高血圧(こうけつあつ)
概要
血圧は、心臓が送り出した血液が血管の壁を押す力のことです。「高血圧」は、この力が高い状態が長く続いていることをいいます。診察室で測って上が140mmHg以上、または下が90mmHg以上(家庭で測る場合は上が135mmHg以上、または下が85mmHg以上)が目安になります。血圧が高いこと自体は痛くもかゆくもありませんが、高い状態が続くと血管が少しずつ傷み、脳や心臓、腎臓などの病気につながることがあります。
重要な事実
- 高血圧の多くは、はっきりした原因がひとつに決まらず、遺伝と生活習慣が重なって起こります。
- 自覚症状がほとんどないまま進むため「静かな病気」とも呼ばれ、健診や家庭での血圧測定で見つかることが多いです。
- 減塩や運動などの生活の見直しと、必要に応じた治療で、脳卒中や心臓病などのリスクを大きく下げられます。
とても多い病気です。日本では成人のおよそ3人に1人が高血圧と考えられており、年齢が上がるほど増えていきます。特別な人だけの病気ではなく、誰にとっても身近な健康のテーマです。
年齢とともに増え、中年期は男性に、閉経後の女性にも多くみられます。家族に高血圧の人がいる、塩分の多い食事が多い、体重が増えた、運動不足、飲酒や喫煙、睡眠不足、強いストレスが続いている、といった方は特に注意が必要です。若い方や子どもでも起こることはあります。
症状
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、呼びかけへの反応がおかしい
- ろれつが回らない、言葉が出ない、顔や手足の片側が動かしにくい(脳卒中のサインの可能性)
- 胸を締めつけられるような強い痛み、冷や汗、息苦しさが続く
- 突然の視界の異常(ものが二重に見える、片目が見えにくい)、立てないほどのめまい
- けいれん、呼吸が苦しくて話せない — このようなときは迷わず119番に電話してください。
- ⚠家庭で測った血圧が、いつもより大幅に高い状態が続く
- ⚠がまんできない頭痛、強い吐き気、繰り返すめまい
- ⚠鼻血がなかなか止まらない
- ⚠足のむくみが急に強くなった、少し動いただけで息切れがする
- ⚠妊娠中に血圧が高いと言われたことがあり、頭痛や視界の異常がある
一般的な症状
- ほとんどの場合、目立った症状はありません。だからこそ定期的な測定が大切です。
- ときに頭が重い、肩がこる、めまいがする、といった軽い不調を感じることがありますが、これらだけで高血圧かどうかは判断できません。
- 血圧がかなり高いときに、頭痛、吐き気、鼻血、動悸(どうき:心臓の鼓動が強く感じられること)などを感じることがあります。
子供の症状
- 小さいお子さんでは、ほとんど症状がありません。
- 学校の健診や、別の理由で受診したときの測定で見つかることが多いです。
- 子どもでは、腎臓やホルモンなど別の原因が隠れている場合があるといわれており、医療者による詳しい確認が大切です。
高齢者の症状
- 血管が硬くなりやすいため、上の血圧(収縮期血圧)が高くなりやすい傾向があります。
- 立ち上がったときに血圧が下がって立ちくらみやふらつきが出ることがあり、血圧の変動が大きくなりがちです。
- のどの渇きや食欲の変化など、体調の小さな変化が血圧に影響することもあります。気になることは医療者に相談しましょう。
原因
主な原因
- 本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ):はっきりした原因が一つではなく、体質(遺伝)と生活習慣が重なって起こるタイプで、高血圧のほとんどを占めます。
- 二次性高血圧(にじせいこうけつあつ):腎臓の病気、ホルモンのはたらきの異常、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸がたびたび止まる状態)、一部の薬の影響など、別の原因があって血圧が高くなるタイプです。
- 塩分のとりすぎで体に水分がためこまれる、血管が硬くなる、体を緊張させるホルモンのはたらきが強くなる、といったことが組み合わさって血圧が上がります。
リスク要因
- 塩分の多い食事(汁物・漬物・加工食品のとりすぎなど)
- 体重の増加、肥満(特におなか周りに脂肪がつくタイプ)
- 運動不足、長時間すわったまま過ごすこと
- 飲酒の量が多い、喫煙
- 睡眠不足、いびきや睡眠時無呼吸症候群
- 強いストレスが長く続くこと
- 家族に高血圧の人がいる(体質的な傾向)
- 年齢を重ねること
- 糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどの異常)、腎臓の病気がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい頭痛、意識の変化、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、胸の強い痛み、呼吸困難があるときは、すぐに119番へ連絡してください。
- 家庭の血圧がいつもより大幅に高く、頭痛や吐き気をともなうときは、その日のうちに医療機関に相談してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 健診で血圧が高いと言われた
- 家庭で測ると高い値が何日も続く
- 家族に高血圧の人がいて、ご自分の血圧が気になる
- 血圧の薬を飲んでいるが、自己判断でやめたい、副作用が気になる(必ず先に医療者へ相談してください)
- 妊娠中、または妊娠を考えている(血圧について事前に相談しておくと安心です)
診断
診察室での血圧測定に加えて、家庭で自分で測った血圧の記録がとても役立ちます。1回の値だけで決めるのではなく、何日か分の値の平均で判断することが多いです。必要に応じて、別の原因が隠れていないかを調べる検査も行います。診断は医師が行いますので、自己判断はせず医療者に相談してください。
行われる可能性のある検査
- 診察室での血圧測定(何回か続けて測ることが多いです)
- 家庭血圧の測定(朝と夜に測って記録します)
- 24時間自由行動下血圧測定(腕に機器をつけて一日の血圧の変化を調べる検査)
- 血液検査・尿検査(腎臓のはたらき、血糖、コレステロール、ホルモンなどを確認します)
- 心電図、心臓の超音波検査(心臓への負担を見る検査)
- 眼底検査(目の細い血管の状態を見る検査)
- 睡眠時無呼吸が疑われる場合の睡眠検査など
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、痛みのある検査はほとんどありません。血圧手帳やアプリに記録をつけていくと、診察がスムーズになります。測る前は5分ほど静かに座り、腕を心臓の高さに置いて測ると正確になりやすいです。
治療
治療の基本は、生活習慣の見直しと、必要な場合の薬による治療です。血圧を下げる目的は、脳卒中や心臓病、腎臓の病気を防いで、これから先も元気に過ごせる時間を守ることです。数値だけを追うのではなく、体調や生活に合わせて医療者と一緒に進めていきます。
自宅でのセルフケア
- 減塩を心がける(1日6g未満が目標とされています。汁物を少なめに、だしや香辛料、酢を上手に使うのがコツです)
- 適正な体重を保つ(少し減らすだけでも血圧が下がることがあります)
- 無理のない範囲で体を動かす(早歩きなど、息が少しはずむ程度の運動を習慣に)
- 飲酒は量と回数を控えめに、禁煙を心がける
- 睡眠をしっかりとり、いびきや日中の強い眠気があれば相談する
- 家庭で血圧を測り、記録をつける(朝は起床後1時間以内、排尿後・食事の前・服薬の前に)
- 寒さで血圧は上がりやすいので、冬場は暖かくして過ごす
- 強いストレスをためこまないよう、自分に合った息抜きの時間をつくる
医療治療
生活習慣の見直しでも血圧が下がりきらないときは、血圧を下げる薬を使うことがあります。薬にはいくつかの種類があり、年齢や体の状態、他の病気の有無に合わせて医師が選びます。薬は症状がなくても続けることで効果が保たれます。自己判断で量を変えたり中止したりせず、気になることがあれば医師や薬剤師に相談してください。急に血圧を下げすぎると具合が悪くなることもあるため、調整は医療者に任せましょう。
手術が検討される場合
多くの高血圧では手術は必要ありません。ただし、二次性高血圧といって、腎臓の血管やホルモンを作る臓器などに原因となる病気が見つかった場合は、その病気に対する治療の一環として手術が検討されることがあります。該当するかどうかは検査で判断されます。
この病気と共に生きる
高血圧は、うまく付き合っていける病気です。毎日少しずつ血圧を記録し、食事や運動、睡眠を無理のない範囲で整えていくことが近道です。完璧を目指すより、「続けられる小さな工夫」を一つずつ増やしていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝と夜の血圧を記録し、体調と一緒にメモしておく
- 食事は野菜・海藻・きのこを多めに、汁物は1日1杯を目安に
- 加工食品や外食が続くときは、翌日で調整するなど柔軟に
- 階段を使う、一駅分歩くなど、日常の中で体を動かす
- お風呂はぬるめのお湯にゆっくり、急な温度変化を避ける
- 飲み忘れを防ぐため、薬は決まった場所・決まった時間に置く
- 健診や通院の予定をカレンダーに入れておく
食事と運動
食事では減塩がいちばん大切です。だしのうまみ、レモンや酢、香辛料、香味野菜を使うと、薄味でも満足できます。カリウムを多く含む野菜や果物は血圧を下げる助けになりますが、腎臓の病気がある方は医師に相談してください。運動は、早歩きや軽いジョギング、水泳、自転車など、息が少しはずむ程度を1回20〜30分、週に数回を目安に。痛みや息苦しさを感じたら無理をせず休み、持病がある方は始める前に医療者へ相談しましょう。
精神的健康と心の健康
「数値が気になって毎日不安になる」「食事制限がつらい」「薬を飲み続けることに抵抗がある」——そんな気持ちは自然なものです。血圧はストレスでも上がるため、気にしすぎることが逆効果になることもあります。数値に一喜一憂せず、記録は医療者と共有する道具と考えると気持ちが楽になります。つらさが続くときは、遠慮なく医療者や周りの人に話してください。気分の落ち込みや不安が強いときは、地域の相談窓口や医療機関に相談してみましょう。
予防
多くは、生活習慣を整えることで予防したり、発症を遅らせたりできると考えられています。特に減塩、適正体重の維持、運動習慣、節酒・禁煙、睡眠とストレスケアが大切です。ご家族に高血圧の人がいる場合も、早めの対策でリスクを下げられます。
ワクチン
高血圧そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、インフルエンザや肺炎などの感染症は体に負担をかけ、血圧にも影響することがあります。かかりつけ医と相談しながら、年齢や体調に合った予防接種を受けておくと安心です。
検診プログラム
日本では、40歳以上の方を対象に特定健康診査(メタボ健診)が行われており、血圧も測定されます。自治体や勤務先の健診を毎年受けることが、早期発見のいちばん確実な方法です。健診の結果が気になる方は、そのままにせず医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 脳卒中(脳の血管が詰まる・破れることで、手足の麻痺や言葉の障害が起こる)
- 心臓病(心筋梗塞や狭心症、心臓が弱る心不全など)
- 腎臓の病気(腎臓のはたらきが少しずつ落ちていく)
- 目の血管の障害(視力に影響することがある)
- 血管がふくらむ動脈瘤(どうみゃくりゅう)や、足の血管の詰まり
- もの忘れや認知機能の低下との関連も指摘されています
長期的な見通し
高血圧は、きちんと向き合えば十分にコントロールできる病気です。生活習慣を少し整え、必要な治療を続けることで、脳卒中や心臓病のリスクは大きく下がることが知られています。数値が思うように下がらない時期があっても、あきらめる必要はありません。医療者と一緒に、あなたに合ったペースで続けていくことが何より大切です。
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最終更新: 2026年10月24日
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