休日心臓症候群(ホリデーハート症候群)
概要
休日心臓症候群(ホリデーハート症候群)は、お祝いの席や年末年始・連休などでお酒をたくさん飲んだあとに、心臓のリズムが乱れて動悸(どうき=心臓の鼓動を強く、あるいは速く感じること)や脈の乱れが起きる状態を指す、わかりやすい呼び名です。英語の「ホリデー(休日)」と「ハート(心臓)」から名づけられました。多くは一時的なもので、数時間から半日ほどで自然に落ち着くことが多いのですが、なかには医療機関での確認が必要な場合もあります。
重要な事実
- お酒を短時間に多く飲んだあと(特に休日や宴会のあと)に起こりやすい、心臓のリズムの乱れです。
- 動悸、脈が飛ぶ感じ、胸の不快感、息切れ、めまいなどが主な症状で、多くは一時的です。
- お酒だけでなく、脱水、睡眠不足、カフェインのとりすぎ、塩分の多い食事、疲れなどが重なって起こると考えられています。
- 症状が長引くとき、胸の強い痛みや息苦しさ、意識が遠のく感じがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
はっきりした統計は多くありませんが、お酒を飲む機会の多い成人では決して珍しくないと考えられています。特に休暇中や週末に動悸を感じて受診する方は少なくありません。
お酒を飲む成人であれば誰にでも起こる可能性があります。特に、普段あまり飲まない方が急に多く飲んだとき、もともと心臓の病気や高血圧がある方、睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう=眠っている間に呼吸がたびたび止まる状態)のある方、高齢の方では起こりやすいとされています。
症状
- 意識を失う、気を失いそうになる、呼びかけへの反応がおかしい
- 胸の中央が強く締めつけられるような痛みが続く
- 息ができず話せない、顔色が悪い、冷や汗がひどい
- 脈が極端に速い、または脈が触れない
- 顔の片側が動かない、言葉が出にくい、手や足に力が入らない(脳卒中の可能性があるとき)
- ⚠動悸が数時間以上続く、何度も繰り返す
- ⚠胸の不快感や息切れが軽くならない
- ⚠めまいで立ち上がれない、歩くのが不安定
- ⚠尿がほとんど出ない、唇が乾くなど脱水が強く疑われるとき
一般的な症状
- 動悸(心臓がドキドキする、脈が速い、脈が飛ぶ感じがする)
- 脈が不規則になる、胸のあたりの不快感
- 軽い息切れ、階段や坂道で息が上がりやすい
- めまい、ふらつき、体のだるさ
- 不安感、落ち着かない感じ
- 飲酒の翌朝〜翌日中に症状が出やすい
子供の症状
- 子どもではまれで、子どもが動悸を訴える場合は別の原因(発熱、貧血、心臓の生まれつきの病気など)を考える必要があります。
- 未成年にはアルコールは勧められません。子どもが動悸や胸の不快感を訴えたら、様子を見ずに医療機関へ相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方は動悸をはっきり感じにくく、『なんとなくだるい』『息が上がる』『ふらつく』といった形で出ることがあります。
- もともと心臓病や高血圧のある方は、症状が強くなりやすいため注意が必要です。
- 飲酒の翌日に体調がすぐれないときは、無理をせず早めに相談してください。
原因
主な原因
- 短時間に多くのお酒を飲むこと(特に普段飲み慣れていない方が急に飲んだとき)
- 飲酒による脱水と、体のミネラルバランスの乱れ
- 睡眠不足や疲れ、時差や生活リズムの乱れ
- カフェインのとりすぎ(コーヒー、エナジードリンクなど)
- 塩分の多い食事や食べすぎ、体重の急な増加
- 喫煙、気温の急な変化、強いストレス
リスク要因
- もともと心臓の病気がある(不整脈の既往、心不全、弁膜症など)
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病
- 睡眠時無呼吸
- 甲状腺(こうじょうせん)の働きが活発になりすぎている状態
- 高齢であること
- 脱水しやすい状況(発熱、下痢、暑い環境、利尿作用のある飲み物)
- 過去に休日心臓症候群を経験したことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 動悸が数時間たっても収まらない、または何度も繰り返す
- 胸の痛みや強い息苦しさがある
- ふらつきが強く、日常生活が難しい
- 失神した、あるいは危うく倒れそうになった
定期受診を予約すべき場合:
- 飲酒のあとの動悸を何度か経験している
- 脈が飛ぶ感じや不規則な脈を自覚することがある
- 動悸のたびに不安が強くなる
- お酒の量が増えている、飲まないと落ち着かないと感じる
診断
まず問診で、いつ・どのくらいお酒を飲んだか、症状がいつ始まったか、これまでに似たことがあったかを伺います。そのうえで、心臓のリズムを調べる検査を行います。症状がすでに落ち着いている場合は、そのときの状態から総合的に判断することになります。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる検査)
- ホルター心電図(24時間ほど装着して脈の乱れを記録する検査)
- 血液検査(脱水やミネラルバランス、甲状腺の働きなどを確認)
- 心エコー(超音波で心臓の形や動きを見る検査)
- 胸部レントゲン検査
- 必要に応じて、睡眠時の呼吸を調べる検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。症状が出ていないときは心電図に変化が出ないこともあり、その場合は何度か検査をしたり、症状が出たときに記録する方法を用いたりします。結果の説明とともに、飲酒量や生活リズムについての具体的なアドバイスを受けられます。
治療
多くは数時間から半日ほどで自然に脈が整い、特別な治療を必要としません。医療機関では、脱水の補正や安静を中心に、症状の強さに応じた対応が行われます。大切なのは、なぜ起きたのかを振り返り、次の機会に同じことが起きないようにすることです。
自宅でのセルフケア
- お酒を控え、症状が落ち着くまでは飲まない
- こまめに水やノンカフェインの飲み物をとって脱水を防ぐ
- 十分な睡眠をとり、体を休める
- カフェイン(コーヒー、濃いお茶、エナジードリンク)を控える
- 塩分の多い食事や食べすぎを避ける
- 動悸が続く時間、回数、そのときの状況をメモしておく
医療治療
受診先では、心電図で脈の状態を確認しながら安静を保ち、脱水があれば輸液で水分とミネラルを補うことがあります。症状の強さや持続時間に応じて、医師の判断で心臓のリズムを整えるための治療が行われることがあります。治療の内容は症状や検査結果によって変わるため、必ず担当の医師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
休日心臓症候群そのものに対して手術が必要になることは通常ありません。ただし、別の心臓の病気が見つかった場合には、その病気に応じた治療の選択肢が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
一度経験した方は、自分がどのくらいのお酒で症状が出やすいかを知っておくと役立ちます。飲み会のあとは予定を詰め込まず、ゆっくり休む時間を確保するだけでも違います。症状の記録を続けると、受診のときに医師へ伝えやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- お酒は量とペースを決めて飲み、水を一緒にとる
- 週に1〜2日は休肝日をつくる
- 睡眠時間を確保し、生活リズムを整える
- 禁煙を検討する
- 適度な運動を習慣にする(急に激しい運動を始めない)
- ストレスをためこまず、息抜きの方法を持つ
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜や魚、大豆製品をバランスよくとりましょう。脱水予防のために水分をこまめにとることも大切です。運動はウォーキングなど無理のないものを継続するのがおすすめです。飲酒の直後や体調の悪いときの激しい運動は避けてください。
精神的健康と心の健康
動悸を経験すると『また起きたらどうしよう』という不安が残ることがあります。また、お酒を減らしたいのにやめられない、飲まないと不安になるといった気持ちがある場合は、一人で抱えこまずに相談してください。お酒との付き合い方は、専門の相談窓口やかかりつけ医で一緒に考えることができます。つらい気持ちが強いときは、お住まいの自治体のこころの健康相談窓口や、医療機関の相談窓口を頼ってください。
予防
多くの場合は予防できます。いちばん効果が期待できるのは、飲酒量と飲むペースを意識することです。お酒を飲む前に食事をとり、水を一緒に飲み、そのあとはしっかり眠る。この3つを心がけるだけでも、リスクは下がると考えられています。
検診プログラム
健康診断(特定健診など)で血圧・血糖・脂質・心電図を確認しておくと、背景にある病気に早く気づけます。動悸を繰り返す方は、診察のときにそのことを伝えて相談してください。
合併症
治療しない場合
- 脈の乱れが長引く、または繰り返すことで、心房細動(しんぼうさいどう=心房が細かく震えて脈が不規則になる不整脈)が定着していく可能性があります。
- 心房細動が続くと、脳梗塞(のうこうそく)のリスクが上がることが知られています。
- 動悸や息切れが続くことで、生活の質が下がったり、不安が強くなったりすることがあります。
- 心臓に負担がかかり続けると、心不全の原因になることがあります。
長期的な見通し
ほとんどの場合、休日心臓症候群は一時的なもので、飲酒量を控え生活を整えることで再発を防げます。心配な症状が続くときは早めに受診し、必要な検査を受けておくことが安心につながります。あせらず、できることから始めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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