E型肝炎(E型ウイルスによる肝炎)
概要
E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)というウイルスが肝臓に感染して起こる肝炎(肝臓が炎症を起こす病気)です。ウイルスは主に口から入り、腸で増えて肝臓に届きます。多くは数週間で自然に治りますが、まれに肝臓の働きが急に悪くなる重症例もあります。
重要な事実
- 主な感染経路は「食べ物や水から口に入る」経口感染です。日本では、加熱が十分でない豚のレバーや猪肉(いのしし肉)、鹿肉などが知られた感染源です。
- 潜伏期間(ウイルスが入ってから症状が出るまでの期間)は約2〜10週間、平均で6週間ほどとされています。
- 多くの人は症状が軽いか、ほとんど症状なく回復します。ただし高齢者、妊娠中の方、肝臓の病気がある方、免疫の働きが弱い方は重症化しやすいことが知られています。
日本では毎年報告される件数はそれほど多い病気ではありません。一方で、東南アジア・南アジア・アフリカなどでは、衛生的な水が十分に使えない地域を中心に多くみられます。
年齢を問わずかかりますが、成人のほうが症状が出やすい傾向があります。子どもは感染しても症状がほとんど出ないことが少なくありません。妊婦さん、高齢者、慢性の肝臓病がある方、免疫を抑える治療を受けている方は重症化に注意が必要です。
症状
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない、眠ったように反応が鈍い
- けいれんが起きた
- 皮膚や歯ぐきから出血が止まりにくい、あざが急に増えた
- 黄疸が急に強くなり、立てないほどの強いだるさがある
- 水分がまったく飲めず、ぐったりしている
- ⚠白目や皮膚が黄色くなった
- ⚠尿の色が明らかに濃くなった
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠強い腹痛や、お腹が張って苦しい
- ⚠高い熱が続く
一般的な症状
- 体がだるい、疲れやすい
- 食欲がない、においで気持ちが悪くなる
- 吐き気、嘔吐
- 微熱から38度台の発熱
- お腹の右上(肝臓のあたり)が重い、押すと痛い
- 皮膚や白目の部分が黄色くなる(黄疸)
- 尿の色が濃い(お茶のような色になる)
- 便の色が薄くなる
子供の症状
- ほとんど症状が出ないことが多い
- 軽い発熱やお腹の不調だけで終わることもある
- 気づかないうちに自然に治っているケースも少なくない
高齢者の症状
- 黄疸が強く出たり、長引いたりしやすい
- だるさや食欲低下が長引き、体力が落ちやすい
- 肝臓の働きが急に悪くなる重症例のリスクが高いとされる
- 入院が必要になる割合が高いと報告されている
原因
主な原因
- E型肝炎ウイルス(HEV)に汚染された食べ物や水を口にすることで感染します。
- 日本では、加熱が十分でない豚のレバーや猪肉、鹿肉などが感染源として報告されています。
- 海外では、衛生的に安全とはいえない飲料水や氷、生の野菜、洗っていない果物などを通じて感染することが多いとされています。
- まれに、輸血や、感染したお母さんから赤ちゃんへの感染も報告されています。
リスク要因
- 豚のレバーや内臓、猪肉・鹿肉などを生、または加熱が不十分な状態で食べること
- 海外の流行地域に渡航し、水道水や氷、生野菜をそのまま口にすること
- 慢性の肝臓病(B型・C型肝炎、脂肪肝、肝硬変など)があること
- 免疫を抑える治療を受けている、または免疫の働きが弱い状態であること
- 妊娠中であること
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 白目や皮膚が黄色くなった、尿がお茶のように濃くなった
- 嘔吐が続いて水分がとれない、トイレの回数が減った
- 強いだるさで日常生活が難しい
- 意識がぼんやりする、反応がいつもと違う(この場合は救急要請を優先してください)
定期受診を予約すべき場合:
- 数日続く強い倦怠感や食欲不振がある
- 発熱やお腹の不快感が続いている
- 生の豚レバーや猪肉を食べたあと、体調がすぐれない
- 流行地域から帰国後、数週間以内に体調の変化があった
- 妊娠中で、肝炎の人に接触した可能性がある
診断
問診(食べたもの、渡航歴、持病、服薬)と血液検査を組み合わせて診断します。肝臓の働きを示す数値の上昇を確認したうえで、E型肝炎ウイルスに特有の検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(肝臓の酵素AST・ALT、ビリルビンなどの数値)
- E型肝炎ウイルスに対する抗体検査(IgA抗体、IgM抗体など)
- 血液中のウイルス遺伝子(HEV RNA)を調べる検査
- 必要に応じて腹部超音波検査など、肝臓の状態をみる画像検査
- 他の肝炎ウイルス(A型・B型・C型など)や、薬による肝障害がないかを確認する検査
診察で予想されること
採血が中心で、痛みは注射のときの一瞬だけです。結果が出るまで数日かかることがあります。診断がつくまでは、お酒を控え、無理をせず休むことがすすめられます。症状が軽ければ通院で経過をみることも多く、重症が疑われる場合は入院して様子をみることがあります。
治療
E型肝炎に効く特効薬はなく、多くは「安静」と「水分・栄養をとること」で自然に回復します。治療の中心は、体の負担を減らしながら肝臓が自分で回復するのを支えることです。
自宅でのセルフケア
- しっかり休む。仕事や運動は、だるさが残る間は控えめにする
- 少量ずつこまめに水分をとる。吐き気があるときは、少しずつ何回にも分けて飲む
- お酒は肝臓の数値が落ち着くまで控える
- 食べられるものを、無理のない範囲で少しずつとる
- 市販の薬やサプリメントは、肝臓に負担をかけるものもあるため、使う前に医師や薬剤師に相談する
- 症状が悪くならないか、黄疸や尿の色の変化を毎日見ておく
医療治療
基本的には対症療法(症状をやわらげる治療)です。脱水があれば点滴で水分と栄養を補い、吐き気が強いときは吐き気を抑える薬が使われることがあります。肝臓の働きが大きく落ちている場合や、免疫の働きが弱い方で感染が長引く場合には、入院して経過をみながら、医師の判断で抗ウイルス薬が検討されることがあります。治療方針は症状と検査結果によって変わるため、担当の医師の説明をよく聞いてください。
手術が検討される場合
E型肝炎そのものに対して手術が必要になることは通常ありません。ただし、ごくまれに肝臓の働きが急激に悪化する重症例があり、その場合は集中治療が必要になります。
この病気と共に生きる
回復期は「だるさが消えたら少し動く」くらいの感覚で、無理をしないことが大切です。肝臓の数値が正常に戻るまでは数週間から数か月かかることがあり、その間は生活のペースを落としましょう。会社や学校には、医師の診断書をもとに休む期間を相談するとよいでしょう。
生活習慣のアドバイス
- お酒は肝臓の数値が落ち着くまで控える
- 手洗いを丁寧に行い、調理器具は分けて洗う
- 肉、とくにレバーや内臓は中心部までよく加熱してから食べる
- 流行地域への渡航予定がある場合は、飲み水や氷、生ものに注意する
- 家族も同じ食事をとるときは、十分な加熱を心がける
食事と運動
食事は、消化にやさしいものを少量ずつ、バランスよくとりましょう。脂っこいものを大量にとると胃がもたれやすくなります。運動は、だるさや黄疸が落ち着いて医師の許可が出てから、散歩など軽いものから少しずつ再開してください。
精神的健康と心の健康
急に体が動かなくなり、仕事や家庭のことが気がかりで不安になるのは自然なことです。とくに妊娠中の方は、赤ちゃんへの影響を心配されることが少なくありません。心配なことは一人で抱えず、医師や助産師、看護師に遠慮なく質問してください。気分の落ち込みや眠れない状態が続くときは、そのことも医療者に伝えましょう。
予防
ある程度は予防できます。最大のポイントは「口に入る前にウイルスを減らすこと」です。食べ物をしっかり加熱すること、安全な水を飲むこと、手洗いを丁寧に行うことが基本になります。
ワクチン
日本国内では、一般に接種できるE型肝炎ワクチンは現在ありません。海外の一部の国では承認されているワクチンがありますが、接種の可否や必要性は渡航先や体調によって変わるため、渡航前にトラベルクリニックやかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
一般の方向けの定期的な検査は行われていません。ただし、日本では献血の際にE型肝炎ウイルスの検査が行われており、輸血による感染のリスクを下げる取り組みがされています。
合併症
治療しない場合
- 肝臓の炎症が長引き、回復に時間がかかることがある
- ごくまれに、肝臓の働きが急激に悪くなる劇症肝炎(げきしょうかんえん)を起こすことがある
- 免疫の働きが弱い方では、感染が長く続き慢性肝炎になることがある
- まれに、神経の病気(手足のしびれや筋力の低下など)を合併することが報告されている
- 妊娠中、とくに妊娠後期にかかると重症化しやすいとされている
長期的な見通し
ほとんどの方は、数週間から数か月かけて自然に回復し、肝臓も元の状態に戻ります。合併症が起きるのはまれで、その場合も医療機関で適切にみてもらうことで対応が可能です。症状の変化を気にかけながら、早めに医療者に相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月24日
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