血胆汁症(ヘモビリア)
概要
血胆汁症(けったんじゅしょう/ヘモビリア)は、胆汁(たんじゅう:肝臓で作られ、脂肪の消化を助ける黄色っぽい液体)の通り道である胆管(たんかん)に、血が混じった状態です。肝臓や胆管の近くの血管から出血し、その血が胆汁と一緒に胆管を通って十二指腸へ流れていきます。そのため、吐いたものに血が混じったり、便が黒くなったりします。出血が少量であれば自然に止まることもありますが、量が多いときは緊急の対応が必要になります。
重要な事実
- 胆管や肝臓の検査・処置のあとに起こることが多いとされています。
- 「右上腹部の痛み・黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)・吐血や黒い便」の3つが典型的な症状とされますが、すべてがそろうとは限りません。
- 少量なら自然に止まることもありますが、大量に出血すると貧血やショックにつながることがあるため、早めの受診が大切です。
血胆汁症は珍しい状態で、日常の診療でよく出会うものではありません。ただし、肝臓や胆管の処置を受ける人が増えるにつれて、処置後の合併症として見られることがあります。
肝臓や胆管の検査・処置を受けた人、胆石や胆管の炎症がある人、肝臓をけがした人、肝臓や胆管の腫瘍がある人、肝臓の血管にこぶ(動脈瘤)などがある人に起こることがあります。子どもでは腹部の外傷や胆管の生まれつきの形の違い、寄生虫などが関係することもあります。
症状
- 大量に血を吐いた、コーヒー色の吐いたものが続く
- 真っ黒な便が続く、血の混じった便が大量に出る
- 意識がもうろうとする、ぐったりしている、冷や汗が出る
- 強い腹痛で動けない
- 顔色が真っ白、脈がとても速い、息苦しい(ショックの可能性)
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
- ⚠黒い便に気づいた
- ⚠皮膚や白目が黄色くなってきた
- ⚠右上腹部の痛みが続いている
- ⚠発熱と腹痛が同時にある(胆管の炎症の可能性)
- ⚠最近、肝臓や胆管の処置を受けたあとで、だるさや息切れが強い
一般的な症状
- 右の肋骨の下あたり(右上腹部)の痛み
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 吐血、またはコーヒー色の吐いたもの
- 黒くタール状の便(黒色便)
- だるさ、ふらつき、動悸、息切れ(貧血のサイン)
- 発熱(胆管に炎症が起きている場合)
原因
主な原因
- 医療処置にともなう出血(肝臓の針検査、胆管の内視鏡処置、カテーテル治療など)— もっとも多いと考えられています
- 胆石や胆管の炎症(胆管炎)
- 腹部を強く打つなどの外傷
- 肝臓・胆管・膵臓の腫瘍
- 肝臓の血管のこぶ(動脈瘤)や血管の形の異常
- 肝臓の膿(うみ)のたまり(肝膿瘍)、胆管の寄生虫など(日本ではまれ)
リスク要因
- 最近、肝臓や胆管の検査・処置を受けた
- 胆石や胆管炎の既往がある
- 肝臓の病気(肝硬変など)や肝臓の腫瘍がある
- 血液を固まりにくくする薬を使っている
- 出血しやすい体質(血液の病気)
- 腹部のけがをした
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 黒い便や吐血があった
- 黄疸が出てきた
- 強い右上腹部の痛みや発熱がある
- ふらつき、動悸、息切れなど貧血を思わせる症状がある
- 肝臓や胆管の処置を受けたあとで体調がすぐれない
定期受診を予約すべき場合:
- 胆石や胆管炎を指摘されたことがあり、ときどき右上腹部が重い
- 肝臓の病気で通院中で、便の色や体調の変化が気になる
- 血液を固まりにくくする薬を使っていて、出血が心配
診断
まず症状の経過やこれまでの治療歴をくわしく聞き、体を診察します。そのうえで血液検査と画像検査を組み合わせて、出血している場所や量、原因を調べます。必要に応じて内視鏡で胆管の出口を直接観察し、出血源を探すこともあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血の程度、肝臓・胆管の数値、血が固まりやすいかの確認)
- 腹部エコー(超音波)検査
- CT検査やMRI検査(胆管の様子はMRCPという撮影法で調べることもあります)
- 上部消化管内視鏡検査
- 胆管・膵管の内視鏡検査(ERCP:十二指腸から胆管にカメラを入れて調べる方法)
- 血管造影検査(出血している血管を調べる)
診察で予想されること
診察のあと採血と画像検査が行われます。状態によっては入院して調べることもあります。検査の内容や順番は、症状の強さや施設によって異なります。わからないことは遠慮なく医療者に尋ねてください。
治療
血胆汁症の治療は、出血の量と原因によって変わります。少量で落ち着いている場合は様子を見ながら原因を調べますが、出血が多いときは入院して、出血を止める処置と体の支え(輸血など)を行います。同時に、胆石や胆管の炎症など元の原因の治療も進めます。
自宅でのセルフケア
- 医療者から指示された安静や食事の制限を守る
- 便の色、吐いたものの色、だるさや動悸の変化を記録して伝える
- 水分をこまめにとり、指示があれば絶食などに従う
- 処方された薬は医師の指示どおりに使い、自己判断で中止しない
- 市販の痛み止めなどには出血しやすくなるものがあるため、飲む前に医師や薬剤師に相談する
- 飲酒や激しい運動は、主治医の許可が出るまで控える
医療治療
出血している場所を内視鏡で見つけて止める処置や、出血している血管を塞ぐ処置(塞栓術)が行われることがあります。出血が多い場合には輸血で体を支えます。また、胆管の炎症や胆石など原因になっている病気の治療を並行して進めます。血液を固まりにくくする薬を使っている場合は、続けるかどうかを医師が判断します。治療の方法は施設や状態によって異なるため、担当医の説明をよく聞いてください。
手術が検討される場合
内視鏡や血管の処置では止血が難しい場合、腹部のけがや腫瘍が原因の場合などに、手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
出血が落ち着いたあとも、しばらくは便の色や体調の変化に気を配りましょう。処置のあとは、いつもより疲れやすい、息切れがするといった変化がないか見ておくと安心です。通院の予定は守り、気になることがあれば早めに相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がけ、飲酒は主治医と相談して控えめにする
- 十分な睡眠と休息をとる
- 重いものを持ち上げるなど腹圧のかかる作業は、許可が出るまで控える
- 出血しやすくなる市販薬やサプリメントは、使う前に医師・薬剤師に確認する
- 胆石や肝臓の病気を指摘されている場合は、その治療を続ける
食事と運動
回復の時期は、消化にやさしい食事を少しずつとり、油っこい食事を控えると楽になることがあります。運動は主治医の許可を得てから、ウォーキングなど軽いものから始めましょう。貧血があるときは無理をせず、体のだるさを感じたら休んでください。
精神的健康と心の健康
思わぬ出血や入院は、不安や怖さをもたらします。「また出血したらどうしよう」と感じるのは自然なことです。気持ちが落ち着かない日が続くときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や看護師、地域の相談窓口に話してみてください。自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに119番や医療機関に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げられる部分はあります。肝臓や胆管の処置を受けたあとは、医療者の指示に従って経過を観察することが大切です。胆石や胆管炎、肝臓の病気がある場合は、その治療を続けることでリスクを抑えられる可能性があります。血液を固まりにくくする薬を使っている人は、自己判断で変更せず、主治医とよく相談してください。
検診プログラム
血胆汁症そのものを早期に見つける決まった検診はありません。肝臓や胆管の病気で通院している人、処置を受けたあとの人は、気になる症状があれば早めに主治医に伝えましょう。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進み、だるさや息切れが強くなる
- 出血が大量になると血圧が下がり、ショック状態になる
- 血のかたまりが胆管を詰まらせ、黄疸や痛みが悪化する
- 胆管に炎症が起きる(胆管炎)
- いったん止まった出血が再び起こる
長期的な見通し
血胆汁症は多くの場合、適切な検査と治療で出血を止めることができます。原因によって経過は変わりますが、早めに気づいて対応すれば、回復が見込めることが多い状態です。不安なときは、症状や見通しについて担当医に具体的に尋ねてみてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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