頭部のけがと脳しんとう(コンカッション)
概要
「頭部のけが」は、転んだり、ぶつけたり、何かが当たったりして頭に強い力が加わったときのけがの総称です。皮膚の切り傷や「たんこぶ」のように外側だけのこともあれば、頭の骨(頭蓋骨=頭を包む硬い骨)や、その中の脳が傷つくこともあります。脳しんとう(コンカッション)は、その中でもよくみられるもので、脳が一時的にうまく働かなくなる状態です。脳そのものに大きな傷がなくても起こり、頭痛、ぼんやりした感じ、もの忘れ、めまいなどが現れます。多くの場合は時間とともに良くなりますが、治りきる前に無理をすると回復が長引くことがあります。
重要な事実
- 脳しんとうは「脳が一時的に調子を崩した状態」で、CTなどの画像検査で異常が出ないことも多いです。
- 症状はぶつけた直後ではなく、数時間から翌日になって出てくることもあります。
- 今の考え方は「長期間まったく動かずに安静」ではなく、「短い休息のあと、無理のない範囲で少しずつ日常に戻る」です。
はい。頭部のけがは日常生活でとてもよく起こります。特に子ども、スポーツをする人、高齢者に多くみられます。
どなたにも起こりますが、転びやすい乳幼児や学童、コンタクトスポーツ(体がぶつかり合うスポーツ)をする10代から20代、転倒しやすい75歳以上の高齢者、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人、飲酒の機会が多い人では起こりやすくなります。
症状
- 意識を失った、または意識が戻らない
- 呼びかけても反応が弱い、どんどん眠くなる、起こしても起きにくい
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 黒目の大きさが左右で明らかに違う
- 鼻や耳から透明な液体、または血が流れている
- 手足の麻痺、しゃべりにくい、ろれつが回らない、立てない・歩けない
- 何度も吐く、吐き続ける
- 頭痛がどんどん強くなっていく
- 乳幼児でぐったりしている、泣き方がいつもと違う、反応がない
- ⚠一度吐いた、気持ち悪さが続く
- ⚠頭痛が続く、腫れが大きい、ぶつけた場所を押すと強く痛む
- ⚠めまいやふらつきが続いて歩くのが不安
- ⚠物忘れや集中できない状態が続く
- ⚠光がまぶしすぎる、音がつらすぎる
- ⚠子ども: いつもより機嫌が悪い、食欲がない、遊ばない、眠りがいつもと違う
- ⚠高齢者: なんとなく元気がない、ぼんやりしている、いつもと様子が違う
- ⚠血液を固まりにくくする薬を飲んでいて頭をぶつけた
一般的な症状
- 頭痛、頭が重い感じ、ぶつけた場所の痛みや腫れ
- ぼんやりする、頭が働かない感じ、考えがまとまらない
- もの忘れ(ぶつけた前後の出来事を覚えていない)、集中できない
- めまい、ふらつき、バランスが取りにくい
- 吐き気、食欲がない
- 光や音がいつもよりまぶしい・うるさく感じる
- 眠気が強い、または寝つきが悪い・夜中に目が覚める
- 疲れやすい、いつもより体力が続かない
- イライラしやすい、気分が落ち込む、不安になる
- 耳鳴り、目のかすみ、物が二重に見える
子供の症状
- いつもより泣き止まない、あやしても機嫌が悪い
- 母乳やミルクを飲まない、食べない、何度も吐く
- 遊ばない、反応が薄い、ぐったりしている
- いつもと眠り方が違う(起きにくい、または眠れない)
- 歩き方がふらつく、言葉がいつもと違う
- 学校で集中できない、宿題が進まない、成績が急に落ちる
- 赤ちゃんでは頭の大泉門(ひたいの上のやわらかい部分)が盛り上がっている
高齢者の症状
- 頭痛を訴えないことが多く、ぼんやり・元気がない・食欲がないといった変化で気づかれる
- 歩きにくい、ふらつく、転びやすくなる
- 物忘れが急に増えた、話がかみ合わない
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合は、軽く見えても頭の中の出血の危険が高まります
- 数日たってから症状が出ることがあるため、ぶつけた事実を家族で共有しておくと安心です
原因
主な原因
- 転倒・つまずき(家庭内、階段、浴室、屋外)
- スポーツ中の接触、ボールが当たる、転倒
- 交通事故(自転車、バイク、自動車)
- 職場や作業中の事故、高い場所からの落下、落下物
- 子どもでは遊具からの転落、走って転ぶ
- 赤ちゃんでは強く揺さぶられること(乳幼児揺さぶられ症候群)
- ヘルメットやシートベルトを着けていない状態での事故
リスク要因
- 乳幼児・子ども(頭が大きく、転びやすい)
- 高齢者(筋力やバランスの低下で転びやすい)
- 以前に脳しんとうをしたことがある(繰り返すと回復が遅くなりやすい)
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる
- 飲酒(バランスが悪くなり、転びやすく、けがに気づきにくい)
- コンタクトスポーツ(ラグビー、サッカー、格闘技など)
- ヘルメットやシートベルトを着けない習慣
- 住まいの環境(段差、滑りやすい床、照明が暗い、物が多い)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識を失った、意識がぼんやりしている
- 何度も吐く、頭痛が強くなる
- 手足の動きがおかしい、しゃべりにくい
- 鼻や耳から液体や血が出た
- 子どもや高齢者でいつもと様子が明らかに違う
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいて頭をぶつけた
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛、めまい、物忘れなどの症状が数日以上続く
- 仕事や学校に支障が出ている
- スポーツに戻ってよいか相談したい
- 同じように頭をぶつけることを繰り返している
- 睡眠や気分の変化が続いている
診断
まず、いつ・どこで・どうやってぶつけたか、意識を失ったか、その前後のことを覚えているかを聞きます。そのうえで、目の動き、力の入り方、反射、バランス、記憶や集中力などを診る神経の診察を行います。画像検査は、出血や骨折が疑われるときに行うもので、すべての人に必要なわけではありません。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状の確認(受傷の状況、意識の有無、思い出せるかどうか)
- 神経学的診察(目の動き、反射、手足の力、感覚、バランス、記憶・集中)
- 頭部CT検査(頭の中の出血や頭蓋骨の骨折が疑われるとき)
- 頭部MRI検査(症状が長引くときや詳しい評価が必要なとき)
- 首(頸椎)の検査(首の痛みやしびれがあるとき)
- バランスや注意力の評価(スポーツ復帰の判断などに使うことがあります)
診察で予想されること
診察は10〜20分ほどが目安です。CT検査は痛みのない検査で、数分で終わります。結果によっては経過を見るだけでよいことも多く、その場合は「どんな症状が出たらすぐ受診するか」を確認しておくと安心です。診断書が必要な場合は、受診時に伝えておきましょう。
治療
ほとんどの脳しんとうは、手術や特別な処置をしなくても自然に良くなります。大切なのは「短い休息のあと、無理のない範囲で少しずつ日常に戻る」ことです。最初の24〜48時間は無理をせず休み、その後は画面や音を控えめにしながら、短時間の散歩や軽い家事などから再開します。長すぎる完全安静は、かえって回復を遅らせることがあると考えられています。
自宅でのセルフケア
- 最初の1〜2日は無理をせず、こまめに休む
- 休むときは部屋を暗くし、静かな環境にする
- スマートフォンやゲーム、パソコンの画面時間を短くし、こまめに休憩する
- 睡眠を最優先にし、決まった時間に寝起きする
- 水分をこまめにとる
- 飲酒は回復するまで控える
- 運転は医師の許可が出るまで控える
- スポーツは同じ日に戻らず、段階を踏んで復帰する
- 忘れっぽいときはメモやスマホのリマインダーを使う
- 症状が強くなったら活動を一段戻して休む
- 家族や同僚に症状を伝え、協力を頼む
医療治療
治療は症状に合わせた対応が中心です。頭痛、吐き気、睡眠の乱れ、めまいなどに対して、医師の判断で対処が行われます。薬が必要と判断された場合は医師から処方されるので、市販薬も含めて自己判断で使わず、まず相談してください。めまいやバランスの不調にはリハビリが役立つことがあります。学校や仕事への復帰、スポーツ復帰については、段階を踏んだ計画を医師と一緒に作ります。必要に応じて診断書や周囲への配慮のお願いも出せます。
手術が検討される場合
まれですが、頭の中に血がたまる(血腫)、頭蓋骨がへこむように折れる、脳の圧が高まるといった場合には手術が必要になることがあります。手術が必要かどうかは画像検査と症状から判断されます。多くの頭部のけがでは手術は不要です。
この病気と共に生きる
回復の間は、予定を詰め込まず余白を作ることが大切です。集中が続かないときは30分ごとに休憩をはさむ、大事な用事は午前中に置く、メモを活用するなど、工夫しながら過ごしてみてください。疲れや頭痛が強くなったら、その日の活動を少し減らすのが合図です。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない範囲で、少しずつ活動量を増やす
- 睡眠時間を確保し、昼夜のリズムを整える
- 画面や騒音の多い場所は短時間にとどめ、休憩を入れる
- 復帰は段階的に(家での安静→軽い勉強や仕事→通常の学習や仕事→軽い運動→接触のないスポーツ→接触のあるスポーツ)
- 復帰の各段階で症状が悪化したら、一段前の段階に戻す
- 飲酒や睡眠を妨げる習慣を控える
- つらさや変化を日記やメモに記録し、受診時に伝える
- 家族や職場・学校の理解と協力をあらかじめお願いしておく
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と十分な水分を心がけましょう。アルコールは回復まで控えめに、カフェインは睡眠を妨げない程度にします。運動は「完全に寝たきり」ではなく、痛みやめまいが強くならない範囲で散歩などの軽い活動から始め、少しずつ増やしていくのがよいとされています。
精神的健康と心の健康
脳しんとうの後は、イライラしやすい、気分が落ち込む、不安が強くなる、集中できない、物忘れが増えたように感じるといった変化が起こることがあります。多くは回復とともに軽くなりますが、勉強や仕事が思うように進まないことで不安が大きくなることもあります。ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口、学校や職場の相談員に話してみてください。もし自分を傷つけたい気持ちが湧いたり、日常生活が保てないほどつらい状態になったりしたときは、すぐに119番に連絡するか、救急の受診を検討してください。
予防
すべては防げませんが、工夫でリスクを大きく下げられます。自転車・スケート・スキー・コンタクトスポーツではヘルメットを着用し、サイズの合ったものを正しくかぶりましょう。車ではシートベルト、子どもは体格に合ったチャイルドシートを使います。家庭では、手すりをつける、滑り止めを敷く、照明を明るくする、床に物を置かないなどの転倒対策が役立ちます。高齢者は無理のない範囲で筋力とバランスを保つ運動を続けることも大切です。スポーツではルールを守り、頭をぶつけたら同じ日に競技へ戻らないことが基本です。
検診プログラム
頭部のけがを防ぐための特別な検査はありませんが、スポーツを始める前や転倒が増えてきたと感じたときは、かかりつけ医に相談して体力やバランス、住まいの環境を確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 症状が長引く(頭痛、めまい、物忘れ、集中できない状態が数週間〜数か月続くことがある)
- 睡眠の乱れや気分の落ち込みが続く
- 回復する前に再び頭をぶつけると、より危険で回復に時間がかかることがある
- まれに頭の中の出血が見逃されることがあり、これは命に関わるため注意が必要
- 仕事や学業、スポーツへの復帰が遅れる
長期的な見通し
多くの人は数日から数週間で良くなり、日常生活に戻っていきます。一部の人は数か月かけてゆっくり回復しますが、段階を踏んで無理をしないことが助けになります。症状が長引く場合も、医療機関と相談しながら一歩ずつ進めば、回復の見込みは十分あります。あせらず、自分のペースを大切にしてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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