こどもの後天性心疾患 — 生まれたあとに起こる心臓の病気
概要
後天性心疾患(こうてんせいしんしっかん)とは、生まれたときには心臓に目立った異常がなかったのに、そのあと(主にこどもの時期)に心臓や心臓の血管に病気が起こるものをまとめた呼び方です。代表的なものに、川崎病(かわさきびょう)で心臓の血管が傷つく場合、ウイルスなどによる心筋炎(しんきんえん=心臓の筋肉の炎症)、リウマチ熱(レンサ球菌という細菌の感染のあとに起こる全身の炎症)、心膜炎(しんまくえん=心臓を包む膜の炎症)、心筋症(心臓の筋肉そのものの病気)、不整脈(ふせいみゃく=脈の乱れ)などがあります。生まれつきの心臓の病気(先天性心疾患)とは区別されますが、どちらも小児循環器を専門とする医師が診療します。
重要な事実
- 生まれたあとに起こる心臓の病気の総称で、原因も症状もさまざまです。
- 日本では川崎病がよく知られており、心臓に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)にこぶ(拡張)が残ることがあります。
- 多くは適切な治療で落ち着きますが、しばらくのあいだ定期的な通院と観察が必要です。
- 育て方や生活のせいで起こる病気ではありません。自分や家族を責める必要はありません。
病気の種類によって違います。川崎病は日本で毎年多くのこどもがかかっていると報告されており、決してめずらしい病気ではありません。一方、心筋炎やリウマチ熱などは頻度の低いものもあります。気になる症状があれば、まずかかりつけの小児科医に相談してください。
こどもなら誰でも起こる可能性があります。川崎病は5歳くらいまでの幼児に多く、リウマチ熱は学童期以降に多いとされています。心筋炎は乳幼児にも起こります。特定の家庭だけの問題ではなく、予防接種や検診などで早く気づくことが大切です。
症状
- 意識がない、呼びかけへの反応が弱い、ぐったりしている
- 呼吸がとても苦しそう、顔色や唇が青紫色をしている
- 胸を押さえて激しく痛がる、汗をかいて苦しそう
- 突然倒れた、けいれんした
- 脈がとても速い、または脈が触れにくい
- ⚠38.5℃以上の熱が5日以上続く(川崎病を疑う目安のひとつです)
- ⚠熱とともに、目が赤い、唇が赤くひび割れる、発疹が出る、手足が腫れる
- ⚠動悸や胸の不快感が続いている
- ⚠顔や足のむくみが急に出た、尿がほとんど出ない
- ⚠ミルクの飲みが減り、元気がない
一般的な症状
- いつもより疲れやすく、遊んでもすぐ休みたがる
- 階段や坂道で息が切れる、走ると苦しそう
- 動悸(どうき=心臓がドキドキする、脈が速いと感じる)
- 胸の痛みや圧迫感、胸を押さえるしぐさ
- めまい、立ちくらみ、いちど気を失ったことがある
- 顔やまぶた、足のむくみ
- 尿の量が減る
- 汗をたくさんかく(とくに赤ちゃんがミルクを飲んでいるとき)
- 顔色が悪い、唇が紫色に見える
子供の症状
- 赤ちゃんは言葉で伝えられないため、ミルクを飲みながら汗をかく、すぐ疲れて飲むのをやめる、体重が増えにくい、機嫌が悪い、呼吸が速い、息をするたびに肋骨の下がへこむ、といった様子がサインになります。
- 幼児から学童では、歩くのを嫌がる、遊びをすぐやめる、学校で体育のあとにぐったりするなど「いつもと違う」変化に気づくことが大切です。
- 言葉で説明できる年齢でも、本人は不調をうまく言えないことがあります。保護者が見て感じた違和感を医師に伝えてください。
原因
主な原因
- ウイルスや細菌の感染(かぜのあとに心筋炎や心膜炎が起こることがあります)
- 川崎病による血管の炎症
- 溶血性レンサ球菌(溶連菌)の感染のあとに起こるリウマチ熱
- 心臓の内側の膜や弁に細菌がつく感染性心内膜炎
- 心臓の筋肉そのものが弱くなる心筋症
- 脈の乱れ(不整脈)
- 免疫の病気、薬の影響、放射線治療の影響など
リスク要因
- 5歳くらいまでの年齢(川崎病)
- 兄弟や家族に川崎病にかかった人がいる
- 心臓の手術やカテーテル治療を受けたことがある
- 免疫の働きを下げる治療を受けている
- むし歯や皮膚の感染を放置している(心内膜炎のリスク)
- 家族に心筋症や不整脈の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 熱が5日以上続く、または熱と目の充血・唇のひび割れ・発疹・手足の腫れが重なる
- 動悸や胸の痛みが続く、息が苦しそう
- 急に顔や足がむくんだ、尿がほとんど出ない
- 赤ちゃんの哺乳量が減り、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 熱が下がったあとも、疲れやすさや息切れが続く
- 運動すると息が切れる、動悸をときどき感じる
- 川崎病や心筋炎のあとで、定期受診の予定が近づいている
- 学校の心臓検診(心電図検査など)で相談が必要と言われた
診断
まず問診と診察で、症状の経過や川崎病などの既往(これまでの病気の経験)を確認します。聴診器で心臓の音や脈を確かめ、必要に応じて血液検査、心電図、心エコー(超音波で心臓の形や動きを見る検査)などを行います。原因によって必要な検査は変わります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や心臓の筋肉への負担を調べます)
- 心電図(心臓の電気の流れを調べます)
- 心エコー検査(超音波で心臓の形・弁・血管・動きを見ます)
- 胸部レントゲン検査
- ホルター心電図(24時間つけて脈の乱れを調べます)
- 運動負荷試験(運動したときの心臓の反応を調べます)
- 心臓MRI検査
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から入れて詳しく調べる検査。必要時のみ)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、こどもでも受けられるものです。じっとしているのが難しい場合は、少し眠くなる薬を使って検査を行うことがあります。検査結果の説明は当日から数日かかることがあります。分からないことは遠慮なく医師に質問してください。
治療
治療は原因と症状によって変わります。炎症をしずめる、心臓の負担を減らす、脈の乱れを整える、血のかたまりができにくくするなど、その子に必要な方法を組み合わせます。重症度によっては入院して経過を見ることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師に指示された休息の期間を守る(とくに急性期は無理をしない)
- 処方された薬は、症状が良くなっても自己判断でやめない
- 規則正しい睡眠と食事で体力を保つ
- 手洗い・うがいなど感染予防を心がける
- 定期受診の予定を守り、症状の変化を記録しておく
- 学校や園と相談し、運動や行事への参加をどうするか決める
医療治療
炎症をしずめる薬、心臓の働きを助ける薬、脈を整える薬、血のかたまりができにくくする薬などが、原因や症状に合わせて使われます。薬の種類や量は医師が決めるので、名前や使い方については担当の医師や薬剤師に確認してください。自己判断で量を変えたり中断したりすると、かえって危険なことがあります。
手術が検討される場合
弁の傷みが強い場合や、心臓の血管に大きな変化が残った場合、脈の乱れが薬で整いにくい場合などには、手術やカテーテルによる治療、ペースメーカーの装着などを検討することがあります。ごくまれに心臓移植が必要になることもありますが、多くはまず薬による治療と経過観察から始めます。
この病気と共に生きる
急性期を過ぎると、多くのこどもは通常の生活に戻っていきます。ただし、しばらくは運動の程度や受診の間隔について医師の指示が必要です。園や学校には、病気の内容と気をつけることを書面で伝えておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 家族みんなで手洗い・うがいを習慣にする
- 予防接種の予定を確認し、接種可能かどうか医師に相談する
- たばこの煙を避ける
- むし歯を放置せず、歯科で定期的に診てもらう
- 睡眠時間をしっかり確保する
- 本人が無理をしていないか、疲れ方の変化に気を配る
食事と運動
食事は野菜やたんぱく質をバランスよくとることが基本です。塩分を控えめにしたほうがよいかどうかは状態によって違うので、医師や管理栄養士に相談してください。運動は、どの程度まで行ってよいかを主治医と決めます。体育の見学や激しい運動の制限が必要な場合もありますが、制限があること自体が「何もできない」という意味ではありません。
精神的健康と心の健康
こども自身が病気を不安に感じたり、友だちと違うと感じて悲しくなったりすることがあります。きょうだいへの配慮も大切です。保護者の方も心配や疲れを抱えやすいので、ひとりで抱え込まず、小児科医、学校の先生、心理の専門家、患者家族の会などを頼ってください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談してください。気持ちが追い詰められていると感じたら、早めに誰かに話すことが大切です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、できることはあります。リウマチ熱は、溶連菌による咽頭炎を医師の指示どおり最後まで治療することで予防につながります。感染性心内膜炎は、むし歯や皮膚の感染を放置しないことが大切です。川崎病の原因はまだはっきり分かっていないため、生活の工夫だけで防ぐことは難しいとされています。
ワクチン
日本で決められている定期接種をきちんと受けることが基本です。インフルエンザなどの任意接種については、その子の心臓の状態によって考え方が変わるため、主治医に相談してから決めてください。
検診プログラム
日本では学校で心臓検診(心電図検査など)が行われており、自覚症状がない変化を見つける助けになっています。川崎病や心筋炎のあとは、症状がなくても定期的に心エコーなどで経過をみることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプの働きが弱くなり、息切れやむくみが出る状態)
- 弁膜症(心臓の弁が傷んで血液の流れが悪くなる状態)
- 冠動脈のこぶや血栓(血管が広がって血のかたまりができやすくなる状態)
- 不整脈(脈の乱れ)
- まれに、命に関わる急な変化を起こすことがある
長期的な見通し
多くのこどもは、適切な治療と定期的な観察によって元気に学校生活を送れるようになります。病気の種類や見つかった時期によって経過は違いますが、早期に気づいて治療を始めることが安心につながります。心配なことがあれば、そのつど主治医に相談しながら進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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