水頭症(すいとうしょう)— 脳に水がたまる病気について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
水頭症は、脳のまわりや中にある「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という透明な液体が、何らかの原因で過剰にたまってしまう病気です。脳は頭蓋骨という硬い骨で囲まれているため、液体が増えると脳に圧力がかかり、脳の働きに影響を及ぼすことがあります。水頭症という名前ですが、「水」ではなく、体が作り出す液体のバランスの問題です。
重要な事実
- 脳脊髄液は、脳を保護し、栄養を運ぶ重要な役割をします。
- 水頭症は生まれつきある場合と、後から起こる場合があります。
- 治療は主に手術が行われ、多くの場合、症状の改善が期待できます。
- 早期に発見して治療することが、後遺症を減らす大切なポイントです。
水頭症は、新生児およそ1000人から2000人に1人ほどの割合で見られる比較的まれな病気です。しかし、高齢者に多い「正常圧水頭症」を含めると、決して極めてまれな病気ではありません。
乳幼児から高齢者まで、どの年齢でも起こり得ます。生まれた時からある「先天性水頭症」は主に乳幼児に見られ、脳卒中や頭部外傷などで引き起こされる「後天性水頭症」は子どもから大人まで幅広い年齢層で見られます。特に高齢者では「特発性正常圧水頭症」というタイプが問題になります。
症状
- 突然の激しい頭痛
- 繰り返す嘔吐
- 意識がぼんやりする、呼びかけに反応しない
- けいれん発作
- 視力が急に低下する
- ⚠頭痛がだんだん強くなる
- ⚠歩けなくなった、ふらつきがひどい
- ⚠尿失禁が急に増えた
- ⚠高齢者で、急に認知機能が低下した
- ⚠乳児で、頭の大きさが急に大きくなり、機嫌が悪い、嘔吐を繰り返す
一般的な症状
- 頭痛(特に朝方に強い)
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 視力の低下や物が二重に見える
- 平衡感覚の障害(ふらつき、歩きにくさ)
- ぼんやりする、意識がはっきりしない
子供の症状
- 頭の周りが大きくなる(頭囲の拡大)
- 頭の前の柔らかい部分(大泉門)が膨らんで張る
- 目が下に落ちて白目が見える「夕日サイン」
- 授乳がうまくできない、ぐずる、泣き声が弱い
- 発育の遅れ、ひきつけ(けいれん)
高齢者の症状
- 歩き方が不安定になり、足をすりながら歩く
- 物忘れが目立つ、反応が遅くなる(認知機能低下)
- 尿失禁(尿が漏れる)
- ぼんやりしていることが増える
原因
主な原因
- 脳脊髄液の通り道が狭くなったり、ふさがったりする(閉塞性水頭症)
- 脳脊髄液を吸収する力が弱くなる(交通性水頭症)
- 感染症、脳腫瘍、脳出血、頭部外傷などの脳の病気が原因となる
- 生まれつき脳の構造に問題がある(先天性水頭症)
- まれに、脳脊髄液を作りすぎてしまう場合がある
リスク要因
- 未熟児(早く生まれた赤ちゃん)
- 髄膜炎などの脳や脊髄の感染症
- 脳卒中、脳出血、頭部外傷
- 脊椎の先天異常(二分脊椎など)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい頭痛や繰り返す嘔吐がある
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれんを起こす
- 歩くことが難しくなる
定期受診を予約すべき場合:
- 乳児で、頭の周りが急に大きくなっていると感じる
- 慢性的な頭痛、ふらつき、物忘れが続く
- 尿失禁や歩行障害が徐々に悪化している
診断
水頭症の診断は、まず医師が症状の話を聞き、神経学的な診察(筋力、感覚、反射、歩き方、眼球運動など)を行います。その上で、脳の画像検査で液体のたまり具合や脳室(脳の内部の空間)の大きさを確認します。
行われる可能性のある検査
- 頭部CT検査(放射線を使って脳の断面を撮影)
- 頭部MRI検査(磁気を使ってより詳しく脳の構造を見る)
- 乳児では、頭部超音波検査(エコー検査)
- 正常圧水頭症では、腰椎穿刺(腰の背骨の間から脳脊髄液を少量採取する検査)を行うこともある
診察で予想されること
診断には数日かかることがあります。画像検査は体への負担が少なく、多くの場合、数十分で終わります。診断が確定したら、医師から治療の選択肢や見込みについて説明があります。疑問や不安は遠慮なく質問しましょう。
治療
水頭症の治療は、薬で治すよりも、たまった脳脊髄液を適切に排出しておく圧力のコントロールが基本です。主に外科的な処置によって、脳や神経を傷めないようにすることが目的です。
自宅でのセルフケア
- 定期的に医師の診察を受け、状態を観察する
- 頭部の手術をした人は、シャント(管)の感染サイン(発熱、頭痛、傷の赤み)に注意する
- 治った後も、年に1回は専門医のチェックを受ける
- 痛みや症状の変化があれば我慢せず相談する
医療治療
薬物療法は主に症状を和らげるためのもので、根本的な治療ではないことが多いです。頭痛や吐き気を抑える薬は、医師の指導のもとで使われます。ただし、どの薬が適切かは症状や年齢、体質によって異なるため、必ず医師の処方に従うことが大切です。
手術が検討される場合
手術で、脳室内に細い管(シャント)を入れて、たまった脳脊髄液を体内(腹腔など)に逃がす「シャント手術」が最も一般的な方法です。もう一つの方法として、「内視鏡的第三脳室開窓術(ないしきょうてきだいさんのうしつかいそうじゅつ)」という、内視鏡を使って脳室内の薄い膜に穴を開け、液体の流れを作る手術もあります。どの手術が適するかは、年齢や原因、脳の状態によって異なります。
この病気と共に生きる
治療後は多くの人が通常の生活に戻ることができます。ただし、場合によっては医療的なケアやリハビリテーション(リハビリ)を継続する必要があります。特に高齢者では、歩行訓練や認知機能のサポートが役立つことがあります。定期的に主治医や専門医のフォローアップを受けながら、体調の変化に注意して生活してください。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠をとる
- 頭を強く打つようなスポーツや行動は避ける
- 高齢者は転倒に注意し、家の中の段差や滑りやすい場所を整える
- 症状の変化をメモし、診察の時に医師に見せる
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスの良い食事を心がけ、むくみや血圧の急上昇を防ぐため、塩分をとりすぎないようにしましょう。運動は、歩行訓練や軽いストレッチなど、状態に合ったものを医師や理学療法士と相談しながら行ってください。無理は禁物です。
精神的健康と心の健康
水頭症の診断や治療は、からだだけでなく心にも影響を与えることがあります。子どもがいる家庭では子育ての心配や負担、高齢者では認知機能の変化への不安が生じることもあります。感情が不安定になるのは自然なことです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療チームに気持ちを伝えることが大切です。必要に応じて、精神科医やカウンセラー、心療内科のサポートを受けることもできます。
予防
先天性の水頭症は、はっきりとした原因がわからないことが多く、完全に予防することはできません。しかし、後天性の場合は、髄膜炎などの感染症を予防することでリスクを下げられることがあります。
ワクチン
髄膜炎をはじめとする感染症を予防するため、推奨されるワクチン(予防接種)を受けることが大切です。日本では、子どもの定期接種に含まれるワクチンもあります。ワクチンの種類や時期については、小児科医や保健センターに相談してください。
検診プログラム
妊娠中の超音波検査(エコー)で、赤ちゃんの脳室の拡大が指摘されることがあります。先天性水頭症の一部は、このように出生前に発見されることがあります。ただし、必ずしもすべての症例が妊娠中にわかるわけではありません。出生後の定期的な乳児健診で頭の大きさや発育のチェックが行われます。
合併症
治療しない場合
- 脳の圧迫による脳の損傷
- 知的・運動の発達の遅れ(乳幼児)
- 視力の低下や失明
- 認知症のような症状(高齢者)
- 歩行ができなくなること
- 重度の場合、意識障害や昏睡、生命に関わることがある
長期的な見通し
水頭症は、早期に発見して適切に治療すれば、多くの場合、症状の進行を止め、生活の質を維持することができます。乳幼児でも手術後に順調に発育する子どもが多く、大人であれば仕事や日常活動を続けられることも少なくありません。治療後のフォローアップを続けることで、より良い経過を目指せます。診断を受けたからといって、決して希望を失う必要はありません。医療チームと一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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