痛風と心臓発作・脳卒中のリスクについて
概要
痛風(つうふう)は、血液中の「尿酸(にょうさん)」という物質が増えすぎて、関節の中に細かい結晶としてたまることで起こる病気です。結晶ができると、体がそれを異物とみなして炎症を起こし、足の親指の付け根などが急に赤く腫れて激しく痛みます。近年の研究では、痛風のある人は心臓発作(心筋梗塞:心臓の血管が詰まる病気)や脳卒中(脳の血管が詰まる、または破れる病気)のリスクが高いことが分かってきました。痛風は関節だけの問題ではなく、体全体の血管の健康と関係していると考えられています。
重要な事実
- 痛風は関節の病気ですが、心臓や脳の血管の病気とも関連があることが分かってきています。
- 痛風のある人は、ない人に比べて心臓発作や脳卒中のリスクが高いという研究結果があります。
- 尿酸値を整えることと、血圧・体重・喫煙・飲酒などの生活習慣を整えることの両方が大切です。
痛風はよく見られる病気で、日本でも患者さんは増えているといわれています。心臓発作や脳卒中も、決してめずらしい病気ではありません。痛風があるからといって必ず心臓発作や脳卒中になるわけではありませんが、日ごろから意識しておく価値のある組み合わせです。
痛風は中年以降の男性に多い病気です。女性は閉経後に増える傾向があります。尿酸値が高い人、腎臓の働きが低下している人、飲酒の多い人、肥満の人、高血圧・糖尿病・脂質異常症のある人、家族に痛風の人がいる人では起こりやすくなります。
症状
- 胸が締めつけられるような強い痛みが続く、または繰り返す(心臓発作の可能性)
- 胸の痛みに、冷や汗、息苦しさ、吐き気、左肩やあごの痛みを伴う
- 顔が片側だけ動かない、片方の腕や脚に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出てこない(脳卒中のサイン)
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、けいれん、立てない、突然見えにくくなる
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡し、救急車を呼んでください。
- ⚠初めて関節が激しく腫れて痛み、歩けないほどつらい
- ⚠関節の腫れとともに高い熱がある(感染による関節炎との区別が必要です)
- ⚠発作が何度も繰り返し、日常生活に支障が出ている
- ⚠尿の量が減った、足やまぶたがむくむなど、腎臓の働きが心配される症状がある
- ⚠胸やけのような違和感、動悸、いつもと違う息切れが続く
一般的な症状
- 足の親指の付け根などが、夜中や明け方に突然激しく痛み出す
- 関節が赤く腫れて、熱を持ち、触れるのもつらい
- 数日から1週間ほどで痛みは自然に軽くなり、発作のない時期は症状がない
- 同じ関節に発作を繰り返すことが多い
- 痛風結節(こぶ)と呼ばれる硬いしこりが、耳や関節の周りにできることがある
子供の症状
- 子どもでは痛風はまれです。小児期に尿酸値が高い場合は、遺伝的な体質やほかの病気が隠れていることがあるため、小児科で相談してください。
- 子どもの場合は、関節の腫れや痛みをうまく言葉で伝えられないことがあります。歩き方を嫌がる、足を触られるのをいやがるなどの様子にも気をつけてください。
高齢者の症状
- 高齢者では、典型的な激痛ではなく、なんとなく腫れている、痛みが軽いなど、症状がはっきりしないことがあります。
- 腎臓の働きが低下していると尿酸値が上がりやすくなります。また、ほかの病気で使っている薬が関係することもあります。
- 高齢者は心臓や脳の血管の病気のリスクももともと高いため、胸の痛みや息苦しさなどの変化に早めに気づくことが大切です。
原因
主な原因
- 体の中で尿酸が作られすぎる(プリン体という物質を多く含む食べ物や飲み物のとりすぎなど)
- 腎臓から尿酸が十分に排泄(はいせつ)されない(腎臓の働きの低下など)
- 脱水や急な体重減少、手術、けが、強いストレスなどで尿酸値が急に変動する
- 遺伝的な体質:尿酸の代謝には生まれつきの個人差があります
- 痛風のある人では体の中で炎症が続きやすく、血圧や血糖、脂質の状態とも関連して、血管にも負担がかかると考えられています
リスク要因
- 男性であること、中年以降であること
- 家族に痛風の人がいる
- 肥満、とくにおなか周りの脂肪が多い
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
- 腎臓の病気や腎機能の低下
- 飲酒の習慣(とくにビールなど)、甘い清涼飲料水のとりすぎ
- プリン体の多い食事(肉の内臓、魚介類、濃いだしなど)のとりすぎ
- 利尿薬など、尿酸値に影響する薬を使っている(自己判断で中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください)
- 喫煙、運動不足、睡眠不足などの生活習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めての激しい関節の痛みや腫れがあるとき
- 関節の腫れに高い熱や悪寒を伴うとき
- 胸の痛み、息苦しさ、動悸、めまいが新しく出てきたとき
- 顔や手足の麻痺、言葉の出にくさなど、脳卒中の疑いがある症状が少しでもあるとき(すぐに119番)
定期受診を予約すべき場合:
- 尿酸値を指摘されたことがある、または健康診断で高いといわれた
- 関節の発作を繰り返している
- 痛風と診断されていて、薬の調整や生活習慣の相談をしたい
- 血圧、血糖、脂質、体重について気になるところがある
- 家族に痛風や心臓病、脳卒中の人がいる
診断
痛風かどうかは、まず問診と関節の診察で判断します。いつ、どの関節が、どんなふうに痛くなったかを聞き、血液検査で尿酸値や腎臓の働きを調べます。場合によっては、腫れた関節に针を刺して液を調べ、尿酸の結晶がないかを確認することもあります。同時に、血圧・血糖・脂質・体重・喫煙歴などを確認し、心臓や脳の血管のリスクも一緒に評価します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(尿酸値、腎臓の働き、血糖、脂質など)
- 尿検査(尿酸の排泄や腎臓の状態をみる)
- 関節液の検査(尿酸の結晶や感染がないかの確認)
- 画像検査(超音波検査やレントゲンで関節の状態をみる)
- 血圧測定、体重・腹囲の測定
- 必要に応じて心電図や心臓・血管の検査
診察で予想されること
発作のまっただ中に受診すると、まず痛みを和らげることを優先します。尿酸値を下げる治療は、発作が落ち着いてから始めることが多いです。検査結果の説明では、尿酸値だけでなく、血圧や血糖、体重なども含めて、これからの方針を一緒に考えることになります。遠慮せずに質問してください。
治療
痛風の治療は大きく2つに分かれます。ひとつは、発作の痛みと腫れをしずめる治療。もうひとつは、尿酸値を適正に保って発作を繰り返さないようにする治療です。さらに、心臓発作や脳卒中のリスクを下げるために、血圧・血糖・脂質・体重・喫煙・飲酒といった生活習慣の見直しを同時に進めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 発作のときは関節を安静にし、冷やして、無理に動かさない
- 水分をこまめにとる(アルコールや甘い飲み物は控えめに)
- 発作の時期は飲酒を控える
- 体重を適正に保つ(急な減量は尿酸値を上げることがあるので、ゆっくりと)
- 禁煙を心がける。吸っている人は、禁煙外来などの支援を利用する
- 睡眠を十分にとり、ストレスをためすぎない
- 血圧を家で測る習慣をつけ、記録しておく
医療治療
薬による治療には、発作の炎症と痛みをしずめるための薬と、尿酸値を上げすぎないようにするための薬があります。尿酸のつくりすぎを抑えるタイプ、尿酸を体の外に出しやすくするタイプなどがあり、腎臓の働きやほかの病気、使っている薬に合わせて医師が選びます。薬の名前や量はここではお伝えしません。処方された薬は自己判断で中止したり量を変えたりせず、気になることがあれば医師や薬剤師に相談してください。あわせて、血圧や血糖、脂質の治療が必要な場合は、それらも並行して進めます。
手術が検討される場合
痛風そのもののために手術が必要になることはあまりありません。大きな痛風結節(こぶ)があって日常生活に支障がある場合や、関節の変形が強い場合などに、例外的に検討されることがあります。
この病気と共に生きる
痛風は、うまく付き合っていける病気です。発作のない時期をどう過ごすかが大切で、尿酸値を整え、血圧や体重などの生活習慣を整えることで、発作の回数も心血管のリスクも減らせる可能性があります。発作が起きたときの備え(冷やすもの、安静にできる場所、受診先の確認)をしておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は量と頻度を減らし、発作の時期は休肝日ではなく完全に控える
- 甘い清涼飲料水や果糖の多い飲み物を控える
- 水分をこまめにとる
- 適正体重を目指し、急がずに少しずつ減らす
- 禁煙する。受動喫煙も避ける
- ウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かす
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 定期的に健康診断やかかりつけ医の受診を続ける
食事と運動
食事では、肉の内臓や魚介類、濃いだしなどプリン体の多い食品をとりすぎないようにし、野菜や海藻、きのこなどをとり入れてバランスを整えます。極端な食事制限はストレスになるので、続けられる範囲で少しずつ変えていくのがおすすめです。運動は、息が少し上がる程度のウォーキングなどを、無理のない範囲で定期的に行うと、体重・血圧・血糖の管理にも役立ちます。激しい運動や脱水は尿酸値を上げることがあるため、水分補給を忘れずに。
精神的健康と心の健康
「また発作が来るのでは」という不安や、食事や飲み会を気にすることへのストレスを感じる方は少なくありません。心臓や脳の病気のリスクを聞いて心配になる気持ちも自然なことです。ひとりで抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医、看護師、薬剤師に話してみてください。気分の落ち込みや不安が続くときは、医療機関や地域の相談窓口に相談することが大切です。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに身近な医療機関や相談窓口、救急(119番)に連絡してください。
予防
痛風の発作は、尿酸値を適正に保つことで予防できる可能性があります。また、心臓発作や脳卒中のリスクは、血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、適正体重、節酒、運動といった生活習慣の改善である程度下げられると考えられています。すべてを一度に変える必要はありません。できるところから一つずつ始めましょう。
ワクチン
痛風に直接効くワクチンはありません。ただし、心臓や血管の病気を持つ方は、かかりつけ医と相談のうえで、その時期に合ったワクチン接種を検討することが勧められています。接種の可否は医師に相談してください。
検診プログラム
健康診断の血液検査で尿酸値を確認できます。痛風がある人、尿酸値が高い人、血圧・血糖・脂質が気になる人は、定期的にチェックを受けましょう。心臓や脳のリスクについても、かかりつけ医に相談すると評価してもらえます。
合併症
治療しない場合
- 痛風発作を繰り返し、痛みのために日常生活が制限される
- 痛風結節(こぶ)ができ、関節が変形することがある
- 腎臓に結石ができたり、腎臓の働きが低下したりする
- 心臓発作(心筋梗塞)や脳卒中のリスクが高まると考えられている
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などが重なっていると、血管への負担が大きくなる
長期的な見通し
痛風は、適切に付き合っていけば十分にコントロールできる病気です。尿酸値を整え、血圧や体重、喫煙などの生活習慣を見直すことで、発作を減らし、心臓や脳の健康も守れる可能性があります。心配なことがあれば、早めにかかりつけ医に相談してください。一歩ずつ進めば大丈夫です。
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最終更新: 2026年10月24日
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