高血圧と心不全
概要
心不全とは、心臓のポンプの力が弱くなったり、心臓が硬くなったりして、血液を全身にじゅうぶん送り出せなくなった状態です。高血圧(血圧が高い状態が長く続くこと)は、その大きな原因のひとつです。血圧が高いと、心臓は高い圧力に逆らって血液を送り出さなければなりません。その状態が何年も続くと、心臓の筋肉が厚くなったり硬くなったりして、だんだん力が出にくくなります。高血圧と心不全は別々の病気ではなく、「長年の高血圧が心臓の負担になり、心不全につながっていく」という、つながりのある関係だと考えてください。
重要な事実
- 高血圧は心不全の最も多い原因のひとつです。血圧をきちんと管理することが、いちばんの予防になります。
- 心不全は「治って終わり」ではなく、長く付き合いながら安定を保っていく病気です。毎日の体重と血圧の記録が、体の変化に早く気づく助けになります。
- 息苦しさやむくみが急に悪くなったときは、がまんせずに早めに医療機関に相談してください。
心不全はとても多い病気で、日本でも高齢化にともなって患者さんが増え続けているといわれています。高血圧も日本人に多い病気で、成人のおよそ3人に1人が高血圧といわれています。決してめずらしい病気ではありません。
主に中高年から高齢の方に多くみられます。長年高血圧を指摘されていた方、心筋梗塞や弁膜症、不整脈のある方、糖尿病や腎臓の病気のある方に起こりやすいとされています。若い方や子どもに起こることはまれですが、まったくないわけではありません。
症状
- 安静にしていても息が苦しく、話すのもつらい
- 胸の強い痛みや圧迫感が続く
- 意識がもうろうとしている、または気を失った
- 唇や顔色が青白い、冷や汗がひどい
- ピンク色や泡だった痰が出て、息が苦しい
- ⚠数日のあいだに体重が2kg以上増えた
- ⚠足のむくみが急に強くなった
- ⚠夜中に息苦しくて目が覚め、起き上がると楽になる
- ⚠階段や坂道での息切れがはっきり悪化した
- ⚠尿の量が減った、食欲がなくてほとんど食べられない
一般的な症状
- 坂道や階段での息切れ、以前より体が重く感じる
- 足の甲や足首、すねのむくみ(夕方に強くなることが多い)
- 横になると息苦しく、起き上がると楽になる
- 夜中に息苦しくて目が覚める
- 数日のうちに体重が増える(体に水分がたまっているサイン)
- 疲れやすい、すぐに息が上がる
- 動悸(心臓の鼓動が強く感じる)、脈の乱れ
- 食欲が落ちる、おなかが張る、胃のあたりが重い
- 横になったときや夜間に増える咳
原因
主な原因
- 長年の高血圧(最も多い原因のひとつ)
- 心筋梗塞などの冠動脈の病気(心臓の筋肉に血液を送る血管の病気)
- 弁膜症(心臓の弁がきちんと開閉しなくなる病気)
- 心筋症(心臓の筋肉そのものの病気)
- 心房細動などの不整脈
- 貧血、甲状腺の病気、腎臓の病気
- 過度の飲酒
リスク要因
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどが多い状態)
- 肥満、とくに内臓脂肪の多い肥満
- 塩分の多い食事
- 飲酒の量が多い
- 運動不足
- 睡眠時無呼吸(寝ている間に息が止まる)
- 家族に心臓の病気の人がいる
- 高齢であること
- 腎臓の病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息が苦しい、横になれない
- 足のむくみが急にひどくなった
- 数日で体重が2kg以上増えた
- 胸の痛みや強い動悸がある
- 尿の量が目に見えて減った
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や家庭の血圧計で高い値が続いている
- 少し動いただけで息切れするようになった
- 夕方になると足がむくむ日が続く
- 夜に何度もトイレに起きる
- 体重が少しずつ増え続けている
- 脈が乱れている、動悸を感じる
診断
まず問診と診察、血圧の測定から始まります。いつから、どんなときに息苦しさやむくみが出るのか、体重の変化、服薬や生活の様子をうかがいます。そのうえで、心臓の働きや大きさ、弁の状態を調べる検査を行い、症状の程度と原因を総合して判断します。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定(両腕で測ることもあります。家庭での測定が役立つこともあります)
- 血液検査(心臓に負担がかかると増える物質=BNP/NT-proBNPを含む)と腎機能の検査
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる)
- 胸部X線(肺に水がたまっていないか、心臓が大きくなっていないかを見る)
- 心エコー(超音波で心臓の動き・大きさ・弁の状態を調べる)
- ホルター心電図(24時間の脈の乱れを調べる)
- 必要な場合の心臓カテーテル検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、その日のうちに終わります。結果によっては、いくつかの検査を組み合わせることもあります。診断の名前がつくことで不安になるかもしれませんが、それは「どう支えていくか」を決めるための第一歩です。結果の意味がわかりにくいときは、遠慮せずに医師にたずねてください。
治療
治療の中心は、血圧をきちんと下げて心臓の負担を軽くすることと、体に余分な水分がたまりすぎないようにすることです。それに加えて、塩分を控えるなどの生活の工夫、必要に応じた薬による治療、そして無理のない範囲で体を動かす心臓リハビリを組み合わせていきます。治療は一度決めたら終わりではなく、体重・血圧・症状を見ながら少しずつ調整していくものです。
自宅でのセルフケア
- 毎朝、起きてトイレに行ったあと、同じ条件で体重と血圧を測って記録する
- 塩分を控えめにする(1日6g未満がひとつの目安とされています)
- 汁物や加工食品、外食の回数に気をつける
- 水分のとりすぎに注意する(量は医師の指示に従う)
- 禁煙する。飲酒は量と頻度を控える
- 適正な体重を保つ
- かぜや感染症にかからないよう手洗い・うがいを心がける
- 処方された薬を自己判断でやめたり減らしたりしない
- 定期的に受診し、記録を持って行く
医療治療
治療では、いくつかの種類の薬を組み合わせて使うことが一般的です。たとえば、血圧を下げて心臓の負担を減らす薬、心臓を守りながら働きを助ける薬、体にたまった余分な水分を尿として出して息苦しさやむくみを楽にする薬などがあります。どの薬をどのくらい使うかは、血圧、腎臓の働き、体重、症状の経過を見ながら医師が決めます。自己判断で量を変えたり中止したりせず、気になる症状や副作用があれば、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
多くの方には手術は必要ありませんが、原因によっては手術や器具による治療が検討されることがあります。たとえば、弁膜症がある場合の弁の手術、脈の乱れを整えるための器具を体内に埋め込む治療、心臓の働きを補助する装置が必要な場合などです。自分に向いているかどうかは、心臓の専門医が検査結果をもとに判断します。
この病気と共に生きる
毎日の体重と血圧の記録が、いちばん頼りになる味方です。体重は「体に水分がたまっていないか」を教えてくれるサインで、数日で急に増えたときは早めの相談の目安になります。記録を診察のときに見せると、治療の調整がしやすくなります。また、息切れがする日は無理をせず、こまめに休む、動作をゆっくりにするなど、体の声に合わせて過ごしてください。
生活習慣のアドバイス
- 朝の体重・血圧の記録を習慣にする
- 睡眠をじゅうぶんとる
- 寒い時期や急な温度変化を避ける(脱衣所や浴室を暖める)
- 入浴は長湯を避け、ぬるめのお湯にする
- 感染症予防のための手洗い・うがい・マスク
- 階段や坂道ではペースを落とし、休みながら歩く
- 旅行や外出のときは薬と記録を持ち、無理のない予定を立てる
- たばこを吸わない、飲酒は控えめにする
食事と運動
食事は減塩が基本です。だしのうまみや香味野菜、酢やレモン、香辛料を使って薄味でもおいしく感じられる工夫をしましょう。汁物は少なめに、加工食品や練り物、漬物は回数を控えめにすると塩分を減らしやすくなります。野菜や果物、魚をバランスよくとることも大切です。運動は、医師に相談したうえで、息が軽くはずむ程度の散歩などから始めます。会話ができるくらいの強さが目安で、息苦しさや胸の痛みを感じたら中止して休んでください。
精神的健康と心の健康
「また息苦しくなったらどうしよう」「この先どうなるのだろう」という不安は、とても自然な気持ちです。心不全のある方では、気分の落ち込みや不安が起こりやすいことが知られています。不安や落ち込みはがまんする必要はありません。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医、地域の保健所や精神保健福祉センター、医療機関の相談窓口に相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわずに119番や医療機関に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを大きく下げることはできます。いちばん大切なのは、高血圧を放置しないことです。若いうちから血圧を測る習慣を持ち、高い値を指摘されたら早めに対応しましょう。減塩、適正体重の維持、禁煙、節酒、定期的な運動、睡眠をしっかりとることが、心臓の負担を減らします。
ワクチン
心不全のある方は、感染症にかかると症状が悪くなりやすいため、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて医師に相談することが勧められています。時期や回数は、その年の状況や体の状態に合わせて相談してください。
検診プログラム
40〜74歳の方は、加入している健康保険の特定健診(メタボ健診)で血圧や体重、血液検査を受けることができます。自治体が行う健康診査や、職場の健康診断も活用しましょう。家庭用の血圧計で毎日測ることも、とても有効なスクリーニングになります。
合併症
治療しない場合
- 息苦しさやむくみが強くなり、入院が必要になることがある
- 腎臓の働きが悪くなる
- 不整脈が起こりやすくなる
- 肝臓や消化器に負担がかかり、食欲低下やおなかの張りが出る
- 日常生活に介助が必要になることがある
- 急に症状が悪化する(急性増悪)ことがある
長期的な見通し
心不全は長く付き合う病気ですが、決して希望のない病気ではありません。血圧をきちんと管理し、毎日の記録と生活の工夫を続け、必要な治療を受けることで、多くの方は症状が安定し、家でふだんどおりの暮らしを続けられています。早めに気づいて相談できる人ほど、安定した状態を保ちやすいといわれています。あなたのペースで、一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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