溶血性輸血反応(輸血で起こる血液のこわれ)
概要
溶血性輸血反応(ようけつせいゆけつはんのう)は、輸血で体に入れた赤血球が、体の免疫のしくみによって壊されてしまう反応です。赤血球が壊れることを「溶血(ようけつ)」といいます。ほとんどは、輸血する血液の型(ABO型やRh型など)が合っていなかったときに起こります。多くの場合は輸血を始めてから数分〜数時間のあいだに起こり、輸血をしている病院の中で医療者が気づけることが多い反応です。まれではありますが、命に関わることがあるため、すぐに対応する必要があります。
重要な事実
- 輸血の副作用のひとつで、入れた赤血球が壊されることで起こります
- 多くは輸血開始から数分〜数時間以内に、発熱・悪寒・腰や胸の痛み・尿の色が濃くなるなどの形で現れます
- 輸血中や直後に少しでも違和感があれば、すぐにそばの看護師や医師に伝えることがとても大切です
溶血性輸血反応は、輸血全体からみるとまれな合併症です。病院では血液型を何度も確認するなど、起こさないための手順が決められており、そのおかげで重い反応はさらに少なくなっています。ただし、輸血を受ける人なら誰にでも起こる可能性はゼロではありません。
輸血を受ける人なら、年齢を問わず誰でも起こる可能性があります。これまでに何度も輸血を受けたことがある人、以前に輸血で副作用が出たことがある人、めずらしい血液型の人、緊急で輸血が必要になった人などでは、とくに注意が必要です。
症状
- 輸血中や輸血の直後に、息が苦しい・呼吸ができない
- 胸の強い痛み、腰や背中の激しい痛み
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応が弱い、けいれん
- 血圧が大きく下がる、冷汗が出てぐったりしている
- 尿がまったく出ない
- 顔やのどがはれて、息を吸いにくい
- ⚠輸血後数時間〜数日以内に発熱が続く
- ⚠尿の色が濃い、量が減った
- ⚠皮膚や白目が黄色っぽく見える(黄疸)
- ⚠強いだるさ、動悸、息切れが続く
- ⚠輸血した場所や体に赤み・はれ・かゆみが出た
一般的な症状
- 急な発熱や悪寒(さむけ)、ふるえ
- 腰や背中、胸のあたりの痛み
- 吐き気や気分が悪くなる感じ
- 尿の色が濃くなる(コーラ色や紅茶色のように見える)
- 息苦しさ、動悸(どうき)
- 血圧が下がる、顔色が青白くなる
- 皮膚が赤くなる、かゆみが出る
- 理由がはっきりしない不安な感じ、そわそわした感じ
子供の症状
- 泣き止まない、ぐずりが強くなる
- ぐったりして元気がない、反応が薄い
- 顔色が悪い、唇の色が悪い
- 発熱やふるえ
- 尿の量が減る、尿の色が濃い
- 子どもは症状を言葉で伝えにくいため、様子の変化に気づくことが大切です
高齢者の症状
- 息切れや強いだるさ
- 胸の痛みや動悸
- 血圧が下がる、ふらつく
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない
- 高齢の方ははっきりした症状が出にくく、なんとなく元気がないように見えるだけのこともあります
原因
主な原因
- 輸血する血液と患者さんの血液型が合っていない(ABO型やRh型などの不一致)
- 患者さんの確認や血液の取り違えなど、輸血の手順上のミス
- 患者さんの血液中にもともとある抗体が、輸血した赤血球を攻撃してしまう
- 血液を保存・準備する過程での赤血球への負担(加温や圧力をかけすぎるなど)
- まれに、血漿(けっしょう)という血液の液体部分に対する反応
リスク要因
- これまでに輸血を受けたことがある(抗体ができていることがある)
- 妊娠・出産の経験がある(抗体ができることがある)
- 多数回の輸血や、長期間にわたる輸血
- めずらしい血液型、または複数の抗体を持っている
- 緊急時など、確認の時間が十分にとれない状況での輸血
- 以前に輸血で副作用が出たことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 輸血中に少しでも体調の変化を感じたとき(その場ですぐに医療者に伝えてください)
- 輸血後24時間以内に発熱、悪寒、腰や胸の痛みが出た
- 尿の色が濃くなった、尿の量が減った
- 皮膚や白目が黄色っぽく見える
- 強いだるさ、息切れ、動悸が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 輸血後に何となく体調がすぐれない日が続く
- 輸血の数日〜数週間後に、だるさや微熱が続く
- 以前の輸血で気になったことがあり、次に輸血を受ける予定がある
- 自分の血液型や輸血の履歴について確認しておきたい
診断
輸血中や輸血後の症状から疑い、輸血を中止したうえで検査を進めます。まず「輸血した血液と患者さんの血液が本当に合っているか」を、もう一度はじめから確認し直します。そのうえで、血液の中の赤血球が壊れていないか、抗体ができていないかを調べる検査を行います。診断は、症状・検査結果・輸血の記録をあわせて総合的に判断されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(赤血球やヘモグロビンの数、壊れた赤血球の量を示す数値など)
- 血液型の再確認(患者さんの血液と輸血バッグの血液の両方)
- 直接抗グロブリン試験(クームス試験):赤血球に抗体がくっついているかを調べる検査
- 不規則抗体検査:血液中に赤血球を攻撃する抗体があるかを調べる検査
- 尿検査(尿の色や、尿中に血の成分が出ていないか)
- 腎臓のはたらきや血液の固まり具合をみる検査
- 必要に応じて胸部の画像検査など
診察で予想されること
輸血中に症状が出た場合は、まず輸血を止め、点滴の管はそのまま残して、水分や薬をすぐに入れられるようにします。そのあと、何度か採血をして変化を追いかけます。血圧や脈、尿の量、呼吸の状態をこまめに確認するため、しばらくベッドで休みながら様子をみることになります。検査の結果が出るまでに少し時間がかかることがあります。
治療
治療でいちばん大切なのは、疑った時点ですぐに輸血を止めることです。そのうえで、体を支える治療を行います。多くの場合は、早く気づいて対応できれば回復します。症状の重さによって、対応の内容と観察する期間が変わります。
自宅でのセルフケア
- 輸血中は、少しでも違和感があれば我慢せず、その場ですぐに医療者に伝えてください
- 輸血後しばらくは、発熱・尿の色・だるさなどの変化に気を配りましょう
- 輸血を受けたこと、副作用が出たことがあれば、必ず医療者に伝え、記録に残してもらいましょう
- 退院後は医師の指示に従って水分をとり、安静を保ちましょう
- 体調の変化をメモしておくと、受診のときに役立ちます
医療治療
輸血を中止したうえで、点滴で水分と電解質を補い、血圧や尿の量を保つ治療を行います。腎臓を守るための処置や、血液の固まり方が乱れていないかの確認も行われます。症状に応じて医師の判断で薬が使われることがあります。重症の場合には、血液をきれいにする処置(血液浄化療法)が必要になることがあります。使う薬や処置の内容は、症状と検査結果をもとに医師が決めます。
手術が検討される場合
通常は手術ではなく、輸血を止めて体を支える治療が中心です。ごく重症の場合に、血液をきれいにする処置のために集中治療室で管理することがあります。
この病気と共に生きる
輸血を受けたあとは、しばらく体の変化に気を配って過ごしましょう。多くのかたは早期の対応で回復し、日常生活に戻ります。輸血を受けたことを自分でも覚えておき、手術や受診のたびに医療者へ伝えることが、これからの安全につながります。
生活習慣のアドバイス
- 自分の血液型、輸血を受けた日、副作用の有無をメモして持ち歩きましょう
- 別の医療機関を受診するときは、輸血の履歴を必ず伝えましょう
- 輸血後に体調がすぐれない日が続くときは、我慢せずに早めに相談しましょう
- 十分な睡眠と休養をとり、体調の変化に気づきやすい状態を保ちましょう
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。医師から水分や塩分について指示があった場合はそれに従ってください。運動は、体調が戻ってから無理のない範囲で少しずつ再開しましょう。だるさや息切れが残るあいだは、激しい運動を控え、散歩など軽い活動から始めるのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
輸血で副作用が起きると、不安やこわさが残ることがあります。「また輸血が必要になったらどうしよう」と心配になるのは自然なことです。その気持ちを一人で抱え込まないでください。看護師や医師に気持ちを話すだけでも、少し楽になることがあります。つらい状態が続くときは、医療者にそう伝えてください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときや、一人で抱えきれないときは、ためらわずに身近な人や医療機関に連絡し、緊急であれば119番に電話してください。
予防
溶血性輸血反応の多くは、防ぐことができます。病院では、患者さんの確認を複数の人で行う、血液型を何度も確認する、輸血の直前にもう一度照合するといった手順が決められています。患者さん側も、自分の氏名・生年月日・血液型を伝える、以前に輸血で副作用が出たことを必ず話す、輸血中に違和感があればすぐに伝える、といった協力が大きな助けになります。
検診プログラム
輸血の前には、血液型検査と、赤血球を攻撃する抗体がないかを調べる検査(不規則抗体スクリーニング)が行われます。過去に輸血や妊娠の経験がある方は、抗体ができていることがあるため、この検査がとくに大切になります。輸血後にも体調の変化を確認します。
合併症
治療しない場合
- 腎臓のはたらきが悪くなる(急性腎障害)
- 血圧が大きく下がってショック状態になる
- 血液が固まりにくくなる状態(出血しやすくなる)
- 肺に水分がたまって息苦しくなる
- 重い貧血や、まれに命に関わる状態
長期的な見通し
多くの場合は、輸血中や直後に症状が出るため、医療者が早く気づいて輸血を中止できます。早期に対応できれば回復する人がほとんどです。輸血は命を支える大切な治療であり、安全のための手順も日々整えられています。不安な点は、遠慮なく医療者に相談しながら治療を進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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