低血糖(血糖が下がりすぎたとき)への対処
概要
低血糖とは、血液の中の糖分(ブドウ糖)が少なくなりすぎた状態のことです。ブドウ糖は脳や体を動かすための大切なエネルギーなので、足りなくなると体と頭にさまざまなサインが現れます。早めに気づいて糖分をとれば、多くの場合は数分から十数分で落ち着きます。
重要な事実
- 低血糖は「血糖値が下がりすぎた状態」で、冷や汗・手のふるえ・強い空腹感・集中できない感じなどがよくあるサインです。
- 血糖を下げる薬(注射薬や飲み薬)を使っている人に多く起こりますが、食事を長くとらないときや飲酒などでも起こることがあります。
- 意識がもうろうとする、呼びかけに応じない、けいれんするといった場合は命にかかわることがあるため、すぐに救急(119)を呼んでください。
低血糖は、血糖を下げる治療を受けている人では珍しくない出来事です。とくに高齢の方、食事の量や時間が不規則になりやすい方、腎臓の働きが低下している方では起こりやすいとされています。
主に、血糖を下げる薬(注射薬や飲み薬)で治療している人が対象になります。子どもから高齢者まで起こりえます。糖尿病の治療をしていない人でも、長時間食べない、アルコールを多く飲む、体調を大きく崩すなどの場面で起こることがあります。
症状
- 意識がない、呼びかけても反応が弱い
- けいれんしている
- 呼吸がおかしい、ぐったりしている
- 自分で食べたり飲んだりできない状態
- 倒れて動けない、けがをしている
- ⚠糖分をとっても症状が良くならない、または繰り返す
- ⚠家族が「いつもと違う」と感じるほどのぼんやり感がある
- ⚠夜間に低血糖が何度も起こる
- ⚠低血糖が起きたあと、だるさや頭痛が続く
一般的な症状
- 冷や汗が出る、汗が止まらない
- 手や指がふるえる
- 動悸(どうき)がする、心臓がドキドキする
- 強い空腹感
- 頭痛、めまい、ふらつき
- 強い眠気、ぼんやりする
- 集中できない、考えがまとまらない
- イライラする、気分が変わる
- 顔色が青白くなる
- 唇や舌、指先のしびれ
子供の症状
- 理由なく泣き続ける、ぐずる
- ふだんより眠そう、ぼんやりしている
- 顔色が悪い、汗をかいている
- おねしょ(いつもはしない子の場合)
- 言葉がうまく出ない、元気がない
- けいれんや意識がぼんやりする(この場合はすぐ救急へ)
高齢者の症状
- 冷や汗やふるえなど、わかりやすいサインが出にくいことがある(自覚しにくい低血糖)
- ふらつき、力が入らない、歩きにくい
- 急に元気がない、会話がかみ合わない、混乱する
- 転倒やけがにつながることがある
- 夜間に汗を多くかく、悪夢を見る、朝の頭痛
原因
主な原因
- 血糖を下げる薬(注射薬や飲み薬)の量と、食事・運動のバランスが合わないとき
- 食事の量が少ない、食事の時間が遅れる、食事を抜いた
- ふだんより運動量が多かった
- アルコールを飲んだ(とくに食事をとらずに飲んだ)
- 体調不良で食べられなかった、嘔吐や下痢があった
- 腎臓や肝臓の働きの変化で、薬の効き方が変わった
- 糖尿病の治療をしていない人では、長時間の絶食、アルコール多飲、膵臓(すいぞう)やホルモンの病気などが関係することがある
リスク要因
- 高齢である
- 腎臓の働きが低下している
- これまでに低血糖を起こしたことがある
- 食事の時間や量が不規則になりやすい
- よく飲酒する
- 激しい運動をする、または運動量が急に増えた
- 薬の量や種類が最近変わった
- 血糖値の目標が低めに設定されている
- 一人で過ごす時間が長い、夜間に気づいてもらいにくい環境にいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとする、けいれんする、自分で対処できない(この場合は119番へ)
- 自分で糖分をとっても改善しない、または短時間に何度も繰り返す
- 夜間に低血糖が続く、朝に頭痛や汗がひどい
- 「気づかないうちに低血糖になっている」と思われることがある
- 低血糖による転倒やけがをした
定期受診を予約すべき場合:
- 低血糖が起きた日時・症状・そのときの血糖値・食べたものを記録して、次の受診時に医師に見せる
- 薬の量や種類、飲み合わせについて確認したいとき
- 食事や運動の習慣を見直したいとき
- 血糖測定の回数や方法について相談したいとき
診断
診断は、症状の聞き取りと血糖値の測定を組み合わせて行います。どんな症状が、いつ、どんな状況で出たのか、そのとき血糖値がどのくらいだったのかを確認することが大切です。必要に応じて血液検査や、血糖値を継続して記録する機器を使うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 血糖値の測定(指先で測る自己測定など)
- 症状と血糖値の関係をみる記録の確認
- 血液検査(腎臓・肝臓の働きやホルモンの状態などを確認)
- 持続的に血糖値を記録する機器(CGM)による観察
- 場合によっては、医療機関で一定時間観察しながら調べる検査
診察で予想されること
診察では、低血糖が起きたときの状況をくわしく聞かれます。「何時ごろ」「どんな症状が」「どのくらい続いた」「その前に何を食べ、どんな運動をし、薬をどう使ったか」をメモしておくと話がスムーズです。診断がついたあとは、対処のしかたと予防の方法を一緒に考える流れになります。
治療
低血糖への対処は「早く気づく」「すぐ糖分をとる」「原因を見直す」の3つが中心です。軽いうちは自分で糖分をとることで改善します。繰り返す場合や重症の場合は、医師が薬の内容や生活のしかたを調整します。
自宅でのセルフケア
- 症状が出たら、まず安全な場所に座るか横になる(車の運転中なら安全な場所に停める)
- ブドウ糖を含むもの(糖分の入った飲み物、あめ、糖のタブレットなど)を手早くとる
- 15分ほど待って、症状と血糖値を確認する。改善していなければ、もう一度糖分をとる
- 落ち着いたら、少し時間をおいて軽い食事や間食をとり、血糖が下がりすぎないようにする
- 糖分をとったあとは、必ず起きたことを記録する(日時・症状・血糖値・対処)
- ブドウ糖を含む携帯用の糖分を、いつも持ち歩く(寝室、かばん、職場、車にも)
- 家族や同僚、学校の先生など、身近な人に低血糖のサインと助け方を伝えておく
医療治療
医師は、低血糖が起きた状況をふまえて、血糖を下げる薬の量や種類、飲み合わせを見直します。あわせて、血糖測定の回数やタイミング、食事と運動のバランスについて具体的な指導を行います。意識がもうろうとしているなど自分で飲み込めない重症のときは、医療者による処置(糖分の点滴など)や、緊急時に使う注射薬が家族や医療者によって使われることがあります。どの方法が合うかは、年齢や生活スタイル、これまでの低血糖の起こり方によって変わるため、主治医と相談して決めていきます。
手術が検討される場合
低血糖そのものを治す手術はありません。ただし、低血糖の原因として膵臓(すいぞう)などの病気が疑われる場合は、専門の医療機関で別の検査や治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
低血糖は「起きたときにどう動くか」を決めておくと、ぐっと不安が減ります。糖分を持ち歩く、身近な人に伝えておく、起きたことを記録する。この3つを習慣にすると、生活の中で落ち着いて対処できるようになります。
生活習慣のアドバイス
- 食事は決まった時間に、量を大きく変えずにとる。抜いたり極端に減らしたりしない
- 運動の前後に血糖値を確認し、必要なら軽い間食をとる
- アルコールは食事と一緒に、量を決めて飲む。飲んだ日は夜間の低血糖に注意する
- 血糖測定を習慣にし、記録を診察に持っていく
- 携帯用の糖分を、かばん・職場・寝室・車など複数の場所に置く
- 睡眠不足や体調不良のときは、いつもより血糖が乱れやすいと意識する
- 運転する前に血糖値を確認する習慣をつける
食事と運動
食事は、主食(炭水化物)を抜かずに、決まった時間にとることが基本です。運動は体にとって大切ですが、いつもより長く歩いた、強く動いたという日は血糖が下がりやすくなります。運動の前に血糖値を測り、低めなら軽く何かを食べてから始める、運動後もこまめに測る、といった工夫が役立ちます。どの程度の運動量が自分に合うかは、主治医や管理栄養士、糖尿病療養指導の専門職と相談して決めましょう。
精神的健康と心の健康
低血糖は、強い不安や恐怖を残すことがあります。「また起きたらどうしよう」「夜中に気づけなかったら」と心配になるのは自然なことです。不安が続いて眠れない、外出を控えてしまう、気分が落ち込むといったときは、ひとりで抱えずに主治医や相談窓口に話してください。話すことで対処の計画を一緒に整えられます。気持ちがつらいときは、地域の相談窓口や医療機関の相談室も利用できます。
予防
低血糖は、工夫によって起こる回数を減らせます。血糖測定を続けること、食事・運動・薬のバランスを保つこと、起きたことを記録して診察で共有することが中心になります。完璧を目指すより、続けられる小さな習慣を積み重ねることが大切です。
ワクチン
低血糖を直接防ぐワクチンはありません。ただし、感染症で体調を崩すと食事がとれず低血糖のきっかけになることがあるため、インフルエンザなどの予防接種をどうするかは主治医と相談してみてください。
検診プログラム
定期的な血糖値の測定や血液検査(血糖の長期指標を含む)は、低血糖のリスクを知る手がかりになります。低血糖が疑われるときは、症状と血糖値の記録を診察で見せることが、いちばんの「見つける方法」になります。
合併症
治療しない場合
- 意識を失う、けいれんを起こす(重症低血糖)
- 転倒やけが、交通事故などの危険
- 夜間に起こった場合に気づくのが遅れる
- 重症低血糖を繰り返すことで、体がサインに気づきにくくなることがある
- 長く続く血糖の大きな乱れは、心臓や血管の健康に影響することがある
長期的な見通し
低血糖は、サインの見分け方と対処のしかたを身につけることで、多くの人が安全に生活できています。起きたことを記録して医療者と共有すれば、薬や生活の調整で起こりにくくしていけます。あせらず、ひとつずつ整えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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