女性の顔や体の毛が濃くなる(多毛症)
概要
多毛症(たもうしょう)とは、女性の体の中で、本来は男性ホルモンの影響を受けやすい部位に、濃くて硬い毛が多く生える状態をいいます。具体的には、口のまわり、あご、ほお、胸の間、おなか、背中、太ももなどです。腕や脚の毛が多少濃いというだけでは多毛症とはいいません。「毛の生える場所」と「毛の質(太さ・硬さ・色の濃さ)」の両方が大切なポイントです。
重要な事実
- 多毛症は、体質によるものから、ホルモンのバランスの乱れによるものまで、さまざまな原因があります。
- 多い背景として、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS:卵巣に小さなのう胞ができ、ホルモンのバランスが乱れやすくなる状態)があります。
- 多くは命に関わる病気ではありませんが、月経の乱れやにきび、将来の血糖値の問題など、体の内側の変化が隠れていることがあります。
女性のおよそ5〜10%に見られると言われ、決して珍しいことではありません。人に話しにくく、ひとりで悩んでいる方も多いですが、同じ悩みを持つ方は大勢います。
思春期以降の女性に多く見られます。10代で始まる方もいれば、20〜30代で気になり始める方、閉経の前後に変化が出る方もいます。家族に同じ傾向の人がいる場合もあります。
症状
- 突然の激しい腹痛や背中の痛み、意識がもうろうとする、息苦しさが強いなど、体調が急に悪化したときは、ためらわず救急車を呼んでください(119)。
- ⚠数か月という短い間に、体毛が急に濃くなった
- ⚠声が低くなる、筋肉がつきやすくなるなど、体つきの変化が急に進んだ
- ⚠月経が急に止まった、または異常に多い出血が続く
- ⚠血圧が高いと言われたことがあり、頭痛や動悸が続く
一般的な症状
- 口のまわり、あご、ほお、あご下に濃く硬い毛が生える
- 胸の間、おなか、背中、太ももの内側などに毛が濃くなる
- にきびが増える、または治りにくい
- 月経の間隔が長い、回数が少ない、ときに止まってしまう
- 頭の毛が薄くなる(女性の薄毛)
- 皮膚が脂っぽくなる
- 体重が増えやすい、減りにくい
子供の症状
- 思春期前の子どもでは多毛症はまれです。
- わき毛や陰毛が異常に早く生える、声が低くなる、身長の伸びが急に早い場合は、早発思春期(ホルモンが早く活発になる状態)のサインのことがあるため、小児科やかかりつけ医に相談してください。
- 思春期に入ってから毛が濃くなるのは珍しくありませんが、極端に濃い場合や月経がなかなか来ない場合は受診の目安になります。
高齢者の症状
- 閉経の前後はホルモンのバランスが大きく変わるため、毛の変化が出ることがあります。
- 閉経後に急に濃くなった、声が低くなった、といった場合は早めに受診してください。
- 加齢に伴う変化と決めつけず、一度相談しておくと安心です。
原因
主な原因
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):最も多い背景のひとつで、男性ホルモンがやや多く作られやすくなります。
- 卵巣や副腎(ふくじん:腎臓の上にあるホルモンを作る臓器)の病気により、男性ホルモンが多く出る場合
- プロラクチン(乳汁を作るホルモン)や甲状腺(のどにあるホルモン腺)の異常
- 体質・遺伝によるもの(はっきりした原因が見つからない特発性の多毛症)
- 一部の薬の影響(長期に使う薬など)
- 体重の増加やインスリン抵抗性(血糖を下げるホルモンが効きにくくなる状態)
リスク要因
- 家族(母、姉妹など)に多毛症やPCOSの人がいる
- 月経不順やにきびが多い
- 体重が増えている、または急に増えた
- 血糖値が高めと言われたことがある
- 思春期・閉経前後などホルモンが大きく変わる時期
- 原因不明の不妊や、妊娠しにくさを指摘されたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 短い期間で体毛が急に濃くなった、声が低くなった
- 月経が止まった、または原因不明の出血が続く
- 激しい頭痛、動悸、血圧が高いと言われたことがある
- 強い疲労感や体重減少など、体調の変化が重なっている
定期受診を予約すべき場合:
- 顔や体の毛が気になり、自分で処理しても追いつかない
- にきびや月経不順など、ほかの症状も一緒にある
- 毛の処理で肌が荒れやすい、かゆみや赤みが出る
- 妊娠を考えており、ホルモンの状態を確認しておきたい
- 見た目の悩みがつらく、気持ちが落ち込みやすい
診断
まず問診で、いつ頃から、どの場所が、どのくらいの速さで濃くなったかを確認します。あわせて月経の状態、体重の変化、飲んでいる薬、家族の傾向などを伺います。毛の生え方の広がりを決まった方法で点数化し、必要に応じて血液検査や超音波検査を行って、背景にある原因を探ります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:男性ホルモン、甲状腺ホルモン、プロラクチン、血糖やコレステロールなどを調べます
- 超音波検査:卵巣の状態(PCOSの特徴がないか)を確認します
- 必要に応じて画像検査:卵巣や副腎に腫れなどがないかを調べます
- 血圧測定や体重・腹囲の確認
診察で予想されること
診察は1回で終わらないことがあります。検査結果が出るまで数日から数週間かかることもあります。治療を始めてから変化を実感するまでに数か月かかることも多いため、経過を見ながら少しずつ調整していくのが一般的です。
治療
治療は「毛の悩みをやわらげること」と「背景にある原因に対処すること」の2つの柱で進みます。原因が見つかればそれを治療することで毛の成長がゆるやかになることがあります。毛そのものへのアプローチは、セルフケアと医療的な方法を組み合わせます。
自宅でのセルフケア
- 剃る・毛抜き・除毛クリームなど、自分に合った方法でケアする。除毛クリームは肌のトラブル(かぶれ・やけど)に注意し、説明書を守る
- 医療レーザーや光脱毛など、継続が必要な方法は、施術前に医師に相談しておく
- 体重が増えている場合は、無理のない範囲で体重を整えることがホルモンの改善につながることがある
- 肌を乾燥させない、やさしく洗うなど、スキンケアを丁寧にする
- 毛の処理のあとは、かみそり負けや毛のう炎(もうのうえん:毛穴の炎症)を防ぐために清潔を保つ
医療治療
原因に応じて、ホルモンのバランスを整える薬、月経を整える薬、血糖の面からの対応などが検討されます。毛の成長をおだやかにする塗り薬が使われることもあります。どの方法が合うかは、症状・年齢・妊娠の希望・副作用の心配などによって変わるため、医師と相談して決めていきます。自己判断で薬を始めたり中断したりせず、気になる副作用があればすぐに相談してください。
手術が検討される場合
卵巣や副腎に腫瘍など原因となる病変が見つかった場合は、手術が検討されることがあります。多くはありませんが、急に症状が進んだ場合などは検査を優先することが大切です。
この病気と共に生きる
毛の処理は「毎日が勝負」と感じると疲れてしまいます。処理の頻度や方法を決めて、肌を休める日をつくるなど、続けられるリズムを見つけることが大切です。人に会う予定の前だけ丁寧にケアする、といった工夫でも十分です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- 強いストレスが続くとホルモンのバランスにも影響することがあるため、リラックスする時間を意識してつくる
- 喫煙は血管やホルモンに悪影響があるため、禁煙を考える
- 月経の記録をつけておくと、受診のときに役立つ
- 処理方法を変えたときは、肌の様子を観察する
食事と運動
特別な食事療法があるわけではありませんが、野菜・たんぱく質・主食をバランスよくとり、甘い飲み物や間食をとりすぎないことが体重と血糖の管理に役立ちます。運動は、早歩きなどの軽い有酸素運動を無理のない範囲で続けるだけでも効果が期待できます。急なダイエットは体調を崩しやすいので、医師や管理栄養士に相談しながら進めましょう。
精神的健康と心の健康
毛の悩みは、人に見られたくない、恥ずかしいといった気持ちにつながりやすく、自信の低下や気分の落ち込み、人づきあいを避けてしまうことがあります。これはわがままでも弱さでもなく、誰にでも起こる自然な反応です。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口、信頼できる人に話してください。気持ちがとてもつらく、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。
予防
体質による多毛症を完全に防ぐことは難しいですが、体重を適正に保つ、基礎にある病気(PCOSや甲状腺の異常など)を早めに見つけて治療する、生活のリズムを整えるといったことが、症状の悪化を防ぐ助けになることがあります。
ワクチン
多毛症に直接関係するワクチンはありません。季節ごとの予防接種は、かかりつけ医と相談して受けておくと安心です。
検診プログラム
月経不順や体重の変化がある方は、婦人科や一般内科でホルモンや血糖の検査を受けておくと、背景の病気の早期発見につながります。健康診断の結果もあわせて確認しましょう。
合併症
治療しない場合
- 見た目の悩みが続き、自己肯定感の低下や気分の落ち込みにつながることがある
- PCOSなど背景の病気が進み、月経異常や妊娠しにくさにつながることがある
- 血糖値の上昇(糖尿病のリスク)や脂質の異常、血圧の上昇など、体の内側の変化が進むことがある
- 毛の処理を繰り返すことで、肌のかぶれや毛のう炎(毛穴の炎症)を起こしやすくなる
長期的な見通し
多毛症は、原因を確かめて適切に対応することで、症状がやわらぐ方が多くいます。改善には数か月から年単位の時間がかかることもありますが、あせらず続けることが大切です。見た目の悩みも気持ちの面も含めて、医療者と一緒に少しずつ整えていける状態です。
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最終更新: 2026年10月24日
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