ギラン・バレー症候群(GBS)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ギラン・バレー症候群(GBS)は、体の免疫(ばい菌と戦う仕組み)が、自分の神経を誤って攻撃してしまうことで起こる、まれな神経の病気です。神経の外側の「鞘(さや)」が傷つき、手足の力が入りにくくなったり、しびれたりします。多くの場合、風邪やおなかの下痢などの感染症のあと数日から数週間後に症状が始まります。
重要な事実
- 免疫の仕組みが自分の神経を攻撃する「自己免疫」の病気であること
- 手足の力が入らない、しびれ、痛みなどの症状が急速に進むことがあること
- 特に初期に適切な治療を受ければ、回復の可能性が高まること
- 多くの人は時間をかけて回復するが、後遺症が残る場合もあること
- 重症の場合は呼吸の筋肉まで麻痺することがあり、緊急対応が必要になること
まれな病気です。日本では年間に10万人あたり1~2人ほどが発症するとされています。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、成人にやや多く、男性のほうが女性より少し多いといわれています。健康だった人にも突然起こることがあります。
症状
- 呼吸が苦しい、息ができない
- 胸の強い締め付けや脈拍が極端に乱れる
- 急に両腕・両足の力が入らなくなり動けない
- 意識を失いそうになる
- 飲み込みがまったくできず、よだれでむせる
- ⚠手足の力が弱くなり、数時間~1日のうちに悪化している
- ⚠立ち上がれない、歩行が困難
- ⚠顔の麻痺やしびれが広がっている
- ⚠物が二重に見える
- ⚠しゃべりにくい、声がかすれる
- ⚠強い痛みや感覚の異常が続く
一般的な症状
- 両足に始まることが多い力が入らない、弱る感じ
- 手や足の先のしびれやチクチクする感覚
- 痛み(特に腰や背中、筋肉の痛み)
- 歩きにくい、階段を上りにくい
- 顔の筋肉が動かしにくい(笑えない、飲み込みにくい)
- 複視(物が二重に見える)、まぶたが下がる
- しゃべりにくい、声がかすれる
- 脈が速くなる、血圧が不安定になるなど自律神経の症状
子供の症状
- 歩きたがらない、すぐに転ぶ
- 足や腰の痛みを訴えることが多い
- 機嫌が悪い、ぐったりする
- 顔をしかめる、笑顔が作れない
- しゃべりにくい、飲み込みにくい
高齢者の症状
- とくに足の筋力低下が強く、転倒しやすい
- 症状の進行が速い場合がある
- 呼吸筋の麻痺や不整脈など重い合併症のリスクが高い
- せん妄(意識がもうろうとする)や認知機能の低下がみられることもある
- 誤嚥(食べ物や唾液が気管に入る)リスクが高い
原因
主な原因
- 正確な原因はまだ完全にはわかっていませんが、免疫の異常が関与します
- 多くの場合、発症の数日前~数週間前に風邪や胃腸炎などの感染症にかかっています
- 特にカンピロバクターという細菌による下痢、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマなどの感染がきっかけになることがあります
- まれに、予防接種や手術をきっかけに発症することが報告されていますが、その関係はまだ十分には解明されていません
リスク要因
- 最近の感染症(特に下痢や呼吸器感染)
- 男性であること
- 成人(特に高齢者)
- 他に特別な基礎疾患がなくても発症することがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手足の力が入らない、または数時間~数日のあいだに弱さが進む
- しびれや痛みが急に広がる
- 歩けない、立ち上がれない
- 顔や口の動きがおかしい、飲み込みにくい
- 息苦しさや動悸を感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 手や足の先に軽いしびれや違和感があり、しかし力は入る場合
- 風邪やおなかの症状が治ったあとに、だるさや違和感が続く場合
診断
ギラン・バレー症候群の診断は、症状の経過や神経の診察に加えて、検査の結果を総合して行われます。初期には似た症状の病気を除外することがとても大切です。
行われる可能性のある検査
- 神経学的診察:筋力、感覚、反射、歩き方などを確認
- 腰椎穿刺(ようついせんし):背中から針で脳脊髄液を少量とり、タンパク質の量を調べる検査
- 神経伝導検査:神経に電気刺激を与え、神経の伝わり方やダメージの程度を調べる検査
- 筋電図:筋肉の電気活動を調べ、神経と筋肉のつながりを評価
- 血液検査:ほかの病気を除外するため、感染症や免疫の抗体を調べる
診察で予想されること
症状の進行が速い場合は、すぐに入院して検査と治療が行われます。検査には数時間から数日かかることがあります。診断が確定する前でも、症状に応じて呼吸や心臓の状態を観察しながら治療が始まります。
治療
ギラン・バレー症候群では、症状の進行を抑え、体の機能を維持しながら、神経が回復するのを待つ治療が中心になります。多くの場合、入院して治療を行います。
自宅でのセルフケア
- 医師や理学療法士の指示に従い、無理のない範囲で体を動かす
- 筋肉の衰えや関節のこわばりを防ぐためのリハビリテーションを続ける
- 十分な休息をとり、体を冷やさないようにする
- 飲み込みや呼吸に不安があるときは、すぐに医療スタッフに伝える
- 痛みや不安があるときは、ひとりでがまんせずに相談する
医療治療
治療では、免疫の異常な働きを調整するための免疫グロブリン療法(抗体を静脈から投与する方法)や、血液を浄化して異常な抗体を取り除く血漿交換療法が行われることがあります。これらの治療は、病気の進行を抑えて回復を早める目的で用いられます。あわせて、痛みの緩和や呼吸・血圧の管理、リハビリテーションなどの支持療法が重要です。治療の選択は、症状の重さや進行具合によって医師が判断します。
この病気と共に生きる
回復には個人差が大きく、数週間で改善する人もいれば、数か月から数年にわたってリハビリが必要な人もいます。急性期を過ぎたら、自宅での生活を少しずつ再開し、疲れをためないようにしながら、できることを増やしていくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日のリハビリを無理なく続ける
- 転倒を防ぐために、家の中の手すりや段差を整える
- 疲れたら休むことを許可し、焦らない
- 家族や友人、医療者に遠慮せず助けを求める
- 睡眠をしっかりとり、生活リズムを整える
食事と運動
食事は、バランスよく、のどごしのよいものを選びながら、からだの回復に必要な栄養をとりましょう。飲み込みにくさがある場合は、食材を細かくしたり、とろみをつけたりする工夫が役立ちます。運動やリハビリは、理学療法士の指導をうけながら、その日の体調に合わせて行ってください。
精神的健康と心の健康
急に体が動かせなくなることは、とても不安でつらい経験です。落ち込みや恐怖を感じるのは自然なことです。気持ちのつらさをひとりで抱え込まず、医師や看護師、公認心理師などに相談しましょう。必要に応じて、心のケアやカウンセリングを受けることも回復の一部です。
予防
ギラン・バレー症候群そのものを確実に予防する方法はまだわかっていません。しかし、感染症にかかりにくくするために、手洗いやうがいなどの基本的な感染対策を心がけることは役立つ可能性があります。また、感染症のあとに手足のしびれや力の弱さを感じたら、早めに医療機関に相談することが大切です。
ワクチン
予防接種は、感染症から身を守る大切な方法ですが、ごくまれにギラン・バレー症候群が予防接種後に報告されたこともあります。ただし、そのリスクは非常に小さく、予防接種の利益がはるかに大きいとされています。ワクチンについて心配なことがあれば、医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 呼吸筋の麻痺による呼吸不全(命に関わります)
- 心臓のリズム異常や血圧の大きな変動
- 誤嚥性肺炎を起こすリスク
- 深部静脈血栓症(足の血管に血の塊ができる)
- 神経の回復が遅れ、後遺症が残る可能性が高くなる
長期的な見通し
ギラン・バレー症候群は、適切な治療を行えば、多くの人が回復に向かいます。約8割の人は日常生活に戻れるまで回復し、症状が軽い人では数週間で良くなります。回復には個人差があり、数か月~1年以上かかる人もいますが、多くの人は時間とともに改善します。残る症状があっても、リハビリや生活の工夫で生活の質を保つことができます。希望を持って、医療者と一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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