狭心症(きょうしんしょう)〜胸の痛みから知る心臓のサイン〜
概要
狭心症(きょうしんしょう)は、心臓の筋肉に血液を送っている冠動脈(かんどうみゃく)という血管が狭くなり、一時的に心臓へ酸素が足りなくなる状態です。心臓は休まず働いているため、酸素が足りなくなると「胸が痛い」「締めつけられる」というサインを出します。多くは数分でおさまり、安静にすると楽になるのが特徴です。ただし、狭心症は心臓の病気のサインであり、放置すると心筋梗塞(しんきんこうそく=心臓の血管が完全に詰まる状態)につながることもあります。早めに受診して相談することが大切です。
重要な事実
- 胸の中央が締めつけられる・圧迫される感じが数分続き、安静や休憩でおさまるのが典型的なパターンです。
- 坂道や階段、重いものを持ったとき、寒いとき、食べたあと、強いストレスを感じたときに起こりやすいです。
- 「安定狭心症」と「不安定狭心症」があり、痛みの回数が増えたり安静時にも出たりする場合は早めの受診が必要です。
- 治療と生活習慣の見直しで、発作をコントロールしながらふだんの生活を続けている方はたくさんいます。
はい。狭心症は冠動脈疾患(かんどうみゃくしっかん)のひとつで、日本でも決して珍しい病気ではありません。心臓や血管の病気は日本人の主な死亡原因のひとつであり、健康診断などでリスクを指摘される人も多くいます。
中高年以降の方に多くみられます。男性は40〜50代から増えはじめ、女性は閉経(へいけつ=月経が終わること)の前後から増える傾向があります。高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールなどの異常)・喫煙などの習慣がある方、家族に心臓病の人がいる方は特に注意が必要です。若い方でも、生活習慣によっては起こることがあります。
症状
- 胸の痛みや圧迫感が15分以上続き、休んでもよくならない(心筋梗塞の疑いがあります。すぐ119番に電話してください)
- 胸の痛みに加えて、冷や汗・息苦しさ・吐き気・めまいが強い
- 息ができず、顔色が青白い、または意識がもうろうとしている
- 倒れて反応がない、呼吸がおかしい
- ⚠これまで感じたことのない胸の痛みが出た
- ⚠痛みの起きる回数や強さが、この数日で増してきた
- ⚠階段を上っていたのが、最近は少し歩いただけでも痛むようになった
- ⚠安静にしているときにも痛みが出るようになった(不安定狭心症の可能性があり、当日中の受診が必要です)
- ⚠すでに狭心症と診断されている方で、医師から指示された使い方の薬を使っても、いつものように楽にならない
一般的な症状
- 胸の真ん中が締めつけられる、押さえつけられる、重い感じがする(数分でおさまることが多い)
- 胸やけのような焼ける感じ、または「もやもやする」程度の軽い不快感
- 痛みや違和感が、左肩・左腕・あご・背中・みぞおち・歯の方へ広がる
- 階段や坂道、急ぎ足のときに息苦しくなる
- 冷や汗や、なんとなく不安な気持ちが出る
- 安静にしたり、立ち止まって休むと数分で楽になる
子供の症状
- 子どもに狭心症が起こることはとてもまれです。胸の痛みの多くは、筋肉の痛み・胃の不調・心理的な理由など別の原因によるものです。
- ただし、川崎病(かわさきびょう)のあとに冠動脈に影響が残ったお子さんなどは、医師の指示に従った経過観察が必要です。
- 子どもは症状をうまく言葉で説明できないことがあります。顔色が悪い、遊びを急にやめる、汗をかく、などが続くときは小児科で相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では胸の痛みがはっきりせず、「息苦しい」「だるい」「なんとなく元気が出ない」だけのことがあります(無痛性=痛みを感じないタイプ)。
- 吐き気、胃の不快感、汗、めまいとして現れることもあります。
- 認知症などで症状を伝えにくい場合は、家族や介護する方が様子の変化に気づくことが大切です。
原因
主な原因
- 冠動脈の動脈硬化(どうみゃくこうか):血管の内側にコレステロールなどを含む塊(プラーク)がたまり、血管の通り道が狭くなる
- 冠攣縮(かんれんしゅく):冠動脈の筋肉が急に縮んで血管が細くなる(夜間や安静時に起こりやすいタイプ)
- 冠動脈の細い枝や微小な血管の働きの異常によるもの
- まれに、血管の炎症や生まれつきの血管の形などが関係することもあります
リスク要因
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
- 喫煙(受動喫煙を含む)
- 肥満、とくにお腹まわりに脂肪がたまるタイプの肥満
- 運動不足
- 強いストレスや、長く続く睡眠不足
- 家族に心臓病の人がいる(遺伝的な体質)
- 年齢(男性45歳以上、女性55歳以上でリスクが上がります)
- 腎臓の病気、歯周病などの慢性的な炎症
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みが15分以上続く、または休んでも治まらない → ためらわず119番に電話してください
- 安静時にも胸の痛みが出るようになった
- 胸の痛みの回数や強さが最近増えている
- 胸の苦しさと一緒に冷や汗、息切れ、吐き気が強い
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で胸が締めつけられる感じがあり、休むと数分でおさまる
- 最近、なんだか息切れしやすい、だるさが続く
- 健康診断で血圧・血糖・コレステロールを指摘された
- 家族に心臓病や心筋梗塞の人がいる
- 狭心症と診断されていて、症状の変化を相談したい
診断
まず、いつ・どんなときに・どれくらいの時間・どんなふうに痛むのかを医師がくわしく聞き取ります(問診)。そのうえで心電図や血液検査などを行い、必要に応じて運動したときの心臓の様子を調べる検査や、冠動脈の画像検査へ進みます。診断は一度で確定しないこともあり、検査を組み合わせて判断します。
行われる可能性のある検査
- 心電図(安静時・症状があるとき)
- 血液検査(心臓に負担がかかっていないか、動脈硬化のリスクはどうか)
- 運動負荷試験(歩く・自転車をこぐなどで心臓に負荷をかけて心電図を調べる)
- ホルター心電図(24時間ほど心臓のリズムを記録する)
- 心臓超音波検査(心エコー:心臓の動きや弁の様子を見る)
- 冠動脈CT検査(冠動脈の狭まりやプラークの状態を画像で見る)
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から入れて冠動脈の状態を直接調べる。治療を兼ねることもあります)
診察で予想されること
検査の内容や入院の必要性は、症状と結果によって変わります。問診では、痛みがあった時刻、そのとき何をしていたか、どのくらいでおさまったかをメモしておくと役立ちます。検査の前に、費用・痛み・時間・注意点について医師や看護師に遠慮なく質問してください。
治療
狭心症の治療は、(1)生活習慣を整えて血管の負担を減らすこと、(2)薬で発作を予防したり血管を広げたりすること、(3)必要に応じてカテーテル治療や手術で血管の流れを改善すること、を組み合わせて進めます。目的は、発作を減らしてふだんの生活を安全に続けられるようにし、心筋梗塞などの重い病気を防ぐことです。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 医師に相談しながら、無理のない範囲で定期的に体を動かす
- 塩分・脂質・糖分をとりすぎない食事を心がける
- 適正な体重を保つ
- 睡眠を十分にとり、ストレスをためこまない工夫をする
- 発作が起きたときの対処を、医師から指示されたとおりに実行できるよう家族とも共有しておく
- 処方された薬は、症状がない日も自己判断でやめずに続ける
- 発作の日時・きっかけ・強さ・持続時間を記録しておき、受診時に伝える
医療治療
薬物療法では、発作を予防する薬、血管を広げて心臓の負担を減らす薬、脈や血圧を整える薬、血液のかたまりができにくくする薬、コレステロールを下げる薬などが、その方の状態に合わせて組み合わせられます。発作が出たときに使う薬が処方されることもあり、使い方と使ってよい回数について医師から説明があります。薬の名前・量・使い方は必ず主治医や薬剤師の指示に従い、自己判断で変更しないでください。治療法や薬には選択肢があるため、効果と注意点を医師と話し合って決めていきましょう。
手術が検討される場合
薬だけでは発作のコントロールが難しい場合や、冠動脈の狭まりが強い場合には、カテーテル治療(細い管を使って風船で広げたり、網状の筒を入れて血管を支えたりする方法)や、冠動脈バイパス手術(別の血管で血液の通り道を作る方法)が検討されます。どの方法が合うかは、血管の状態・年齢・ほかの病気などをふまえて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
狭心症は、付き合い方次第でふだんの生活を大きく保てる病気です。発作が起きたら、その場で立ち止まって休み、医師から指示された対処を行います。そして、いつ・どんなときに発作が起きたかを記録しておくと、治療の調整に役立ちます。寒い日の外出、重い荷物、食後すぐの激しい動き、睡眠不足などは発作のきっかけになりやすいので、無理をしない工夫をしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(必要なら禁煙外来などの支援を利用する)
- 朝の早い時間や気温の低い日は、体を急に動かさず準備運動をする
- 入浴は熱すぎるお湯を避け、長湯をしない
- 食事はゆっくり、腹八分目を心がける
- 十分な睡眠と、こまめな休憩をとる
- 医師の指示に沿って、定期的に運動する習慣をつける
- 決められた受診日を守り、症状の変化を必ず伝える
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜・魚・大豆製品・全粒穀物などをバランスよくとり、揚げ物や加工肉、甘い飲み物を控えめにすると血管への負担が減ります。運動は、ウォーキングなど息が少し上がる程度のものを、医師に相談したうえで無理のない範囲から始めましょう。運動中に胸の痛みや息苦しさが出たら、すぐに中止して休み、必要なら医療機関に連絡してください。
精神的健康と心の健康
「また発作が起きたらどうしよう」という不安や、体を動かすことへのこわさを感じる方は少なくありません。不安や落ち込みが続くと、生活の質が下がったり、治療を続けにくくなったりすることがあります。気持ちのつらさは我慢せず、主治医や看護師、心理の専門家に話してください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、地域の相談窓口や医療機関にすぐ連絡してください。緊急の場合は119番通報もためらわないでください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることで、冠動脈の動脈硬化の進行を遅らせ、狭心症や心筋梗塞のリスクを下げられることが分かっています。とくに禁煙は効果が大きいといわれています。すでに狭心症と診断されている方も、生活習慣の見直しは再発を防ぐために大切です。
ワクチン
心臓や血管の病気がある方は、かぜや肺炎などの感染症にかかると重症化しやすいことがあります。インフルエンザや肺炎などのワクチンについては、かかりつけ医に相談してみてください。その年の推奨や接種の時期は変わることがあります。
検診プログラム
日本では、特定健康診査(特定健診)や職場の健康診断で、血圧・血糖・脂質などを定期的に測ることができます。数値の変化を早く見つけることが、動脈硬化の予防につながります。健診結果で気になる点があれば、かかりつけ医に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 心筋梗塞(冠動脈が完全に詰まり、心臓の筋肉が傷つく状態)
- 不整脈(脈の乱れ)
- 心不全(心臓のポンプの力が弱くなる状態)
- 突然の重い不整脈による意識消失や、命に関わる事態
長期的な見通し
狭心症は、早く気づいて適切に治療と生活の見直しを続けることで、発作をコントロールしながら長くふだんの生活を送れる病気です。多くの方が、薬や必要に応じた治療、禁煙や食事の工夫によって症状を安定させています。不安になったときは、抱え込まずに主治医に何でも相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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