肝細胞腺腫(肝腺腫)ってどんな病気?
概要
肝細胞腺腫(かんさいぼうせんしゅ)は、肝臓の中にできる「良性(りょうせい)」の腫瘍です。良性とは、がんではない、という意味です。肝臓の細胞が局所的に集まってできた「できもの」で、多くの場合は命に関わるものではありません。ただし、大きくなると中で出血したり、まれに性質が変わる(悪性に近づく)ことがあるため、定期的に大きさや形を確認していくことが大切です。
重要な事実
- 肝臓にできる腫瘍のほとんどは良性で、肝細胞腺腫もそのひとつです。
- 女性ホルモン(エストロゲン)の影響が関係していると考えられており、経口避妊薬(ピル)を長く使っている人に多く見られます。
- 小さいものは症状がなく、画像検査で経過を見ながら様子をみることが多いです。
- 大きいもの、症状があるもの、男性にできたものなどは、治療を考えたほうがよい場合があります。
日本では比較的まれな腫瘍です。健康診断の超音波検査などで偶然見つかることもあります。
出産可能な年齢の女性に多いとされています。とくに経口避妊薬やホルモン剤を長期間使っている人に多く見られます。男性や子どもにできることもありますが、数は少なめです。
症状
- 突然の激しい腹痛(とくに右上腹部)で、立っていられない。
- 冷や汗、顔色が真っ白、手足が冷たい、意識がもうろうとするなど、ショック(血圧が下がって体が危険な状態)を思わせる症状。
- 吐血(血を吐く)や下血(黒い便・血の混じった便)がある。
- おなかが急に硬く膨らみ、痛みがどんどん強くなる。
- ⚠発熱とおなかの痛みが一緒にある。
- ⚠皮膚や白目が黄色くなる(黄疸:おうだん)、尿が濃い茶色になる。
- ⚠おなかの痛みが数日続き、良くならない。
一般的な症状
- 多くの人は症状がありません。
- おなかの右上(肝臓のあるあたり)の、なんとなく重い感じや鈍い痛み。
- おなかが張る、触るとしこりがあるように感じる。
- 食欲が落ちる、食べるとすぐにおなかが苦しい。
- 吐き気や、なんとなく体がだるい感じ。
子供の症状
- 子どもではとてもまれです。
- 生まれつきの代謝の病気(グリコーゲン蓄積症など)と一緒に見つかることがあります。
- 子どものおなかの腫瘤(しこり)や、原因のわからないおなかの膨らみは、小児科で相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では比較的まれです。
- 他の肝臓の病気(脂肪肝や肝臓の腫瘍など)と見分けるための検査が必要になることがあります。
- 持病の薬や体調の変化もあわせて医師に伝えると、判断の助けになります。
原因
主な原因
- 女性ホルモン(エストロゲン)の影響が大きく関係すると考えられています。
- 経口避妊薬(ピル)を長期間使うことでリスクが上がることが知られています。
- 一部のホルモン剤(筋肉を増やす目的で使われる薬など)との関連も報告されています。
- 生まれつきの代謝の病気(グリコーゲン蓄積症など)に伴ってできることがあります。
- 肥満や脂肪肝との関連も指摘されていますが、はっきりしない部分もあります。
リスク要因
- 女性であること(とくに出産可能な年齢)。
- 経口避妊薬を長く使っている。
- ホルモン剤(タンパク同化ステロイドなど)を使っている。
- グリコーゲン蓄積症などの代謝の病気がある。
- 肥満や糖尿病がある。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に強いおなかの痛みが出た、痛みがどんどん強くなる。
- 発熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、濃い色の尿がある。
- おなかが急に膨らんだ、硬くなった。
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や超音波検査で「肝臓に影がある」と言われた。
- 右上腹部の違和感や鈍い痛みが続いている。
- 経口避妊薬やホルモン剤を長く使っていて、肝臓のことが気になる。
- 以前に肝細胞腺腫と言われ、しばらく検査を受けていない。
診断
まず問診で、これまでの病気、飲んでいる薬、経口避妊薬やホルモン剤の使用歴、症状の出方を確認します。そのうえで血液検査と画像検査を行い、腫瘍の大きさ・場所・特徴を調べます。画像だけでは判断が難しいときに、組織を少し採って調べる検査(生検)を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診(薬の使用歴、症状、既往歴の確認)。
- 血液検査(肝臓の働きや腫瘍マーカーを調べる)。
- 腹部超音波検査(エコー)。
- CT検査やMRI検査(造影剤を使って詳しく見ることもあります)。
- 必要に応じて生検(針で組織を少し採って調べる検査)。
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどです。超音波は10〜20分ほどで終わり、痛みはありません。CTやMRIは機械の中に入って撮影するため、少し時間がかかります。結果が出るまで数日〜数週間かかることがあり、その間は不安な気持ちになるかもしれません。結果の説明のときに一緒に聞きたいことをメモしておくと、話が整理しやすくなります。
治療
治療の方針は、腫瘍の大きさ、症状の有無、年齢や性別、ホルモン剤の使用状況などをもとに決めます。小さいものは定期的な画像検査で経過を見ることが多く、大きいものや症状があるもの、男性にできたものなどは治療を検討します。
自宅でのセルフケア
- お酒は控えめにする(肝臓に負担をかけないため)。
- バランスの良い食事を心がけ、適正な体重を保つ。
- 自己判断でサプリメントやホルモン関連の薬を始めず、医師や薬剤師に相談する。
- 決められた通院と画像検査を続ける。
- 急な強い腹痛など、いつもと違う症状が出たらすぐに受診する。
医療治療
まず、関係している可能性のあるホルモン剤(経口避妊薬など)を続けるかどうかを医師と相談します。多くの場合、画像検査で大きさの変化を定期的に見守ります。腫瘍からの出血を防ぐ目的で、血管を細い管で塞ぐ治療(塞栓術:そくせんじゅつ)が選ばれることもあります。腫瘍を小さくすることを目的とした薬は限られており、使うかどうかは専門医とよく相談して決めます。具体的な薬の名前や量は、ここではお伝えしません。主治医の説明をよく聞いてください。
手術が検討される場合
腫瘍が大きい(一般に5cm以上を目安に検討されることが多い)、症状がある、男性にできた、破裂の心配がある、がんとの区別がつきにくい、といった場合には手術が検討されます。手術の方法や範囲は、腫瘍の場所や肝臓の状態によって変わります。妊娠を考えている人は、妊娠中に大きくなる可能性もあるため、早めに相談しておくと安心です。
この病気と共に生きる
肝細胞腺腫と言われても、多くの人はふだんどおりの生活を続けられます。大切なのは、決められた間隔で画像検査を受けて大きさの変化を確認することと、体の変化に気づいたら早めに相談することです。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は控えめにし、休肝日をつくる。
- 禁煙を心がける。
- 適正体重を保ち、急な減量は避ける。
- 経口避妊薬やホルモン剤の使用は、自己判断で中断・再開せず医師に相談する。
- 妊娠を考えている場合は、事前に主治医に伝える。
- 健康診断や通院を欠かさない。
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。野菜・たんぱく質・主食をバランスよくとり、塩分と脂っこいものを控えめにすると肝臓にやさしい食生活になります。運動は、ウォーキングなど無理のない範囲で続けるのがおすすめです。激しい運動や腹筋に強く力が入る運動は、腫瘍が大きいと言われている場合は主治医に相談してからにしましょう。
精神的健康と心の健康
「腫瘍」と言われただけで強い不安を感じる方は少なくありません。良性と言われても、がんではないかと心配になったり、妊娠や避妊のこと、今後の生活のことが気がかりになったりします。そうした気持ちは自然なものです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。眠れない日が続く、気持ちの落ち込みが強いといったときは、早めに相談してください。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関を頼ってください。
予防
肝細胞腺腫を完全に防ぐ方法は、今のところわかっていません。ただ、関係が指摘されているホルモン剤の使い方を見直したり、肝臓にやさしい生活を心がけたりすることで、リスクを下げられる可能性があります。
ワクチン
肝炎ウイルスのワクチンは肝細胞腺腫を直接防ぐものではありませんが、肝臓の健康を守るために、接種が必要かどうか医師に相談してみてください。
検診プログラム
決まった検査方法はありませんが、健康診断の腹部超音波検査などで偶然見つかることがあります。経口避妊薬やホルモン剤を長く使っている人は、健診の機会に肝臓の状態も確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 腫瘍が大きくなることがあります。
- 腫瘍の中で出血したり、おなかの中に出血したりすることがあります(まれですが緊急を要します)。
- まれに、性質が悪性(がんに近いもの)に変わる可能性が指摘されています。
- 妊娠中に大きくなる可能性があります。
長期的な見通し
肝細胞腺腫の多くは良性で、定期的な画像検査で様子を見ているうちに安定していることも少なくありません。大きさや症状に応じて適切に治療を受けることで、ふだんどおりの生活を続けている方はたくさんいます。定期的な通院を続けることが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月24日
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