滲出性中耳炎(グルーイヤー)
概要
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、鼓膜(こまく)のすぐ内側にある「中耳(ちゅうじ)」という小さな空間に、液体がたまった状態です。英語では「グルーイヤー(glue ear=にかわのような耳)」と呼ばれます。液体がたまると鼓膜がうまくふるえなくなり、音が聞こえにくくなります。多くは痛みや熱がなく、「なんとなく聞こえにくい」「耳がつまった感じがする」という形で気づかれます。
重要な事実
- 鼓膜の奥に液体がたまり、聞こえが悪くなる状態です。
- 痛みや発熱はほとんどなく、気づきにくいことが多いです。
- 多くは数か月のうちに自然に良くなります。
とてもよくある病気です。子どもの難聴の原因として最も多いもののひとつで、2〜5歳ごろに特に多くみられます。
幼稚園・保育園に通う年齢の子どもによく起こります。かぜをひきやすい子、アレルギー性鼻炎のある子、たばこの煙を吸ってしまう環境(受動喫煙)にいる子に多いとされています。大人にも起こり、その場合は鼻やのどの病気が関係していることがあります。
症状
- 意識がぼんやりする、けいれんがある
- 首が硬くて前に曲げにくい、激しい頭痛がある
- 耳の後ろが大きく腫れて赤くなり、触ると痛い(まれですが重い合併症のサインです)
- 顔の片側が動きにくい、まぶたが閉じにくい
- ⚠耳から膿(うみ)や血が出る
- ⚠急に聞こえなくなった
- ⚠強い耳の痛み、38℃以上の発熱
- ⚠耳の後ろの腫れ・赤み
- ⚠ぐったりしている、水分がとれない
一般的な症状
- 聞こえが悪い、聞き返しが多い
- 耳がつまった感じ、耳に水が入ったような感じ
- テレビやスマートフォンの音が大きくなる
- 静かな場所では聞こえるのに、騒がしい場所では聞き取りにくい
- 耳鳴り(キーン、ジーという音)
- ふだんは痛みや熱がないことが多い
子供の症状
- 呼びかけに反応しない、何度も聞き返す
- 言葉が遅い、発音がはっきりしない
- テレビの音量が大きい
- 幼稚園や学校でぼんやりしている、集中できない
- 音への反応が乏しい、耳をよくさわる
- いびきをかく、口を開けて寝る(鼻やのどの病気が関係していることがあります)
高齢者の症状
- 片方の耳だけ聞こえにくい、耳がふさがった感じ
- 自分の声が頭の中で響く感じ
- 鼻水・鼻づまりやアレルギー性鼻炎と一緒に起こることが多い
- めまいを伴うことは少ないですが、あれば早めに受診してください
原因
主な原因
- かぜ(上気道炎)のあとに、鼻とのどをつなぐ「耳管(じかん)」という細い管が腫れて詰まり、中耳の空気が入れかわらなくなること
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(ふくびこうえん=鼻の奥の炎症)で鼻の通りが悪くなること
- 乳幼児は耳管が短くて水平なため、鼻の炎症が中耳に伝わりやすいこと
- 中耳炎をくり返したあとに液体が残ること
- アデノイド(鼻の奥のリンパ組織)が大きいこと
リスク要因
- 集団保育(幼稚園・保育園)に通っている
- 受動喫煙(家族のたばこの煙)
- アレルギー性鼻炎、喘息
- 顔やのどの形に生まれつき特徴がある場合
- 免疫の働きが弱い場合
- かぜの多い秋〜冬の季節
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 耳から膿や血が出る
- 急に聞こえなくなった
- 強い耳の痛みや高い熱がある
- 耳の後ろが腫れている、赤い
- ぐったりしている、水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 聞こえが悪い状態が2〜3週間以上続く
- テレビの音量が大きくなった、聞き返しが増えた
- 言葉の発達が気になる
- 耳がつまった感じが続く
診断
耳鼻咽喉科(耳鼻科)で、問診と耳の診察を行います。鼓膜の色や形をみるだけでなく、鼓膜の動きを調べる検査や聴力検査で、液体がたまっているかどうか、聞こえがどのくらい落ちているかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 耳鏡(じきょう)検査:耳の中をのぞいて鼓膜の色・形・動きをみます
- ティンパノメトリー:耳に小さな圧をかけて、鼓膜の動きやすさを調べる検査
- 聴力検査(純音聴力検査):小さい音がどのくらい聞こえるかを調べます
- 必要に応じて、鼻やのどの診察、アレルギーの検査
診察で予想されること
検査はどれも短時間で、ほとんど痛みはありません。子どもがじっとできないときは、時間をおいて再検査することもあります。結果によっては、数か月間の経過観察や、鼻の治療をすすめられることがあります。
治療
滲出性中耳炎は、まず「自然に治るのを待つ」ことが基本です。多くの場合、数か月で液体は吸収されます。同時に、鼻づまりやアレルギーなど、原因になっている状態の治療を進めます。聞こえの程度や言葉の発達への影響をみながら、必要に応じて手術を検討します。
自宅でのセルフケア
- 鼻はやさしくかむ(強くかむと耳に圧がかかります)
- たばこの煙を避ける(家庭内は完全禁煙が理想です)
- かぜをひいたら、加湿・水分補給・十分な睡眠で鼻のケアをする
- 耳に水が入らないようにする(プールは医師に相談してください)
- テレビの音量を上げすぎず、静かな環境で話しかける
- 気になる症状をメモして受診時に伝える
医療治療
治療の中心は「経過観察」です。鼻やアレルギーの状態を整えることで、耳管の通りが良くなり、液体が抜けやすくなります。細菌感染が原因でないことが多いため、抗菌薬が効かないことも多く、漫然と使うことはすすめられません。鼻の処置や、鼻に空気を送る訓練(医師の指導のもとで行う方法)が使われることもあります。症状が長引く場合は、鼓膜に小さな穴をあけて液体を抜く、または換気用の小さなチューブを入れる手術が検討されます。薬の名前や量については、必ず担当の医師・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
3〜6か月ほど経過をみても聞こえが良くならない、言葉の発達に影響が出ている、鼓膜の形が変わりつつある、中耳炎をくり返している、といった場合に手術が検討されます。手術は日帰りや短期入院で行われることが多く、担当医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
聞こえにくさは見た目ではわかりにくいため、まわりの理解が大切です。話すときは正面から、ゆっくり、はっきりと。騒がしい場所を避け、必要なら筆談やジェスチャーも使います。保育園・幼稚園・学校の先生に状況を伝え、席の位置や声のかけ方を工夫してもらうと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 家庭内禁煙、受動喫煙を避ける
- かぜやインフルエンザの予防(手洗い、換気、予防接種)
- アレルギー性鼻炎の管理
- 鼻を強くかまない。鼻うがいは医師に相談する
- 睡眠を十分にとる
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事、水分、十分な睡眠を心がけましょう。運動はふだんどおりで構いませんが、鼓膜に穴があいたりチューブが入っていたりする場合は、プールやダイビングについて医師に確認してください。
精神的健康と心の健康
聞こえにくいと、会話についていけず疲れやすくなったり、いらいらしたり、集団から浮いた感じを持つことがあります。子どもは友人関係で傷つくこともあります。保護者の方も心配が続き、負担を感じることがあります。これは自然なことです。不安が強いときは、遠慮なく医療者や学校・園の先生、自治体の相談窓口に話してください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口やかかりつけ医に相談しましょう。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。かぜをひきにくい生活、受動喫煙を避けること、鼻やアレルギーの治療が大切です。
ワクチン
インフルエンザ、肺炎球菌、ヒブ(インフルエンザ菌b型)などのワクチンは、中耳炎を含む耳の感染症を減らすのに役立つといわれています。接種スケジュールはかかりつけ医や自治体の案内で確認してください。
検診プログラム
日本では乳幼児健診や学校の健康診断で聴力の確認が行われます。気になる聞こえの変化があれば、健診を待たずに耳鼻咽喉科で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 聞こえが悪い状態が続き、言葉の発達や学習に影響することがある
- 鼓膜が薄くなったり、へこんだまま固まったりする(癒着性中耳炎)
- まれに、鼓膜の奥に皮膚のような塊ができる病気(真珠腫)につながることがある
- 中耳炎をくり返しやすくなる
- 聞こえにくさから、会話や集団生活に疲れやすくなる
長期的な見通し
多くは数か月から1年ほどのうちに自然に良くなります。経過観察や必要な治療を続けることで、ほとんどの子どもは問題なく成長します。長引く場合も、手術や聞こえのサポートなど選択肢があります。心配なときは早めに相談してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.