高IgE症候群(こうアイジーイーしょうこうぐん)
概要
高IgE症候群は、体を守る「免疫」の働きが生まれつきうまくかみ合わないために、皮膚や肺などの感染症をくり返しやすくなる病気です。血液の中のIgE(アイジーイー:アレルギーに関わる抗体の一種)がとても高い値になることから、この名前がつきました。免疫の一部が十分に働かない「原発性免疫不全症(げんぱつせいめんえきふぜんしょう)」というグループに入ります。皮膚に膿(うみ)がたまった腫れものができたり、肺炎をくり返したり、乳歯(子どもの歯)が抜けにくかったりするのが特徴です。
重要な事実
- 生まれつきの体質(遺伝子の変化)が関係する、とても珍しい病気です。うつる病気ではありません。
- 皮膚の腫れものや肺炎などの感染症をくり返す、湿疹が長く続く、乳歯が抜けにくい、といった特徴が組み合わさって見られます。
- 根本的に治す治療はまだありませんが、感染を予防して早めに治療し、皮膚や肺を守るケアを続けることで、多くの人は日常の生活を送っています。
とても珍しい病気です。日本での正確な人数は分かっていませんが、報告されている人はごく少なく、まれな病気と考えられています。
生まれたときから体質として持っているもので、男女の差はありません。多くは赤ちゃんから子どもの頃に症状が現れますが、症状が軽かったために大人になってから分かることもあります。家族の中に同じ病気や似た症状の人がいる場合もありますが、家族に誰もいなくても起こることがあります。
症状
- 息が苦しい、呼吸が速い、唇や顔色が青白い、肩で息をしている。
- 高熱が出てぐったりしている、意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い。
- 顔やのどが腫れる、声がかすれる、飲み込みにくい(アナフィラキシーの可能性)。
- 皮膚の赤みや腫れが急に広がって強い痛みがある、水ぶくれができる(重症の皮膚感染の可能性)。
- けいれんを起こす、意識を失う。
- ⚠38℃以上の熱が続く、または熱が下がったり上がったりをくり返す。
- ⚠皮膚の腫れものが大きくなる、痛みが強い、赤い筋が広がる、膿が出続ける。
- ⚠咳が続く、痰が増えた、胸が痛い、息苦しさが少しある。
- ⚠湿疹が急にひどくなって眠れない、とびひのように広がる。
- ⚠口の中の白いものが広がって、食べたり飲んだりしにくい。
一般的な症状
- 皮膚に赤く腫れて痛むできもの(膿瘍:のうよう=膿がたまった腫れもの)が、くり返しできます。まわりが熱くならない「冷たい膿瘍」と呼ばれることもあります。
- 湿疹のような皮膚の炎症、乾燥、強いかゆみが続きます。
- 肺炎、中耳炎、副鼻腔炎(鼻の奥の炎症)などの感染症をくり返します。
- 乳歯がなかなか抜けず、大人の歯がずれて生えてくることがあります。
- 骨がもろくなったり、背骨が曲がったりすることがあります。
- 額が広い、鼻の付け根が広いなど、顔の特徴が見られることがあります(個人差があります)。
- アレルギー性鼻炎、喘息、食物アレルギーなどのアレルギー症状が出ることがあります。
- 口の中にカンジダ(かびの一種)が増えて、白いものが付くことがあります。
子供の症状
- 赤ちゃんの頃から湿疹がひどく、なかなか治らない。
- おむつが当たる場所や皮膚のしわの部分に、腫れものや膿がたまったできものができる。
- 6〜7歳を過ぎても乳歯が抜けかわらない、大人の歯が生えてこない。
- 肺炎や中耳炎、鼻の感染症を何度もくり返す。
- 身長の伸びがゆっくりで、成長が気になる。
- かゆみが強くて夜よく眠れず、日中に疲れやすい。
高齢者の症状
- 子どもの頃の症状が軽かった場合、大人になってから診断されることがあります。
- 骨がもろくなり、転んだだけで骨折しやすくなることがあります。背中や腰の曲がりに気づくこともあります。
- 肺にできた傷あと(ブラ:肺の中の小さな袋状の空洞)に、感染をくり返すことがあります。
- 皮膚の感染と湿疹がだらだらと続き、治りにくいことがあります。
- 歯のぐらつき、かみ合わせの悩みが出やすくなります。
原因
主な原因
- 免疫の信号に関わる遺伝子(STAT3など)の変化が関係しています。この変化があると、体を守る細胞の働きや、皮膚・骨・歯の育ち方に影響が出ることがあります。
- 多くのタイプは「常染色体顕性(優性)」と呼ばれる受けつぎ方で、親から子へ伝わることがあります。ただし、両親に症状がなくても、その人に新しく遺伝子の変化が起きて発症することもあります。
- 別のタイプ(DOCK8などの遺伝子の変化によるもの)では、ウイルスによる感染症や強いアレルギーが出やすい傾向があります。
- 同じ遺伝子の変化があっても、症状の出方や重さには個人差があります。
リスク要因
- 家族の中に、同じ病気または似た症状(湿疹、感染症のくり返し、乳歯が抜けにくいなど)の人がいる。
- 生まれつき免疫の働きに変化がある病気(原発性免疫不全症)と診断されている、またはその疑いがある。
- 血のつながった親族どうしの結婚がある場合、一部のタイプ(劣性型)のリスクが上がることが知られています。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚の腫れものが急に大きくなる、強い痛みがある、赤みが広がる。
- 高い熱が続く、または熱と息苦しさが同時にある。
- 咳や痰が増えて、胸の痛みや息苦しさがある。
- 口の中の白いものが広がって、食事がとりにくい。
定期受診を予約すべき場合:
- 湿疹が長く続く、何度も皮膚の腫れものができる。
- 肺炎や中耳炎、副鼻腔炎をくり返している。
- 乳歯が抜けかわらない、大人の歯の生え方が気になる。
- 身長の伸びがゆっくりで成長が気になる。
- 家族に同じ病気や似た症状の人がいて、自分や子どもも気になる。
診断
症状の出方(皮膚の腫れもの、肺炎のくり返し、乳歯が抜けにくい、湿疹など)の経過をくわしく聞き、診察と血液検査を組み合わせて考えていきます。IgEの値が高いことだけでは診断できません(IgEが高いだけの人はたくさんいます)。免疫やアレルギーを専門とする医師が、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:IgEの値、好酸球(アレルギーに関わる細胞)の数、免疫グロブリンや抗体の働きを調べます。
- 感染の原因を調べる検査:皮膚や痰、鼻の奥の分泌物を調べて、細菌やかびの種類を確認します。
- 胸部のレントゲンやCT:肺炎のくり返しや、肺にできた傷あとを確認します。
- 歯の状態の確認:乳歯が残っていないか、歯並びに問題がないかを歯科で診てもらいます。
- 骨の状態の検査:骨の強さや背骨の形を確認することがあります。
- アレルギー検査:食物アレルギーや喘息などの有無を調べます。
- 遺伝子検査:原因となる遺伝子の変化を調べます。診断の手がかりになりますが、必須ではない場合もあります。
診察で予想されること
診断がつくまでに時間がかかることがあります。複数の症状が少しずつ重なって手がかりになるためです。専門医への紹介状が必要になることもあります。診断がついたあとは、感染症の予防と早期治療を中心に、定期的な通院でフォローしていくことになります。
治療
根本的に治す治療はまだありませんが、感染症を予防して早めに治療し、皮膚と肺を守るケアを続けることで、症状をコントロールしながら生活できるよう支援していくことが治療の中心です。かかりつけ医と専門医が連携して、定期的に状態を確認します。
自宅でのセルフケア
- 手洗い・うがいを丁寧に行い、風邪や感染症が流行る時期は人混みをできるだけ避けます。
- 皮膚を清潔に保ち、保湿を毎日の習慣にします。爪は短く切って、かいた傷から菌が入らないようにします。
- 歯みがきを丁寧に行い、定期的に歯科を受診します。乳歯や歯並びの相談も歯科でできます。
- たばこの煙を避けます(本人も、まわりの人も)。肺を守るために大切です。
- 症状(熱、皮膚の腫れもの、咳、湿疹の状態)を簡単にメモしておくと、受診のときに役立ちます。
- 予防接種は大切ですが、免疫の状態によって受ける時期や種類を調整することがあるので、必ずかかりつけ医に相談してから受けます。
医療治療
感染症にかかったときは、原因に合わせた治療(抗菌薬や抗かび薬など)を早めに行います。皮膚には保湿剤や炎症をしずめる外用薬を使い、アレルギー症状にはそれに合った治療を行います。免疫の働きを助けるために、抗体を補う点滴治療が行われることがあります。重症の場合には、専門施設で造血幹細胞移植(骨髄などの移植)が検討されることもあります。治療の内容は人によって異なるため、必ず担当医の説明を受けてください。
手術が検討される場合
大きな膿瘍(膿がたまった腫れもの)は、切開して膿を出す処置が必要になることがあります。骨の変形や歯並びの問題で手術が検討されることもあります。根治を目指す造血幹細胞移植は、専門の医療機関で適応をよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
感染症を早めに見つけて早めに治療することが、毎日の暮らしを守る一番の近道です。熱や皮膚の変化に気づいたら、早めにかかりつけ医に連絡する習慣をつけましょう。学校や仕事、保育の場では、周りの人に病気のことを理解してもらえると、無理なく過ごしやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、無理のない範囲で規則正しい生活を心がけます。
- 入浴やシャワーで皮膚を清潔にし、入浴後は保湿を欠かさないようにします。
- 感染症が流行る時期は、人の多い場所を避けたり、マスクを使ったりするなどの工夫をします。
- 受診の予定を守り、気になる症状は我慢せずに相談します。
- 家族や周りの人に協力してもらい、ひとりで抱え込まないようにします。
食事と運動
特別な食事制限が必要かどうかは、食物アレルギーの有無などによって変わります。自己判断で食事を制限すると栄養が偏ることがあるので、気になる場合は医師や管理栄養士に相談してください。運動は体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。プールや土いじりのあとは、皮膚をよく洗い流すと安心です。
精神的健康と心の健康
感染症をくり返すことや、皮膚の症状が続くことは、不安や疲れ、気分の落ち込みにつながることがあります。子どもでは、学校生活や友達関係で悩むこともあります。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や専門の相談窓口に話してみてください。ひとりで抱え込まないことが大切です。気持ちがとてもつらいときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談サービスに連絡してください。
予防
生まれつきの遺伝子の変化が原因のため、病気そのものを防ぐことは難しいとされています。ただし、感染症が重くならないように予防することはできます。手洗いや保湿、受診の習慣、予防接種などを、かかりつけ医と相談しながら続けましょう。家族にこの病気の人がいる場合、孩子をもうける前に遺伝カウンセリングを受けて相談することもできます。
ワクチン
予防接種は感染症から身を守る大切な手段です。ただし、免疫の状態によっては受けられない種類(生ワクチンなど)や、受ける時期を調整したほうがよい場合があります。必ずかかりつけ医に相談してから受けてください。
検診プログラム
この病気だけを対象にした新生児スクリーニング(生まれたときの検査)はありません。家族に同じ病気の人がいる場合などは、専門医に相談し、必要に応じて検査や遺伝カウンセリングを受けることができます。
合併症
治療しない場合
- 肺に傷あと(ブラ)ができ、そこに感染をくり返して、息苦しさが続くことがあります。
- 皮膚の感染が広がって、傷あとが残ったり、治りにくくなったりすることがあります。
- 骨がもろくなって骨折しやすくなったり、背骨が曲がったりすることがあります。
- 乳歯が残ることによる歯並びやかみ合わせの問題が起こることがあります。
- 喘息や食物アレルギーなどのアレルギー症状が強く出ることがあります。
- 一部のタイプでは、ウイルスによる感染症や、リンパ腫などの病気のリスクが高まることが知られています。
長期的な見通し
高IgE症候群は珍しい病気で、根本的に治す治療はまだありません。しかし、感染症を早めに見つけて治療し、皮膚と肺を守るケアを続けることで、多くの人は長く日常生活を送っています。合併症を早めに見つけるための定期受診が、これからの暮らしを支えてくれます。不安なことは、遠慮なく担当医に相談してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.