胸やけと胃酸逆流(胃食道逆流症)
概要
胸やけは、胸の中央から喉のあたりにかけて「焼けるような」「熱い」と感じる不快な症状です。胃酸逆流は、胃の中の食べ物や胃酸が食道(食べ物が通る管)に逆流してしまうことをいいます。食道は胃と違って酸に強くないため、逆流した胃酸がしみて胸やけや苦い味のもとになります。ふだんの生活の中でときどき起こるものから、くり返し続いて治療が必要なもの(胃食道逆流症)まで、幅があります。
重要な事実
- 胸やけは多くの人が経験する身近な症状で、食後の一時的なものはめずらしくありません。
- 週に数回以上続く場合や、生活に支障が出る場合は、医療機関で相談すると改善につながります。
- 胸の痛みが心臓の病気と見分けにくいことがあるため、強い胸の痛みは迷わず救急要請を。
とてもよくある症状です。日本でも多くの成人が何らかの胸やけや胃酸逆流を経験しているといわれています。多くは生活の工夫で軽くなりますが、症状が続く場合は治療でしっかり楽になることができます。
年齢を問わず起こりますが、肥満のある方、妊娠中の方、食後すぐ横になる習慣のある方、食べすぎや脂っこい食事の多い方に多くみられます。また、高齢の方や、食道と胃の境目がゆるみやすい状態(食道裂孔ヘルニア)のある方にも起こりやすいです。
症状
- 胸の中央に締めつけられる・押さえつけられるような強い痛みが15分以上続く
- 冷や汗、息苦しさ、吐き気、めまいをともなう胸の痛み
- 痛みが腕・肩・あご・背中に広がる
- 大量の吐血、またはコーヒーのかすのようなものを吐く
- 黒くてタール状の便が出て、ふらつきや動悸がある
- ⚠食べ物や飲み物が飲み込みにくい、胸につかえる感じが続く
- ⚠意図しない体重減少がある
- ⚠吐血が少量でも繰り返す、便が黒い
- ⚠胸やけの症状が数か月以上続き、市販薬や生活の工夫でよくならない
一般的な症状
- 胸の中央が焼けるように熱く感じる(胸やけ)
- 口の中に酸っぱい味や苦い味が上がってくる
- げっぷが増える、胃の中のものが上がってくる感じ
- のどや胸のつかえ感、飲み込みにくさ
- 食後や横になったとき、前かがみになったときに悪化する
- 空咳(からせき)や声がれ、のどの違和感が続く
子供の症状
- 授乳後の吐き戻しが多い、泣き止まない・ぐずりが強い
- 繰り返す咳やゼーゼーする呼吸
- 体重が増えにくい、食欲がない
- 大きい子どもでは「胸が焼ける」「気持ち悪い」と訴えることがある
高齢者の症状
- 胸やけの感じが弱く、症状が目立たないことがある
- 胸の不快感、食欲低下、体重減少として現れることがある
- 飲み込みにくさや、食べ物がつかえる感じが出やすい
- 咳やのどの違和感が長引くことがある
原因
主な原因
- 食道と胃の境目の筋肉(下部食道括約筋)がゆるみ、胃の内容物が上がりやすくなる
- 食べすぎや脂っこい食事、アルコール、コーヒー、炭酸飲料などによる胃への負担
- 食後すぐ横になる、前かがみの姿勢が長い
- 肥満や妊娠によるお腹の圧力の上昇
- 食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜の上にずれ込む状態)
リスク要因
- 肥満、体重増加
- アルコールの飲みすぎ
- 遅い時間の食事や就寝直前の食事
- 一部の薬(かぜ薬や鎮痛薬など)の影響。服用中の薬は自己判断でやめず、医師や薬剤師に相談を
- ストレスや睡眠不足
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐血や黒い便がある
- 飲み込みにくさや食べ物がつかえる感じがある
- 胸の痛みが強く、冷汗や息苦しさをともなう(救急要請を)
- 意図しない体重減少がある
定期受診を予約すべき場合:
- 胸やけや胃酸逆流が週に2回以上ある
- 症状が数週間以上続いている
- 市販の薬や生活の工夫でよくならない
- 夜中に症状で目が覚める、日常生活に支障がある
- 症状がだんだん強くなっている
診断
まずは症状の出方や食事・生活の習慣について問診を行い、胸やけや逆流の特徴から見当をつけます。必要に応じて生活の工夫や治療を試しながら経過をみることもあります。症状が典型的でない場合や、飲み込みにくさ・体重減少などがある場合は、詳しい検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の回数、時間帯、悪化する要因の確認)
- 内視鏡検査(胃カメラ):食道の炎症や粘膜の状態を直接見る
- 24時間pHモニタリング:食道に酸が逆流する回数や量を調べる
- 食道内圧検査:食道の動きや境目の筋肉の働きを調べる
- バリウム検査(造影検査):飲み込みや形の異常を確認する
- ピロリ菌の検査(呼気・便・血液など)
診察で予想されること
問診と内視鏡検査が中心になることが多く、検査は多くの場合日帰りで受けられます。内視鏡は少し苦しく感じる方もいますが、希望すれば鎮静剤を使える施設もあります。検査結果によって、生活の工夫だけでよい場合もあれば、治療を続ける場合もあります。
治療
治療は、生活の工夫と、症状に応じた薬による治療が中心です。多くの方は両方を組み合わせることで症状が軽くなります。まずは食事や姿勢、体重などの見直しから始め、それでも十分に改善しない場合に薬を使うことが一般的です。
自宅でのセルフケア
- 食べすぎを避け、ゆっくりよく噛んで食べる
- 就寝の2〜3時間前には食事を終える
- 食後すぐ横にならず、上半身を少し起こしておく
- 寝るときは頭側の布団やマットレスを少し高くする
- 腹圧がかかる服装や、きついベルトを避ける
- 体重が増えている場合は、無理のない範囲で減量を目指す
- 喫煙を控え、アルコールは量と回数を減らす
- 症状が出やすい食べ物(脂っこいもの、コーヒー、炭酸、香辛料など)を自分で記録して調整する
医療治療
症状や検査の結果に応じて、胃酸の働きを抑える薬や、胃の粘膜を守る薬などが処方されることがあります。薬は医師の指示どおりに使い、自己判断で量を増やしたり急にやめたりしないようにしましょう。市販薬を使う場合も、続けてよい期間や併用してはいけない薬があるため、薬剤師や医師に相談すると安心です。
手術が検討される場合
薬での治療を続けても症状が強く、生活に大きな支障がある場合など、ごく一部の方では外科的な治療や内視鏡的な治療が検討されることがあります。多くはまず生活の工夫と薬で経過をみます。
この病気と共に生きる
症状のきっかけを記録しておくと、自分に合った付き合い方が見えてきます。食べたもの、時間、姿勢、ストレスなどを簡単にメモしてみましょう。症状が落ち着いている日が増えれば、治療もうまくいっているサインです。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい時間に食事をとる
- 食後は30分ほど座るか軽く歩く
- 寝る前の飲食や間食を控える
- ストレスをためないよう、自分なりのリラックス方法を持つ
- 適度な運動を続ける(食後すぐの激しい運動は避ける)
- 定期的に受診し、症状の変化を医師に伝える
食事と運動
脂っこい食事、大食い、早食いは症状を悪化させやすいので、あっさりしたものを少量ずつがおすすめです。コーヒーや炭酸、アルコール、香辛料は、自分が試して合わないと感じたら控えましょう。運動はウォーキングなど軽めのものを続けると体重管理にも役立ちます。食後すぐの前かがみの動作や腹筋運動は避けると安心です。
精神的健康と心の健康
夜に症状が出て眠れない、食事が楽しめないなど、気持ちが落ち込みやすくなることがあります。つらさを一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみましょう。ストレスが症状を悪化させることもあるため、睡眠や休息を大切にしてください。つらい気持ちが続くときは、自治体の健康相談窓口や、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。
予防
すべてを防ぐことは難しいですが、生活習慣を整えることで症状の回数や強さを減らせることが多いです。体重管理、食べ方、寝る前の食事、姿勢に気をつけることが予防につながります。
検診プログラム
決まった検診はありませんが、症状が長く続く方や、飲み込みにくさ・体重減少などがある方は、早めに医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 食道の粘膜が炎症を起こし、ただれる(逆流性食道炎)
- 食道が狭くなり、飲み込みにくくなる
- 食道の粘膜の一部が変化する状態(バレット食道)になり、長期的に注意が必要になることがある
- 出血して貧血になる
- 夜間の咳や睡眠障害、声がれなどの症状が続く
長期的な見通し
多くは生活の工夫と治療で症状が軽くなり、ふだんどおりの生活を続けられます。続く症状を放置せず早めに相談することが、安心につながります。心配なことがあれば、遠慮なく医師に聞いてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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