ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP/IgA血管炎)
概要
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病は、体の中の細い血管(毛細血管)に炎症が起きる病気です。英語の頭文字をとって「HSP」と呼ばれ、最近は「IgA血管炎(アイジーエーけっかんえん)」という名前も使われます。血管に炎症が起きると、皮膚に押しても消えない赤紫色の斑点(紫斑=しはん)が出たり、関節が痛んだり、お腹が痛くなったり、腎臓(にょうぞう=尿を作る臓器)に負担がかかったりします。多くの場合は数週間から数か月で自然に落ち着きます。
重要な事実
- 主に子ども、とくに3〜10歳ごろに多い病気です
- かぜなどの感染症のあとに続いて起こることがよくあります
- 多くは自然に治りますが、腎臓の状態を尿検査でしばらく見守ることが大切です
小児科ではときどき見かける、比較的よく知られた病気です。特別に珍しいものではありませんが、すべての子どもがなるわけでもありません。
最も多いのは3〜10歳の子どもで、男の子にやや多くみられます。大人にも起こりますが頻度は低く、大人の場合は腎臓の症状が長引くことがあると言われています。
症状
- 激しく続くお腹の痛み、または腹部が硬く張っている
- 吐血、コーヒー色の呕吐、大量の血便
- 意識がもうろうとしている、けいれん、呼びかけへの反応が弱い
- 呼吸が苦しい、顔や喉が腫れている
- 尿がほとんど出ない、顔や手足が急に大きくむくむ
- ⚠尿が赤い、またはコーラのような色をしている
- ⚠まぶたや足のむくみが続く
- ⚠強い腹痛が続き、水分もとれない
- ⚠歩けないほどの関節の痛み
- ⚠高い熱が続く、または症状が急に悪くなった
一般的な症状
- 皮膚の紫斑:押しても消えない赤〜紫の斑点。足やすね、おしり、太ももに出やすい
- 関節の痛みや腫れ:膝や足首など、足の関節に多い
- お腹の痛み:軽い痛みから、強い痛みまでさまざま
- 血便や下血:お腹の血管が炎症を起こすため
- 尿の異常:血尿(尿が赤っぽい、コーラ色)や蛋白尿(たんぱくにょう)が出ることがある
- 発熱:微熱程度のことが多い
子供の症状
- お腹の痛みが強く、嘔吐(おうと)を伴うことがあります
- 痛みで歩きたがらない、足を引きずるなど、関節の症状が目立つことがあります
- 男の子では、陰嚢(いんのう=ふくろ)が腫れたり痛んだりすることがあります
- 機嫌が悪い、食欲がない、ぐったりしているように見えることがあります
高齢者の症状
- 大人では皮膚の症状が目立たないことがあり、診断が遅れることがあります
- 腎臓の炎症が残りやすいと言われ、尿検査での経過観察がより大切になります
- 関節痛やお腹の症状が長引くことがあります
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ分かっていません。体の免疫(自分の体を守る仕組み)が、何かのきっかけで自分の血管を攻撃してしまう「免疫の誤作動」が関係すると考えられています
- かぜや気道の感染症、胃腸炎のあとに続いて起こることが多くみられます
- 食べ物や薬が直接の原因になるわけではない、と考えられています
リスク要因
- 3〜10歳の子どもであること
- 最近かぜや感染症にかかったこと
- 男の子であること(やや多い)
- 家族に同じ病気の人がいる場合(まれですが関係が指摘されることがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 押しても消えない紫の斑点が急に増えたとき
- 尿の色が赤い、コーラ色、または泡立つ尿が続くとき
- まぶたや足がむくみ、尿の量が減ったとき
- 強い腹痛、血便、繰り返す呕吐があるとき
- ぐったりして元気がない、反応がいつもと違うとき
定期受診を予約すべき場合:
- 足やすねに押しても消えない赤い斑点が出たとき
- 関節の痛みや腫れが数日続くとき
- 軽いお腹の痛みや食欲低下が続くとき
- 紫斑が消えたあとも、尿検査のフォローが必要と言われたとき
診断
診断は、症状の組み合わせと診察が中心です。とくに「押しても消えない紫斑が足に出ている」「お腹の痛み」「関節の痛み」がそろうと、この病気が疑われます。血液検査と尿検査で、炎症の程度や腎臓への影響を確認します。
行われる可能性のある検査
- 尿検査:血尿や蛋白尿がないかを調べる(とても大切な検査です)
- 血液検査:炎症の程度、腎臓のはたらき、貧血の有無などを確認
- 血圧測定:腎臓の影響を知るために繰り返し測ります
- 腹部エコー(超音波検査):腸の状態を確認することがあります
- 便の検査:血便がないかを確認することがあります
- 皮膚の一部を調べる検査や腎臓の組織を調べる検査:症状が典型でない場合や、腎臓の状態を詳しく知りたい場合に検討されます
診察で予想されること
診察と尿検査が中心で、痛みの少ない検査がほとんどです。診断後は、尿検査を数週間〜数か月おきに繰り返して、腎臓の状態を見守ることが一般的です。検査の予定や間隔は医師によって異なるため、指示を確認しておきましょう。
治療
症状が軽い場合は、特別な治療をせずに経過を見守ることが多い病気です。水分をとって安静にし、痛みやお腹の症状に応じて医師が対応を判断します。腎臓や腸に強い炎症がある場合は、専門医による治療が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、脱水を防ぐ
- 痛みが強いときは無理に動かさず、安静にする
- 尿の色や量をときどき確認し、変化を記録しておく
- お腹の痛みや呕吐、関節の腫れなど、症状の変化をメモしておく
- 学校や仕事を休むかどうかは、医師の指示にしたがう
- 市販の薬を使う前に、医師や薬剤師に相談する
医療治療
症状が軽ければ、定期的な診察と尿検査による経過観察が中心です。お腹の痛みが強い場合や、腎臓に強い炎症がみられる場合には、炎症を抑える治療を医師が検討します。使う薬の種類や量は症状によって変わるため、具体的な内容は担当の医師や薬剤師の説明を受けてください。自己判断で薬を始めたり中止したりしないようにしましょう。
手術が検討される場合
通常は手術は必要ありません。ただし、まれに腸の重い合併症(腸重積=ちょうじゅうせき など)が起こった場合は、外科的な処置が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
紫斑は少しずつ薄くなっていくことが多く、日常生活を大きく変える必要はないことがほとんどです。ただし、尿検査のフォローは症状が消えたあとも続くことがあるため、予定を忘れずに受診しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 感染症予防のために手洗い・うがいを習慣にする
- 体調の変化(尿の色、むくみ、腹痛)を家族で共有する
- 受診の予定をカレンダーに記録しておく
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。バランスのよい食事と十分な水分を心がけましょう。運動は、症状が落ち着いていれば軽いものから再開して問題ないことが多いですが、関節痛やお腹の症状があるときは無理をせず、医師に確認してください。
精神的健康と心の健康
見た目の紫斑や、何度も通院することに不安を感じるお子さんやご家族は少なくありません。不安な気持ちは自然なことで、誰かに話すことで楽になることがあります。落ち着かない気持ちが続くときは、小児科の医師や看護師、学校の先生、スクールカウンセラーなどに相談してみましょう。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に早めに連絡してください。
予防
この病気を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。原因が免疫の反応によるものと考えられているため、生活習慣だけで完全に予防することは難しいのが実情です。ただし、手洗い・うがいなど感染症予防の基本を心がけることは、きっかけとなる感染を減らす助けになります。
ワクチン
この病気そのものを防ぐワクチンはありません。ふだんの予防接種については、体調や治療の状況をふまえて医師に相談したうえで進めましょう。
検診プログラム
この病気そのものを早期に見つけるための一般的な検診はありません。ただし、診断されたあとに尿検査を定期的に受けることが、腎臓の変化を早く見つけるうえでとても大切です。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の炎症が続き、血尿や蛋白尿が長引くことがある
- 血圧が高くなることがある
- まれに腎臓のはたらきが低下することがある
- 腸重積や消化管出血など、お腹の合併症が起こることがある
- 男の子では、陰嚢の腫れや痛みが強くなることがある
長期的な見通し
ほとんどの方は数週間から数か月で回復し、長い目で見れば良好な経過をたどります。腎臓への影響が残る方は一部ですが、定期的な尿検査で早く気づいて対応できます。症状が落ち着いても検査を続けることが、安心につながります。心配な点は遠慮なく医師に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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