C型肝炎を知っておこう ― 中高年に多い感染症の話
概要
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓に感染して起こる病気です。ウイルスが肝臓の中で長い間すみつき、ゆっくりと肝臓に炎症を起こし続けます。感染した直後に高熱が出るようなことはほとんどなく、何十年も気づかないまま過ごすことが多いのが特徴です。ただし、今は飲み薬でウイルスを消せる時代になっています。
重要な事実
- うつる経路は血液が中心です。输血(昔の輸血)や、消毒が十分でなかった注射器具の使い回しなどで広がりました。
- 感染しても自覚症状がほとんどないため、気づかないまま10年、20年と経つことがあります。
- 現在は飲み薬による治療で、多くの人がウイルスを体から消すことができます。
日本でも決して少なくない数の方がC型肝炎ウイルスに感染していると考えられています。特に、生まれた年代が高くなるほど感染した経験のある人の割合が高いことが知られています。
日本では中高年から高齢の方に多い病気です。理由の一つは、今から40年以上前の医療の現場で、注射器具の使い回しや、ウイルスの検査がまだできない時代の輸血があったことです。若い世代では非常に少なくなっていますが、油断できない病気です。
症状
- 意識がもうろうとしている、わけのわからないことを言う、呼びかけへの反応がおかしい。
- けいれんが起きた。
- 大量に吐血した、または黒いタールのような便が続く。
- 皮膚や白目が急に強い黄色になった。
- おなかが非常に硬く張って痛みが強い。
- ⚠尿が濃い茶色になる、便の色が白っぽくなる。
- ⚠皮膚や白目が黄色くなってきた。
- ⚠発熱と右のわき腹の強い痛みがある。
- ⚠強いだるさで起き上がれない日が続く。
一般的な症状
- 多くの人は無症状で、健康診断の採血で初めて気づくことが多いです。
- なんとなく体がだるい、疲れやすい。
- 食欲が落ちる、食べ物がおいしく感じにくい。
- 吐き気や胃のあたりの不快感。
- 右のわき腹(肝臓のあたり)の重い感じ。
- 皮膚のかゆみや関節の痛みが出ることもあります。
子供の症状
- 子どものC型肝炎はまれで、ほとんど症状がありません。
- 母子感染(お母さんから赤ちゃんへ)で感染することがありますが、その場合も気づかれにくいです。
- 小児期に自然にウイルスが消えることもありますが、続く場合は大人になってから治療を考えることがあります。
高齢者の症状
- 高齢の方では、肝臓の炎症が進みやすいことがあります。
- 疲れやすさや食欲低下が「年のせい」と思われて見過ごされやすいです。
- 肝臓の働きが落ちてくると、足のむくみ、おなかの張り(腹水)、黄色い皮膚や白目(黄疸)が出ることがあります。
- 進行すると、物忘れのような症状や意識がもうろうとする変化が出ることがあります(肝性脳症)。この場合は早めの受診が必要です。
原因
主な原因
- C型肝炎ウイルス(HCV)を含む血液が、体の中に入ることで感染します。
- 昔の輸血や、消毒が不十分な注射器具の使い回しが大きな原因でした。
- 医療の現場での針刺し事故(医療従事者)。
- 入れ墨(タトゥー)やピアスを、衛生管理が不十分な場所で受けた経験。
- 注射器を他人と共有する薬物の使用。
- 性行為での感染は、B型肝炎よりずっと少ないとされています。
リスク要因
- 40年以上前に輸血や大きな手術を受けたことがある。
- 集団予防接種などで、注射器具の使い回しがあった時代に子どもだった。
- 健康診断で肝臓の数値(ALT・AST)の異常を指摘されたことがある。
- 入れ墨やピアスを施術してもらった経験がある。
- 血液透析を受けている。
- 家族の中で歯ブラシやかみそりを共有している人がいる。
- C型肝炎ウイルスに感染している人と血液を介して接触する可能性のある仕事をしている。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚や白目が黄色くなった、尿が濃い茶色になった。
- 吐血や黒い便があった。
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない。
- おなかが張って息苦しい、足のむくみが急に強くなった。
定期受診を予約すべき場合:
- 40年以上前に輸血や大きな手術を受けたことがある。
- 健康診断で肝臓の数値の異常を指摘された。
- 一度も肝炎ウイルス検査を受けたことがない(お住まいの自治体では無料または低額で受けられる場合があります)。
- 家族や身近な人がC型肝炎と診断された。
- 体のだるさや食欲低下が長く続いている。
診断
まず血液検査で、C型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうか(抗体)を調べます。陽性だった場合は、今もウイルスが体の中にいるかどうかを、別の血液検査で確かめます。同時に、肝臓の炎症の程度や、肝臓が硬くなっていないかを調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(C型肝炎ウイルス抗体、ウイルスの量、肝臓の数値、血小板、アルブミンなど)。
- 腹部エコー(超音波)検査で肝臓の形や状態を見る。
- 肝臓の硬さを測る検査(体に負担の少ない装置で測ることが多い)。
- 必要に応じて、肝臓の組織を少し採って調べる検査(肝生検)。
- 肝臓に影響する他のウイルス(B型肝炎など)や、他の病気の検査。
診察で予想されること
検査結果は数日から1週間ほどでわかることが多いです。「抗体が陽性」というのは「過去に感染したことがある」という意味で、今もウイルスがいるとは限りません。今ウイルスがいるかどうかは別の検査で確認します。結果の説明は、必ず医師から受け、わからないことは遠慮なく質問してください。
治療
今のC型肝炎の治療は、飲み薬が中心です。ウイルスの増え方を直接おさえる飲み薬を、数か月間内服することで、多くの人(9割以上)がウイルスを体から消すことができます。以前は注射による治療が中心で、体への負担も大きいものでしたが、治療は大きく変わってきました。治療を始めるかどうかは、肝臓の状態、年齢、他の病気、飲んでいる薬などを考えて医師と相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- お酒は控えめに、できれば飲まないようにしましょう。肝臓への負担を減らせます。
- バランスの良い食事を心がけ、塩分のとりすぎに注意しましょう。
- 適正な体重を保つことは、肝臓を守る助けになります。
- 十分な睡眠と休息をとりましょう。
- 市販薬やサプリメントは、肝臓に負担をかけるものもあります。飲む前に医師や薬剤師に相談しましょう。
- 歯ブラシ、かみそり、爪切りなど、血がつく可能性のあるものは家族と共有しないようにしましょう。
- 悩んだときは一人で抱え込まず、医療機関や自治体の相談窓口に相談しましょう。
医療治療
治療の中心は、ウイルスの増殖を直接おさえる飲み薬です。治療の前に、肝臓の状態や他の病気、併用している薬を確認し、どの治療が合うかを医師が判断します。治療中は定期的に血液検査を行い、体の反応や副作用を確認します。治療が終わったあとも、ウイルスが消えたかを確認する検査を受けます。肝臓が硬くなっている(肝硬変)方は、治療でウイルスが消えても、肝がんを早く見つけるための定期検査を続けることが大切です。
手術が検討される場合
C型肝炎そのものを手術で治すことはありません。ただし、肝臓が硬くなった結果起こる合併症(おなかに水がたまる、食道の血管が膨らむなど)や、肝臓にできた腫瘍(肝がん)に対しては、処置や手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
C型肝炎と診断されても、多くの方は治療をしながらふだんと同じように生活できます。治療中も仕事や家事を続けている方がたくさんいます。ウイルスが体の中にいる間は、血液を介して他の人にうつす可能性があるため、血が出たときの扱いには少し気をつけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は控えめに。肝臓をいたわる一番の方法です。
- たばこは肝臓や血管にも負担をかけます。禁煙を考えましょう。
- 決まった時間に寝て、疲れをためないようにしましょう。
- 医療機関を受診するときは、C型肝炎があることを伝えましょう。
- 血液がついたガーゼや絆創膏は、ビニール袋に入れて捨て、手を洗いましょう。
- 家族には、歯ブラシやかみそりを分けることを伝えましょう。
食事と運動
食事は、野菜・たんぱく質・主食のバランスを大切にしましょう。おなかに水がたまる傾向がある場合は、塩分を控えめにすることが大切です。運動は、ウォーキングなど無理のない範囲で続けると、体力づくりや体重管理に役立ちます。疲れが強い日は休むなど、体の声を聞きながら行いましょう。
精神的健康と心の健康
「自分だけがなぜ」という気持ちや、人に知られることへの不安、将来への心配は自然なことです。気分が落ち込む、眠れない、何も楽しめないといった状態が続くときは、我慢せずに医療機関や自治体の相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や救急(119)に連絡してください。
予防
C型肝炎は、血液を介してうつるため、ある程度防ぐことができます。血液に直接触れないようにすること、衛生管理がしっかりした場所で施術を受けることが大切です。また、自分が感染しているかどうかを早く知ることも、大切な予防の一つです。
ワクチン
残念ながら、C型肝炎を防ぐワクチンはまだありません。一方で、B型肝炎やA型肝炎にはワクチンがあります。肝臓を二重に守るために、ワクチンについて医師に相談してみる価値はあります。
検診プログラム
厚生労働省は、肝炎ウイルス検査を受けることを勧めています。お住まいの自治体では、無料または低額で検査を受けられる場合が多くあります。特に、昔に輸血や大きな手術を受けた方、健康診断で肝臓の数値を指摘された方は、一度検査を受けてみましょう。
合併症
治療しない場合
- ウイルスが長くすみつくと、肝臓の炎症が続き、肝臓が硬くなっていきます(肝硬変)。
- 肝臓が硬くなると、肝がんが起こる可能性が高まります。
- おなかに水がたまる(腹水)、食道の血管が膨らむ(食道静脈瘤)、意識がぼんやりする(肝性脳症)といった合併症が起こることがあります。
- 肝臓以外にも、糖尿病や腎臓の病気、皮膚のかゆみなどが関係することがあります。
長期的な見通し
今のC型肝炎の治療は大きく進歩し、多くの方がウイルスを体から消すことができます。治療でウイルスが消えれば、肝臓の炎症はおさまり、肝臓が硬くなる進行も抑えられると期待されています。肝臓が硬くなっている方でも、治療と定期検査を続けることで、安心して生活できる道があります。希望を持って、まずは検査と相談から始めましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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