年末年始の楽しみの裏に — 関節が赤く腫れて痛む「痛風発作」にご注意
概要
痛風(つうふう)は、関節の中に「尿酸(にょうさん)」という物質の小さな結晶ができて、強い痛みや腫れを起こす病気です。尿酸は、体の中で細胞が入れかわるときや、食べ物・お酒に含まれる「プリン体」が分解されるときにできる老廃物(体のいらなくなったもの)で、ふだんは腎臓(じんぞう)から尿と一緒に体の外へ出ていきます。ところが、尿酸が増えすぎたり、うまく出せなくなったりすると、結晶になって関節にとどまり、体の防御反応が働いて炎症(赤み・腫れ・熱・痛み)を起こします。よく起こるのは足の親指のつけ根ですが、足首・ひざ・手首・ひじなどにも起こります。なお、よく似た関節の炎症に「偽痛風(ぎつうふう)」があり、こちらは別の種類の結晶が原因で、高齢者のひざなどに多くみられます。
重要な事実
- 痛風発作は、ある日突然、夜中や明け方に起こることが多いのが特徴です。数時間で痛みのピークを迎え、患部は赤く腫れて熱を持ち、布団が触れるだけでもつらいことがあります。
- お酒(とくにビール)やごちそう、水分不足、寒さ、疲れ、睡眠不足が重なる年末年始は、発作が起こりやすい時期です。
- 発作がおさまったあとも尿酸が高い状態が続くと再発をくり返すため、発作が落ち着いてから生活習慣や治療を見直すことが大切です。
はい、とてもよくみられる病気です。日本では成人男性を中心に多くの人が経験しており、最近は女性や若い世代でも増えているといわれています。年末年始やお祝いの席が続く時期に発作が増えることも、昔からよく知られています。
もっとも多いのは40〜60代の男性です。女性は閉経後(はいけつご)に増える傾向があります。また、腎臓の働きが低下している人、高血圧・脂質異常症・肥満のある人、飲酒の習慣がある人、家族に痛風の人がいる人に起こりやすいとされています。高齢者では偽痛風も含めて、関節の腫れと痛みに注意が必要です。
症状
- 関節の激しい痛みとともに、高熱・悪寒(さむけ)・震えがあり、動かせないほどつらい(関節の中の細菌感染などの可能性)
- 人工関節(じんこうかんせつ)を入れている部位が赤く腫れて熱を持ち、発熱もある
- 痛みや腫れが急に広がり、皮膚が紫色に変わったり、水ぶくれができたりする
- 意識がぼんやりする、息苦しい、血圧が下がったように感じるなど、全身の状態が悪い
- ⚠初めて経験する強い関節痛(診断を受け、今後の治療方針を決める必要がある)
- ⚠発作が3〜4日以上たってもよくならない、あるいはどんどん悪化する
- ⚠38度以上の発熱を伴う関節の腫れ
- ⚠複数の関節が同時に腫れる
- ⚠水分がとれない、尿の量が少ない、強い吐き気がある
一般的な症状
- ある日突然、片方の関節に強い痛みが出る(多くは足の親指のつけ根)
- 患部が赤くなり、腫れて、触ると熱く感じる
- 布団や靴下が触れるだけで痛むほど敏感になる
- 痛みのピークは数時間〜24時間ほどで来ることが多く、 night(夜中)や明け方に始まりやすい
- 発作の間は痛みがほとんどない時期がある(これをくり返すことが多い)
- 微熱やだるさを伴うことがある
- 足首・ひざ・手首・ひじ・指の関節にも起こる
子供の症状
- 子どもでは痛風はまれです。子どもに関節の腫れや痛みがあるときは、別の原因(けが、感染症、リウマチ性の病気など)を考える必要があります。
- 子どもが関節の腫れと発熱を同時に訴えるときは、早めに小児科を受診してください。
高齢者の症状
- 高齢者では「偽痛風」による関節の腫れや痛みが比較的多く、ひざや手首に起こりやすい
- 発熱や食欲低下を伴うことがあり、体調全体が急に悪くなったようにみえることがある
- 水分不足や腎臓の働きの低下が背景にあることが多く、発作をきっかけに脱水になりやすい
- 複数の薬を飲んでいる場合は、自己判断で薬をやめずに医師・薬剤師に相談する
原因
主な原因
- 血液中の尿酸が高い状態が続き、関節の中で尿酸の結晶ができること
- 尿酸が急に増えるきっかけ(飲酒、ごちそうの食べすぎ、脱水、急な体重減少や絶食、強い疲れ、睡眠不足、寒さ、けがや手術、強いストレス)
- 尿酸をうまく体の外へ出せない状態(腎臓の働きの低下など)
- 一部の薬(利尿薬など)が尿酸値を上げることがある
- 偽痛風の場合は、関節の軟骨に別の種類の結晶がたまることが原因
リスク要因
- 男性(とくに中年以降)、女性では閉経後
- 飲酒の習慣(とくにビールや蒸留酒を多く飲む)
- プリン体の多い食品(内臓肉、レバー、魚介類の一部、濃いだしなど)のとりすぎ
- 肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病
- 腎臓の働きの低下、尿路結石の既往
- 家族に痛風の人がいる(体質の影響)
- 水分不足、寒さ、急なダイエットや断食、けが・手術・入院などの体への負担
- アルコールを飲みながらの長時間の移動や、睡眠不足が続く生活
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めての強い関節痛で、歩くのもつらい
- 関節の腫れと発熱・悪寒がある
- 人工関節の部位が赤く腫れている
- 痛みが数日で改善せず、むしろ強くなる
- 水分がとれない、尿が出ないなど全身状態が心配
定期受診を予約すべき場合:
- 過去にも似た発作があり、今回も同じような痛みが出た(診断・治療の見直しのため)
- 発作はおさまったが、尿酸値を指摘されたことがある、または健診で尿酸値が高いといわれた
- 発作をくり返している、または痛風結節(皮膚の下のこぶのようなもの)に気づいた
- 飲酒や食事の習慣について相談したい
- 腎臓の働きや生活習慣病の検査も合わせて受けたい
診断
医師はまず、いつから、どの関節が、どのように痛むのかを聞き、患部を診察します。そのうえで、血液検査で尿酸値や炎症の程度を調べ、必要に応じて関節にたまった液を少量とって顕微鏡で結晶の有無を確認します。この関節液の検査は、痛風かどうかを確かめるうえでとても役立ちます。ただし、発作の最中は尿酸値が一時的に下がって正常に見えることがあるため、1回の数値だけで判断せず、発作が落ち着いた时期的検査を組み合わせます。偽痛風が疑われる場合も、関節液の検査で区別できます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(痛みの出方、患部の赤み・腫れ・熱感の確認)
- 血液検査(尿酸値、炎症反応、腎臓の働き、血糖・脂質など)
- 関節液の検査(結晶の有無、細菌感染の有無を確認)
- レントゲン検査(関節の変化や、ほかの病気との区別)
- 超音波(エコー)検査(結晶のたまり方や関節の状態をみる)
- 尿検査(尿酸の出方や腎臓の状態、尿路結石の手がかり)
診察で予想されること
診察は数分から十数分で終わることが多く、血液検査の結果はその日のうち〜数日でわかります。関節液を調べる場合は、患部を消毒して細い針で少しだけ液をとります。麻酔を使うこともあり、短時間で終わります。診断がついたら、発作をしずめる治療と、再発を防ぐための生活の見直しや検査について、医師と一緒に計画を立てていきます。
治療
痛風の治療は「発作をしずめること」と「発作をくり返さないこと」の2段階で考えます。発作のときは、炎症をしずめる薬を医師が処方し、患部を冷やして安静にします。痛みがおさまったあとは、尿酸値を適正に保つための治療や生活習慣の見直しを進めます。治療の内容や始める時期は、腎臓の働きや持病、飲んでいる薬によって変わるため、自己判断で薬を飲んだり中止したりせず、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 患部を冷やす(氷をタオルで包み、10〜15分ほどを目安に、皮膚を直接冷やしすぎない)
- 患部を高くして安静にする(クッションなどで足を少し上げる)
- 水分をこまめにとる(お酒は控え、水やお茶を少しずつ)
- 発作の間は飲酒を控える
- 痛む関節に負担をかけない(無理に動かさず、靴はゆったりしたものを)
- 睡眠と休息をしっかりとる
- 発作の記録(日時、関節、きっかけ、飲酒や食事)をつけておくと診察に役立つ
医療治療
発作の時期には、炎症と痛みをしずめるための薬を医師が処方します。発作が落ち着いたあとは、血液中の尿酸値を適正な範囲に保つための治療を検討します。尿酸値の治療は、発作が起きていないときに始めることが多く、始めた当初は発作が誘発されることがあるため、医師が量や時期を調整します。生活習慣病(高血圧、脂質異常症、腎臓の病気など)の治療も並行して行うことが大切です。薬の種類や量は人によって異なるため、具体的な判断は必ず医師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が必要になることは多くありません。大きな痛風結節(皮膚の下のこぶ)が日常生活の妨げになる場合、関節の破壊が進んだ場合、関節の中の細菌感染が疑われる場合などに、専門医と相談して手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
痛風は、発作がないときの過ごし方がとても大事な病気です。発作がおさまっても尿酸が高い状態が続くと再発しやすいため、飲酒の量や水分、食事、体重、睡眠を見直し、健診で尿酸値や腎臓の働きを定期的に確認しましょう。「お酒の席を断りづらい」と感じることもあるかもしれませんが、ペースを落とす、ノンアルコールを挟む、水分を一緒にとるなど、自分に合った付き合い方を見つけていけば大丈夫です。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は量と頻度を控えめにし、飲まない日をつくる
- 水分をこまめにとり、脱水を避ける(とくに寒い時期、運動時、入浴後)
- 適正体重を目指す(急な減量や断食はかえって発作のきっかけになることがある)
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 足元を冷やさない(冷えると結晶ができやすくなるといわれる)
- けがや手術、入院など体に負担がかかるときは、かかりつけ医に事前に相談する
- 健診を毎年受け、尿酸値・腎臓の働き・血圧・血糖・脂質を確認する
食事と運動
食事は、プリン体の多い食品(内臓肉、レバー、魚介類の一部、濃いだし)や甘い飲み物を控えめにし、野菜・海藻・きのこ・大豆製品・乳製品などをバランスよくとりましょう。極端な食事制限は長続きせず、急な体重減少は発作の引き金になることがあるため、ゆっくりした減量がおすすめです。運動は、ウォーキングなど無理のない有酸素運動を日常に取り入れ、運動の前後には水分補給を忘れずに。痛みのある時期は無理をせず、発作が落ち着いてから再開しましょう。
精神的健康と心の健康
強い痛みが続くと、気分が落ち込んだり、イライラしたり、眠れなくなったりすることがあります。また、飲み会でお酒を断ることや、食事を気にすることに気をつかう方も少なくありません。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口、信頼できる人に話してみてください。気持ちがとてもつらいとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに医療機関やお住まいの自治体の相談窓口に連絡してください。緊急の危険があるときは119番に電話してください。
予防
すべてを防ぐことは難しくても、発作の回数を減らし、痛みのない毎日を長く保つことは十分に可能です。飲酒を控えめにする、水分をこまめにとる、バランスのよい食事と適正体重を保つ、寒さを避ける、定期的に健診を受けて尿酸値や腎臓の働きを確認する——こうした積み重ねが再発予防につながります。すでに治療中の方は、自己判断で薬をやめずに続けることが何より大切です。
検診プログラム
健診の血液検査で尿酸値を測ることができます。尿酸値が高いといわれた方は、症状がなくてもかかりつけ医に相談しましょう。あわせて腎臓の働き、血圧、血糖、脂質も確認しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 発作をくり返し、回数が増えたり、複数の関節に広がったりする
- 痛風結節(皮膚の下にできるこぶ)ができ、関節が動かしにくくなる
- 関節の変形や破壊が進み、日常生活に支障が出る
- 尿路結石(尿の通り道に石ができる)や腎臓の働きの低下
- 高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病や、心血管の病気のリスクが高まる
- 発作をきっかけに脱水や体調不良が進む(とくに高齢者)
長期的な見通し
痛風は、正しく付き合えば決して悲観する病気ではありません。発作時の対応と、その後の生活の見直し・治療を続けることで、発作のない穏やかな毎日を長く保つことができます。年末年始のような楽しい時期も、少しの工夫でお酒や食事を楽しみながら過ごせます。気になることがあれば、早めにかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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