グレード3星細胞腫(退形成性星細胞腫)
概要
グレード3星細胞腫(退形成性星細胞腫・たいけいせいせいせいさいぼうしゅ)は、脳の中にできる腫瘍(しゅよう)のひとつです。脳は神経細胞と、それを支える「グリア細胞」からできています。星細胞(アストロサイト)はこのグリア細胞の一種で、星のような形をしていることからこの名前がつきました。この星細胞がもとになってできる腫瘍を「星細胞腫」といい、その中でも悪性度(悪さの度合い)がグレード3にあたるものを「退形成性星細胞腫」と呼びます。グレードは腫瘍の性質を1〜4の段階で表したもので、数字が大きいほど速く育ちやすい性質を示します。グレード3は「中〜高め」のグループで、放っておくと大きくなりやすい一方、手術・放射線・化学療法などの治療に反応しやすい面も持っています。
重要な事実
- 脳の中にできる「原発性脳腫瘍(げんぱつせいのうしゅよう)」のひとつで、肺や肝臓など体のほかの臓器に転移することはまれです。
- 悪性度は4段階のうちの3番目。比較的速く大きくなるタイプですが、治療に反応しやすいという特徴もあります。
- 治療は「手術」「放射線治療」「化学療法(抗がん剤)」を組み合わせるのが一般的で、腫瘍の場所や遺伝子の特徴によって組み立て方が変わります。
脳腫瘍は、がん全体の中では珍しい病気です。星細胞腫は脳腫瘍の中では比較的よく見られますが、そのうちグレード3の退形成性星細胞腫は多くはありません。正確な人数は地域や調査の年によって変わるため、統計の数字だけでご自身の状況を決めつける必要はありません。
成人に多く見られますが、子どもから高齢者までどの年代でも起こります。40〜50代前後で見つかることが比較的多いとされていますが、若い方でも高齢の方でも発症します。男女差は大きくありません。生活習慣が原因でなる病気ではないので、ご自身を責める必要はありません。
症状
- 突然の激しい頭痛(「今まで経験したことのない」ような痛み)
- 意識がない、呼びかけても反応が乏しい
- けいれんが5分以上続く、または短いけいれんを繰り返す
- 体の片側が動かない、麻痺がある
- ろれつが回らない、言葉が出ない
- 呼吸が苦しそう、呼吸のリズムがおかしい
- これらの症状があるときは、ためらわず119番に電話して救急車を呼んでください。
- ⚠頭痛が数日のうちにどんどん強くなっている
- ⚠吐き気・嘔吐が繰り返し、水分がとれない
- ⚠初めてのけいれん、またはいつもと違う発作
- ⚠視力の急な低下、ものが二重に見える
- ⚠急な性格の変化、会話がかみ合わない、ぼんやりする時間が長い
- ⚠いつもと違う強い眠気が続く
一般的な症状
- 頭痛(とくに朝起きたときや、横になっているときに強くなることがあります)
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- けいれん(体がピクピクする、意識が遠のく、など)
- 手足に力が入りにくい、動かしにくい
- 言葉が出にくい、ろれつが回らない
- 見えにくい、視野が欠ける、ものが二重に見える
- 物忘れが増えた、判断が遅くなった、性格が変わったように見える
- 眠気が強い、ぼんやりする時間が増えた
子供の症状
- 頭痛、とくに朝の頭痛や、起きてすぐ吐く
- けいれん
- 歩き方がおかしい、走りにくい、手が使いにくい
- 学校での集中力の低下、成績の変化、性格の変化
- 乳幼児では頭の周囲が大きくなる、ひたいの上のやわらかい部分(大泉門)が膨らむ
- 視力の低下、ものが二重に見える
高齢者の症状
- 物忘れや理解力の低下として現れ、年のせいだと思われやすい
- 疲れやすい、元気がない、食欲がない
- 歩行が不安定、転びやすい
- 尿がもれやすくなる(脳の中に水がたまる状態を合併した場合)
- 急に意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
原因
主な原因
- 星細胞腫ができるはっきりした原因は、今のところ分かっていません。
- 細胞の中の遺伝子(IDH1・IDH2など)の変化が関わることが分かってきています。これは「親から受け継ぐ遺伝」とは別の、細胞が育つ過程で起きる変化です。
- 頭に高めの放射線を受けた既往がある場合、脳腫瘍のリスクが上がることが知られています。これは主に治療としての被ばくの話で、通常の検査で受ける程度の放射線では問題になりにくいと考えられています。
リスク要因
- 頭部に高線量の放射線を受けたことがある(ほかの病気の治療など)
- 一部の遺伝性の病気(神経線維腫症など)がある
- 免疫の働きが弱くなっている状態
- 年齢(成人で多い)
- 携帯電話や電磁波、特定の食べ物との関係については、現在の研究ではっきりした証拠は見つかっていません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭痛が数日のうちにどんどん強くなる
- 吐き気・嘔吐が繰り返し、水分がとれない
- 初めてのけいれんがあった
- 手足の麻痺、言葉の出にくさ、視野の急な変化がある
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない時間が長い
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛が1〜2週間以上続く、またはだんだん強くなっている
- 朝方の頭痛や吐き気を繰り返す
- 手足の動きにくさ、しびれが続く
- 言葉が出にくい、物の名前が思い出せないことが増えた
- 性格や行動の変化を家族に指摘された
- 視野が欠ける、ものが二重に見える
- いつもと違う強い眠気や疲れやすさが続く
診断
まず問診と神経の診察(手足の動き、反射、視野、記憶など)を行います。次にMRI(磁気共鳴画像)で脳の画像を撮り、腫瘍がないか、あれば大きさ・場所・周囲への広がりを確認します。確定診断は、手術や生検(組織を少し取る検査)で得た組織を顕微鏡で調べる「病理検査(びょうりけんさ)」で行い、あわせてグレードや遺伝子の特徴を調べます。
行われる可能性のある検査
- 神経学的診察(手足の動き、感覚、反射、バランス、視野など)
- MRI(造影剤を使うことが多い検査です)
- CT(緊急時などに使われます)
- 脳波検査(けいれんがある場合)
- 血液検査(全身の状態や治療に耐えられるかの確認)
- 病理検査(生検や手術で取った組織を顕微鏡で調べる)
- 遺伝子検査(IDH遺伝子など、治療方針の参考になります)
- 神経心理検査(記憶や判断力の確認)
- 視野検査、聴力検査など
診察で予想されること
MRIは大きな音がしますが、痛みはありません。じっとしている必要があるため、不安が強い方は事前に相談すれば配慮してもらえます。結果が出るまで数日〜1週間ほどかかることがあり、待つ間は不安なものです。説明を聞くときは、家族や信頼できる人に同席してもらい、メモを取ったり録音の許可をもらったりすると安心です。別の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を求めることもできます。
治療
治療は、腫瘍の場所・大きさ、年齢、全身の状態、遺伝子の特徴などを考えて組み立てます。多くの場合、まず手術でできるだけ腫瘍を取り除き、その後に放射線治療と化学療法を組み合わせます。治療の目的は、腫瘍を小さくして症状をやわらげ、できるだけ長く落ち着いた状態を保つことです。再発した場合の選択肢も増えてきており、臨床試験(治験)に参加できる場合もあります。
自宅でのセルフケア
- 通院・服薬の予定を守り、体調の変化をメモしておく
- 疲れやすいので、休む時間を意識的にとる
- 手洗い・うがいなど感染対策を心がけ、人混みはできるだけ避ける
- けいれん発作がある場合は、入浴で湯につからない、水泳は一人でしない、高所作業は避ける
- 車の運転は、法律と主治医の指示に従う
- 治療中は無理な予定を入れず、家族や職場に早めに相談する
医療治療
治療には、手術、放射線治療(腫瘍の部分に放射線を当てる)、化学療法(飲み薬や点滴の抗がん剤。腫瘍の遺伝子の特徴によって選び方が変わります)、脳のむくみを減らすためのステロイド、けいれんを抑える薬、リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)、腫瘍電場療法などがあります。どの治療をどの順番で行うかは、腫瘍の性質と体の状態を見ながら主治医と相談して決めます。具体的な薬の名前や量については、必ず主治医・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
手術には、腫瘍を取り除くことと、組織を調べて確定診断をつけることの両方の役割があります。言葉や運動など脳の大切な機能の近くにある場合は、全部を取り除くと後遺症が残るおそれがあるため、あえて一部を残すことがあります。しゃべったり動いたりしながら行う手術や、神経の働きをモニターしながら行う手術が選ばれることもあります。
この病気と共に生きる
治療の期間は通院が多くなり、生活のリズムが変わります。疲れやすいので、予定を詰め込みすぎず休息を優先してください。記憶や集中力の変化を感じることもありますが、メモやスマートフォンのリマインダー、家族の手助けで補うことができます。車の運転や仕事については、主治医と相談しながら少しずつ調整していきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとる
- 禁煙する
- お酒は主治医と相談して控えめにする
- 手洗い・うがいなどの感染対策を続ける
- ストレスを一人で抱えず、話せる相手を持つ
- 散歩など、無理のない範囲での運動を続ける
食事と運動
「これを食べれば腫瘍が小さくなる」と断言できる食事は、今のところ分かっていません。主食・たんぱく質・野菜をそろえたバランスのよい食事と、十分な水分が基本です。治療中は味覚が変わったり食欲が落ちたりすることがあるので、食べられるものを少量ずつ、回数を分けてとるのも一案です。サプリメントは治療に影響することがあるため、始める前に必ず主治医か薬剤師に相談してください。運動は、散歩や軽いストレッチなど息が上がりすぎない程度から。主治医に確認してから始めましょう。
精神的健康と心の健康
診断を受けた直後は、驚き、不安、怒り、落ち込みなど、さまざまな気持ちがわいてくるのが自然です。「なぜ自分が」と思うこともあるでしょう。記憶や集中力の変化、疲れやすさは、気持ちの落ち込みと重なって感じられることもあります。家族や周りの人も不安や疲れを抱えています。つらい気持ちが続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、早めに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。緊急の必要があるときは119番に電話してください。
予防
星細胞腫を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。特定の食べ物や生活習慣が原因と断定できるものもありません。できることとしては、禁煙、過度の飲酒を避ける、医療放射線は必要性と利益を理解したうえで受ける、規則正しい生活で体調を整える、といった一般的な健康づくりが役立ちます。
検診プログラム
症状のない人を対象にした、脳腫瘍のための検診(スクリーニング)は、現在のところ一般的ではありません。気になる症状があるときに早めに受診することが、一番の早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 腫瘍が大きくなり、頭の中の圧が上がる(頭痛、吐き気、意識がぼんやりする)
- けいれん発作
- 手足の麻痺、言葉の障害、視野の障害
- 脳の中に水がたまる状態(水頭症)
- 意識障害や、命に関わる状態
長期的な見通し
グレード3の星細胞腫は、治療の組み合わせが進歩してきている病気です。手術・放射線・化学療法を組み合わせることで症状が落ち着き、長く安定した生活を送っている方も多くいます。一方で、経過は人によって大きく異なり、再発することもあります。数字だけで自分の将来を決めつけず、主治医と今の状態や治療の選択肢について話し合いながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。不安なことも多いと思いますが、支えを得ながら前向きに過ごすことは十分に可能です。
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最終更新: 2026年10月24日
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