心ブロック(房室ブロック)を知る
概要
心臓は、電気の信号でリズムをとりながら血液を送り出しています。この信号は、心房(血液をためる上の部屋)から房室結節という中継地点を通って、心室(血液を送り出す下の部屋)へ伝わります。心ブロックは、この電気の通り道、とくに心房と心室の間で信号が遅れたり、途中で途切れたりする状態です。信号が届きにくくなると、脈が遅くなる(徐脈)ことがあります。程度によって1度・2度・3度(完全房室ブロック)に分けられ、数字が大きいほど信号の伝わり方が悪い状態です。
重要な事実
- 心ブロックは、心臓の電気の通り道で信号が遅れたり途切れたりする状態で、脈が遅くなることがあります。
- 症状がない人も多く、健康診断の心電図で初めて見つかることがよくあります。
- 症状が強い場合や信号がほとんど伝わらない場合は、ペースメーカーという機器で脈を支える治療が検討されます。
- 多くのかたは治療や経過観察を続けながら、ふだんどおりの生活を送れます。
軽いタイプ(1度ブロック)は健康診断でよく見つかり、珍しいものではありません。年齢が上がるほど見つかりやすくなります。一方、信号がほとんど伝わらない完全房室ブロックは比較的まれです。
高齢のかたに多く見られます。心臓の病気(心筋梗塞や心筋症、弁膜症など)がある人、心臓の手術を受けた人にも起こりえます。生まれつきのもの(先天性)はまれですが、子どもや赤ちゃんに見つかることもあります。
症状
- 意識を失って倒れた、呼びかけに反応がない
- けいれんが起きた
- 胸の強い痛みや圧迫感がある
- 呼吸がとても苦しい、息ができない
- 顔色が青白い、冷や汗がひどい、脈がほとんど触れない
- 意識はあるが、何度も気を失いそうになる
- ⚠めまいやふらつきが続く
- ⚠歩いているときに何度もよろける
- ⚠少し動いただけで強い息切れがする
- ⚠自分で測った脈がいつもより明らかに遅い、と感じる
- ⚠一時的に目の前が暗くなった(失神しかけた)
一般的な症状
- 症状がまったくない(健診の心電図で見つかる)
- 脈が遅いと言われる、自分で脈を測ると少ない
- 疲れやすい、力が出ない
- めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 動いたときの息切れ
- 脈が飛ぶ感じ、胸の不快感
- 一時的に意識が遠のく(眼前が暗くなる感じ)
子供の症状
- 生まれつきの場合は、胎児や新生児の時期に見つかることがあります
- 哺乳(ミルクを飲む力)が弱い、体重が増えにくい
- 泣き方が弱い、顔色が悪い
- 息が苦しそう、ミルクを飲むと疲れてしまう
- 多くの子どもは無症状で、健診や心電図で偶然見つかることもあります
高齢者の症状
- 失神(気を失う)や転倒が起こることがあり、けがにつながる場合があります
- 脳への血流が減ることで、ぼんやりする、物忘れが増えたように見えることがあります
- 疲れやすい、階段で息切れする
- 脈がとても遅い、血圧が低めになる
- 飲んでいる薬の影響を受けやすいので、薬の見直しが大切です
原因
主な原因
- 加齢による心臓の電気の通り道の変化(線維化など)
- 心筋梗塞や狭心症など、心臓の血管の病気
- 心筋症、心筋炎、心臓の弁の病気
- 心臓の手術やカテーテル治療の影響
- 一部の心臓や血圧の薬、不整脈の薬などの影響
- 甲状腺の病気や、血液中のミネラル(カリウムなど)の異常
- 生まれつきの電気の通り道の異常(先天性)
- 睡眠時無呼吸症候群や、心臓以外の病気の影響
リスク要因
- 高齢であること
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの心臓病のリスク
- 心臓の病気の既往(心筋梗塞、心不全、弁膜症など)
- 心臓の手術やカテーテル治療を受けたことがある
- 心臓に影響する薬を飲んでいる
- 家族に心ブロックや不整脈のある人がいる
- 甲状腺の病気や、ひどい脱水、電解質の乱れ
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 気を失った、または気を失いそうになった
- めまいやふらつきが繰り返し起きる
- 動いたときの息切れが急にひどくなった
- 脈がいつもより明らかに遅い、と感じる
- 胸の痛みや強い動悸がある
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断の心電図で「脈が遅い」「ブロックがある」と言われた
- 疲れやすさや息切れが続いている
- 脈が飛ぶ感じがときどきある
- 家族に心ブロックやペースメーカーの人がいる
- 心臓の病気で通院中で、脈の変化が気になる
診断
まずは問診と診察で、めまいや失神があったか、飲んでいる薬、これまでの病気を確認します。そのうえで心電図で電気の伝わり方を調べます。心電図は痛みのない検査で、数分で終わります。症状がときどきしか出ない場合は、24時間など長時間記録する心電図検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 心電図(12誘導心電図):電気の流れと脈の速さを調べる基本的な検査
- ホルター心電図:24時間など長時間、心臓のリズムを記録する
- 携帯型・イベント式の心電計:症状が出たときに記録する
- 植込み型ループレコーダー:皮下に小さな記録装置を入れて長期間記録する
- 心エコー(超音波検査):心臓の形や動き、弁の状態を見る
- 血液検査:甲状腺の働きやミネラル、心臓に負担がかかっていないかを調べる
- 胸部レントゲン:心臓の大きさや肺の状態を見る
- 運動負荷心電図:動いたときの電気の伝わり方を調べる
- 電気生理学的検査(EPS):必要に応じて、電気の通り道を詳しく調べる
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。ホルター心電図は装置を一日中つけて過ごすため、入浴のしかたなど注意点を説明されます。結果が出るまでに数日かかることがあります。診断は検査の結果と症状を合わせて判断されるので、ふだん感じていることをメモしておくと役立ちます。
治療
治療は、ブロックの程度と症状の有無で決まります。症状がなく軽いタイプなら、定期的な心電図での経過観察が中心です。症状がある場合や、信号がほとんど伝わらない場合は、脈を支える治療が検討されます。原因となっている病気や薬の影響があれば、それを取り除くことも大切です。
自宅でのセルフケア
- 自宅で脈を測り、数とリズムを記録しておく
- めまいやふらつき、気を失いかけたことがあったらメモして医師に伝える
- 水分をこまめにとり、脱水を避ける
- 十分な睡眠をとり、疲れをためない
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- 飲んでいる薬は自己判断でやめず、気になる点は医師や薬剤師に相談する
- 入浴中や運転中など、急に気を失うと危ない場面では無理をしない
医療治療
治療の考え方は大きく3つです。1つ目は経過観察で、症状がなく心臓の働きが保たれている場合は定期的な心電図チェックを続けます。2つ目は原因への対応で、心臓の血管の病気や甲状腺の病気、ミネラルの異常などを治療したり、影響している可能性のある薬を医師の判断で調整したりします。3つ目は脈を支える治療で、症状のある2度ブロックや3度(完全房室ブロック)では、ペースメーカーという小さな機器を体内に植え込んで脈が遅くなりすぎないようにします。一時的な原因で起きた場合には、体外式のペースメーカーで一時的に支えることがあります。どの治療が合うかは、症状と検査結果を合わせて医師と相談して決めます。
手術が検討される場合
ペースメーカーの植え込みは、小さな手術として行われます。多くは局所麻酔で、胸の上の皮膚の下に機器を入れ、心臓へ細い線を通します。所要時間は1時間前後で、数日入院することが多い治療です。手術が必要かどうかは、失神などの症状、ブロックの程度、心臓の働きなどを総合して判断されます。
この病気と共に生きる
心ブロックがあっても、多くの人はふだんどおりの生活を続けています。症状がない軽いタイプでは、定期的な通院と心電図チェックが中心です。ペースメーカーを入れた場合は、定期的な機器の点検(外来での確認)を受け、ペースメーカー手帳を持ち歩くと安心です。強い磁石のそばや、金属探知機のある場所では、スタッフにペースメーカーを使用していることを伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の脈と体調を簡単に記録する習慣をつける
- 急に立ち上がらず、ゆっくり動く(立ちくらみ予防)
- こまめな水分補給と、暑い日の無理な運動を避ける
- 禁煙し、節酒を心がける
- 睡眠を十分にとり、睡眠時無呼吸が疑われたら相談する
- ペースメーカーがある場合は、定期的な点検を欠かさない
- 旅行や運転の前に、主治医に相談しておく
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜や魚をバランスよくとる和食スタイルがおすすめです。暴飲暴食や大量のアルコールは心臓に負担をかけます。運動は、症状が安定していれば散歩や軽い体操など無理のない範囲で続けましょう。めまいや息切れが出たら中止して休み、続くようなら医師に相談してください。激しい運動を始める前には、主治医に確認しておくと安心です。
精神的健康と心の健康
「心臓に問題がある」と言われると、不安になったり、外出を控えたくなったりすることがあります。気を失うかもしれないという心配は、気持ちを疲れさせます。一人で抱え込まず、家族やかかりつけ医、看護師、薬剤師に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関の相談室も利用できます。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに周囲の人や医療機関、救急(119)に助けを求めてください。
予防
すべての心ブロックを防ぐことはできませんが、心臓の病気を予防・管理することでリスクを下げられる場合があります。血圧や血糖、脂質を適正に保ち、禁煙し、適正体重を維持することが大切です。薬の影響が疑われる場合は、自己判断で中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
ワクチン
心臓の病気を持つ人は、かぜや肺炎などの感染症にかかると負担が大きくなることがあります。インフルエンザや肺炎のワクチンについて、かかりつけ医に相談してみましょう。接種の可否や時期は体調や年齢によって異なるため、個別に判断が必要です。
検診プログラム
健康診断の心電図は、症状のない心ブロックを見つける重要な機会です。健診を毎年受けること、家庭で脈を測る習慣をつけることが役立ちます。家族に心ブロックやペースメーカーの人がいる場合は、そのことを医師に伝えておきましょう。
合併症
治療しない場合
- 失神による転倒やけが、交通事故のリスク
- 脈がとても遅くなることで、強い疲れや息切れが続く
- 心臓の働きが低下し、心不全になることがある
- まれですが、完全房室ブロックでは突然死の危険がある
- 不安から外出や活動を控え、生活の質が下がることがある
長期的な見通し
多くのかたは、経過観察や適切な治療を続けながら、ふだんどおりの生活を送れています。症状のない軽いタイプは心配の少ないことが多いです。ペースメーカーが必要な場合も、植え込み後は症状が軽くなり、活動の幅が広がる人が少なくありません。定期的な通院を続け、気になる症状があれば早めに相談することが、安心して過ごすための近道です。
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最終更新: 2026年10月24日
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