ためこみ症(ホーディング障害)について
概要
ためこみ症は、物をなかなか手放せず、部屋や家の中が物でいっぱいになってしまう状態が長く続く心の病気です。大切なのは「片づけが苦手」「もったいない」という性格の問題ではなく、物を手放すときに強い不安や苦しさを感じるために、どうしても捨てられなくなってしまう点です。物の量が増えることで、部屋が使えなくなったり、人を家に招けなくなったり、生活そのものが難しくなることがあります。
重要な事実
- 「まだ使える」「いつか必要になる」と感じて、物を捨てる決断がとても難しくなります。
- 本人は困っていないように見えても、家族や周りの人が強い心配や負担を感じていることがよくあります。
- 叱ったり無理に捨てたりすると、かえって不安が強くなり、支援から遠ざかってしまうことがあります。
海外や日本の調査では、人口の数%程度の人が経験すると言われています。珍しい病気ではなく、思春期から高齢期まで幅広い年代で見られます。ただし、本人が困りごととして自覚しにくく、相談につながりにくいことも多いと言われています。
子どもから高齢者まで、どの年代にも起こります。一般的には男性より女性にやや多く見られ、ひとり暮らしの人や、身近な人とのつながりが少ない人により多く見られることがあります。うつ病や不安症、注意欠如・多動症(ADHD)などと一緒に起こることもあります。
症状
- 物が出口や通路をふさぎ、火事やガス漏れのときに逃げられない状態
- 物が崩れて下敷きになった、動けなくなった人がいる
- 建物の崩落や、近所への火災の危険が差し迫っていると感じる
- 自分や周りの人を傷つけてしまうかもしれない切迫した気持ちがある
- ⚠物につまずいて転倒し、けがをした、痛みが続いている
- ⚠ごみや物の山で、においや衛生状態がひどく悪化している
- ⚠食べ物や水、トイレ、お風呂が使えず、生活が成り立たなくなっている
- ⚠強い不安や落ち込みで、日常生活が回らなくなっている
- ⚠家族が「このままでは危ない」と強く感じている
一般的な症状
- 使う予定のない物でも捨てられず、どんどんたまっていく
- 新聞・紙類・郵便物・衣類・袋・箱などがたまりやすい
- 「いつか使うかもしれない」と感じて、手放す決断ができない
- 部屋の床や椅子、ベッド、台所などが物でふさがり、本来の使い方ができない
- 物をためることへの強いこだわりや、物への愛着がある
- 人を家に招けない、家族にも中を見せられない
- 片づけようとすると強い不安や苦しさを感じる
- 物が多いことによる困りごとを、自分では軽く考えてしまうことがある
子供の症状
- おもちゃや紙くず、包装紙、学校のプリントなどを捨てられない
- 親が勝手に片づけると、ひどく怒ったり泣いたりする
- 持ち物が多く、ランドセルや机の中がいっぱいになる
- 友だちを家に呼びたがらない
- 「もったいない」「いつか使う」という気持ちがとても強い
高齢者の症状
- 加齢とともに物が増え、片づけが難しくなることがある
- 体力の低下や病気、認知症などと区別が難しいことがある
- 物につまずいて転ぶ、火のそばに物が近づくなど、けがや火災の危険が高まる
- 家族が片づけを手伝おうとしても、強い抵抗があることがある
- ひとり暮らしの場合、周りが気づくのが遅れやすい
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ分かっていませんが、いくつかの要素が組み合わさって起こると考えられています。
- 物を分類したり、決断したりすることが脳の中でうまく進みにくい傾向
- 家族の中に同じような傾向があることがあり、遺伝的な要素も指摘されています
- 子どもの頃の体験や、大切な人・物を失った経験
- 完璧主義や慎重すぎる性格など、もともとの気質
- ひとりで抱え込みやすく、助けを求めるのが苦手なこと
リスク要因
- 家族にためこみの傾向がある人がいる
- うつ病、不安症、強迫症、注意欠如・多動症(ADHD)などがある
- 高齢である、または体力が低下している
- ひとり暮らし、または人とのつながりが少ない
- 経済的なゆとりがない、物を買いためやすい環境にある
- つらい体験や喪失体験を経験した
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 物のために通路がふさがり、逃げる道がないと感じる
- 転倒やけが、衛生面での大きな問題が起きている
- 落ち込みや不安が強く、生活が回らなくなっている
- 家族が「今すぐ助けが必要」と感じている
定期受診を予約すべき場合:
- 物が増えて、部屋の一部が使えなくなっている
- 片づけたい気持ちはあるのに、どうしても進まない
- 人を家に招けず、孤立していると感じる
- 家族が心配しているが、本人はどうしていいか分からない
- 同じような悩みが半年以上続いている
診断
医師や専門の支援者が、話を聞きながら状態を確認します。物が多いかどうかだけでなく、「手放すのが難しい」「生活に支障が出ている」「本人が困っているか、周りが困っているか」などを丁寧に聞き取ります。家族や身近な人の話も、大切な手がかりになります。
行われる可能性のある検査
- 特別な検査で分かる病気ではありません。問診と話し合いが中心になります。
- 似た状態を起こす他の病気(甲状腺の病気や認知症など)がないか、血液検査やもの忘れの検査を行うことがあります。
- うつ病や不安症など、一緒に起きている病気がないかを確認します。
- 質問票を使って、症状の強さや生活への影響を整理することがあります。
診察で予想されること
診察では、責められることはありません。家の中の様子を写真に撮って見せると、話が伝わりやすくなります。一度で結論を出すのではなく、時間をかけて一緒に考えることが多いです。苦手なことは無理に話さなくて大丈夫です。
治療
ためこみ症の支援は、本人のペースを大切にしながら、少しずつ進めていきます。中心になるのは、専門の支援者と一緒に行う話し合いの治療(認知行動療法)です。物との向き合い方や決断の仕方を練習し、少しずつ手放せるようにしていきます。家を訪問する支援や、家族への支援も大切です。
自宅でのセルフケア
- 一度に全部を片づけようとせず、「今日は引き出し1つ」など小さな目標にする
- 片づける前に、まず写真を撮って記録する(判断を後回しにできます)
- 「捨てる」ではなく「誰かに渡す」「寄付する」など、手放し方を変えてみる
- 1日15分など、短い時間だけ取り組む
- 家族や支援者に、そばにいてもらいながら行う
- 通路と、火のそば、寝る場所だけは安全に保つ
- いらいらしたときは、いったん休んでから再開する
医療治療
中心となるのは、専門の支援者と一緒に行う心理的な治療(認知行動療法など)です。物を手放すときの考え方や気持ちの整理の仕方を練習し、片づけの手順を少しずつ身につけていきます。家を訪問する支援や、家族・周りの人への相談支援も行われます。症状の強さや、うつ・不安などの状態に応じて、医師の判断で薬が使われることもあります。治療の方針は人によって異なるため、必ず主治医と相談しながら進めてください。
手術が検討される場合
ためこみ症は、手術で治す病気ではありません。
この病気と共に生きる
ためこみ症と付き合うには、「今日はここだけ」と範囲を決めて、できたことを認めていくことが助けになります。家族は、無理に捨てたり叱ったりするのではなく、「心配している」という気持ちを伝えながら、一緒に支援者を探すのがよいと言われています。
生活習慣のアドバイス
- 物を家に入れる前に「本当に必要か」を一度立ち止まって考える習慣をつくる
- 新聞や郵便物などは、決まった場所と決まった量を決めておく
- 新しい物を買う前に、家にある物を思い出す
- 片づけの日をカレンダーに書き、短い時間で区切る
- 信頼できる人と定期的に連絡を取り、孤立しないようにする
食事と運動
特別な食事の決まりはありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、気分の安定や体力づくりに役立ちます。家の中の移動が危ないときは、まず安全な通路を確保してから、散歩など外で体を動かす習慣をつくるとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
ためこみ症は、恥ずかしさや孤独、家族とのいさかい、不安や落ち込みにつながることがあります。これは本人の責任ではありません。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えずに、医療機関や相談窓口に話してみてください。
予防
完全に防ぐ方法は分かっていません。ただし、物が増えすぎる前に早めに相談すること、ひとりで抱え込まないこと、家族が批判ではなく心配として関わることが、悪化を防ぐ助けになると言われています。
検診プログラム
ためこみ症のための決まった健診はありません。健康診断やかかりつけ医での相談のときに、片づけや物の多さで困っていることを伝えてみてください。
合併症
治療しない場合
- 物につまずいて転倒し、骨折などのけがをしやすくなる
- 火のそばに物が近づき、火災の危険が高まる
- ほこりやごみで、アレルギーや呼吸器・皮膚のトラブルが起こりやすくなる
- 台所やトイレ、お風呂が使えず、衛生面で困ることがある
- 住まいを失う、立ち退きを求められるなどの住まいの問題
- 家族や近所との関係が悪くなり、孤立が深まる
- 不安やうつ、強い恥ずかしさが続く
長期的な見通し
ためこみ症は、すぐに全部が変わる病気ではありませんが、支援を受けることで少しずつ良くなっていくことが報告されています。時間はかかっても、本人のペースで進めていくことが大切です。小さな変化を積み重ねることで、生活の安全と安心を取り戻していくことは十分に可能です。
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最終更新: 2026年10月24日
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