歯周病と心臓病の関係
概要
歯周病(ししゅうびょう)は、歯ぐき(歯肉)と、歯を支える骨のまわりに細菌の感染が起こる病気です。歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」というすき間ができ、そこに細菌の塊(歯垢・プラーク)がたまって、歯ぐきが腫れたり出血したりします。歯周病と心臓病には関係があると考えられています。歯ぐきが炎症を起こすと、細菌や、炎症を引き起こす物質が血液の中に入り込み、血管や心臓に負担をかけることがあるためです。多くの研究で、歯周病のある人は心臓病や脳卒中(のうそっちゅう)になる割合がやや高いと報告されています。ただし「歯周病が心臓病を直接起こす」と決まったわけではなく、糖尿病や喫煙など共通の背景もあると考えられています。
重要な事実
- 歯周病は歯ぐきの感染症で、痛みが少ないまま静かに進むことが多い病気です。
- 歯周病と心臓病・脳卒中には関連が報告されていますが、原因と結果の関係はまだ研究中です。
- 毎日の歯みがきと定期的な歯科受診で、歯ぐきの健康は大きく改善できます。
とても多い病気です。日本では成人の多くが何らかの歯周病の状態にあるとされ、厚生労働省の歯科疾患実態調査でも、歯ぐきに出血や腫れのあった人の割合が高いことが示されています。年齢が上がるほど増えていきます。
主に大人、とくに40代以降に多い病気です。若い人にも起こります。喫煙する人、糖尿病のある人、歯みがきが不十分な人、歯科を受診する機会が少ない人では起こりやすくなります。妊娠中はホルモンの変化で歯ぐきが腫れやすくなります。
症状
- 顔やあごが大きく腫れて、息が苦しい、声が出にくい
- 飲み込むのが難しくなった、よだれが止まらない
- 胸の痛みや圧迫感、冷や汗、息切れがある(心臓の症状の可能性があるとき)
- ⚠顔や口の中の腫れが広がっている、熱がある
- ⚠歯ぐきから膿が出て、強い痛みが続く
- ⚠けがや虫歯が原因で、口の中の出血が止まらない
一般的な症状
- 歯みがきや食事のときに歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤く腫れる、または腫れを繰り返す
- 口臭が気になる
- 歯ぐきが下がって歯が長く見える
- 歯と歯の間にすき間ができてきた
- 歯がぐらぐらする、かむと痛む
- 歯ぐきを押すと膿(うみ)が出る
子供の症状
- 子どもでは比較的少ないですが、歯ぐきが赤くなったり、歯みがきで出血したりすることがあります。
- 歯みがきを嫌がる、口の中を痛がる場合は、歯科で見てもらいましょう。
- まれに、思春期の若い人に進行の速いタイプの歯周病が起こることがあります。
高齢者の症状
- 歯を失う大きな原因のひとつで、入れ歯の具合が悪くなることがあります。
- 口の渇きが出やすい薬を飲んでいる場合は、歯ぐきの状態が悪化しやすくなります。
- 手が動かしにくいなど歯みがきが難しくなったときは、介護者や歯科スタッフに相談しましょう。
原因
主な原因
- 歯と歯ぐきの境目にたまる細菌の塊(歯垢・プラーク)
- 歯垢が固まってできた歯石(しせき)
- みがき残しが続くことによる、歯ぐきの慢性的な炎症
リスク要因
- 喫煙(歯ぐきの血流を悪くし、治りを遅らせます)
- 糖尿病(血糖の高い状態が感染と炎症を悪化させます)
- 強いストレスや睡眠不足
- 妊娠・思春期・更年期などのホルモンの変化
- 口の渇きを起こす薬を飲んでいる
- 歯ぎしりや食いしばり、合わない詰め物や入れ歯
- 食生活の乱れ、間食の多い生活
- 歯科の定期受診が少ないこと
- 家族歴(歯周病になりやすい体質が関係することがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 顔やあごの腫れが急に広がり、痛みが強い、または熱がある
- 歯ぐきから膿が出て、痛みで眠れない
- 歯が急に大きくぐらつき、かむのが難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 歯みがきのたびに血が出る、または歯ぐきが腫れることが続く
- 口臭が気になり始めた
- 歯ぐきが下がってきた、歯が長く見える
- 歯と歯の間に食べ物がよくはさまる
- 糖尿病や心臓病があると言われている(口の健康も一緒に確認しましょう)
- 最後に歯科で見てもらってから1年以上たっている
診断
歯周病は主に歯科医院で診断します。歯と歯ぐきの間の溝の深さ(歯周ポケット)を細い器具で測り、歯ぐきの出血や腫れ、歯のぐらつきを確認します。あわせてレントゲンで、歯を支える骨がどれくらい減っているかを見ます。心臓との関係については、血圧や血液検査(炎症やコレステロールの値など)を行い、必要に応じて心電図などの検査をすることがあります。
行われる可能性のある検査
- 歯周ポケットの深さの測定(プロービング)
- 歯ぐきの出血・腫れの確認
- 歯のぐらつきの検査
- 口の中のレントゲン写真
- 必要に応じて血液検査や血圧測定、心電図
診察で予想されること
歯科の検査は痛みの少ないものがほとんどですが、歯周ポケットを測るときに少し違和感があることがあります。検査の結果は、歯ぐきの状態を図や表で説明してもらえることが多く、どこにトラブルがあるかが分かります。分からないことは遠慮なく質問しましょう。
治療
歯周病の治療は、歯ぐきの炎症を減らし、進行を止めることが目標です。「歯垢を取り除く」ことと「再びたまらないようにする」ことを組み合わせます。歯周病が改善すると、口の中の炎症が減るため、全身の健康面でも良い影響が期待できると報告されています。
自宅でのセルフケア
- 毎日、歯と歯ぐきの境目を意識してていねいに歯みがきをする
- 歯間ブラシやフロスを使って、歯と歯の間の汚れを落とす
- 歯みがきのあとは、出血がないかを時々チェックする
- 禁煙する、または本数を減らす(禁煙外来の利用も選択肢です)
- 糖尿病がある場合は、主治医と相談しながら血糖を整える
- よくかんで食べ、間食を控えめにする
医療治療
歯科医院では、まず歯垢や歯石を専用の器具で取り除きます(スケーリング)。あわせて、自分に合った歯みがきの方法を教えてもらいます。炎症が強いときは、歯ぐきの奥の汚れを洗い流す処置を行うことがあります。薬を使う場合もありますが、内容は歯科医師から説明を受け、医師の指示どおりに使いましょう。心臓病で治療中の方は、歯科の処置の前に主治医に相談しておくと安心です。
手術が検討される場合
歯ぐきの奥深くに歯石が残っている場合や、歯を支える骨が大きく減っている場合には、歯ぐきを開いて掃除する手術(歯周外科治療)を行うことがあります。どうしても残せない歯は抜歯を検討します。手術が必要かどうかは、検査の結果をもとに歯科医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
歯周病は、治療のあとも日々のケアがとても大切です。歯みがきの時間を少し長めにとり、鏡を見ながら歯ぐきの状態を確認する習慣をつけると、変化に気づきやすくなります。歯科での定期チェックを生活の一部にすると、安定した状態を保ちやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間にていねいに歯みがきをする習慣をつくる
- 歯間ブラシ・フロスを毎日使う
- 禁煙を目指す(受動喫煙も避ける)
- 睡眠とストレス管理を意識する
- 定期的に歯科健診を受ける(かかりつけ歯科を持つ)
- 糖尿病などの持病は主治医と一緒にコントロールする
食事と運動
バランスのよい食事は、歯ぐきの健康にも全身の健康にも役立ちます。砂糖の多い飲み物や間食を控えめにし、よくかんで食べると、だ液が出て口の中が清潔に保たれやすくなります。ウォーキングなどの軽い運動は、糖尿病や心臓病の予防にもつながり、結果として歯ぐきにも良い影響が期待できます。
精神的健康と心の健康
口臭や歯の見た目が気になって、人と会うのがおっくうになったり、気持ちが落ち込んだりすることがあります。歯周病は治療で改善できることが多いので、一人で抱え込まずに歯科スタッフに相談してみましょう。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみることも大切です。
予防
かなり防げる病気です。毎日の歯みがきと歯間ケア、定期的な歯科受診、禁煙、そして糖尿病などの持病のコントロールが、歯周病の予防と進行を抑えることにつながります。口の健康を保つことは、全身の健康を守ることにもつながります。
ワクチン
歯周病を防ぐワクチンは、現在のところ実用化されていません。
検診プログラム
自治体によっては歯周病検診を行っています。また、健康保険を使った歯科健診や、職場の健康診断で口のチェックが受けられる場合もあります。厚生労働省も歯と口の健康づくりを推進しており、かかりつけ歯科での定期健診がすすめられています。
合併症
治療しない場合
- 歯を支える骨が減り、歯がぐらついて抜け落ちることがある
- 糖尿病の血糖コントロールが悪くなりやすい
- 心臓病や脳卒中などのリスクが高まる可能性が報告されている
- 口の中の細菌が気管に入り、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こすことがある
- 妊娠中は、早産や低体重児出産との関連が指摘されている
長期的な見通し
歯周病は、早めに気づいて治療とケアを続ければ、多くの場合で進行を止めたり改善したりできます。歯ぐきの炎症が落ち着くと、口の健康だけでなく、体全体の健康にも良い方向の変化が期待できます。今日からできる小さな一歩が、将来の歯と心臓を守ることにつながります。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.