デルタ型肝炎(B型肝炎と一緒に起こる肝炎)
概要
デルタ型肝炎は、『デルタ型肝炎ウイルス(HDV)』という小さなウイルスが肝臓を炎症させる病気です。このウイルスは、B型肝炎ウイルス(HBV)がいないと自分の力だけでは増えることができません。そのため、デルタ型肝炎は必ずB型肝炎とセットで起こります。B型肝炎にかかったことのある人、または今B型肝炎ウイルスを持っている人だけが、デルタ型肝炎になる可能性があります。B型肝炎の人に後からデルタ型肝炎が重なる(重複感染)と、肝臓の炎症が急に強くなったり、病気の進み方が速くなったりすることがあるため、早めに見つけて経過を見ていくことが大切です。
重要な事実
- デルタ型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスがないと増えられません。だからB型肝炎にかかったことのない人には基本的に起こりません。
- B型肝炎ウイルスを持っている人が後からデルタ型肝炎ウイルスに感染すると、肝臓の症状が急に悪くなることがあります。
- 日本では非常にまれな病気ですが、世界の一部の地域(地中海沿岸、中東、中央アジア、アフリカの一部、南米など)では多く見られます。
- B型肝炎ワクチンでB型肝炎を防ぐことが、結果としてデルタ型肝炎を防ぐ一番の方法です。
日本ではとてもまれな病気です。海外の一部地域では多く見られるため、海外で長く暮らしたことがある人や、海外で医療処置を受けたことがある人では注意が必要です。B型肝炎ウイルスを持っている人の数に比べても、デルタ型肝炎ウイルスを持つ人はごくわずかです。
B型肝炎ウイルスを体内に持っている人(慢性B型肝炎の人、B型肝炎のキャリアの人)が対象になります。特に、注射器の使い回しがある環境、消毒が十分でない入れ墨やピアス、血液を介する医療処置、性的な接触などでB型肝炎ウイルスに感染した人では、デルタ型肝炎の可能性も考える必要があります。子ども、大人、高齢者いずれも起こりえます。
症状
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない、呼びかけへの反応が弱い
- けいれんを起こした
- 大量に吐血した、またはコーヒー色のものを吐いた
- 黒い便(タールのような便)が大量に出た、または血の便が続く
- 呼吸が苦しい、顔色が青白く冷汗がすごい
- 激しい腹痛で動けない
- ⚠皮膚や白目が急に黄色くなった
- ⚠尿が極端に濃くなった、または尿の量が目に見えて減った
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない、ぐったりしている
- ⚠お腹が急にふくらんだ、足のむくみが急に強くなった
- ⚠強いだるさで日常生活ができない状態が続く
- ⚠38度以上の発熱が続く
一般的な症状
- 多くの場合は症状がほとんどなく、健康診断の血液検査で見つかることがあります。
- 体がだるい、疲れやすい
- 食欲がない、吐き気がする、嘔吐する
- お腹が張る、お腹の右上(肝臓のあたり)が痛む
- 微熱が続く
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸=おうだん)
- 尿の色が濃くなる(お茶のような色)
- 便の色が白っぽくなる
- かぜのような症状(発熱、頭痛、筋肉痛)
子供の症状
- 子どもの多くは症状がとても軽く、気づかれないことがあります。
- 軽いだるさ、食欲がない、お腹が痛いなどのぼんやりした症状だけのことがあります。
- 黄疸が出ることは大人より少なめですが、出ることもあります。
- 症状がなくても、血液検査で肝臓の数値が上がっていることがあります。
高齢者の症状
- 高齢の方では、だるさや食欲低下が長引くことがあります。
- B型肝炎ウイルスを持っている人が後からデルタ型肝炎にかかると、肝臓の炎症が急に強くなり、入院が必要になることがあります。
- もともと肝臓の状態がよくない場合は、腹水(お腹に水がたまる)、足のむくみ、意識がぼんやりするなどが出ることがあります。
- 持病の薬が多く、肝臓に負担がかかりやすいため、体調の変化に早めに気づくことが大切です。
原因
主な原因
- デルタ型肝炎ウイルス(HDV)を持っている人の血液や体液が、自分の体の中に入ることで感染します。
- このウイルスはB型肝炎ウイルスがないと増えられないため、感染する人はB型肝炎ウイルスを持っている人に限られます。
- B型肝炎と同時にデルタ型肝炎ウイルスにも感染する場合(同時感染)と、B型肝炎を持っている人が後からデルタ型肝炎ウイルスに感染する場合(重複感染)があります。
リスク要因
- B型肝炎ウイルスを体内に持っている(慢性B型肝炎、B型肝炎キャリア)
- 注射器を使い回すような薬物の使用歴がある
- 消毒が十分でない器具での入れ墨、ピアス、針治療などを受けた
- かみそり、歯ブラシ、爪切りなどを家族と共有している
- コンドームを使わない性的な接触
- 医療現場での針刺し事故(医療従事者)
- 血液透析を受けている
- 海外のデルタ型肝炎が多い地域で長く暮らした、または医療処置を受けた
- 母体から赤ちゃんへの感染(B型肝炎と一緒に起こることはありますが、まれです)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚や白目が黄色くなった、尿がお茶のように濃くなった
- 強い倦怠感で食事や水分がとれない
- 嘔吐が続く、お腹が急に張る、足のむくみが急に出た
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない(すぐに救急へ)
定期受診を予約すべき場合:
- B型肝炎ウイルスを持っていると言われたことがあり、一度もデルタ型肝炎の検査を受けたことがない
- B型肝炎の治療中で、肝臓の数値が急に上がったと言われた
- 海外で長く暮らした、または海外で医療処置や入れ墨を受けたことがあり、B型肝炎ウイルスを持っている
- 家族やパートナーがB型肝炎ウイルスを持っている
- だるさや食欲低下が2週間以上続いている
診断
まず問診と診察を行い、血液検査で肝臓の働きとB型肝炎ウイルスの有無を調べます。そのうえで、デルタ型肝炎ウイルスに対する抗体(体がウイルスに対抗して作るたんぱく質)や、ウイルスそのものの遺伝子(HDV RNA)を血液で調べます。必要に応じて腹部エコー(超音波)や肝臓の硬さを測る検査を行い、肝臓の状態を総合的に見ていきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(肝臓の数値:AST、ALT、ビリルビンなど)
- B型肝炎ウイルスの検査(HBsAg=B型肝炎ウイルスの表面のたんぱく質など)
- デルタ型肝炎ウイルスの抗体検査(抗HDV抗体)
- デルタ型肝炎ウイルスの遺伝子検査(HDV RNA)
- 腹部エコー(超音波)検査
- 肝臓の硬さを調べる検査(線維化の評価)
- 必要に応じて肝生検(肝臓の組織を針で少し採取する検査)
診察で予想されること
検査はほとんどが採血で行えます。結果が出るまでに数日から2週間ほどかかることがあります。検査の前に、何のために調べるのか、結果がどう使われるのかを医師に確認しておくと安心です。結果によっては、定期的な通院で肝臓の状態を見守る方針になることが多く、すぐに大がかりな治療が必要になるわけではありません。
治療
デルタ型肝炎そのものを完全に消す治療は、まだ十分に確立されていません。治療の中心は、肝臓の炎症を抑えて負担を減らし、B型肝炎の状態を良好に保ちながら、肝硬変や肝臓がんなどへの進行を防ぐことです。症状や肝臓の状態に合わせて、専門の医療機関で定期的に経過を見ていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- お酒は控える(肝臓への負担を減らすため)
- 十分な睡眠と休息をとる
- バランスのよい食事をとり、極端な食事制限はしない
- 市販薬やサプリメントでも肝臓に負担をかけるものがあるため、飲む前に医師や薬剤師に相談する
- かみそり・歯ブラシ・爪切りなど、血液がつく可能性のあるものは家族と共有しない
- 性的な接触のときはコンドームを使う
- 定期的な通院を続け、肝臓の数値を確認する
- 体調の変化(黄疸、尿の色、むくみ、だるさ)をメモしておき、診察時に伝える
医療治療
肝臓の炎症を抑える治療や、免疫の働きを助ける治療(注射で行うことがあります)が検討されます。また、もとになるB型肝炎の治療を優先して行うことが大切です。だるさや吐き気などの症状に対しては、症状をやわらげる支持的治療を行います。肝臓の状態がとても悪くなった場合には、専門の医療機関で集中的な治療が必要になります。治療方針は肝臓の状態や年齢、生活背景によって変わるため、専門医とよく相談して決めていきます。
手術が検討される場合
肝臓の働きが大きく落ちて元に戻らない場合には、肝臓移植が選択肢のひとつとして検討されることがあります。移植の適否は専門の医療チームが総合的に判断します。
この病気と共に生きる
デルタ型肝炎と診断されても、多くの方は日常生活を続けながら、定期的な通院で肝臓の状態を見守っていきます。肝臓は、炎症が落ち着けば数値が安定してくる臓器です。主治医と相談しながら、無理のない生活リズムをつくっていくことが大切です。体調の記録をとっておくと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 節酒、できれば禁酒を心がける
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 血液を介する感染を広げないために、かみそりや歯ブラシを共有しない
- 性感染を防ぐためにコンドームを使用する
- 家族やパートナーにB型肝炎ワクチンの接種を検討してもらう(B型肝炎を防ぐことがデルタ型肝炎の予防にもなります)
- 医療機関や歯科を受診したときは、B型肝炎・デルタ型肝炎を持っていることを伝える
- 新しい薬やサプリメントを始める前に医師・薬剤師に相談する
- 定期的な肝臓の検査(血液検査、画像検査)を欠かさない
食事と運動
特別な食事制限は必要ないことが多いですが、揚げ物や甘いものに偏らず、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけましょう。たんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品)は肝臓の材料になるので、適量をとることが大切です。塩分のとりすぎは腹水やむくみがある場合に負担になるため、そのときは医師の指示に従ってください。運動は、ウォーキングなど無理のない範囲で行うのがおすすめです。体調がすぐれないときは休むことを優先しましょう。
精神的健康と心の健康
感染症と診断されると、『人にうつしてしまうのでは』『将来どうなるのか』といった不安を感じることがあります。これは自然な気持ちです。肝炎は日常生活の接触(食事の共有、会話、握手など)ではうつらないため、過度に自分を責める必要はありません。一人で抱え込まず、信頼できる人や医療者に話してみてください。眠れない、気持ちが落ち込み続く、不安で日常がつらいと感じるときは、医療機関や地域の相談窓口に早めに相談してください。つらい気持ちが強いときは、一人で抱えず、かかりつけ医や保健所、地域のメンタルヘルス相談窓口につながることが大切です。
予防
はい、防ぐ方法があります。デルタ型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスがないと増えられないため、B型肝炎を防ぐことがデルタ型肝炎を防ぐことにつながります。B型肝炎ワクチンを受けること、血液が直接触れる場面で使い回しの器具を使わないこと、かみそりや歯ブラシを共有しないこと、性的な接触ではコンドームを使うことが大切です。
ワクチン
デルタ型肝炎そのもののワクチンはまだありませんが、B型肝炎ワクチンがデルタ型肝炎の予防につながります。日本では、赤ちゃんへのB型肝炎ワクチンが定期接種(決められた年齢で無料で受けられる接種)のひとつになっています。大人でも、B型肝炎ウイルスを持っていない人や感染の心配がある人は、ワクチンを検討できます。接種の可否や回数は、かかりつけ医や自治体の案内に従ってください。
検診プログラム
日本では、全国の自治体などで肝炎ウイルス検査を受けることができます。B型肝炎ウイルスを持っていると言われた人は、主治医にデルタ型肝炎の検査が必要かどうかを尋ねてみてください。献血でウイルス検査が行われていることから、自分では気づかない感染が見つかることもあります。検査を受けるか迷うときは、地域の保健所に相談できます。
合併症
治療しない場合
- 肝臓の炎症が続くことで、肝臓が硬くなる肝硬変に進むことがあります
- 肝臓の働きが大きく落ちる肝不全
- 肝臓がん
- 腹水(お腹に水がたまる)、足のむくみ、黄疸の悪化
- B型肝炎を持っている人が後からデルタ型肝炎にかかると、急に重症化する劇症肝炎を起こすことがあります(まれですが注意が必要です)
長期的な見通し
デルタ型肝炎は、B型肝炎と一緒に起こるため注意が必要な病気ですが、すべての人が重症になるわけではありません。定期的な検査で肝臓の状態を早く知り、生活の工夫と医療者との相談を続けることで、穏やかに過ごせている方も多くいます。治療の研究は世界中で進んでおり、選択肢は少しずつ増えてきています。不安に感じたときは、一人で抱えず、専門医や保健所に相談しながら、あなたのペースで向き合っていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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