ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IgA血管炎)
概要
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病は、最近は「IgA血管炎(アイジーエーけっかんえん)」という名前でも呼ばれる病気です。体の中のとても細い血管(毛細血管)に炎症が起こり、皮膚・おなか・関節・腎臓などに症状が出ます。皮膚には押しても色が消えない赤紫色のあざのような斑点(紫斑=しはん)ができます。名前はむずかしいですが、子どものころにかかることが多い、よく知られている病気のひとつです。
重要な事実
- 主に2〜10歳くらいの子どもに多く見られ、大人では少ない病気です。
- 多くは数週間から数か月で自然に落ち着きますが、腎臓の状態をときどき尿検査で確認する必要があります。
- 皮膚の紫斑、おなかの痛み、関節の痛み、腎臓の症状が主なサインです。
小児科では比較的よく見られる病気です。特別にめずらしいものではなく、小児科の先生なら診たことがあるということも多い病気です。
主に2〜10歳の子どもに多く、男の子にやや多く見られます。秋から冬にかけて増える傾向があります。大人にも起こりますが頻度は低く、大人の場合は腎臓の症状が長引きやすいといわれています。
症状
- 激しいおなかの痛みで動けない、うずくまってしまう
- 大量の血便、または便が黒くてタール状
- 意識がもうろうとしている、けいれんが起きた
- 呼吸が苦しい、顔やのどが急に腫れてきた
- 尿がまったく出ない、急に全身がむくんで息苦しい
一般的な症状
- 押しても色が消えない赤紫色の斑点(紫斑)— 足やおしり、ひざの周りによく出ます
- おなかの痛み(食後や夜間に強くなることがあります)
- 関節の痛みや腫れ(ひざ・足首など)
- 発熱やだるさ
- 血便、または便に血が混じる
- 尿の色が濃い(コーラ色・赤褐色)、まぶたや手足のむくみ
子供の症状
- おなかの痛みが強く出やすく、泣き続けたり、食欲がなくなったりします
- 関節が痛くて歩きたがらない、足を引きずる
- 男の子では、睾丸(こうがん)の痛みや腫れが出ることがあります
- 機嫌が悪い、元気がない、など、言葉で説明できないサインとして現れることがあります
高齢者の症状
- 大人では発症が少ないかわりに、腎臓の症状(尿の異常、血圧の上昇、むくみ)が長引いたり、重くなったりしやすいといわれます
- 皮膚の症状が目立たず、おなかや関節の症状から始まることもあります
- もともとの持病がある場合は、症状の出方が違うことがあるため早めの受診が大切です
原因
主な原因
- 体の免疫のたんぱく質の一種(IgA)が細い血管の壁に付着し、そこで炎症が起こることが分かっています
- なぜそれが起こるのか、はっきりした原因はまだ分かっていません
- かぜやのどの感染(溶連菌など)のあとに続いて起こることが多いといわれています
リスク要因
- 2〜10歳ごろの子どもであること
- 男の子であること
- 秋から冬にかけて(かぜや感染症が増える時期)
- 上気道炎(のどや鼻のかぜ)にかかったあと1〜3週間ほど
- 家族に同じ病気の人がいることはまれで、遺伝する病気ではありません
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便がある、便に血が混じる
- 尿がコーラ色・赤褐色、または尿の量が目に見えて減った
- おなかの痛みが強く、水分もとれない
- 関節が痛くて歩けない
- 高い熱が続く、または全身のむくみが出てきた
定期受診を予約すべき場合:
- 押しても消えない赤紫色の発疹が出た(特に足やおしり)
- 関節の痛みや腫れがある
- 軽いおなかの痛みが続いている
- 原因がよく分からないだるさ、食欲の低下が続く
診断
特徴的な紫斑(押しても消えない赤紫の斑点)、おなかの痛み、関節の痛みといった症状と、体の診察を組み合わせて診断します。症状のそろい方と経過がとても大切な手がかりになります。必要に応じて血液検査や尿検査を行い、腎臓や腸の状態を確認します。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(たんぱくや血が混じっていないか、何度も行います)
- 血液検査(炎症の程度や腎臓のはたらきを確認)
- 血圧の測定
- 便の検査(見えない出血がないかの確認)
- 腹部の超音波(エコー)検査(腸の状態を見るため)
- まれに、腎臓の状態を詳しく調べる検査(腎生検)を行うことがあります
診察で予想されること
診断後は、尿検査を定期的に受けることになります。最初は頻回に、その後は間隔をあけながら、数か月から1年ほど続けることが多いです。紫斑は徐々に色あせて消えていきますが、いったん落ち着いてから一時的にぶり返すこともあります。あわてずに通院を続けてください。
治療
多くは特別な治療をしなくても自然に良くなります。症状の強さに合わせて、痛みや炎症をやわらげるケアを行い、腎臓や腸の合併症がないかを確認しながら経過を見ていきます。症状が重いときは、専門の医師がより強い治療を検討します。
自宅でのセルフケア
- 十分な休養と水分をとり、体を温かくして過ごす
- 痛みで動きにくいときは無理に動かさず、楽な姿勢で休む
- 尿の色と量、むくみ、体温を毎日のように記録しておくと受診時に役立ちます
- 登校や運動については、主治医に相談してから決める
- 新しい症状(血便、尿の色の変化、強い腹痛)が出たら、すぐに医療機関に連絡する
医療治療
症状の程度に応じて治療の方針が変わります。関節痛や発熱などには、痛みと炎症をやわらげるお薬が使われることがあります。おなかの痛みが強い場合や腎臓の炎症が強い場合には、体の免疫の反応を抑える治療を専門医が検討します。どの治療が必要かは、症状・年齢・腎臓の状態をみて医師が判断します。自己判断で市販薬を使ったり、治療を中断したりしないでください。
手術が検討される場合
まれに腸の合併症(腸の一部が詰まる状態など)が起こり、処置や手術が必要になることがあります。多くはありませんが、強い腹痛が続くときは早めに受診してください。
この病気と共に生きる
紫斑は見た目が目立つため本人も家族も不安になりがちですが、時間とともに色あせて消えていきます。しばらくは運動や体育を控えめにするなど、無理のない生活を心がけましょう。通院の予定をカレンダーに記録し、尿検査を忘れずに受けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 手洗い・うがいなど、感染症の基本的な予防を続ける
- 体調の変化をメモに残す習慣をつける(尿の色、腹痛、むくみなど)
- 主治医から指示があった運動制限は、期間を守る
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。バランスのよい食事と水分をとることを基本にしてください。塩分のとりすぎには気をつけ、むくみがあるときは医師の指示に従いましょう。運動は、症状が落ち着いている間は主治医と相談しながら少しずつ再開してかまいません。
精神的健康と心の健康
見た目の変化や通院の多さから、本人も家族も不安やストレスを感じることがあります。とくに子どもは「自分だけ違う」と感じやすいので、やさしく説明し、安心させてあげてください。不安が強いときや気持ちが落ち込むときは、ひとりで抱えずに医療者や学校の先生、身近な人に話してみましょう。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談してください。
予防
この病気を確実に防ぐ方法はまだ分かっていません。かぜやのどの感染のあとに起こることが多いため、手洗い・うがい・十分な睡眠など、感染症を防ぐ基本的な生活習慣が間接的な助けになる可能性があります。
ワクチン
この病気を防ぐワクチンはありません。決められた定期予防接種は基本的に受けてかまいませんが、治療中や体調の変化があるときは、必ず主治医に相談してから受けてください。
検診プログラム
この病気になる前から見つけるための検査はありません。発症後は、腎臓の合併症を見逃さないために尿検査でのフォローを続けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の炎症(たんぱく尿・血尿、血圧の上昇など)。多くは軽く、時間とともに良くなりますが、まれに長引くことがあります
- 腸の合併症(腸の一部が詰まる状態など)
- まれに腸に穴が開くなどの重い合併症
- 男の子の場合、睾丸の痛みや腫れ
長期的な見通し
ほとんどのかたが数週間から数か月で回復し、日常生活に戻っていきます。腎臓の合併症が起こっても、定期的な尿検査で早く見つけて対応すれば、多くは落ち着きます。通院を続けることが、安心して過ごすための一番の近道です。
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最終更新: 2026年10月24日
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