妊娠中の痔(じ)のケア
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中にお尻の穴(肛門)の周りの血管が腫れて、こぶのように触れる状態を「痔」と呼びます。医学的には「痔核(じかく)」といい、いぼ痔とも言われます。おなかの赤ちゃんには直接影響しません。
重要な事実
- 妊娠中の女性のおよそ3人に1人から2人に1人が痔の症状を経験します。
- 大きくなった子宮が血管を圧迫することで起こりやすくなります。
- 生活習慣の見直しとやさしいケアで、多くの場合症状は和らぎます。
とてもよくある症状です。妊娠後期になると、おなかの重みでお尻の血管に負担がかかり、痔になりやすくなります。
妊娠中の女性全員に起こりえますが、特に妊娠28週以降の後期と、出産後1~2週間の時期に多く見られます。以前に痔になったことがある人や、便秘がちな人はより注意が必要です。
症状
- 大量の出血(便器が赤くなるほど)
- めまいや立ちくらみで立っていられない
- 激しい腹痛やおなかの張りが続く
- どれかに当てはまる場合は、すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。
- ⚠出血が続く、または量が増える
- ⚠痔のしこりが急に腫れて、触れると非常に痛い(血栓性痔核の可能性)
- ⚠発熱がある
- ⚠痛みが強く、歩くのもつらい
- ⚠これらの症状がある場合は、当日中に産婦人科または肛門科を受診してください。
一般的な症状
- お尻の穴の周りのかゆみや痛み
- 排便のときに鮮やかな赤い血が便やトイレットペーパーに付く
- お尻の穴の周りに腫れやしこりを感じる
- 座ったときの違和感や痛み
- 排便後にまだ残っている感じ(残便感)がする
子供の症状
- 妊娠に関連した症状ではないため、この記事では該当しません。
高齢者の症状
- 妊娠に関連した症状ではないため、この記事では該当しません。
原因
主な原因
- 妊娠中は女性ホルモンの影響で血管が広がりやすくなります。
- 大きくなった子宮が骨盤の静脈を圧迫し、お尻の周りの血流が滞りやすくなります。
- 妊娠中は便秘になりやすく、排便時にいきむことで肛門に負担がかかります。
- 出産時に強くいきむことで、痔ができたり悪化したりします。
リスク要因
- 便秘がちである
- 長時間立っていたり座っていたりする
- 体重増加が多い
- 以前にも痔になったことがある
- 双子や三つ子など多胎妊娠である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 出血が止まらない、または出血量が多い
- 痛みが強く、日常生活に支障が出ている
- 発熱や悪寒がある
- 痔のしこりが急に大きくなり、激しい痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中に痔の症状があり、気になる
- 妊娠中でも使える薬について知りたい
- 出産後の痔の状態を確認したい
- 便秘が続くため、便をやわらかくする方法を相談したい
診断
医師がお尻の状態を目で見て確認し、必要に応じて指で触って診察します。妊娠中でも安全に行える検査です。
行われる可能性のある検査
- 視診:お尻の穴の外側を目で確認します。
- 触診:指を入れずに外側から触る場合と、指で中を確認する場合があります。
- 肛門鏡(こうもんきょう):直径2cmほどの筒で肛門の中を直接見る検査です。妊娠中でも必要な場合に行われますが、負担が少ない方法で行われます。
診察で予想されること
診察は数分で終わります。妊娠中であることを伝えれば、おなかの状態に配慮して診察してくれます。出血が多い場合は、痔以外の病気を確認するために、出産後に大腸の検査をすすめられることもあります。まずは産婦人科に相談しましょう。
治療
妊娠中の痔は、ほとんど手術をせずに、生活習慣の改善と外用薬などの治療でよくなります。妊娠中は使える薬が限られるため、医師の指導のもとで行います。
自宅でのセルフケア
- 排便時に強くいきまず、トイレに長く座らない
- 1日数回、ぬるま湯に5分ほどお尻をつける「座浴」を行う
- 冷却シートや冷たいタオルでお尻を冷やし、腫れと痛みをやわらげる
- お尻を清潔に保ち、刺激の少ないやわらかいトイレットペーパーを使う
- 横向きに休むなど、お尻に圧力がかかる姿勢を避ける
医療治療
医師から妊娠中に使える外用薬(軟膏や座薬)が処方されることがあります。便秘が強い場合は、便をやわらかくする薬がすすめられることもありますが、自己判断で市販薬を購入せず、必ず医師の指示に従いましょう。
手術が検討される場合
妊娠中に痔の手術を行うことはほとんどありません。保存的な治療で症状をうまくコントロールしながら、出産後に改めて手術が必要かどうかを検討します。どうしても手術が必要な場合は、産科医と消化器外科医が連携して、赤ちゃんに影響が少ない時期と方法を選びます。
この病気と共に生きる
妊娠中の痔は、出産までの一時的なものと考えると気持ちが楽になります。痛みがつらいときは無理をせず、横になって休むなど、自分をいたわりながら過ごしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 同じ姿勢を続けず、1時間に1回は立ち歩いたり、座り直したりする
- 座るときは硬い椅子を避け、丸めたタオルやドーナツ型クッションを使う
- 通気性のよい下着を選び、お尻を蒸れさせない
- きつい腹帯やガードルは避け、血流を妨げないようにする
食事と運動
野菜、果物、海藻、きのこなど食物繊維の多い食品を意識して食べ、便をやわらかくしましょう。水分は1日1.5~2リットルを目安に、こまめに飲みましょう。運動は、かかりつけ医に確認した上で、妊婦さんに負担の少ないウォーキングなどを取り入れると、便秘予防に役立ちます。
精神的健康と心の健康
妊娠中はホルモンの変化で気分が不安定になりやすく、痔の痛みが続くと「ずっとこんな状態が続くのでは」と不安になることもあります。そのような気持ちは自然なものです。一人で抱え込まず、パートナーや家族、助産師に話しましょう。つらい気持ちが続く場合は、産科医や心理の専門家に相談するのも一つの方法です。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、便秘を予防し、お尻の血管に負担をかけないことで、痔になりにくくなります。妊娠前からできる対策もあります。
ワクチン
妊娠中の痔を予防するためのワクチンはありません。
検診プログラム
痔のための特別な検診はありません。気になる症状があれば、我慢せずに医師に相談しましょう。また、妊娠中の出血は痔以外の原因も考えられるため、定期健診で伝えることも大切です。
合併症
治療しない場合
- 痔の腫れが大きくなり、痛みが強くなることがあります。
- 痔の内部で血の固まり(血栓)ができ、激しい痛みを伴うことがあります。
- 出血を繰り返すと、貧血を起こしやすくなります。
- 痔が肛門の外に飛び出して、戻らなくなる状態(嵌頓痔核)になることもあります。
長期的な見通し
妊娠中の痔は、自然によくなることも多いです。出産後に症状が消える人も少なくありません。もし出産後も症状が続いても、再度治療をすることで改善できます。妊娠中も適切なケアと医師のサポートで、快適に過ごすことができます。安心してください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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