グルテンフリーの食事(グルテン除去食)
概要
グルテンフリーの食事とは、グルテンというたんぱく質を食べ物から取り除く食事のことです。グルテンは小麦・大麦・ライ麦などに含まれ、パンやパスタ、うどん、ビールなどの原料にもなっています。この食事は、グルテンを食べると体に症状が出てしまう人にとって、症状を減らし体を守るための大切な方法です。ただし「なんとなく体に良さそう」という理由だけで誰もが行う必要はなく、必要かどうかは検査を受けて判断することが大切です。
重要な事実
- グルテンは小麦・大麦・ライ麦に含まれるたんぱく質で、パン・麺・菓子・調味料など多くの食品に入っています。
- グルテンを避ける必要がある代表的な状態には、セリアック病(グルテンで小腸が傷つく病気)、小麦アレルギー、非セリアックグルテン感受性(検査では異常が出ないが症状が出る状態)があります。
- 日本では、米粉・とうもろこし・じゃがいも・米・そば(純粋なもの)など、もともとグルテンを含まない食材が多く、和食を中心にすれば続けやすい食事でもあります。
セリアック病は日本では比較的めずらしいとされていますが、海外(特にヨーロッパ系の人の多い地域)では多くみられます。一方、小麦アレルギーは子どもを中心に日本でもよくみられます。非セリアックグルテン感受性は、はっきりとした頻度はまだよく分かっていません。近年は「グルテンフリー」という言葉が広く知られるようになりましたが、実際に必要な人は限られています。
グルテンを避ける食事が必要になるのは、主に次のような人です。セリアック病と診断された人、小麦アレルギーのある人、非セリアックグルテン感受性と判断された人。セリアック病は家族歴のある人、1型糖尿病や甲状腺の自己免疫疾患など他の自己免疫疾患のある人にやや多くみられます。年齢を問わず起こりますが、小麦アレルギーは乳幼児期に多く、成長とともに軽くなることがあります。
症状
- 小麦を食べたあとに、のどが腫れる・息が苦しい・声が出にくい(アナフィラキシーの可能性)
- 全身に強いじんましんが出て、めまいや意識がもうろうとする
- 顔や唇が大きくはれる、飲みこみが難しい
- ぐったりして反応が弱い、または意識がない
- ⚠はげしい腹痛が続く、または痛みがどんどん強くなる
- ⚠何度も呕吐(おうと)して水分がとれない、尿が極端に少ない(脱水のサイン)
- ⚠血が混じった便、または黒い便が出る
- ⚠急な体重減少と強い疲労で日常生活が保てない
一般的な症状
- おなかの張り、ガス、腹痛
- 下痢や便秘、またはその繰り返し
- 食後のだるさ、疲れやすさ
- 体重が減る、食欲がない
- 貧血(めまい・息切れ・顔色が悪い)
- 口の中の繰り返す口内炎
- 皮膚のかゆみを伴うぶつぶつ(肘・膝・おしりなどに出やすい)
- 頭痛や集中しにくさ
子供の症状
- 体重が増えない、身長の伸びが悪い
- 繰り返す下痢や呕吐(おうと)、おなかの張り
- 不機嫌、よく泣く、元気がない
- 成長の遅れや思春期の遅れ
- 歯のエナメル質の異常(大人になってから気づくこともあります)
高齢者の症状
- はっきりしたおなかの症状が少なく、貧血や疲れやすさで気づくことがある
- 骨がもろくなる(骨粗しょう症)
- 手足のしびれやぴりぴり感
- 体重減少、食欲低下
- 気分の落ち込みや集中力の低下
原因
主な原因
- セリアック病:体の免疫がグルテンを敵とみなし、小腸の表面(栄養を吸収する部分)を傷つけてしまう自己免疫の病気です。遺伝的な体質が関わっています。
- 小麦アレルギー:小麦に含まれるたんぱく質に対するアレルギー反応で、じんましん・湿疹・息苦しさなどが起きます。
- 非セリアックグルテン感受性:検査ではセリアック病やアレルギーの所見が出ないのに、グルテンをとると症状が出て、やめると楽になる状態です。
- 小麦に含まれる別の成分(発酵性の糖質など)によるおなかの不調:グルテンそのものではなく、腸内でガスを生みやすい成分が原因のことがあります。
リスク要因
- 家族にセリアック病の人がいる
- 1型糖尿病、甲状腺の自己免疫疾患など他の自己免疫疾患がある
- 小さいころからアレルギー体質がある(小麦アレルギー)
- 抗生物質の使用や感染症など、腸内環境の変化があった(症状が出やすくなるきっかけになることがあります)
- 強いストレスや体調の変化をきっかけに症状が現れることがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 小麦を食べたあとに息苦しさ・のどの腫れ・全身のじんましんが出た(すぐに119番へ)
- はげしい腹痛、血便、何度も呕吐して水分がとれない
- 急に体重が減り続けている、立てないほど強い疲労がある
定期受診を予約すべき場合:
- 食後や毎日決まったようにおなかの張り・下痢・便秘が続いている
- 理由が分からない貧血や疲れやすさが続いている
- 食事を変えると調子が良くなる気がするので、自分に合っているか確かめたい
- 家族にセリアック病の人がいて、自分も検査を受けたい
- 子どもが成長しない、おなかの不調が続く
診断
診断は、問診(症状と食事の内容の聞き取り)と血液検査、必要に応じて内視鏡による小腸の組織検査を組み合わせて行います。大切なポイントは、検査を受ける前に自分でグルテンをやめてしまわないことです。グルテンをとった状態でないと、セリアック病の変化が検査に現れにくくなるためです。小麦アレルギーが疑われる場合は、アレルギーの検査を行います。非セリアックグルテン感受性は、他の病気を除外したうえで、グルテンをやめる・戻すを繰り返して症状を確かめて判断します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:貧血や栄養不足の有無、セリアック病に関係する抗体(免疫の反応を示す物質)の値を調べます
- 内視鏡検査(胃カメラの延長で小腸の一部を観察):小腸の粘膜を少し採取して、傷ついていないかを顕微鏡で調べます
- 皮膚の症状がある場合の皮膚の一部採取検査
- 小麦アレルギーが疑われる場合のアレルギー検査(血液検査や、医師の管理下での食物負荷試験)
- 症状の記録(食事日記)と、グルテンを除く・戻すことでの症状の変化の確認
- 骨密度検査や栄養状態の検査(必要に応じて)
診察で予想されること
検査は外来で行えるものが多く、血液検査はその日のうちに終わります。内視鏡検査は日帰りで受けられることが一般的で、事前の食事の制限や鎮静剤を使う場合があります。結果が出るまでに数日から2週間ほどかかることがあります。診断がつくまでは食事を大きく変えず、医師の指示に従ってください。診断がはっきりすると、何をすればよいかが具体的に見えてきます。
治療
治療の中心は「原因になるものを避けること」です。セリアック病と非セリアックグルテン感受性では、グルテンを完全に除く食事を続けることが基本になります。小麦アレルギーの場合は、小麦を避けることに加えて、誤って食べてしまったときの対応をあらかじめ医師と決めておきます。あわせて、不足しがちな栄養素を補い、腸の回復を支えます。どの場合も、ひとりで抱え込まずに管理栄養士のサポートを受けると続けやすくなります。
自宅でのセルフケア
- 食品表示を確認する習慣をつける(日本では「小麦」は表示が義務づけられたアレルギー表示対象で、パッケージで確認できます)
- しょうゆ・味噌・だし・ルウ・ソースなど、調味料や加工食品にも小麦が使われていることがあるので確認する
- 外食時は、素材や調理法を店に確認する。揚げ油や調理器具を共用していると少量混ざることがある
- 食事日記をつけて、症状と食べたものの関係を記録する
- 米粉・とうもろこし粉・じゃがいも粉などの代わりの食材を上手に使う
- 栄養の偏りを防ぐため、肉・魚・卵・大豆・野菜・果物・乳製品などをバランスよくとる
- 不安や迷いが出たら、自己流で判断せず管理栄養士や医師に相談する
医療治療
セリアック病に「これを飲めば治る」という治療薬は現在のところ一般的ではなく、グルテンを除く食事が治療の中心です。医師は、貧血やビタミン・ミネラルの不足に対して、不足を補うための栄養の補充を提案することがあります。腸の回復具合や栄養状態を定期的に確認します。小麦アレルギーの場合は、誤食に備えた対応をあらかじめ医師と相談して決めておきます。妊娠を考えている人、骨密度が低い人、子どもでは、成長を見ながら定期的なフォローを行います。治療の内容は人によって異なるため、必ず担当医の指示に従ってください。
手術が検討される場合
グルテン関連の状態で手術が必要になることは通常ありません。ただし、ごくまれに合併症が起きた場合など、専門医が個別に判断することがあります。
この病気と共に生きる
グルテンフリーの生活は、最初は「食べられるものが少ない」と感じて不安になるかもしれません。でも、米・もち米・米粉、とうもろこし、じゃがいも、肉・魚・卵・大豆製品、野菜・果物、純粋なそば粉など、選べる食材はたくさんあります。和食はもともと小麦が少ない食事なので、工夫次第で無理なく続けられます。買い物のときに表示を見る習慣がつくと、だんだん迷わなくなります。
生活習慣のアドバイス
- 買い物は、原材料表示をゆっくり確認できる時間帯に行くと負担が少ない
- 自分の食べられる食品リストを作って冷蔵庫に貼っておく
- 家族や同居する人に、調理器具やトースターを分けるなどの協力をあらかじめ頼んでおく
- 外食前に店の情報を調べたり、电话で確認したりしておく
- 旅行や出張のときは、食べられる非常食を持参する
- 定期的に通院して栄養状態を確認する
- 同じ悩みを持つ人の集まりや患者会の情報を、主治医や地域の保健所で聞いてみる
食事と運動
食事は、グルテンを避けることだけに集中すると栄養が偏りやすくなります。主食は米や米粉を上手に使い、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)、野菜、果物、乳製品などをバランスよくとりましょう。食物繊維や鉄分、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB群が不足しやすいといわれるため、必要に応じて医師に相談してください。運動は、体調に合わせて無理のない範囲で行います。貧血や強い疲労があるときは、激しい運動を始める前に医師に相談しましょう。ウォーキングなど軽い運動は、腸の動きや気分の安定にも役立ちます。
精神的健康と心の健康
食事の制限は、思っている以上に心に負担をかけます。「みんなと同じものが食べられない」「外食がこわい」「表示を見るのが疲れる」と感じるのは自然なことです。落ち込みや不安が続くとき、食事のことを考えるのがつらいときは、ひとりで我慢せず、かかりつけ医や管理栄養士、地域の相談窓口に話してください。こころの不調が強いときは、医療機関で相談することが大切です。紧急に自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず119番、または地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
セリアック病や小麦アレルギーは、生活の工夫だけで完全に防ぐことは難しいとされています。ただし、次のことは大切です。症状があるのに自己判断でグルテンをやめると、検査が難しくなり、本当に必要な食事療法かどうか分からなくなります。気になる症状があるときは、食事を変える前に医師に相談してください。また、赤ちゃんの離乳食の進め方については、自己判断せず、母子健康手帳や健診、かかりつけの小児科医の指示に従いましょう。
ワクチン
グルテン関連の状態そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、感染症にかかると体調が崩れやすいため、年齢や体調に応じた予防接種をかかりつけ医と相談しておくことは大切です。
検診プログラム
症状のない人にグルテン関連の検査を一律に行うことは、現在の日本では一般的ではありません。ただし、家族にセリアック病の人がいる場合や、説明のつかない貧血・体重減少・骨粗しょう症が続く場合は、医師に相談することで検査が検討されます。健診の結果で気になる点があれば、その場で相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 栄養が吸収されにくくなり、貧血や体重減少、疲れやすさが続く
- 子どもの場合、成長や発達の遅れにつながることがある
- 骨がもろくなり、骨折しやすくなる
- 妊娠しにくくなる、または妊娠中のトラブルが増えることがある
- 手足のしびれや集中力の低下など、神経の症状が出ることがある
- ごくまれですが、長年未治療のセリアック病で腸の病気のリスクが上がることがある
長期的な見通し
多くのかたは、グルテンを除く食事を続けることで、数週間で体調の変化を感じ、数か月から数年かけて腸が少しずつ回復していきます。最初の数週間は慣れるまで大変でも、コツをつかめば日常に馴染んでいきます。自分に必要な食事かどうかを含め、主治医と一緒に進めていくことで、安心して生活を整えていけます。
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最終更新: 2026年10月24日
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