ホジキンリンパ腫
概要
ホジキンリンパ腫は、「リンパ系」という体の中の免疫(体をウイルスや細菌から守る仕組み)のネットワークにできる、がんの一種です。リンパ系にはリンパ節(豆のような形をした小さな免疫の器官)や脾臓(ひぞう)などがあり、そこを流れるリンパ球という白血球の一種が、がん化して増えていきます。ホジキンリンパ腫には、顕微鏡で見ると「リード・ステルンベルグ細胞」という特徴的な大きな細胞が見られる、というはっきりした目印があります。同じリンパ系のがんでも、この目印がないものは「非ホジキンリンパ腫」と呼んで区別します。治療の組み立て方が変わるため、この区別はとても大切です。
重要な事実
- リンパ節の腫れや発熱などが主な症状ですが、治療の成績は良く、多くの方が治癒(治ること)を目指せる病気です。
- 日本では比較的まれながんで、年間に診断される方は千人前後とされています。非ホジキンリンパ腫に比べるとずっと少ない数です。
- 若い世代(20〜30代)と、60代以上の高齢者の二つの年代に多くみられるのが特徴です。
日本では比較的まれながんです。非ホジキンリンパ腫という、より多いタイプのリンパ腫と比べると、患者さんの数はかなり少なくなります。ただ、若い世代にも起こること、治療で治る可能性が高いことから、とても大切にされている病気です。
20〜30代の若い成人と、60代以上の高齢者の二つの山があり、男性にやや多いとされています。子どものころに発症することもあります。エプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)という、多くの人が一生のうちに一度は感染するウイルスとの関連が指摘されていますが、感染したからといって必ずこの病気になるわけではありません。
症状
- 息が苦しい、呼吸ができない感じがする(首や胸のリンパ節が大きくなって気道を圧迫することがあります)
- 顔や首が急に腫れて、飲み込みにくい、声が出にくい
- 意識がもうろうとしている、けいれんがある、これまでにない激しい頭痛がある
- 高熱でぐったりして、水分もとれない
- ⚠38度以上の熱が続いている
- ⚠リンパ節が急に大きくなった、痛みが出てきた
- ⚠せきや息苦しさ、胸の痛みが強くなってきた
- ⚠体重減少が続き、食べられない・水分がとれない
- ⚠治療中に発熱した(感染症の可能性があるため、すぐに治療チームへ連絡してください)
一般的な症状
- 首・わきの下・足の付け根などのリンパ節が、痛みなく、ゴムのように硬く腫れる(風邪のときの腫れと違い、押してもあまり痛くないことが多い)
- 38度以上の熱が続く(「説明のつかない発熱」と言われます)
- 寝汗(夜中にびっしょりと汗をかいて目が覚める)
- 体重が減る(半年の間に、体重の10%以上が意図せず減る)
- 疲れやすく、体がだるい
- 皮膚のかゆみが続く
- せきが続く、胸のあたりが重い感じがする
- お酒を飲んだときに、腫れているリンパ節が痛む(めずらしい症状ですが知られています)
子供の症状
- 子どもでは、首のリンパ節の腫れで気づかれることが多いと言われます
- 自分でうまく症状を説明できないことがあるため、元気がない、遊ばない、食欲がない、微熱がだらだら続く、といった様子の変化も手がかりになります
- 小児では治療の成績が特に良く、成長や将来の生活を考えた治療計画が立てられます
高齢者の症状
- 高齢の方では、疲れやすさ、体重減少、発熱といった全身の症状が目立つことがあります
- 心臓・肺・腎臓などの別の病気を持っていることも多く、治療を決める前に全身の状態をよく確認します
- 「年のせいかな」と思って受診が遅れやすいので、気になる症状が続くときは早めに相談しましょう
原因
リスク要因
- 年齢(20〜30代と60代以上の二つの年代に多い)
- 男性であること(やや多いとされています)
- EBウイルスへの感染歴との関連(感染したからといって必ず発症するわけではありません)
- 免疫の働きが低下する状態(HIV感染、免疫を抑える薬を使っている、臓器移植後など)
- 家族に同じ病気の人がいる場合(非常にまれですが、わずかにリスクが上がると言われます)
- 喫煙や肥満など、一般的な健康リスクとの関連も研究されていますが、はっきりした原因とは言い切れていません
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさ、飲み込みにくさ、顔や首の急な腫れがある(救急外来へ)
- 高熱が続き、ぐったりしている、水分がとれない
- 治療中に38度以上の発熱があった(すぐに治療チームへ連絡してください)
定期受診を予約すべき場合:
- リンパ節の腫れが2〜3週間以上続く、またはだんだん大きくなっている
- 原因が分からない発熱、寝汗、体重減少が続いている
- 皮膚のかゆみが長く続く、せきが続く
- 強い疲れやすさが続き、生活に支障が出ている
診断
まず問診と体の診察(リンパ節を触って確認)を行い、血液検査や画像検査で調べます。確定診断には、腫れているリンパ節の一部を取って顕微鏡で詳しく調べる「生検(せいけん)」が必要です。生検でリード・ステルンベルグ細胞が確認されると、ホジキンリンパ腫と診断されます。その後、病気の広がり具合(病期・ステージ)を調べる検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(症状の経過、リンパ節の場所や硬さを確認)
- 血液検査(血液の状態、肝臓や腎臓の働き、炎症の程度を調べる)
- 画像検査:超音波(エコー)、CT検査、PET検査などで、リンパ節や臓器への広がりを確認
- リンパ節の生検(一部を取って顕微鏡で調べる、診断を確定するための最も大切な検査)
- 骨髄検査(骨の中に病気が及んでいないかを調べる。必要に応じて行います)
- 心臓や肺の働きを調べる検査(治療を安全に進めるために行います)
診察で予想されること
生検は通常、局所麻酔(その部分だけをしびれさせる麻酔)で行われ、結果が出るまで数日から1〜2週間ほどかかることがあります。結果を待つ間は、不安で落ち着かないのが自然な気持ちです。分からないことはメモにまとめて医師に聞く、家族や友人に一緒に来てもらう、病院の相談窓口に話を聞いてもらう、といった方法が助けになります。
治療
ホジキンリンパ腫の治療は「治すこと」を目標に組み立てられます。中心になるのは、いくつかの抗がん剤を組み合わせた化学療法(抗がん剤治療)で、必要に応じて放射線治療を加えます。病期、年齢、全身の状態、妊娠の希望などによって計画は一人ひとり違います。治療の前に、方針と期待できること、副作用について、納得がいくまで医師と話し合いましょう。
自宅でのセルフケア
- 手洗い・うがいをこまめに行い、人混みを避けるなど感染予防を心がける
- 治療中の発熱は感染症のサインのことがあるため、すぐに治療チームへ連絡する
- 食事は無理せず、食べられるものを少しずつ。水分はこまめにとる
- 歯みがきやうがいで口の中を清潔に保つ(口内炎の予防になります)
- 休息を優先し、体調の変化を日記やメモに記録して診察に役立てる
- ワクチン接種は、生ワクチンを含め、必ず主治医に相談してから受ける
- 市販薬や健康食品も、自己判断で使う前に主治医・薬剤師に相談する
医療治療
複数の抗がん剤を組み合わせる化学療法が中心で、腫れが大きい場所や病期によっては放射線治療を組み合わせます。再発した場合には、別の種類の抗がん剤、免疫の仕組みを利用した薬(抗体薬など)、分子標的薬、造血幹細胞移植(自分の細胞をあらかじめ保存して戻す治療)などが検討されます。どの治療を選ぶか、どのくらいの期間行うかは、病期や全身状態、生活の状況によって変わります。具体的な薬の名前や量、スケジュールは医師から説明を受け、納得してから進めてください。
手術が検討される場合
ホジキンリンパ腫では、手術が主な治療になることは多くありません。手術は主に、診断のための生検(リンパ節の一部を取る)で行われます。まれに、脾臓(ひぞう)を取る手術などが必要になることがあります。
この病気と共に生きる
治療は通院で行うことが多く、治療の合間に数日から数週間の休みがあります。仕事や学校との両立は、主治医や職場・学校の担当者と相談しながら調整できます。髪が抜ける治療の場合は、かつらや帽子の準備を早めにしておくと心の準備ができます。治療中は感染症にかかりやすいので、人混みや体調の悪い人との接触を控えるなど、日常生活の中で工夫しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と生活リズムを保つ
- 禁煙する(治療中の肺や心臓への負担を減らすためにも大切です)
- 手洗い・うがい・換気など、感染予防を習慣にする
- 体調や気持ちの変化を記録し、診察時に伝える
- 一人で抱え込まず、家族・友人・医療者に助けを求める
食事と運動
食事は特別な制限はなく、バランスよく食べることが基本です。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を意識し、食欲がないときは一度の量を減らして回数を増やすと食べやすくなります。水分はこまめにとりましょう。運動は、主治医に相談したうえで、散歩など無理のない範囲で体を動かすと、気分転換や体力維持に役立ちます。発熱や強いだるさがあるときは無理をせず休んでください。
精神的健康と心の健康
「なぜ自分が」という戸惑い、治療への不安、見た目の変化へのつらさ、将来への心配など、気持ちが揺れるのは自然なことです。落ち込んだり、涙が出たり、眠れなくなったりするのもよくある反応です。つらい気持ちが長く続くとき、眠れない日が続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、すぐに主治医や看護師、病院の相談窓口に伝えてください。緊急の場合は119番(救急)をためらわずに呼んでください。
予防
ホジキンリンパ腫を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただし、禁煙、適正体重を保つこと、十分な睡眠、バランスの良い食事といった、体全体の健康を保つ習慣は、免疫の働きを支える意味でも役立ちます。この病気は人にうつるものではないので、その心配は不要です。
ワクチン
ホジキンリンパ腫そのものを防ぐワクチンはありません。治療中は免疫の働きが低下するため、ワクチンを受ける際は生ワクチンを避けるなど、必ず主治医に相談してから受けてください。
検診プログラム
国のがん検診には、ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫の項目はありません。気になる症状(長引くリンパ節の腫れ、発熱、寝汗、体重減少など)があるときは、検診を待たずに医療機関を受診してください。
合併症
治療しない場合
- リンパ節が大きくなり、気道や血管、周りの臓器を圧迫して、息苦しさや飲み込みにくさが出ることがあります
- 発熱や体重減少などの全身症状が進み、体力が落ちていきます
- 免疫の働きが低下し、感染症にかかりやすくなります
- 骨髄に病気が及ぶと、貧血や出血しやすい状態になることがあります
長期的な見通し
ホジキンリンパ腫は、治療の進歩によって、多くの方が治癒を目指せる病気になっています。若い方では特に治療の成績が良く、高齢の方でも全身の状態に合わせた治療が行われています。病期や年齢によって経過は異なりますが、再発した場合にも使える治療がいくつかあります。治療後の生活や体調の変化についても、遠慮なく医療チームに相談してください。希望を持ちながら、一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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