HbA1c(ヘモグロビンA1c)検査 — 過去1〜2か月の血糖の平均がわかる血液検査
概要
HbA1c(ヘモグロビンA1c)検査は、血液の中の「ヘモグロビン」という赤い色素に、ブドウ糖(血糖)がどれくらいくっついているかを調べる血液検査です。ヘモグロビンは赤血球の中で酸素を運ぶ役割をしていて、寿命はおよそ120日あります。一度ブドウ糖がくっつくと、赤血球が新しいものに入れ替わるまで、なかなかはずれません。そのため、この検査では「過去1〜2か月の血糖値の平均」がおおよそわかります。採血1回で測れて、食事の影響をあまり受けないのが特徴で、糖尿病の診断や治療の経過を見るときの中心になる検査です。
重要な事実
- 採血1回で測れます。食事の直後でも値が大きく変わらないため、空腹でなくても受けられます。
- 結果は「%」で表され、過去1〜2か月の血糖の平均的な状態を示します。
- 高い値が続くと糖尿病やその予備群が疑われます。反対に低すぎる値が出たときは、貧血など別の原因が隠れていることがあります。
とてもよく行われる検査です。日本では、健康診査(特定健診)や職場の健康診断、妊娠中の健診などでも測定されます。
誰でも受ける可能性のある検査ですが、40歳以上の人、体重の増加が気になる人、家族に糖尿病の人がいる人、妊娠した人などは特に測る機会が多くなります。子どもでも、のどが渇く・おしっこが多いなどの症状があるときには調べることがあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が弱い
- 深く速い息づかいが続く、息が苦しい
- 吐き気・嘔吐が止まらず、水分もとれない
- けいれん、激しい腹痛、顔色が悪くぐったりしている
- ⚠のどが渇く・おしっこが多い状態が数日以上続き、体重が減っている
- ⚠発熱や嘔吐があり、水分がとれない
- ⚠健診でHbA1cが6.5%以上、または「糖尿病の疑い」と言われた
- ⚠治療中に冷や汗、手のふるえ、動悸などの低血糖らしき症状がくり返す
一般的な症状
- のどがとても渇く
- おしっこの回数や量が増える(特に夜中)
- だるい・疲れやすい
- 食べているのに体重が減る
- 傷が治りにくい、皮膚や口の中の感染をくり返す
- 目がかすむ
- とくに症状はなく、健診で初めて見つかることも多い
子供の症状
- のどが渇いて水をよく飲む
- おしっこの回数が増え、おねしょが増える
- 体重が減る、元気がない
- お腹が痛い、吐く(この場合は早めに受診を)
- 2型糖尿病は子どもでも増えており、肥満がある場合は健診でチェックすることがあります
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、症状が出にくい
- 疲れやすさ、食欲低下、体重減少で気づくことがある
- 感染症(肺炎や尿路の感染)にかかりやすい、治りにくい
- 意識がぼんやりする、元気がないなど、普段と違う様子が出ることがある
原因
主な原因
- 血糖値が高い状態が続いている(糖尿病、糖尿病予備群)
- 食事・運動・睡眠などの生活習慣の乱れ、体重の増加
- 強いストレス、けが、手術、感染症など体にかかる大きな負担
- 一部の薬の影響(服用中の薬は医師・薬剤師に伝えてください)
- 妊娠(妊娠糖尿病)
- 結果が実際とずれる要因:貧血、腎臓や肝臓の病気、赤血球の寿命の変化など
リスク要因
- 家族(親・きょうだい)に糖尿病の人がいる
- 体重が増えた、お腹まわりの脂肪が多い
- 運動不足、座っている時間が長い
- 40歳以上
- 高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
- 睡眠不足、夜ふかし、生活リズムの乱れ
- 妊娠糖尿病を経験した、または大きめの赤ちゃんを産んだことがある
- 強いストレスや気分の落ち込みが長く続いている
- 一部の薬を長期間使っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- のどが渇く・おしっこが多い・体重が減る、といった状態が数日〜数週間続く
- 発熱、嘔吐、腹痛で水分がとれない
- 健診でHbA1cが6.5%以上、または「糖尿病の疑い」と言われた
- 治療中に低血糖のような症状がくり返す
定期受診を予約すべき場合:
- 健診でHbA1cが高い(5.6〜6.4%程度)と言われた
- 家族に糖尿病の人がいて、自分の値も気になる
- 妊娠を考えている、または妊娠中
- 生活習慣を見直したい、食事や運動の相談をしたい
診断
HbA1cは血液検査で測ります。腕の静脈から少量の血をとるだけで、特別な準備はほとんどいりません。日本では、HbA1cだけで決めるのではなく、血糖値(空腹時血糖や随時血糖)、症状、尿検査などを組み合わせて、医師が総合的に判断します。1回の値だけで決めず、日をあらためて確認することもあります。
行われる可能性のある検査
- HbA1c(NGSP値)
- 空腹時血糖、随時血糖
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(甘い水を飲んで時間をおき、血糖の変化を見る検査)
- 尿検査(尿に糖やたんぱくが出ていないか)
- 必要に応じて、グリコアルブミン(過去2〜3週間の平均を見る検査)、貧血の検査、腎臓・肝臓の検査
- 血圧、体重、腹囲の測定
診察で予想されること
採血は数分で終わり、終わったあとは普段どおりに過ごせます。HbA1cは食事の影響をあまり受けないため、絶食でなくても測れます(同じ日に空腹時血糖を測る場合は、前の晩から食べないよう指示されることがあります)。結果は通常数日以内に出ます。値の意味や次にどうするかは、結果とあわせて医師から説明を受けましょう。
治療
HbA1cが高いときの目標は「血糖値の平均を、無理なく安全な範囲に近づけること」です。治療の中心は、食事・運動・睡眠といった毎日の生活の見直しです。それでも値が高い場合や、すでに糖尿病と診断された場合は、医療機関での定期的なフォローや薬による治療が加わります。目標とする値は年齢や体の状態によって変わるので、自分に合った目標を医師と相談して決めましょう。
自宅でのセルフケア
- 毎日の食事を記録し、間食や甘い飲み物を減らすところから始める
- 歩く時間を少しずつ増やす(まずは10分でも)
- 睡眠時間を確保し、夜ふかしを減らす
- 禁煙する(禁煙外来も利用できます)
- 体重と腹囲をときどき測って記録する
- ストレスをためず、息抜きの時間をつくる
- 処方された薬は、自己判断でやめたり量を変えたりしない
- 発熱・下痢・食欲がないときは、かかりつけ医に相談する
医療治療
生活習慣の見直しを基本にしながら、必要に応じて血糖値を下げる飲み薬や注射を使う治療が行われます。どの治療が合うかは、HbA1cの値、年齢、体重、腎臓や心臓の状態、低血糖の起きやすさなどで変わります。治療中はHbA1cや血糖値を定期的に測り、効果と安全性を見ながら調整します。薬の内容や量は必ず医師・薬剤師の指示に従い、自己判断で変更しないでください。
この病気と共に生きる
HbA1cは「1回のがんばり」よりも「毎日の積み重ね」が反映されます。検査の2〜3か月前から特別なことをするのではなく、ふだんの食事・運動・睡眠を少しずつ整えることが近道です。検査の前日に食事を抜くようなことはせず、いつもどおりに過ごしてください。数値は上がったり下がったりしますが、長い目で見ていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 主食は適量にし、野菜やたんぱく質を一緒にとる
- 甘い飲み物やジュースを、水やお茶に置きかえる
- 早歩きなど、息が少しはずむ運動を週に数回
- 長時間すわったら、ときどき立って歩く
- お酒は量と回数を決めて楽しむ
- 睡眠は7時間前後を目安に、生活リズムを整える
- 歯みがきと歯科受診を習慣に(歯ぐきの病気は血糖に影響します)
食事と運動
食事では、食べる順番(野菜→たんぱく質→主食)を意識すると、血糖の上がり方がゆるやかになります。極端な糖質制限や食事抜きは、かえって続かず、低血糖の心配もあるためおすすめしません。運動は、ウォーキングや軽い筋トレなど、話をしながらできる程度を20〜30分、週に3回くらいから始めてみましょう。持病や痛みがある人は、始める前に医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
数値に一喜一憂して落ち込んだり、「自分はだめだ」と感じたりすることがあります。HbA1cは体の状態を教えてくれる目安であって、あなたの価値を決めるものではありません。気持ちが重い日が2週間以上続く、眠れない、何も楽しめないといったときは、かかりつけ医やお住まいの自治体の健康相談窓口、専門の相談機関に話してみてください。ひとりで抱えなくて大丈夫です。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や相談窓口に連絡してください。
予防
2型糖尿病は、生活習慣を整えることで発症を遅らせたり、防いだりできることが分かっています。HbA1cが予備群の範囲(6.0〜6.4%程度)でも、食事・運動・体重管理で改善した例は多くあります。1型糖尿病は生活習慣で防ぐことはできませんが、早期に見つけて治療を始めることが大切です。
ワクチン
糖尿病があると、感染症にかかったときに重症化しやすくなります。インフルエンザや肺炎などのワクチンについては、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
日本では、40〜74歳の国民健康保険加入者などを対象に特定健康診査が行われ、HbA1cや血糖値が調べられます。職場の健康診断でも測定されます。家族に糖尿病の人がいる、体重が増えたなど気になる場合は、健診を待たずに医療機関で相談してもよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 網膜症(目の血管が傷つき、視力に影響することがある)
- 腎症(腎臓の働きが落ち、透析が必要になることがある)
- 神経障害(手足のしびれ・痛み、感覚がにぶくなる)
- 心筋梗塞や脳卒中(血管が傷つくことで起こりやすくなる)
- 歯周病、皮膚や尿路の感染症
- 足の傷が治りにくくなる(重症化すると切断に至ることも)
- 血糖が非常に高くなると、意識障害を起こす緊急の状態になることがある
長期的な見通し
HbA1cが高い状態が続いても、生活習慣の見直しと適切な治療で、合併症のリスクは大きく下げられます。実際に、値を改善して元気に暮らしている人はたくさんいます。検査の値は、今の状態を知り、これからを変えるためのヒントです。あせらず、かかりつけ医と一緒に進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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