尿糖(にょうとう)〜尿に糖が出る、ということ
概要
尿糖とは、尿の中に糖(おもにブドウ糖)が通常より多く出てしまう状態のことです。ふだん、血液中の糖は腎臓(ろ過して尿を作るところ)でほとんどが体に戻されますが、血糖値(血液中の糖の量)が高くなりすぎると戻しきれず、尿にこぼれ出てきます。ただし、血糖値がふつうでも尿に糖が出る体質の人もいて、これは「腎性糖尿(じんせいとうにょう)」と呼ばれ、病気ではなく生まれつきの体質です。つまり尿糖は「結果のお知らせ」であり、それ自体が病気というわけではありません。
重要な事実
- 尿糖は健康診断の尿検査で見つかることが多いサインです。原因は血糖値が高いこと以外にもあります。
- 血糖値が正常なのに尿糖が出る「腎性糖尿」は体質によるもので、治療は必要ないことがほとんどです。
- 尿糖が出たときは、まず血糖値を測って原因を確かめることが大切です。自分だけで判断せず、医療機関に相談してください。
珍しいものではありません。健康診断の尿検査で尿糖が陽性になる人は少なくなく、その中には糖尿病の人もいれば、血糖値がまったく正常な腎性糖尿の人も含まれます。妊娠中に一時的に出ることもよくあります。
糖尿病のある人、血糖値が高めの人、妊娠中の人、腎性糖尿の体質の人、発熱や強いストレス、一部の薬の影響を受けている人などに起こります。年齢や性別を問わず見られますが、健康診断を受ける機会の多い40歳以上で見つかりやすい傾向があります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が悪い、ぐったりしている
- けいれんが起きた
- 呼吸が速く深い、息が果物のような甘いにおいがする
- ひどい脱水のサイン(口の中がカラカラ、尿がほとんど出ない、皮膚が乾いて弹力がない)
- 嘔吐をくり返して水分がとれない
- ⚠のどが異常に渇く、水を大量に飲む、尿の量が極端に多い
- ⚠短期間に体重がはっきり減った
- ⚠発熱や排尿時の痛みがある(尿路感染症の疑い)
- ⚠妊娠中に尿糖が陽性と言われた
- ⚠子どもが急におねしょをするようになり、体重が減っている
一般的な症状
- 尿糖そのものには自覚症状がほとんどありません。検査で初めて分かることが多いです。
- 血糖値が高い場合:のどが渇く、水をよく飲む、尿の回数や量が増える、夜中にトイレに起きる
- 疲れやすい、だるい、体重が減っていく(特に食べているのに減る)
- 傷が治りにくい、皮膚のかゆみ、膀胱炎など尿路の感染をくり返す
- 尿がべたつく、便器のまわりが汚れやすい(気づく人もいますが、あてにしすぎないでください)
子供の症状
- おねしょが急に始まる、または回数が増える
- のどが渇いて水をがぶがぶ飲む、トイレが近い
- 体重が減る、元気がなくなる、学校で集中できない
- おなかの痛みや吐き気が続く(血糖値が高いときは要注意)
- 赤ちゃんや小さな子どもの場合は、おむつがいつもより重い、ぐったりして授乳の飲みが悪い
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、症状が出にくいことがあります
- 食欲がない、元気がない、ぼんやりするなど、はっきりしない変化として現れることがあります
- 脱水(体の水分が足りない状態)になりやすく、口が渇く、尿の量が減る
- 尿路感染症を起こしやすい(発熱、排尿時の痛み、せん妄のような混乱)
- 血糖値が非常に高い状態(高血糖高浸透圧症候群)では、強い眠気や意識の変化が起こることがあります
原因
主な原因
- 血糖値が高い(糖尿病、糖尿病の傾向、発熱や感染、強いストレスなどで一時的に高くなる場合も)
- 腎性糖尿(腎臓で糖を体に戻す働きが生まれつき弱めの体質。血糖値は正常)
- 妊娠中の変化(妊娠糖尿病のことも、そうでないこともあります)
- 食事の直後や、糖分の多い飲み物をたくさんとった直後の一時的なもの
- 一部の薬の影響(ステロイド薬など)や、甲状腺・肝臓・腎臓の病気
- 高齢、発熱、手術後など、体に負担がかかっているときの一時的な上昇
リスク要因
- 家族に糖尿病の人がいる
- 体重が増えている、特におなかまわりに脂肪が多い
- 運動不足、野菜の少ない食事、甘い飲み物や間食が多い
- 睡眠不足や強いストレスが続いている
- 妊娠中である、または過去に妊娠糖尿病と言われたことがある
- 血圧が高い、脂質(コレステロールなど)の値が高い
- ステロイド薬など、血糖値に影響する薬を使っている
- 40歳以上で健康診断を受ける機会が増えた(見つかりやすい)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がぼんやりする、反応が鈍い、けいれんがある(すぐに救急へ)
- 呼吸が速く深い、息が甘い・果物のようなにおいがする(すぐに救急へ)
- 嘔吐が続いて水分がとれない、尿がほとんど出ない
- 発熱と排尿時の痛みがある
- のどが異常に渇く・尿が極端に多い状態が数日続く
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や尿検査で尿糖が陽性と言われた
- ご家族に糖尿病の人がいて、自分も気になっている
- のどが渇く、トイレが近い、疲れやすいといった変化がなんとなく続いている
- 妊娠中に尿糖を指摘された(妊娠中は早めに相談を)
- 過去に尿糖を指摘されたが、そのままになっている
診断
まず尿検査で尿糖の有無を調べ、陽性であれば血糖値(血液中の糖の量)とHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均をみる指標)を測ります。血糖値が正常なのに尿糖が出ていれば、腎性糖尿などの可能性を考えます。必要な場合は、糖分を飲んでから時間ごとに血糖値を測る検査(経口ブドウ糖負荷試験)を行います。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(試験紙を尿に浸して調べる、痛みのない検査)
- 血糖値の測定(採血)
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1〜2か月の血糖の平均が分かる検査
- 経口ブドウ糖負荷試験:糖分の入った飲み物を飲み、決まった時間ごとに採血して血糖値の変化をみる検査
- 尿糖の量を1日分の尿で調べる検査(必要に応じて)
- 腎臓の働きや甲状腺の検査(ほかの原因を探すため)
- 妊娠中の場合は、妊娠糖尿病を調べる検査
診察で予想されること
尿検査は尿をコップにとるだけで痛みはありません。採血は一瞬ちくっとしますが、すぐ終わります。血糖値の検査だけなら結果はその日のうちに分かることが多く、HbA1cは数日かかる場合もあります。ブドウ糖負荷試験は2時間ほどかかることがあるので、時間に余裕をもって受診すると安心です。
治療
治療は「なぜ尿糖が出ているのか」によってまったく変わります。腎性糖尿のように血糖値が正常な場合は治療の必要がなく、定期的な検査で見守るだけで十分です。血糖値が高い場合は、食事・運動などの生活習慣の見直しを土台にして、必要に応じて医師が薬を使うかどうかを判断します。妊娠中に見つかった場合は、食事のとり方と血糖値のモニタリングを中心に、産科と相談しながら進めます。
自宅でのセルフケア
- 検査結果をノートやアプリに記録しておくと、受診のときに役立ちます
- 水分をこまめにとり、脱水を避ける
- 足の裏や皮膚の傷を毎日チェックする(血糖値が高いと傷が治りにくくなります)
- 処方された藥は自己判断でやめたり量を変えたりせず、気になることがあれば薬剤師や医師に相談する
- たばこを吸う人は、禁煙を考えてみる(血管への負担が減ります)
- 決められた受診日を守り、気になる症状があれば早めに伝える
医療治療
血糖値が高い場合の治療は、大きく分けて生活習慣の見直しと、それを支える薬物治療があります。薬にはいくつかの種類があり、血糖値の高さ、体重、腎臓や心臓の状態、年齢、生活スタイルなどに合わせて医師が選びます。飲み薬の場合も注射の場合もありますが、どれが合うかは一人ひとり違います。治療の目的や続けやすさについて、遠慮なく医師や薬剤師に質問してください。妊娠中は使える薬が限られるため、必ず産科の医師に相談してください。
手術が検討される場合
尿糖そのものに対して手術が必要になることは、通常ありません。ただし、血糖値が高いまま手術を受けると治りが遅くなることがあるため、手術の予定があるときは事前に血糖値の状態を医師に伝えてください。
この病気と共に生きる
尿糖は「毎日測って一喜一憂するもの」ではありません。血糖値が高いと言われた場合は、決められた検査を受けながら、食事・運動・睡眠のリズムを整えていくことが中心になります。体調が悪い日や食べすぎた日は数値が動くこともあります。1回の結果で落ち込まず、長い目で見ていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝・昼・夜のリズムをできるだけ整え、よくかんで食べる
- 甘い飲み物を水やお茶に置きかえる(これだけで大きな変化につながることがあります)
- 1日20〜30分の早歩きなど、無理のない運動を習慣にする
- 睡眠時間を確保し、強いストレスが続くときは相談できる人を持つ
- 飲酒はほどほどに、喫煙は避ける
- 定期的に健診・受診を受け、数値の変化を記録しておく
食事と運動
食事は、主食を抜くのではなく「量と組み合わせ」を意識するのが続けやすい方法です。野菜やたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)を先に食べ、主食はほどほどに。間食は時間と量を決めておくと安心です。運動は、息が少しはずむ程度の早歩きを1日20〜30分、週に数回から始めるのがおすすめです。痛みや持病がある場合は、始める前に医師や理学療法士に相談してください。
精神的健康と心の健康
「尿に糖が出た」と言われると、不安になったり、自分を責めたくなったりするかもしれません。でも、尿糖は体からのお知らせであって、あなたの努力不足の証拠ではありません。腎性糖尿のように心配のいらない場合も多くあります。気持ちが落ち着かない日が続くときは、ひとりで抱えず、医療者や信頼できる人に話してみてください。つらい気持ちが続く場合は、地域の相談窓口や心の健康の相談先を利用することも大切です。
予防
腎性糖尿は生まれつきの体質なので、予防することはできません(そして治療も必要ありません)。一方、血糖値が高いことによる尿糖は、生活習慣を整えることでリスクを下げられる部分が大きくあります。体重を適正に保つ、甘い飲み物を控える、よく歩く、睡眠をとる——こうした地味な積み重ねが、将来の糖尿病や合併症の予防につながります。
検診プログラム
日本では、40〜74歳の人が受ける特定健康診査(特定健診)で尿検査と血糖値の検査が含まれています。会社の健診や自治体の健診で尿糖を指摘されたら、放置せず一度医療機関で血糖値を測ってもらいましょう。妊娠中は妊婦健診で尿検査が行われます。家族に糖尿病の人がいる場合は、症状がなくても定期的な検査をおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 血糖値が高い状態が続くと、目(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(神経障害)といった合併症のリスクが高まります
- 血管が傷み、心臓病や脳卒中のリスクが上がることがあります
- 傷や感染症が治りにくくなる、歯ぐきの病気が悪化しやすくなる
- 脱水や、非常に血糖値が高い緊急状態(意識がぼんやりするなど)につながることがあります
- 妊娠中に血糖値が高いまま過ごすと、お母さんと赤ちゃんの双方に影響が出ることがあります
- 尿糖を何年も放置することで、糖尿病の発見が遅れてしまうことがあります
長期的な見通し
多くの場合、尿糖は早期に見つけて原因を確かめることで、落ち着いて対処できるサインです。腎性糖尿なら治療は不要で、そのまま健康に暮らせます。血糖値が高い場合も、食事や運動、必要な治療を続けることで良好な状態を保てる人が大勢います。心配なときはひとりで抱えず、医療機関に相談しながら一歩ずつ進んでいきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.