HPVワクチン(子宮頸がんを防ぐ予防接種)
概要
HPVとは「ヒトパピローマウイルス」というウイルスの名前です。とてもありふれたウイルスで、性交渉など肌と肌がふれあうことでうつります。感染しても多くの人は何の症状もなく、1〜2年ほどで体の力で自然に消えていきます。ただし、一部の型が長く体に残ると、子宮頸(けい)がんなどの病気につながることがあります。HPVワクチンは、このウイルスのうち、がんを起こす力の強い型に感染するのを防ぐための予防接種です。
重要な事実
- HPVはとてもありふれたウイルスで、性交渉の経験がある人の多くが、一生のうちに一度は感染するといわれています。
- 感染しても大半の人は症状がなく、時間とともに自然に消えていきます。
- ワクチンは「感染を防ぐ」ためのもので、すでに体に入ってしまったウイルスを消す薬ではありません。だからこそ、感染する前の若い年齢での接種が勧められています。
- ワクチンによる予防と、20歳からの子宮頸がん検診の両方が大切です。
はい、とてもよくある感染症です。WHO(世界保健機関)などの情報では、性交渉の経験がある人の多くが一生のうちに一度はHPVに感染するとされています。珍しい病気ではなく、誰にでも起こりうることだと考えるとわかりやすいでしょう。
性交渉の経験がある人なら、男性も女性も誰でも感染する可能性があります。日本では、小学6年生から高校1年生相当の年齢の女子を対象に、公的な援助(定期接種)で受けられる仕組みがあります。男性については任意接種として受けられる場合があり、対象年齢や費用はお住まいの自治体によって異なります。詳しくは自治体の案内や、かかりつけの医療機関にご確認ください。
症状
- 接種のあと数分〜数時間以内に、息苦しさ、じんましん、顔や喉のはれ、めまい、意識が遠のく感じが出たとき(重いアレルギー反応の可能性があります)→ すぐに119番に電話してください。
- 性器からの出血が大量で止まらない、顔色が悪い、意識がもうろうとしているとき
- ⚠接種した部分の赤みやはれが広がり続ける、強い痛みがある、38度以上の発熱が続く
- ⚠ふだんと違う不正出血(生理以外の出血)が続く
- ⚠性器や肛門にできたいぼが急に増えた、痛みがある
一般的な症状
- ほとんどの場合、感染しても症状はまったくありません。気づかないうちに体から消えていることが多いです。
- 一部の型では、性器や肛門のまわりに小さないぼ(尖圭(せんけい)コンジローマ)ができることがあります。かゆみや痛みはあまりありません。
- がんでを起こす型に長く感染しても、初期には症状がないことがほとんどです。そのため定期的な検診が大切になります。
子供の症状
- 子どもが感染しても、通常は症状が出ません。
- ワクチンは、将来の感染を防ぐために、まだ感染していない年齢のうちに接種します。
- 接種のあとは、針を刺した部分の痛みや赤み、軽い発熱が数日続くことがあります。これはよくある反応です。
高齢者の症状
- 年齢が上がっても、新しいパートナーとの関係では感染の可能性があります。
- 長く感染が続くと、前がん病変(がんで一歩手前の変化)ができやすくなります。症状がないので、検診でしか見つけられません。
- 日本では20歳以上の女性に、2年に1回の子宮頸がん検診が勧められています。
原因
主な原因
- HPVウイルスは、性交渉を含む肌と肌のふれあいによって、人から人へうつります。
- HPVには100種類以上の型があり、そのうちいくつかが「高リスク型」と呼ばれ、子宮頸がんなどの原因になります。
- コンドームは感染のリスクを下げますが、完全に防げるわけではありません(ふれあう皮膚にもウイルスがいるためです)。
リスク要因
- 複数のパートナーがいる、またはパートナーが複数の人と関係を持っている
- 若い年齢で性交渉を始める(体がウイルスに感染しやすいため)
- 免疫力が下がる病気や治療を受けている
- 喫煙(ウイルスが体に残りやすくなり、前がん病変が進みやすくなるとされます)
- 長期間HPVに感染し続けている(持続感染)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 接種後に息苦しさ、じんましん、顔や喉のはれ、意識が遠のく感じがある(119番へ)
- 性器からの出血が多く、止まらない
- 接種部位の強い痛みやはれが広がり、日常生活がつらい
定期受診を予約すべき場合:
- ワクチンを受けるかどうか迷っている、副反応が心配
- 20歳以上で、子宮頸がん検診をまだ受けたことがない、または2年以上受けていない
- 性器や肛門のまわりに気になるできものがある
- 生理以外の出血がときどきある
- 接種のあと、気になる症状が続いている
診断
HPVワクチンそのものに「診断」は必要ありません。ワクチンは治療ではなく予防のためです。一方、HPVによる変化がないかを調べるのが「子宮頸がん検診」です。日本では20歳以上の女性に2年に1回の受診が勧められています。検診では、子宮の入り口の細胞をやさしくこすり取って調べます。
行われる可能性のある検査
- 細胞診(細胞をこすり取って、がんで一歩手前の変化がないか顕微鏡で調べる検査)
- HPV検査(高リスク型のウイルスがいるかを調べる検査。細胞診の結果に応じて行われます)
- 問診(接種歴、これまでの検診の結果、気になる症状を確認します)
- 必要に応じて、拡大して見る検査(コルポスコピー)や組織を少し取って調べる検査
診察で予想されること
検診は数分で終わり、痛みはほとんどありません。多少の違和感や、少量の出血があることはあります。結果が出るまでに数週間かかることが多く、その間は不安になりやすいものです。結果が「異常なし」なら次は2年後、「要精密検査」と言われた場合は、必ず指定されたとおりに精密検査を受けてください。多くは問題ありませんが、確認することが大切です。
治療
HPVそのものを消す薬はありません。多くの場合は、体の免疫の力で自然にウイルスが消えていきます。治療が必要になるのは、いぼ(尖圭コンジローマ)ができたときや、検診で前がん病変やがんが見つかったときです。ワクチンはあくまで予防のためのもので、治療ではありません。
自宅でのセルフケア
- 接種当日は激しい運動や飲酒を控え、ゆっくり休む
- 接種部位は清潔に保ち、強くこすらない
- 発熱やだるさがあるときは水分をとって休む
- 体の免疫を保つために、睡眠・食事・禁煙を心がける
- 検診の予定を手帳やカレンダーに記録しておく
医療治療
治療は症状や検査の結果に合わせて選ばれます。いぼができた場合は、液体窒素で凍らせる処置や、患部をやさしく取り除く処置などが行われます。前がん病変が見つかった場合は、広がりに応じて経過を見守ることもあれば、病変だけをていねいに取り除く処置を行うこともあります。がんであれば、病変の広がりに合わせて、手術や放射線などの治療が検討されます。どの方法が合うかは、年齢や妊娠の希望、病変の状態によって変わるため、医師とよく相談して決めてください。
手術が検討される場合
前がん病変やがんで、病変を取り除く必要があると判断された場合に、手術が検討されます。将来妊娠を希望している場合は、子宮の形を保てる方法などもあるため、治療の前に必ず医師に伝えて相談してください。
この病気と共に生きる
HPVに感染している、あるいはワクチンについて悩んでいるというだけで、ふだんの生活を制限する必要はほとんどありません。仕事や学校、家事、スポーツは今までどおり続けられます。パートナーとの関係についても、話し合える範囲で伝えることが、不安を減らす助けになります。検診の予定だけは忘れずに管理しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する、または本数を減らす(子宮頸がんのリスクを下げるといわれます)
- 十分な睡眠とバランスのよい食事で、体の免疫を保つ
- 性交渉のときはコンドームを使う(感染のリスクを下げます)
- 決められた年齢になったら、2年に1回の子宮頸がん検診を受ける
- 接種の記録(母子健康手帳など)を大切に保管する
食事と運動
特別な食事制限はありません。野菜やたんぱく質を含む、ふだんのバランスのよい食事で十分です。運動は、ウォーキングなど無理のないものを週に数回続けるだけでも、体調と気分の安定に役立ちます。接種当日だけは、激しい運動を控えてください。
精神的健康と心の健康
HPVやワクチンについては、さまざまな情報が飛び交っており、不安や迷いを感じるのは自然なことです。「自分が悪かったのかもしれない」と自分を責めてしまう人もいますが、HPVは誰にでも起こる、ごくありふれた感染です。責任を感じる必要はありません。接種後に長く続く痛みやだるさがある場合は、我慢せずに医療機関に相談してください。つらい気持ちが続き、眠れない、気分が落ち込むといった状態があるときは、ひとりで抱えず、かかりつけの医師や自治体の相談窓口、身近な信頼できる人に話してください。
予防
はい、ある程度は防げます。中心になるのは、HPVワクチンによる予防と、子宮頸がん検診による早期発見の2つです。コンドームの使用や禁煙も、リスクを下げる助けになります。
ワクチン
HPVワクチンは、がんでを起こす力の強い型への感染を防ぐ予防接種です。日本では、小学6年生から高校1年生相当の年齢の女子を対象に、公的な援助で受けられる定期接種の仕組みがあります。接種は数か月かけて複数回行い、回数や間隔は年齢やワクチンの種類によって異なります。男性は任意接種として受けられる場合があり、対象や費用は自治体ごとに違います。接種後に長く続く痛みなどの症状が報告されたことを受け、国は接種後に生じる症状への対応や相談体制の整備を進めています。受けるかどうか迷うときは、自治体の案内やかかりつけの医師・薬剤師に相談し、納得したうえで決めてください。
検診プログラム
日本では、20歳以上の女性に2年に1回の子宮頸がん検診が勧められています。ワクチンを受けていても検診は必要です。ワクチンで防げる型は一部であり、検診は早期の変化を見つける大切な方法だからです。
合併症
治療しない場合
- 高リスク型のHPVが長く体に残ると、子宮頸部に前がん病変(がんで一歩手前の変化)ができることがあります。
- 前がん病変が進むと、子宮頸がんになる可能性があります。日本では毎年多くの女性が子宮頸がんと診断されています。
- HPVは子宮頸部だけでなく、腟、外陰部、肛門、中咽頭(のどの奥)などにも、がんでを起こすことがあります。
- いぼ(尖圭コンジローマ)ができた場合は、自然に消えることもありますが、広がったり繰り返したりすることがあります。
長期的な見通し
HPVに感染しても、多くの人は体の力で自然にウイルスが消え、何の病気にもなりません。前がん病変は、検診で見つけて適切に対応すれば、がんでに進む前に治療できることが多いのです。ワクチンと検診の両方を続けることで、子宮頸がんになる可能性は大きく下げられます。心配しすぎず、できることを一つずつ続けていくことが大切です。
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最終更新: 2026年10月24日
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