太ももの裏の肉離れ(ハムストリング損傷)
概要
ハムストリング損傷は、太ももの裏側にある筋肉のグループ(ハムストリングス)が伸びすぎたり、急に縮んだりして傷つくけがです。いわゆる「肉離れ(にくばなれ)」の一つで、走る・蹴る・止まるといった動作のときによく起こります。損傷の程度は軽いものから、筋肉の線維が大きく切れるものまでさまざまです。
重要な事実
- 太ももの裏側の筋肉が傷つき、急な痛みや突っ張り感が出るけがです。
- ダッシュや急停止、急な方向転換など、スピードを出す動作で起こりやすいです。
- 多くは安静と段階的なリハビリで回復しますが、同じ場所をくり返し痛めることもあります。
- ウォームアップや筋力づくりである程度予防できます。
とてもよくあるけがです。スポーツをする人、特に走る・跳ぶ・蹴る動作の多い競技をする人に多くみられます。日常のちょっとした動作で起こることもあります。
10代後半から30代のスポーツ愛好家や運動部の生徒に多いけがですが、年齢を問わず起こります。日ごろ運動していない人が急に激しく動いたときにも起こります。
症状
- 太ももが大きく腫れて、足の形が明らかに変わっている(大きな変形がある)
- 激しい痛みのため立つこともできず、自分で動かせない
- 足のしびれや力が入らない状態が強く出ている、または排尿・排便の異常を伴う
- ⚠体重をかけられないほどの痛みが続く
- ⚠あざや腫れがどんどん広がっている
- ⚠数日たっても痛みが強くなる、または発熱や赤みを伴う腫れがある
- ⚠足先の感覚がにぶい、しびれる感じが続く
一般的な症状
- 太ももの裏側に、急に「ピリッ」「グキッ」とした痛みを感じる
- 太ももの裏が突っ張る、張っている感じがする
- 歩くときや階段を上るときに痛む
- 太ももの裏を押すと痛い
- 傷ついた場所の腫れや、内出血によるあざ(青〜紫の変色)
- 足に力が入りにくい、蹴る動作がしにくい
- 太ももの裏を伸ばすストレッチで痛みが出る
子供の症状
- 成長期の子どもでは、筋肉が骨に付く部分(おしりの下あたりの骨の出っぱり)を痛めることがあります。これは成長軟骨というやわらかい部分の損傷で、大人の肉離れとは少し違います。
- 走っている最中やジャンプの着地で、おしりの下あたりに急な痛みを訴えることがあります。
- 痛みで歩き方が変わったり、運動をいやがったりする場合は受診してください。
高齢者の症状
- 年齢とともに筋肉の量や柔らかさが減るため、軽い動作でも起こることがあります。
- 階段の上り下りや、急に振り向く動作で痛めることがあります。
- 回復に時間がかかることがあり、再発をくり返しやすい傾向があります。
原因
主な原因
- ダッシュや加速など、急に強く蹴り出す動作
- 急停止や急な方向転換
- ボールを強く蹴る動作
- ウォームアップ不足のまま激しい運動をしたとき
- 疲労がたまった状態での運動
- 筋肉が十分に伸びきる前に急に縮む(伸び縮みの切り返し)動き
リスク要因
- 以前に同じ場所で肉離れをしたことがある
- 太ももの裏側の筋力が弱い、または左右差が大きい
- 太ももの前側と裏側の筋肉のバランスが悪い
- 股関節や太ももの柔軟性が低い
- 運動前のウォームアップが足りない
- 疲労がたまっている、睡眠不足である
- 寒い環境での運動
- 急に運動量を増やした
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 歩けない、体重をかけられないほどの痛みがある
- 腫れやあざが急速に広がっている
- 発熱を伴う赤みや腫れがある
- 足のしびれや力の入りにくさがある
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みが1週間以上続いている
- 痛みは引いたが、力が入らない感じが残る
- スポーツや仕事に戻りたいが、どのくらい動いてよいか分からない
- 同じ場所をくり返し痛めている
診断
まず医師が、けがをしたときの様子や痛みの出方を聞き、太ももの裏側を触って確認します。筋肉のどのあたりが、どのくらい傷ついているかを調べるために、必要に応じて画像の検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(どの動作で痛めたか、どこが痛むかを確認します)
- 超音波検査(エコー)で筋肉の傷つき具合を見る
- MRI検査で、損傷の程度をより詳しく調べる
- レントゲン検査で、骨の損傷がないかを確認する(特に成長期の子ども)
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、痛みのある場所を軽く触って確認します。画像検査は痛みのない方法で行われます。損傷の程度によって、安静の期間やリハビリの進め方が変わります。
治療
ハムストリング損傷の治療の中心は、痛みを抑えながら少しずつ動かせるようにしていくことです。最初は安静と冷却などの基本的なケアを行い、痛みが落ち着いてきたら、ストレッチや筋力づくりを段階的に進めていきます。
自宅でのセルフケア
- けがをした直後は、無理に動かさず安静にする
- 患部を冷やす(氷をタオルで包み、10〜20分ほどを目安に、皮膚を直接冷やしすぎないようにする)
- 弾力のある包帯などで軽く圧迫する(きつく締めすぎない)
- 横になるときは、太ももを少し高くして腫れを抑える
- 痛みの範囲で、少しずつ歩くなど動かす量を増やしていく
- 痛みがぶり返さない範囲でストレッチを始める(勢いをつけず、ゆっくり伸ばす)
- スポーツに戻る前に、早歩き→軽いジョギング→ダッシュと段階を踏む
- 冷却や痛み止めの使用について迷ったら、医師や薬剤師に相談する
医療治療
医療機関では、損傷の程度を確認したうえで、安静の期間や動かしてよい範囲の指示が出ます。理学療法(リハビリ)では、痛みのない範囲から関節を動かす練習、筋肉をやわらかくするストレッチ、筋力を戻す運動、バランスを整える運動などを段階的に進めます。痛みが強いときは、痛みをやわらげる治療が検討されることがあります。どの方法が合うかは体の状態によって変わるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。市販薬を使う場合も、必ず薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が必要になることは多くありません。筋肉や腱が大きく切れている場合や、骨に付く部分がはがれている場合など、日常生活や競技復帰に大きく影響すると判断されたときに検討されます。詳しくは整形外科の医師に相談してください。
この病気と共に生きる
痛みが強い時期は、長距離の歩行や階段の往復を減らし、できるだけ楽な姿勢で過ごしましょう。痛みが落ち着いてきたら、日常生活の中で少しずつ歩く量を増やしていくと回復が進みます。焦らず、その日の体の反応を見ながら調整することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 運動の前後に、軽いウォームアップとクールダウンを取り入れる
- 太ももの裏側のストレッチを、痛みのない範囲で習慣にする
- おしりや太ももの筋力を少しずつ鍛える
- 睡眠と休息をしっかりとる
- 運動量を急に増やさず、段階的に上げる
- 硬い椅子に長時間座り続けるときは、ときどき立って動く
食事と運動
バランスのよい食事は、体の回復を助けます。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を毎食少しずつとり、野菜や果物も合わせて食べましょう。水分もこまめにとります。運動は、痛みのない範囲で行うことが基本です。痛みが出たら中止し、翌日も痛みが残る場合は運動量を減らしましょう。回復の段階に合わせて、医師や理学療法士に相談しながら進めるのが安心です。
精神的健康と心の健康
けがで動けなくなることや、競技に戻れるか分からないことは、不安やいらだちにつながることがあります。気分が落ち込む、眠れない、不安が強い状態が続くときは、一人で抱え込まずに家族や友人、医療者に話してください。つらさが続くときは、医療機関や地域の相談窓口に相談することも大切です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、工夫である程度リスクを下げられます。運動前のウォームアップ、太ももの裏側の筋力づくりとストレッチ、疲労をためないことが大切です。以前に痛めた人は、復帰を急がず段階を踏むことで再発を減らせます。
検診プログラム
特定の決まった検査はありません。ただし、以前に肉離れをした人や、同じ場所の痛みをくり返す人は、医療機関で状態を確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 傷ついた部分が十分に治らず、同じ場所をくり返し痛める(再発)
- 痛みが長引く、違和感が残る
- 太ももの裏側の筋肉が硬くなり、柔軟性が低下する
- 思うように力を出せず、スポーツの動きが変わってしまう
- まれに、腫れや内出血が広がったり、神経の症状が出たりすることがある
長期的な見通し
ハムストリング損傷の多くは、適切な安静と段階的なリハビリで回復します。時間はかかることがありますが、痛みに合わせて少しずつ動かしていくことが近道です。再発を防ぐためにも、焦らず段階を踏んでスポーツや仕事に戻りましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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