人工股関節の手術はどう行われる?
概要
股関節は、太ももの骨の先(大腿骨頭)が骨盤のくぼみにはまり込む形の関節で、歩く・しゃがむといった動きを支えています。人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)は、すり減ったり壊れたりした股関節の一部を取りのぞき、金属やセラミックなどでできた人工の部品に置きかえる手術です。痛みの原因になっている部分を新しい関節に置きかえることで、歩きやすさを取り戻すことを目指します。
重要な事実
- 股関節の軟骨がすり減って強い痛みが続き、運動療法などでは改善しないときに検討される手術です。
- 手術では、傷んだ骨の部分を人工のカップとステム(柄の部分)に置きかえます。
- 手術のあとは、入院中からリハビリが始まり、退院後も続けることで歩行の回復を目指します。
日本でもよく行われる手術のひとつです。股関節の痛みで日常生活がつらくなった多くの方が受けています。決してめずらしい手術ではありません。
多いのは、変形性股関節症(軟骨がすり減って関節が変形する病気)になった中高年の方で、女性に多い傾向があります。ほかに、関節リウマチ、大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし:太ももの骨の先が血流不足で壊れる病気)、けがのあとの変形などが原因になることもあります。年齢だけで決まるものではなく、痛みの強さと生活への影響で判断されます。
症状
- 手術のあと、突然の息苦しさや胸の痛み、意識がもうろうとする(肺の血管に血のかたまりが詰まる肺塞栓のおそれ)
- 手術のあと、ふくらはぎの強い痛みや片脚の急なはれが広がり、歩けないほどの痛みがある
- 股関節に急に激痛が走り、脚の向きが変わって動かせない(人工関節がはずれる脱臼のおそれ)
- 傷から大量に出血している、または傷のまわりが急に大きくはれて熱をもち、高熱が出る
- 転倒して脚が変形したまま動かせない、強い痛みで立てない
- ⚠手術のあと、38度前後の発熱が続く、または傷から膿(うみ)のようなものが出る
- ⚠手術のあと、傷の赤みやはれが日ごとに強くなる
- ⚠手術のあと、脚のむくみが片側だけ強く出てきた
- ⚠痛み止めを使っても痛みがどんどん強くなる
一般的な症状
- 歩き始めや立ち上がるときに股関節が痛む
- 長く歩くと痛みが出て、休まないと歩けなくなる
- 階段の上り下りがつらい
- 靴下をはく、爪を切るなど、股関節を深く曲げる動作ができない
- 足を横に開きにくくなる、あぐらがかけない
- 夜中や朝方に股関節が痛んで眠れないことがある
- 痛みをかばって歩くため、足をひきずるようになる
子供の症状
- この手術は、基本的に成長が終わった方に行うもので、子どもには通常行われません。
- 子どもの股関節の病気(発育性股関節形成不全など)には、年齢に応じた別の治療が選ばれます。
- 子どもが股関節や脚の付け根を痛がる、歩き方が急におかしくなった、発熱があるといった場合は、早めに医療機関を受診してください。
高齢者の症状
- 高齢になると、痛みで外出が減り、筋力が落ちて転びやすくなることがあります。
- 痛みのため歩く距離が短くなり、買い物や通院が負担になることがあります。
- 年齢だけで手術ができないと決まるわけではありません。持病や体力を含めて、医師とよく相談して決めます。
原因
主な原因
- 変形性股関節症:関節の軟骨が長い年月をかけてすり減り、骨が変形して痛みが出ます。日本で人工股関節の手術を受ける方の多い原因です。
- 関節リウマチ:免疫の働きの異常で関節に炎症が続き、関節がこわされることがあります。
- 大腿骨頭壊死:太ももの骨の先への血流が減り、骨が壊れて変形します。
- けがや骨折のあとの変形、生まれつきの股関節の形の影響(発育性股関節形成不全の後遺症など)
リスク要因
- 中高年の女性(変形性股関節症は女性に多いとされています)
- 体重が多い状態が長く続くこと
- 家系に股関節の病気の人がいること
- 重い荷物を運ぶ仕事や、長時間の立ち仕事、激しいスポーツ歴
- 過去の股関節のけが・骨折・病気
- 喫煙(手術後の回復に影響することがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 転倒やけがのあと、股関節に強い痛みがあり、脚が動かせない・変形している
- 手術のあとに高熱が出た、傷から膿が出た、傷の赤みやはれが急に強くなった
- 手術のあとに突然の息苦しさや胸の痛みが出た
- 手術のあとに股関節が急に激痛で動かせなくなった
定期受診を予約すべき場合:
- 歩き始めや立ち上がるときの股関節の痛みが数週間以上続く
- 一般的な痛み止めを使っても痛みが変わらない
- 痛みで夜眠れない、外出がおっくうになってきた
- 靴下がはけない、爪が切れないなど、日常生活で困る動作が増えてきた
- 股関節の痛みで、仕事や家事を続けるのが難しくなってきた
診断
整形外科で、痛みの出方や生活への影響を聞き、股関節の動きや歩き方を診察します。そのうえでレントゲン(X線)で関節のすり減りや形を確認します。手術を受けるかどうかは、痛みの強さ、日常生活の困り具合、画像の所見、そして持病や体力をあわせて、主治医と相談して決めていきます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(痛みの場所、歩行の様子、股関節の動く範囲を確認)
- レントゲン(X線)検査:関節のすき間の狭まりや骨の変形をみます
- MRI検査:軟骨や骨の状態、大腿骨頭壊死などがないかを詳しく調べます
- CT検査:手術の計画を立てるために骨の形を立体的に確認します
- 血液検査・尿検査:炎症や貧血、持病の状態を確認します
- 心電図・胸部レントゲン:麻酔や手術に耐えられるかを確認します
- 骨密度検査:骨の丈夫さを確認します
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどです。手術が決まった場合は、手術の前に麻酔科や内科の診察を受け、手術の方法や入院生活、術後のリハビリについて説明を受けます。入院の期間は施設によって異なりますが、一般的には1〜3週間程度が目安とされています。
治療
治療は、手術以外の方法を試しながら、日常生活への影響をみて手術を検討する流れが一般的です。手術は、下半身の麻酔などを使って行われ、傷んだ部分を取りのぞいて人工の部品を入れ、傷を閉じます。手術の時間はおおむね1〜2時間程度が目安ですが、体の状態や施設によって異なります。
自宅でのセルフケア
- 手術前から、無理のない範囲で太ももやおしりの筋力を保つ運動を続ける
- 適正な体重を保つ
- 禁煙する(回復や傷の治りに影響します)
- 歯の治療やむし歯を放置しない(手術後の感染予防につながります)
- 手術後は、理学療法士の指導に沿ってリハビリを続ける
- 入院前に、家の中の段差・手すり・照明などを確認し、転びにくい環境を整えておく
医療治療
手術以外には、理学療法士による運動療法(筋力トレーニングやストレッチ)、体重管理、日常生活の工夫、杖やシルバーカーなどの歩行補助具の使用、痛みのコントロールなどが行われます。薬を使う場合は、医師が体の状態や持病をみて判断します。手術では、傷んだ股関節の一部を人工の部品(カップとステム)に置きかえます。人工関節を骨に固定する方法には、骨が育って固定されるタイプと、骨セメントで固定するタイプがあり、年齢や骨の状態で選ばれます。
手術が検討される場合
手術は、運動療法や体重管理などを続けても強い痛みが残り、歩くことや日常生活に大きな支障があるときに検討されます。夜間に痛んで眠れない、歩ける距離が大きく短くなった、買い物や通院が難しいといった場合は、手術を含めて主治医と相談する目安になります。
この病気と共に生きる
手術の翌日ごろから、ベッドの上での運動や立ち上がりの練習が始まることが多く、入院中に歩行の練習を進めます。退院後も通院でのリハビリが続きます。深くしゃがむ、足を組む、低い椅子に座るといった動作は、人工関節がはずれるのを防ぐために一時的に避けるよう指導されることがあります。制限の内容は手術の方法によって異なるので、担当の理学療法士の指示に従ってください。
生活習慣のアドバイス
- 転倒予防のために、家の中の段差をなくし、手すりや夜間の照明を整える
- 滑りにくく、かかとの安定した靴を選ぶ
- 長時間同じ姿勢を続けず、こまめに動く
- 手術後は、傷の状態について医師の指示どおりに通院する
- 歯の治療や皮膚の傷など、感染のもとになりそうな部分は早めに手当てする
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、たんぱく質やカルシウム、ビタミンDを意識してとると、骨や筋肉を保つ助けになります。運動は、リハビリで教わった筋力トレーニングや歩行を、無理のない範囲で続けることが大切です。新しく始める運動は、主治医や理学療法士に相談してからにしましょう。
精神的健康と心の健康
手術前は「ちゃんと歩けるようになるだろうか」と不安になる方が多くいます。手術後も、痛みや不自由さが続く時期に気分が落ち込むことがあります。これはめずらしいことではありません。気持ちのつらさが続くときは、担当医や看護師、医療ソーシャルワーカーに話してみてください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、地域の相談窓口や医療機関に連絡してください。
予防
股関節の病気をすべて防ぐことはできませんが、適正な体重を保つこと、太ももやおしりの筋力を維持すること、けがを防ぐこと、禁煙などが、股関節への負担を減らす助けになるとされています。すでに痛みがある場合は、早めに整形外科で相談することが、進行を抑える第一歩になります。
ワクチン
手術を受ける前後は、感染を防ぐことが大切です。インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、主治医に相談してみてください。
検診プログラム
股関節の痛みが続くときは、早めに整形外科を受診しましょう。骨の弱さが気になる場合は、骨粗鬆症の検査が行えることもあります。健康診断の機会に相談するのもよい方法です。
合併症
治療しない場合
- 痛みが続いて歩ける距離が短くなり、外出や仕事が難しくなる
- 筋力が落ちて、転びやすくなる
- 関節の変形が進み、ますます動かしにくくなる
- 睡眠や気分に影響し、生活の質が下がることがある
- 手術を受けた場合の合併症としては、感染、血のかたまり(血栓)、人工関節のはずれ、脚の長さの違和感、時間がたってからのゆるみなどがあります
長期的な見通し
人工股関節の手術を受けた多くの方が、痛みが軽くなり、歩きやすさを取り戻しています。回復の速さには個人差があり、リハビリを続けることが大切です。手术(しゅじゅつ)を受けるか迷うときは、不安な点を主治医に伝えて、じっくり相談しながら決めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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