最近、血糖値を測っていますか?
概要
血糖値(けっとうち)とは、血液の中を流れているブドウ糖(糖分)の量のことです。ブドウ糖は体を動かすための大切なエネルギーですが、多すぎても少なすぎても体に負担がかかります。健康な人の体では、すい臓から出る「インスリン」というホルモンが調整役になり、食後でも血糖値が上がりすぎないようにコントロールしています。この調整がうまく働かなくなると血糖値が高い状態(高血糖)が続き、放っておくと血管や神経、目や腎臓などに少しずつ負担がかかっていきます。血糖値を測ることは、今の自分の体の状態を知るための、いちばん手軽な「健康のものさし」です。
重要な事実
- 血糖値は食事・運動・睡眠・ストレスなどで1日のうちに大きく変動します。1回の測定だけでなく、食事との関係や日々の傾向を見ることが大切です。
- 高血糖は初期にはほとんど自覚症状がないことが多く、症状がないから大丈夫とは言えません。定期的に測って知ることが早期発見の近道です。
- 糖尿病と診断される手前の「境界型」という段階で生活を見直すと、その後の進行を遅らせられることが分かっています。手遅れということはありません。
血糖値の異常はとても身近な問題です。日本では、糖尿病が強く疑われる人と、その可能性が否定できない人(境界型)を合わせると、成人の相当な割合にのぼると報告されています。特に40歳以上で増えてきます。厚生労働省がすすめる健康診査(特定健診)でも血糖値の検査が含まれており、多くの人が毎年の健診で自分の値を知る機会を持っています。
家族に糖尿病の人がいる方、体重が増え気味の方、運動不足の方、40歳以上の方、妊娠中に血糖値が高くなったと言われたことのある方、睡眠不足やストレスが多い方などが該当しやすいです。ただし、痩せていても、若くても発症することがあります。自分は関係ないと思い込まず、一度測ってみることが大切です。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い、けいれんしている
- 呼吸が荒い、息が果物のような甘いにおいがする(非常に高い血糖による緊急事態のサイン)
- 嘔吐が止まらず水分が飲めない、立てないほどの強いだるさがある
- 低血糖が疑われ、糖分をとっても意識が戻らない
- ⚠血糖値が非常に高い状態が数日続いている
- ⚠発熱・嘔吐・下痢で水分がとれず、ぐったりしている
- ⚠足の傷ややけどが赤く腫れて痛む、膿が出る、色が黒っぽくなる
- ⚠冷や汗・手の震え・動悸などの低血糖の症状が、食事や糖分で治まらない
- ⚠視界のかすみが急に強くなった
一般的な症状
- のどが渇く、水をよく飲むようになる
- トイレの回数が増える(特に夜中に起きて行くことがある)
- 疲れやすい、体がだるい、やる気が出ない
- 食べているのに体重が減っていく
- 傷が治りにくい、皮膚がかゆい、できものが繰り返す
- 視界がぼんやりする、ピントが合いにくい
- 食後に強い眠気がくる
- 実は、はっきりした症状が何もないことも多い
子供の症状
- おねしょが再び増える、夜中に何度もトイレに行く
- よく食べるのに体重が増えない、やせてくる
- 元気がない、学校で集中できない、疲れやすい
- 腹痛や嘔吐が続き、急にぐったりする(この場合は早めに受診を)
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、症状に気づきにくい
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 元気がない、ぼんやりする、物忘れが増えたように見える
- 感染症(かぜ、肺炎、尿路感染)にかかりやすく、治りにくい
- 脱水になりやすい(口が乾く、尿が少ない、皮膚が乾く)
原因
主な原因
- すい臓から出るインスリン(血糖値を下げるホルモン)の量が減ってしまう
- インスリンは出ているのに、体の細胞が反応しにくくなる(インスリン抵抗性)
- 食べ過ぎ、運動不足、睡眠不足、強いストレスなど、生活習慣の積み重ね
- 遺伝的な体質や加齢による変化
- 一部の薬の影響や、すい臓の病気など別の病気が関係している場合もある
- 妊娠中のホルモンの変化によって血糖値が上がることがある
リスク要因
- 家族(親・きょうだい)に糖尿病の人がいる
- 体重が増えている、おなか周りに脂肪がついている
- 運動する習慣がほとんどない
- 40歳以上である
- 睡眠不足、夜勤、食事の時間が不規則
- 強いストレスが長く続いている
- 妊娠中に血糖値が高いと言われたことがある
- 血圧が高い、脂質(中性脂肪やコレステロール)の値が気になる
- たばこを吸う
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとしている、けいれんしている、呼びかけに反応が弱い(すぐに119番へ)
- 呼吸が荒い、息が甘い果物のようなにおいがする
- 嘔吐が続いて水分がとれない、尿がほとんど出ない
- 足の傷が赤く腫れて痛む、膿が出る、黒ずんできた
- 低血糖の症状が糖分をとっても改善しない
定期受診を予約すべき場合:
- のどが渇く、トイレの回数が増えた、疲れやすいといった症状が続いている
- 健康診査や健診で血糖値・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を表す値)が高めと言われた
- 家族に糖尿病の人がいて、自分も気になっている
- 体重が増えてきた、おなか周りが気になる
- 妊娠を考えている、または妊娠中で血糖値を気にしている
診断
血糖値の異常は、主に血液検査で判断します。健診で高めと言われた場合は、医療機関で改めて詳しい検査を受けることになります。検査の結果と、のどの渇きや体重減少といった症状の有無をあわせて、医師が総合的に判断します。1回の検査だけで決めるのではなく、別の日の値も確認することが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖値(朝、何も食べていない状態で測る血液検査)
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均がわかる検査)
- 随時血糖値(食事の時間に関係なく測る血液検査)
- 経口ブドウ糖負荷試験(決まった量のブドウ糖を飲んで、時間をあけて何回か採血する検査)
- 尿検査(尿の中の糖やケトン体を調べる)
- 必要に応じて、目の検査、腎臓の働きの検査、血圧や脂質の検査
診察で予想されること
検査はどれも短時間で終わり、入院の必要はほとんどありません。採血の前に食事を抜く必要がある検査もあるので、事前に「何時間前から食事を控えるか」を医療機関に確認しておくと安心です。結果はその日のうちに一部がわかり、数日かかるものもあります。結果を聞くときは、気になることをメモにしておくと聞き漏らしが防げます。
治療
血糖値が高い状態への対応は、大きく2つに分かれます。ひとつは食事・運動・睡眠といった毎日の生活を整えること、もうひとつは医療機関での定期的なフォローと、必要に応じた治療です。境界型のように軽い段階では生活の見直しが中心になり、糖尿病と診断された場合でも、まずは生活の土台を整えることが治療の柱になります。どの方法が合うかは、年齢や体の状態、生活スタイルによって変わるため、医師と相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 毎日の食事の量と時間を、できるだけ一定にしてみる
- 主食を抜くのではなく、おかずと一緒にゆっくり食べる(野菜から先に食べると満足感が出やすい)
- 甘い飲み物を、水・お茶・無糖の飲み物に置きかえてみる
- 歩く時間を少しずつ増やす(まずは1日10分から)
- 睡眠時間を確保する。寝不足は血糖値を上げる方向に働く
- 体重と血圧を、無理のない範囲で記録する
- 禁煙を考えてみる(一人で無理なら相談窓口を利用する)
- 健診の結果を保管して、前回と比べてみる
医療治療
医療機関では、定期的な血液検査で血糖の状態を確認しながら、生活の見直しを支える指導を受けます。生活だけでは十分に下がりにくい場合は、血糖値を調整するための治療が検討されます。治療の内容は、薬の種類や使い方を含めて体の状態に合わせて医師が判断するもので、自己判断で始めたりやめたりはしないことが大切です。気になる点や不安は、遠慮なく医師や薬剤師、看護師に質問してください。
この病気と共に生きる
血糖値とつきあっていくうえで大切なのは、完璧を目指さないことです。食事や運動が崩れる日があっても、翌日からまた戻せば大丈夫。測定した値は「自分を責めるため」ではなく「体の声を知るため」のものとして使うと、気持ちがずっと楽になります。体調がすぐれない日は無理をせず、気になる変化はメモしておき、次の受診のときに伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 食事は決まった時間に、腹八分目を意識してみる
- アルコールは量と頻度を決めて、飲まない日をつくる
- たばこは血糖値にも血管にも負担をかけるため、禁煙を検討する
- 睡眠をしっかりとり、夜更かしを減らす
- ストレスをためず、自分なりの息抜きを習慣にする
- 足の裏や指の間を毎日見て、傷や色の変化に気づいたら早めに相談する
- 健診や受診の予定をカレンダーに入れて、忘れないようにする
食事と運動
食事は、炭水化物を抜くのではなく「量を適量に、ゆっくりよく噛んで」が基本です。野菜やたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品など)を先に食べると、食後の血糖値の上がり方がゆるやかになりやすいと言われています。運動は、息が少しはずむ程度の早歩きを1日20〜30分、週に数回を目安にしてみてください。一度にまとめてでなくても、こまめに体を動かすだけでも効果が期待できます。持病がある方は、運動の強さを事前に医師に相談しておくと安心です。
精神的健康と心の健康
血糖値のことを気にしすぎると、「食べるのが怖い」「測るのが憂うつ」といった気持ちになることがあります。これはとてもよくあることです。数字はあなたの人格を評価するものではありません。気持ちが重い日が続くとき、不安で眠れないときは、かかりつけ医や地域の健康相談、専門の相談窓口に話してみてください。つらい気持ちを一人で抱え込まないことが、体の健康にもつながります。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたり、生きるのがつらいと感じたりしたときは、すぐに地域の相談窓口や医療機関に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることは十分に可能です。特に「境界型」と言われる段階では、食事と運動の見直しによって血糖値が改善したという報告が多くあります。体重を少し減らす、歩く時間を増やす、睡眠を確保する——こうした小さな積み重ねが、将来のリスクを下げます。遺伝的な体質があっても、生活の工夫で発症を遅らせられることが知られています。
ワクチン
血糖値が高い状態が続くと感染症にかかりやすく、また重症化しやすくなると言われています。インフルエンザや肺炎などのワクチンについては、年齢や体の状態をふまえて、かかりつけ医に相談してみてください。
検診プログラム
厚生労働省がすすめる特定健康診査(特定健診)では、血糖値とHbA1cの検査が含まれています。40歳以上を対象に、加入している健康保険を通じて案内が届きます。健診で「高め」と言われたら、そのままにせず医療機関で確認することが大切です。妊娠を考えている方や妊娠中の方は、妊婦健診での検査についても医師に確認してみてください。
合併症
治療しない場合
- 血管が傷つき、動脈硬化が進みやすくなる(心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がる)
- 目の網膜の細い血管が傷み、視力に影響が出ることがある
- 腎臓の働きが少しずつ低下することがある
- 手足の先の神経が傷み、しびれや感覚の鈍さが出ることがある
- 足の傷が治りにくくなり、悪化することがある
- 感染症にかかりやすく、治りにくくなる
- 歯ぐきの病気(歯周病)が悪化しやすくなる
- 血糖値が極端に高い状態が続くと、緊急の治療が必要になることがある
長期的な見通し
血糖値は、測って知ることから始められます。境界型の段階で生活を見直せば、状態が良くなることも十分に期待できます。糖尿病と診断された場合でも、定期的な受診と毎日の工夫を続けることで、合併症を防ぎながらふつうの生活を送っている方はたくさんいます。大切なのは、完璧を目指すことではなく、長く続けられるペースを見つけること。気になることは、早めにかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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