B型肝炎ワクチン(予防接種)
概要
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)というウイルスが肝臓に入り、肝臓に炎症を起こす感染症です。肝炎とは「肝臓が炎症を起こして傷ついている状態」のことです。B型肝炎ワクチンは、このウイルスに対する免疫(体を守る力)をあらかじめ作っておき、感染そのものを防ぐための注射です。治療として使う薬ではなく、「かからないようにする」ためのものだと考えるとわかりやすいです。日本では2016年10月から、1歳未満の子どもを対象に公費で受けられる定期接種になりました。
重要な事実
- B型肝炎ワクチンは、ウイルスに感染する前の人が受ける「予防のためのワクチン」です。
- 標準的には生後2か月・3か月・7〜8か月ごろの合計3回で、しっかりした免疫がつくとされています。
- 日本では2016年10月から、1歳未満の子どもの定期接種(公費負担)になり、子どもの感染が大きく減っています。
- 大人が希望して受ける場合は任意接種となり、費用は自己負担になることが多いです(自治体によって助成がある場合もあります)。
世界全体では、B型肝炎ウイルスを持ち続けている人は非常に多いとされています。日本では以前は感染する人が多くみられましたが、母子感染を防ぐ取り組みや定期接種の導入によって、新しく感染する子どもは大きく減ってきました。ただし、大人の中には過去に感染した人が一定数いると考えられています。
年齢を問わず、誰でもかかる可能性があります。特に、B型肝炎ウイルスを持っている人の家族やパートナー、医療・介護の仕事に就く人、海外で長期滞在する人、針を共用する場面のある人などは、感染のリスクが高いとされています。赤ちゃんは、ウイルスを持つお母さんから母子感染することがあり、感染すると持続感染(ウイルスが体に残り続ける状態)になりやすいため、早めの予防が大切です。
症状
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない
- けいれんが起きた
- 呕吐が止まらず、水分もとれない
- 黄疸が急に強くなり、ぐったりしている
- ⚠皮膚や白目が黄色くなってきた
- ⚠尿が濃い色(お茶・コーラのような色)になった
- ⚠強いだるさで起き上がれない日が続く
- ⚠右の脇腹の痛みが強い
- ⚠歯ぐきや鼻から出血しやすい、あざが増えた
一般的な症状
- 体がだるい、疲れやすい
- 食欲がない、吐き気がする
- 発熱や関節の痛み(かぜに似た症状)
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸:おうだん)
- 尿の色が濃くなる(お茶のような色)
- おなかの右上(肝臓のあたり)が重い、痛い
子供の症状
- 乳幼児では症状がほとんど出ないことが多く、気づかないまま経過することがあります。
- 母子感染の場合、子どもの頃は目立った症状がなくても、ウイルスが体に残り続ける「持続感染」になりやすいとされています。
- 成長してから肝臓の検査で見つかることもあります。
高齢者の症状
- 大人では症状が出やすい傾向がありますが、多くは数週間〜数か月で自然に治まります。
- 高齢の方や、別の病気で免疫(体を守る力)が弱まっている方は、重症化しやすいことがあります。
- だるさが長引く、食欲が戻らないといった変化は、早めに相談するサインです。
原因
主な原因
- B型肝炎ウイルス(HBV)を含む血液や体液が、体の中に入ることで感染します。
- お母さんから赤ちゃんへの母子感染(出産のときなど)。
- 性行為による感染。
- ウイルスがついた注射針や器具の共用、針を刺す事故(針刺し)。
- 入れ墨・ピアスなどで、消毒が不十分な器具を使うこと。
リスク要因
- 家族やパートナーがB型肝炎ウイルスを持っている
- 医療・介護・救急などの現場で働いている(血液に触れる機会がある)
- 海外で長期滞在する、または医療行為を受ける予定がある
- 針を共用する状況がある
- 母子感染の予防措置を受けずに生まれた、または接種歴が不明
- 免疫(体を守る力)が弱まる病気や治療を受けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が出てきた
- 尿が濃い色になった、便の色が白っぽくなった
- 強いだるさで日常生活が難しい
- 右の脇腹の痛みが続く
- 出血しやすい、意識がぼんやりする
定期受診を予約すべき場合:
- 子どものワクチンの接種スケジュールを相談したい
- 家族やパートナーがB型肝炎ウイルスを持っている
- 海外赴任・留学・長期旅行を予定している
- 医療・介護の仕事に就く予定がある、または就いている
- 自分に抗体(免疫)があるか知りたい
- 妊婦健診でB型肝炎の検査について説明を受けた
診断
B型肝炎かどうかは、主に血液検査で調べます。ウイルスそのものがいるか(感染しているか)、過去に感染したことがあるか、ワクチンで免疫がついているか、といったことを見分けられます。あわせて肝臓の働きを調べる検査も行います。ワクチン接種の前後に、免疫がついたかを確認するために採血することもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(HBs抗原:今ウイルスがいるかを調べる)
- 血液検査(HBs抗体:免疫があるかを調べる)
- 血液検査(HBc抗体:過去の感染歴を調べる)
- 肝機能検査(AST・ALTなど:肝臓の炎症の程度を見る)
- 必要に応じてウイルスの量を調べる検査や、肝臓の画像検査
診察で予想されること
採血は数分で終わり、結果は多くの場合数日〜1週間ほどでわかります。検査結果の意味は専門的でわかりにくいこともあるので、必ず医師から説明を受け、自分や家族の状態をどう理解すればよいか確認しましょう。妊婦健診では、お母さんがウイルスを持っているかを調べる検査が行われ、陽性の場合は赤ちゃんを守るための準備が話し合われます。
治療
B型肝炎ワクチンは「これから感染するのを防ぐ」ためのもので、すでに感染した人を治す治療ではありません。すでに感染しているかどうか、肝臓に炎症があるかどうかによって、必要な対応は変わります。ここでは、ワクチンと、B型肝炎そのものへの一般的な対応を分けて説明します。
自宅でのセルフケア
- ゆっくり休み、睡眠を十分にとる
- 水分をこまめにとる
- お酒は肝臓に負担をかけるため、期間中は控える
- バランスのよい食事を心がけ、無理な食事制限はしない
- 手洗いを徹底し、血液に触れる可能性のある場面では注意する
- 歯ブラシ・かみそり・爪切りなど、血がつく可能性のある道具は共用しない
医療治療
ワクチンは、決められた回数を決められた間隔で接種することで免疫をつけます。接種スケジュールは年齢や状況によって変わるため、医師や自治体の案内に従ってください。すでにB型肝炎を発症した場合、急性肝炎は基本的に安静と症状に合わせた対応が中心で、多くは自然に治まります。ウイルスが体に残り続ける慢性肝炎の場合は、ウイルスの増え方を抑える治療を長く続けることがあり、肝臓の状態を定期的に確認しながら医師が方針を決めます。治療の内容や開始のタイミングは人によって異なるため、専門の医療機関で相談しましょう。
手術が検討される場合
ワクチン接種やB型肝炎そのものの治療で手術が必要になることは通常ありません。ただし、長くウイルスが残っている場合に肝臓の病気が進み、別の治療が必要になることがあり、その判断は専門医が行います。
この病気と共に生きる
ワクチンを接種した人は、決められた回数を終えるまではスケジュールを忘れずに確認しましょう。B型肝炎ウイルスを持っているとわかった人は、症状がなくても定期的に通院して肝臓の状態を確認することが大切です。日常生活で人にうつす心配はほとんどありませんが、血液を介する場面では周囲への配慮を心がけます。
生活習慣のアドバイス
- お酒は控えめに、または飲まない
- たばこは肝臓にも体全体にも負担になるため、減らす・やめることを検討する
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 歯ブラシ・かみそり・注射器具などの共用を避ける
- 性行為ではコンドームを使うなど、パートナーへの配慮を話し合う
- 入れ墨やピアスは、衛生管理がしっかりした場所を選ぶ
- 献血はできないため、その旨を伝える
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。主食・野菜・たんぱく質をバランスよくとり、揚げ物や甘い飲み物をとりすぎないことが肝臓へのやさしい食べ方です。運動は、体調に合わせて散歩や軽いストレッチから始めると続けやすくなります。だるさが強い時期は無理をせず、体調が戻ってから少しずつ増やしましょう。
精神的健康と心の健康
「自分や子どもが感染しているかもしれない」「人にうつしてしまうのでは」という不安や、周囲の目への心配から、気持ちが落ち込むことがあります。これは決して珍しいことではありません。ひとりで抱え込まず、医師や看護師、保健師に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが強いとき、眠れない日が続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに救急(119)や地域の相談窓口、医療機関に連絡してください。
予防
はい、B型肝炎はワクチンで防げる感染症です。ワクチンで免疫をつけておけば、ウイルスが体に入っても感染を防げます。また、血液に触れる可能性のある場面で適切に気をつけることも大切です。
ワクチン
日本では、B型肝炎ワクチンは2016年10月から1歳未満の子どもを対象とした定期接種(公費負担)になっています。標準的には生後2か月・3か月・7〜8か月ごろの合計3回で、決められた間隔で受けることが大切です。大人が希望する場合は任意接種となり、費用は自己負担となることが多いですが、自治体によって助成が受けられる場合があります。接種時期や回数は医師・自治体の案内に従ってください。お母さんがウイルスを持っている場合は、生まれた赤ちゃんに免疫をつけるための処置とワクチンを組み合わせて、母子感染を防ぎます。
検診プログラム
妊婦健診では、お母さんがB型肝炎ウイルスを持っているかを調べる血液検査が行われます。陽性の場合は、赤ちゃんを守るための対応があらかじめ話し合われます。また、家族にウイルスを持つ人がいる場合や、医療従事者として働く場合などは、自分に免疫があるかを血液検査で確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- ウイルスが体に残り続け、肝臓の炎症が長く続く(慢性肝炎)
- 肝臓が硬くなって働きが落ちる(肝硬変)
- 肝臓のがん(肝細胞がん)のリスクが高まる
- まれに、急激に肝臓の働きが悪くなる重症の肝炎を起こすことがある
長期的な見通し
多くの人が、ワクチンによって感染そのものを防げる時代になっています。もし感染しているとわかっても、定期的に通院して肝臓の状態を確認し、必要に応じて治療を受けることで、長く健康に暮らしている方は大勢います。心配なことがあれば早めに相談することが、いちばんの安心につながります。
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最終更新: 2026年10月24日
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