする
- 疲れをためず、睡眠をしっかりとる
- 市販の鎮痛薬などを自己判断で長く使わない(腎臓に負担をかけることがあります)
- 毎日の尿の色や泡立ち、むくみの変化をメモしておく
医療治療
治療は、炎症をしずめるための治療、血圧を適正に保つ治療、尿のタンパク質を減らす治療、むくみをとる治療などを組み合わせて行われます。原因が感染症のあとの反応であれば、体が自然に回復するのを支える治療が中心になることがあります。免疫の働きを調整する治療や、血圧を下げる治療が用いられることもありますが、内容は医師が病状に合わせて判断します。薬の種類や量についての疑問は、必ず処方した医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
通常、糸球体腎炎そのものに対する手術は行いません。ただし、原因を詳しく調べるための腎生検という検査で、針を刺して組織を採取する処置を行うことがあります。これは治療ではなく診断のための処置です。
この病気と共に生きる
糸球体腎炎は、長く付き合っていく病気になることがあります。毎日の尿の状態や血圧を記録し、体調の変化に早く気づけるようにしておくと安心です。通院の予定をカレンダーに入れておく、検査結果を一冊のノートにまとめておくといった工夫も役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 減塩を中心とした食事の工夫を続ける
- 禁煙し、受動喫煙も避ける
- 適度な運動を無理のない範囲で続ける
- 十分な睡眠と休息をとる
- 風邪や感染症にかからないよう手洗い・うがいを徹底する
- ストレスをためすぎず、気分転換の時間をつくる
- 市販薬や健康食品を始める前に、必ず医師や薬剤師に相談する
食事と運動
食事は塩分を控えめにするのが基本です。加工食品、漬物、汁物、外食の回数を意識して減らすと取り組みやすくなります。必要に応じて、タンパク質やカリウムの量を調整することがあるので、自己判断で極端な食事制限をせず、医師や管理栄養士に相談してください。運動は散歩や軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度を続けるのがおすすめです。むくみが強いときや体調がすぐれないときは無理をせず休みましょう。
精神的健康と心の健康
長く続く通院や検査、食事の制限は、知らず知らずのうちに心の負担になることがあります。不安や落ち込み、イライラを感じるのは自然なことです。ひとりで抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。気持ちのつらさが続くときは、医療機関の相談窓口や、地域の健康相談、信頼できる相談支援サービスを利用することも大切です。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに医療機関や救急の相談窓口に連絡してください。
予防
糸球体腎炎のすべてを予防することはできませんが、腎臓への負担を減らし、早く見つけることはできます。感染症にかからないようにする、血圧や血糖を適正に保つ、禁煙する、市販の鎮痛薬を自己判断で長く使わない、といったことが大切です。健康診断の尿検査を毎年受けることも早期発見につながります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などのワクチンは、感染症を防ぎ、腎臓への負担を減らす可能性があります。接種の可否や時期については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
健康診断の尿検査(尿タンパク・尿潜血)は、自覚症状のない糸球体腎炎を見つける大切な機会です。異常を指摘されたら、症状がなくても再検査を受けましょう。糖尿病や高血圧がある方は、定期的な腎臓の検査を続けることが勧められます。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の働きが少しずつ低下し、慢性腎臓病に進むことがある
- 尿に大量のタンパク質がもれるネフローゼ症候群になることがある
- 血圧が高くなり、心臓や血管への負担が増える
- むくみや息切れなど、日常生活に影響する症状が出る
- 進行すると腎臓の働きを補う治療(透析など)が必要になることがある
長期的な見通し
糸球体腎炎と聞くと不安になるかもしれませんが、多くのかたは適切な管理によって長く安定した生活を送っています。早期に見つかり、定期的な通院と生活の工夫を続けられれば、腎臓の働きを保てる可能性は十分にあります。病状や経過には個人差が大きいため、自分の見通しについては担当の医師に遠慮なく尋ねてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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