心内膜炎(感染性心内膜炎)
概要
心内膜炎(しんないまくえん)は、心臓の内側をおおっている薄い膜(心内膜)や、血液の流れを整える「弁」に炎症が起きる病気です。多くは「感染性心内膜炎」といって、細菌などが血液の中に入りこみ、心臓の弁に付いて増えることで起こります。心臓の働きが弱くなったり、血液のかたまりが体の他の場所へ流れていったりすることがあるため、早めに見つけて治療することが大切です。
重要な事実
- 心臓の内側や弁に細菌などが付いて炎症を起こす病気です。放置すると心臓に負担がかかることがあります。
- 発熱が長く続く、だるさが続く、息切れがする、といった症状が手がかりになります。
- 血液検査と心臓の超音波(心エコー)検査で調べ、入院して点滴の治療を行うことが一般的です。
とても多い病気ではありません。日本でも年間で人口10万人あたり数人程度といわれる、比較的まれな病気です。ただし高齢化にともない、以前より見つかる数は増えているといわれています。
心臓の弁の病気(弁膜症)がある人、人工弁や心臓の手術を受けたことがある人、生まれつき心臓に病気がある人、透析を受けている人、免疫の力が弱まっている人、ペースメーカーや長期のカテーテルを使っている人などに多くみられます。高齢者にも多く、歯の健康状態がよくないことも関係します。
症状
- 突然の強い息切れ、呼吸が苦しくて話せない
- 胸の強い痛みが続く
- 意識を失う、呼びかけへの反応がにぶい
- 唇や顔色が青白く変わる
- 体の片側が動かない、ろれつが回らない、言葉が出ない(脳の血管が詰まったサインの可能性)
- 高熱とともに血圧が下がり、ぐったりしている
- ⚠心臓の病気がある人、人工弁がある人の発熱
- ⚠原因がはっきりしない熱が3〜4日以上続く
- ⚠寒気をともなう熱が繰り返す
- ⚠息切れや動悸が急に悪くなった
- ⚠皮膚の出血斑や爪の下の出血に気づいた
一般的な症状
- 38度前後の発熱がだらだら続く(数日〜数週間)
- 寒気やふるえをともなう熱
- 強いだるさ、疲れやすさ
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 寝汗をかく
- 息切れ、動悸(どうき:心臓がドキドキする感じ)
- 関節や筋肉の痛み
- 皮膚に小さな赤い点や出血斑が出る
- 爪の下に細い線のような出血がみられる
- 指先が痛む、赤く腫れる
子供の症状
- 熱とだるさが主な症状で、大人より特徴的な症状が出にくいことがあります
- 食欲がなくなる、元気がない、機嫌が悪い
- 生まれつき心臓に病気がある子どもは、発熱が続いたら早めに受診してください
- 体重が増えない、哺乳(ほにゅう)の勢いが弱い
高齢者の症状
- 熱がはっきり出ないことがあり、見つけにくいことがあります
- なんとなく元気がない、ぼんやりする、意識がはっきりしない
- 食欲不振や体重減少だけが目立つ
- 息切れやむくみが急に悪くなる
- もともとの心臓病や持病があると、その症状が悪化したようにみえることがあります
原因
主な原因
- 細菌が血液の中に入り、心臓の弁や心内膜に付いて増えること(最も多い原因)
- 口の中や歯ぐきの細菌が、歯科治療や歯みがきなどで血中に入ること
- 皮膚の傷や感染、やけどなどから細菌が入ること
- 尿路感染や腸の感染など、体の他の場所の感染から広がること
- 注射器の使い回しなどから細菌が入ること
- まれに真菌(カビの仲間)など別の微生物が原因になること
リスク要因
- 心臓の弁の病気(弁膜症)や弁の手術を受けたことがある
- 人工弁(機械弁・生体弁)が入っている
- 生まれつきの心臓病(先天性心疾患)がある
- 以前に心内膜炎を経験したことがある
- 透析(人工透析)を受けている
- ペースメーカーや長期のカテーテル(管)を体内に入れている
- 免疫の力が弱まっている(病気や治療の影響など)
- 注射による薬物の使用歴がある
- 歯ぐきの病気やむし歯など、口の中の健康状態がよくない
- 高齢である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 心臓の病気や人工弁がある人で発熱がある(当日中に受診してください)
- 原因不明の熱が数日続いている
- 息切れや動悸が急に強くなった
- 皮膚の出血斑、爪の下の出血、指先の痛みに気づいた
- 食事がとれない、水分がとれないほど具合が悪い
定期受診を予約すべき場合:
- だるさや疲れやすさが2週間以上続く
- 食欲が落ちて体重が減ってきた
- 寝汗が続く
- 微熱がだらだら続く
- 歯科治療のあとに体調がすぐれない状態が続く
診断
問診と診察のあと、血液検査と心臓の超音波検査(心エコー)を組み合わせて調べます。血液のなかに細菌がいるかどうか(血液培養)と、心臓の弁に細菌のかたまり(疣贅:ゆうぜい)や弁の壊れがないかを確認することが中心になります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の値、貧血、腎臓の働きなどを確認)
- 血液培養(血液の中に細菌がいるかを調べる。数回採血することがあります)
- 心エコー検査(胸の上から、または食道から超音波で心臓の弁を詳しく観察)
- 心電図(不整脈や心臓の伝わり方を確認)
- 胸部X線検査
- 必要に応じてCT検査やMRI検査
- 歯科や皮膚など、感染のもとになりそうな場所の診察
診察で予想されること
血液培養の結果が出るまでに数日かかります。その間、状態によっては入院して検査と治療を同時に進めることがあります。心エコーは痛みのない検査で、体の表面に機械をあてて調べます。入院中は何度か採血があり、熱の記録や心臓の状態の確認が続きます。検査の意味や予定は、そのつど医療者にたずねてください。
治療
心内膜炎は、抗菌薬(細菌をやっつける薬)を点滴でしっかり使う治療が中心です。入院して数週間にわたって治療することが多く、そのあいだ心臓の状態と合併症の有無を注意深くみていきます。弁が傷んで心臓の働きが悪くなった場合などは、手術が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 医療者に指示された治療の予定を最後まで続ける(途中でやめない)
- 発熱や体調の変化を毎日記録する
- だるさがあるうちは無理をせず、休息をとる
- 水分と栄養をとれる範囲でしっかりとる
- 歯みがきや入れ歯の手入れなど、口の中を清潔に保つ
- たばこを吸わない
- 退院後も通院の予定を守り、気になる症状は早めに伝える
医療治療
原因となる微生物に合わせて、抗菌薬を点滴で長期間(数週間程度)使う治療が基本です。入院中は熱や血液検査の値、心臓の状態を繰り返し確認します。心臓の働きが弱っている場合には、その管理もあわせて行います。合併症が起きたときは、それぞれに応じた対応をします。薬の種類や量は、検査結果と体の状態をもとに医療者が決めますので、自己判断で量を変えたり中断したりしないでください。
手術が検討される場合
弁が大きく壊れて心臓の働きが悪くなったとき、弁や心臓のまわりに膿(うみ)のたまりができたとき、大きな菌のかたまりがあって血流に乗って飛ぶ危険が高いとき、抗菌薬の治療でよくならないときなどに、手術が検討されます。手術が必要かどうかは、心臓の専門医を含むチームが状態をみて判断します。
この病気と共に生きる
治療中は体力が落ちやすく、疲れやすい時期が続きます。回復に合わせて少しずつ活動を戻していくのがよい方法です。退院後も通院と検査が続くことが多く、発熱や息切れなどの変化に気をつけながら生活します。予定外の症状が出たときは、我慢せずに早めに連絡してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 毎日、歯みがきとフロス・歯間ブラシで口の中を清潔に保つ
- 定期的に歯科を受診する(治療前に心臓のことを歯科医に伝える)
- 皮膚の傷やとびひ、やけどなどを放置せず、きれいに保つ
- 手洗いや手指の消毒を習慣にする
- 注射器の使い回しは絶対にしない
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 飲酒はほどほどにし、医療者に相談する
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、野菜・たんぱく質・主食をそろえてとりましょう。心臓の働きが弱っているときは塩分を控えめにするよう指導されることがあります。運動は、治療が落ち着いて医療者から許可が出てから、散歩など軽いものから始めます。息苦しさや動悸が出たら無理をせず休み、どのくらい動いてよいかをかかりつけ医に相談してください。
精神的健康と心の健康
長い治療や入院は、不安や落ち込み、先が見えないつらさにつながることがあります。それは自然な反応で、あなたの弱さではありません。気持ちが沈んで眠れない、何も楽しめない、といった状態が2週間以上続くときは、かかりつけ医や病院の相談窓口に伝えてください。つらい気持ちを一人で抱えこまないことが大切です。緊急に自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談窓口を頼ってください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。いちばん大切なのは、歯と歯ぐきを健康に保つこと、皮膚や尿路などの感染を放置しないこと、注射器の使い回しをしないことです。心臓の弁の病気や人工弁がある人は、歯科治療の前に心臓のことを歯科医に伝え、必要に応じて主治医に相談してください。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンは、別の感染症にかかるのを防ぎ、体への負担を減らす助けになることがあります。心臓に病気がある人では特に大切といわれています。接種の時期や必要性は、かかりつけ医に相談して決めてください。
検診プログラム
心内膜炎そのものを見つけるための決まった健診はありません。ただし、定期的な歯科検診と、心臓の病気がある人の循環器での定期受診は、早期発見と予防に役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 弁が壊れて心臓の働きが弱くなり、心不全(息切れやむくみ)になる
- 菌のかたまりが血流に乗って飛び、脳梗塞などを起こす
- 心臓のまわりや弁の根もとに膿(うみ)がたまる
- 不整脈が起きる
- 腎臓の働きが悪くなる
- 感染が全身に広がる(敗血症)
長期的な見通し
心内膜炎は、早く見つけて十分な治療を行うことで、多くの方が回復できる病気です。治療には時間がかかりますが、医療チームと一緒に一歩ずつ進んでいけば大丈夫です。退院後も定期的な検査を続けることで、再発や合併症を早く見つけられます。気になることがあれば、いつでも主治医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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