片麻痺性片頭痛(へんまひせいへんずつう)
概要
片麻痺性片頭痛は、片頭痛の一種です。頭が痛くなる前や痛いあいだに、体の片側(顔・腕・脚など)が動かしにくくなったり、力が入りにくくなったりするのが特徴です。「片麻痺」とは、体の左右どちらか半分にまひ(動かしにくさ)が出ることをいいます。この症状は「前兆(ぜんちょう)」とよばれ、多くの場合、数十分から数時間で元に戻ります。まれなタイプの片頭痛で、それ自体が命に関わる病気ではありませんが、初めて起きたときは脳卒中(脳の血管の病気)の可能性を否定する必要があるため、すぐに医療機関を受診することが大切です。
重要な事実
- 片頭痛のなかでもまれなタイプで、片頭痛がある人のごく一部にみられます。
- 体の片側の動かしにくさは「前兆」で、多くは数十分から24時間以内に良くなります。
- 家族に同じような症状の人がいる場合があり、遺伝が関係することがあります。
- 初めての症状は脳卒中と見分けがつきにくいため、救急受診が必要です。
- 発作時の対処と、発作を起こしにくくする予防を組み合わせて付き合っていく病気です。
とてもまれです。片頭痛をもつ人の1%未満といわれ、一般的な片頭痛と比べると、出会うことの少ないタイプです。
子どもから大人まで、どの年齢でも起こりますが、多くは10代までに初めての症状が出ます。女性にやや多くみられます。親やきょうだいに同じような頭痛があるなど、家族歴をもつ人が少なくありません。
症状
- 突然、顔の片側が下がる、腕や脚の片側が動かない、力が入らない
- 急にことばが出ない、ろれつが回らない、相手の言うことが理解できない
- 今までに経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 意識がもうろうとする、けいれんがある、呼びかけへの反応が弱い
- 呼吸が苦しい、胸の痛みがある、高熱をともなう混乱
- ⚠初めて片麻痺性の症状が出た
- ⚠片側の動かしにくさが24時間以上続いている
- ⚠発作の回数が増えた、長くなった、程度が強くなった
- ⚠妊娠中、または産後6週以内に初めての発作が起きた
- ⚠頭をぶつけたあとに症状が出た
- ⚠発熱や首の硬さをともなう頭痛がある
一般的な症状
- 頭が痛くなる前に、体の片側(顔・腕・脚のどれか、またはいくつか)が動かしにくい、力が入らない
- 同じ側にしびれや、ちくちくする感じが出る
- ことばが出にくい、ろれつが回らない
- 視界がちらつく、光が見える、見えにくくなる
- 頭痛(片側または両側、ズキズキすることが多い)
- 吐き気、光や音に敏感になる
- 集中しにくい、ぼんやりする、考えがまとまりにくい
- 前兆は多くは5〜60分続き、長いと24時間ほど続くことがある
子供の症状
- 頭痛が軽い、またはほとんどないことがあり、手足の弱さやぼんやりした様子だけが目立つことがあります。
- 症状が出る側が、発作ごとに左右入れ替わることがあります。
- 幼い子どもはうまく説明できないため、急に元気がなくなる、歩き方がおかしい、反応が鈍いなどで気づかれることがあります。
- 子どもの初めての症状は、必ず医療機関で相談してください。
高齢者の症状
- 中年以降で初めて片麻痺性の症状が出たときは、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA:一時的に脳の血流が悪くなる状態)との区別が特に重要です。
- もともと片頭痛があった人が、年をとってから前兆だけが出て頭痛がない発作を経験することがあります。
- 血圧や血管の状態、服用中の薬が関係することがあるため、主治医に伝えてください。
原因
主な原因
- 多くの場合、脳の神経の興奮の伝わり方に関わる遺伝子の変化が関係していると考えられています。
- 遺伝が関係していても、症状の出方や頻度は人によって大きく異なります。
- 脳の表面を興奮の波がゆっくり広がる現象と、それに続く血流の変化が、前兆に関係すると考えられています。
- 家族歴がはっきりしない場合も多く、両親に症状がなくても起こります。
リスク要因
- 家族に片頭痛、とくに片麻痺性片頭痛がある
- 10代までの初発が多い
- 女性ホルモンの変動(月経、妊娠、更年期)
- 睡眠不足、寝すぎ、不規則な生活
- 強いストレス、またはストレスから解放されたとき
- 脱水、空腹、アルコールなどの飲み物や食べ物
- まぶしい光、大きな音、強いにおい
- 頭をぶつけたけが
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めて片側の動かしにくさやことばの出にくさがあった
- 症状が24時間をこえて続く
- 発作が急に増えた、強くなった
- 妊娠中・産後の初めての発作
- 頭をぶつけたあとの頭痛やしびれ
- 発熱、首の硬さ、何度も吐くなどをともなう頭痛
定期受診を予約すべき場合:
- 繰り返し発作があるので、診断と治療の方針を相談したい
- 痛みどめの市販薬をよく使っている
- 学校や仕事、家事に支障が出ている
- 妊娠を考えている、または妊娠中
- 家族に同じ病気の人がいて、遺伝について相談したい
- 発作への不安が強く、気分が落ち込みやすい
診断
問診が中心になります。いつ、どんな症状が、どのくらい続いたか、頭痛はあったか、家族に同じような人がいるか、などをくわしく聞きます。国際的な頭痛の診断基準にあてはまるかを確認し、神経の診察を行い、脳卒中やほかの病気ではないことを確かめるために画像検査などを実施します。
行われる可能性のある検査
- 神経診察(力、しびれ、反射、歩き方、ことばの確認)
- 頭部MRI・MRA(脳と脳の血管の状態をみる検査)
- 頭部CT(救急の場面で、脳出血などを急いで否定したいとき)
- 血液検査(ほかの原因がないかの確認)
- 必要に応じて脳波検査
- 家族歴が強い場合、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を検討することがある
診察で予想されること
診察では、症状が出た時刻、どの部位がどんなふうに弱くなったか、頭痛の有無、発作の回数などをメモしておくと役立ちます。画像検査で異常が見つからないことも多く、それは「脳の大きな病気がない」ことを確かめるための大切な結果です。診断がつくまでに時間がかかることもあります。
治療
片麻痺性片頭痛は「治す」というより、発作をうまくコントロールしていく病気です。発作が起きたときの対処と、発作が多くて生活に支障がある場合の予防の、二本立てで考えます。薬の種類によってはこのタイプの片頭痛に使えないものがあるため、自己判断で市販薬や以前もらった薬を使わず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
自宅でのセルフケア
- 発作が始まったら、暗く静かな場所で横になる
- 冷たいタオルを額や首にあてる
- 水分をとり、軽く食べられるものを口にする
- 発作中は車の運転、高所作業、機械の操作をしない
- 頭痛ダイアリーをつけ、天気・睡眠・食事・ストレスを記録する
- 症状が出た時刻と経過を、家族と共有しておく
医療治療
発作時の痛みどめや吐き気どめは、医師がこのタイプに安全かどうかを確認したうえで処方します。発作の回数が多い、長い、生活に支障がある場合は、発作を起こりにくくする予防の薬を検討します。薬は人によって合う合わないがあるため、効果と副作用をみながら調整していきます。妊娠を考えている場合は、事前に医師に相談してください。手術で治す病気ではありません。
手術が検討される場合
手術で治す病気ではなく、通常は手術を行いません。
この病気と共に生きる
発作は突然くるので、仕事や学校、育児の予定を立てるときは「発作が来たらどうするか」をあらかじめ決めておくと安心です。周りの人に病気のことを伝え、発作のときは助けてもらえるようにしておきましょう。発作のない日はふつうに過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 毎日ほぼ同じ時刻に寝て、同じ時刻に起きる
- 朝食を抜かず、水分をこまめにとる
- ストレスをためこまず、休む時間を意識してつくる
- まぶしい光や強いにおいは、できるだけ避ける
- 適度な運動を習慣にする(発作の日は無理をしない)
- アルコールは量と回数を控えめにする
食事と運動
決まった食事法がすべての人に効くわけではありません。食べると調子が悪くなるものがあれば記録して、少し控えてみましょう。規則正しい食事と水分補給が基本です。運動は、ウォーキングなど軽めのものを無理なく続けるのがおすすめです。激しすぎる運動や暑いなかの運動は発作のきっかけになることがあるので、水分補給を忘れずに。
精神的健康と心の健康
発作が繰り返されると、「また起きたらどうしよう」という不安や、予定を立てにくいことへのストレスが大きくなることがあります。これはわがままでも弱さでもなく、よくある気持ちです。眠れない、気分が落ち込む、不安が強い状態が続くときは、医療機関に相談してください。日本では、厚生労働省が案内する相談窓口や、お住まいの自治体の健康相談、地域の心の相談窓口も利用できます。つらい気持ちが強いときは、ひとりで抱えず、だれかに話してください。
予防
遺伝が関係するため、病気そのものを完全に防ぐことはできません。ただし、発作のきっかけ(睡眠不足、脱水、強いストレス、まぶしい光など)を知って避けることで、回数を減らせる可能性があります。予防の薬が合う人もいます。
検診プログラム
家族に片麻痺性片頭痛の人がいる場合は、遺伝カウンセリングで相談できます。症状がないうちに検査をする「スクリーニング」は、通常は行われません。
合併症
治療しない場合
- 発作の回数が増え、学校や仕事、家事に支障が出ることがある
- 発作への不安から、外出や予定を控えるようになることがある
- まれですが、強い発作が長く続いたり、意識がはっきりしない状態が長引いたりする重いタイプもある
- 市販の痛みどめの使いすぎで、かえって頭痛が増えることがある
- 初めての発作を脳卒中と見分けずにいると、危険な病気を見逃すことがある
長期的な見通し
多くの人は、発作のきっかけを避け、治療を続けながら、ふつうの生活を送っています。年齢とともに発作が軽くなったり、間隔が空いたりする人も少なくありません。ひとりで抱えず、医療機関と相談しながら、自分に合った付き合い方を見つけていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.