HPV(ヒトパピローマウイルス)ってどんなウイルス?
概要
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、皮膚や、口・腟(ちつ)・肛門などの内側をおおう「粘膜(ねんまく)」に感染する、とてもありふれたウイルスです。100種類以上あると言われ、ほとんどは体に害をあたえません。一部の型は性器や皮膚に「いぼ」をつくり、別の一部の型は、長い年月をかけて細胞を変化させ、子宮頸(しきゅうけい)がんなどの原因になることがあります。ただし、感染したからといって必ず病気になるわけではありません。多くの人は、気づかないうちに自分の力でウイルスを追い出しています。
重要な事実
- HPVは、主に皮膚と皮膚、皮膚と粘膜がふれ合うことでうつります。セックスによる感染が代表的ですが、ごくふつうの接触でもうつることがあります。
- 感染しても8割以上の人には症状がなく、多くは1〜2年ほどで体から自然に消えていきます。
- 一部の型が長く体に残ると、子宮頸がんや、のど・肛門などのがんの原因になることがあります。ワクチンと検診でリスクを大きく下げられます。
とてもありふれています。性交渉の経験がある人の多くが、一生のうちに一度はHPVに感染すると言われています。特別な人だけがなるものではなく、ごくふつうのことだと考えてください。
男性も女性も感染します。年齢を問わず、性交渉のある人なら誰でも感染する可能性があります。日本では20代から30代の女性に感染が多いとされていますが、中高年になってから見つかることもあります。
症状
- 腟や肛門から大量の出血が続き、止まらない。顔色が悪い、冷や汗、ふらつき、立っていられないなどの症状がある(救急車119番)。
- 性器や肛門のまわりが急にひどく腫れ、排尿できない、息苦しい、話しづらい(119番に連絡し、ためらわず救急要請を)。
- ⚠性器や肛門のまわりに、急に増えた強い痛みのあるいぼやできものがある。
- ⚠性交渉のあとの出血が何度も続く。
- ⚠発熱とともに性器が腫れて痛む、膿(うみ)のようなおりものが出る。
- ⚠不正出血が続く、生理以外の出血が増えてきた。
一般的な症状
- ほとんどの場合、まったく症状がありません。感染していても自分では気づけません。
- 性器や肛門のまわり、太ももの内側などに、小さなぶつぶつや「いぼ」ができることがあります(尖圭(せんけい)コンジローマ)。かゆみや痛みは少ないことが多いです。
- 子宮頸がん検診の細胞診(細胞をこすり取って調べる検査)で、はじめて異常を指摘されることがあります。
- 前がん病変(がんになる前の段階の細胞の変化)が進むと、性交渉のあとの出血や、おりものの変化が見られることがあります。
- のどに感染した場合は、ほとんど無症状です。
子供の症状
- 子どもではほとんど問題になりません。子どもの手足にできる、よくある「いぼ」(尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい))もHPVの仲間によるもので、うつりやすいものの無害なことが多いです。
- ごくまれに、出産のときに母子感染して、乳幼児の声帯や喉にいぼができることがあります。声のかすれや、呼吸の音の変化が続くときは小児科に相談してください。
- 子どもの性器周辺にいぼがあるときは、感染経路を確認するため医療機関での丁寧な診察が大切です。
高齢者の症状
- 年齢とともに体の免疫の力が弱くなり、感染が長く続きやすくなります。若い頃に感染したウイルスが、何十年も経ってから見つかることもあります。
- 閉経後はおりものや出血の変化に気づきにくいため、症状がないからといって検診をやめないことが大切です。
- 日本では20歳以上の女性に2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。年齢にかかわらず、続けて受けることが勧められます。
原因
主な原因
- HPVは、皮膚や粘膜が直接ふれ合うことでうつるウイルスです。
- 主な感染経路はセックス(腟・肛門・口での性交渉)です。キスや肌のふれ合いでうつることもあります。
- コンドームは感染のリスクを下げますが、完全には防げません。コンドームでおおえない皮膚の部分からも感染するためです。
- 出産のときに母親から赤ちゃんへうつる「母子感染」が、ごくまれにあります。
- 手や足のいぼは、ウイルスがついた皮膚にふれることでうつります。
リスク要因
- 複数のパートナーがいる、または新しいパートナーがいる
- 10代など若い年齢で性交渉を始めた(子宮頸部の細胞がまだ成熟していないため)
- 喫煙(子宮頸がんのリスクを上げることがわかっています)
- 免疫の力が下がる状態(長期間のステロイド使用、HIV感染、移植後の治療など)
- 子宮頸がん検診を長く受けていない
- 出産回数が多い、長期の経口避妊薬の使用など(子宮頸がんのリスクに関係すると言われています)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 性器や肛門に、急にできた痛みのあるいぼやできものがある
- 性交渉のあとの出血が続く、生理以外の出血がある
- おりものの量やにおいが急に変わり、痛みや発熱をともなう
- 排尿するときに痛い、または尿が出にくい
定期受診を予約すべき場合:
- 子宮頸がん検診で異常を指摘された、または「要精密検査」と言われた
- 性器や肛門のまわりに気になるぶつぶつがある(痛みがなくても)
- パートナーがHPV感染や性器いぼと診断された
- ワクチンについて、自分や子どもの接種をどうするか相談したい
- 20歳以上で、ここ2年以上子宮頸がん検診を受けていない
診断
HPVそのものは、多くの場合、症状がないため検査をしなければわかりません。女性では子宮頸がん検診の細胞診やHPV検査で見つかることが多く、いぼがある場合は診察で見た目から診断します。必要に応じて、拡大して観察する専用の機械で詳しく調べたり、小さな組織を採って検査したりします。
行われる可能性のある検査
- 診察(視診):いぼや皮膚の変化を目で確認します。
- 細胞診(子宮頸がん検診):子宮頸部の細胞をやさしくこすり取って調べます。痛みはほとんどありません。
- HPV検査:感染している型を調べます。細胞診と一緒に行われることがあります。
- コルポスコピー:腟(ちつ)を拡大して観察する検査で、細胞の変化がどこにあるかを確認します。
- 組織生検:気になる部分のごく小さな組織を採って、詳しく調べます。
- 肛門やのどの症状がある場合は、それぞれの専門の科で診察を受けます。
診察で予想されること
細胞診やHPV検査は数分で終わり、その日のうちに帰れます。結果がわかるまでに1〜数週間かかることがあります。異常を指摘された場合は、詳しい検査の予約を取ることになります。「異常あり」は「がんだ」という意味ではありません。多くは経過観察です。結果の意味がわからないときは、遠慮なく医師や保健師に質問してください。
治療
HPVそのものを消す特効薬はありません。多くの場合、体の免疫の力でウイルスは自然に消えていきます。治療が必要になるのは、いぼができたときや、細胞に変化(前がん病変)が見られたときです。治療の目的は、症状を取り除き、がんに進むのを防ぐことです。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する。喫煙はウイルスが残りやすくなる要因のひとつです。
- よく眠り、バランスの良い食事をとって、免疫の力を保ちます。
- いぼを無理に取ったり、かいたり、市販の薬を自己判断で使ったりしないでください。
- 性器にいぼがある間は、パートナーと相談して性交渉を控えるか、コンドームを使います。
- 言われた通りの間隔で、検診や通院を続けます。
- パートナーにも伝え、必要なら一緒に受診を検討します。
医療治療
いぼがある場合は、外用薬を塗る方法、凍らせて取り除く方法、レーザーで焼く方法、小さく切って取る方法などから、場所や大きさに合わせて選びます。前がん病変が見つかった場合は、細胞の変化の程度に応じて、定期的に観察するか、変化した部分を円錐(えんすい)状に切り取る治療などを行います。どの方法も、医師が状態を見て提案します。治療法の詳しい内容や通院の間隔は、担当の医師に確認してください。
手術が検討される場合
前がん病変の変化が強い場合、いぼが大きい・数が多い場合、または再発をくり返す場合に、切除やレーザーなどの治療が検討されます。手術が必要かどうかは、検査の結果と今後の妊娠の希望なども含めて、医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
HPVと知って、日常生活の多くは変わりません。仕事も運動も、これまで通り続けられます。通院や検診の予定だけは、忘れずに記録しておきましょう。感染を知った直後は、誰に話すか、パートナーにどう伝えるかで悩む方も多いです。伝えるかどうかは自分で決めてよいことで、あせらなくて大丈夫です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける。禁煙外来など、地域の支援も利用できます。
- 十分な睡眠と、ストレスをためない生活を心がける。
- コンドームを使うなど、パートナーと感染について話し合う。
- 子宮頸がん検診を決められた間隔で受ける。
- 気になる症状があれば、自己判断せず医療機関に相談する。
食事と運動
特別な食事制限はありません。野菜や果物、たんぱく質をバランスよくとり、無理のない範囲で散歩や軽い運動を続けることが、免疫の力を保つ助けになります。激しい運動をする必要はありません。続けられることを、少しずつで大丈夫です。
精神的健康と心の健康
「自分が悪いのでは」と自分を責めてしまったり、不安や落ち込みが続いたりすることがあります。HPVはとてもありふれたウイルスで、誰のせいでもありません。気持ちがつらい日が続くときは、一人で抱えず、かかりつけ医や保健師、地域の相談窓口に話してください。つらい気持ちが強く、眠れない、生活が保てないと感じるときは、早めに医療機関や相談窓口につながってください。
予防
完全に防ぐことは難しいウイルスですが、リスクを大きく下げる方法はあります。ワクチンで予防する、検診で早い段階の変化を見つける、禁煙する、コンドームを使う、といったことを組み合わせることが大切です。
ワクチン
日本では、HPVワクチンは公費で受けられる定期接種の対象になっています。小学6年生から高校1年生相当の年齢の女の子と男の子が対象で、時期を逃した方に向けた制度もあります。対象年齢や公費で受けられる期間は変わることがあるため、正確なところはお住まいの自治体の案内や、かかりつけ医・薬局に確認してください。ワクチンは、すでに感染している型すべてには効きませんが、がんの原因になる主要な型を防ぐことができます。接種するかどうかは、効果と副反応の情報をよく聞いたうえで、本人と家族で相談して決めてよいものです。
検診プログラム
日本では、20歳以上の女性に2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています(厚生労働省の指針)。ワクチンを受けた人も、検診は必要です。検診は、前がん病変の段階で見つけるための大切な方法です。自治体によって受けられる年齢や間隔、費用の助成が異なるので、届く案内や自治体の窓口で確認してください。
合併症
治療しない場合
- 一部の型の感染が長く続くと、子宮頸部の細胞に変化が起こり、前がん病変を経て子宮頸がんになることがあります。前がん病変の段階なら、治療でがんへの進行を防げます。
- HPVは子宮頸がんのほか、腟(ちつ)、外陰(外性器)、肛門、陰茎、口や喉(中咽頭(ちゅういんとう))のがんの原因になることがあります。
- 性器のいぼは、放置すると数が増えたり大きくなったりして、排尿や性生活に影響することがあります。
- 妊娠中にいぼが大きくなると、出産の方法について相談が必要になることがあります。
- ごくまれに、母子感染により乳幼児の喉にいぼができることがあります。
長期的な見通し
HPVに感染しても、ほとんどの人は免疫の力でウイルスを追い出し、何も起こりません。細胞に変化が見つかっても、多くは前がん病変の段階で見つかり、治療でがんへの進行を防げます。ワクチンと検診という、確かな予防と早期発見の方法があります。不安を一人で抱えず、かかりつけ医と一緒に、無理のないペースで備えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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