高IgM(ハイアイジーエム)症候群
概要
高IgM症候群(ハイアイジーエムしょうこうぐん)は、からだの「免疫」—ばい菌やウイルスから身を守る仕組み—が生まれつき十分に働かないために、感染症をくり返しやすくなる病気です。免疫のなかでも「抗体(こうたい)」というタンパク質を作る力に問題があります。抗体にはいくつかの種類(IgM、IgG、IgA、IgE)があり、ふつうは体内でIgMからほかの種類へスイッチします。この病気ではそのスイッチがうまくいかず、IgMはふつうか多いのに、IgGやIgAが少ない、という特徴的な血液のパターンになります。名前だけを見ると「IgMが多い病気」に思えますが、本当の問題は「からだを守るのに必要なほかの抗体が足りないこと」にあります。
重要な事実
- 生まれつきの免疫の病気(原発性免疫不全症)のひとつで、日本では指定難病の「原発性免疫不全症候群」に含まれるまれな病気です。
- 血液検査で、IgMはふつうか多いのに、IgG・IgA・IgEが少ないという特徴的なパターンを示します。
- 肺炎や中耳炎、副鼻腔炎などの感染症をくり返しやすくなりますが、早く見つけて治療を続けることで重症化を防げます。
とてもまれな病気です。日本では指定難病の「原発性免疫不全症候群」として医療費助成の対象になることがあり、正確な人数は把握されていないほど少ないとされています。
最も多いタイプ(X連鎖型)は男の子に多く、生後半年ごろから数歳までに気づかれることが多いです。ほかのタイプは男女どちらにも起こり、子どもでも大人でも発症することがあります。大人になってから比較的軽いタイプとわかる方もいます。
症状
- 息が苦しい、呼吸が速い、唇や顔色が青白い
- 意識がもうろうとしている、名前を呼んでも反応が弱い
- けいれんが起きた
- 高熱でぐったりして、水分もとれない
- 顔やのどが急にはれて息がしにくい(アレルギー反応のような状態)
- ⚠38℃以上の熱が続く、または熱が下がらない
- ⚠せきや息苦しさがどんどん悪くなっている
- ⚠下痢や嘔吐がひどく、水分がとれない・おしっこが減っている
- ⚠皮膚の赤みやはれが広がっている、痛みが強い
- ⚠口内炎がひどくて食べられない
一般的な症状
- 発熱をくり返す(年に何度も高い熱を出す)
- 肺炎や気管支炎にかかりやすく、せきが長引く
- 中耳炎(耳の痛み・耳だれ)、副鼻腔炎(鼻水・鼻づまり・顔の痛み)をくり返す
- 下痢や腹痛(腸の感染症)が続く
- 皮膚の感染(とびひのようなできもの、おでき)
- 口内炎ができやすい、口の中の感染
- リンパ節や扁桃(へんとう)がはれる
- 白血球の一種(好中球)が減り、感染をくり返すことがある
- 肝臓の数値の異常を指摘される
子供の症状
- 生後6か月ごろから感染症をくり返し始める(お母さんからもらった抗体が切れてくる時期です)
- 体重が増えにくい、身長の伸びがゆっくりになる
- 重症の肺炎(ふだんは免疫力のある人には起こりにくい種類の肺炎)にかかることがある
- 長く続く下痢や、食べても栄養になりにくい状態
- 皮膚や口の中の感染が治りにくい
- ぐったりしている時間が長い、機嫌が悪いことが続く
高齢者の症状
- 子どものころは目立たず、大人になってから見つかる比較的軽いタイプがある
- 何年も続く副鼻腔炎や気管支炎、せき
- 気管支が広がってしまう変化(気管支拡張症)を指摘される
- 肝臓や胆管の炎症(肝機能の異常)が見つかる
- 長く続く免疫の異常により、リンパの腫れやリンパ腫のリスクが高まることがある
原因
主な原因
- 生まれつきの遺伝子の変化が原因です。B細胞(抗体を作る細胞)がIgMからほかの抗体へ切り替えるために必要な遺伝子に変化があると、この切り替えがうまくいきません。
- 最も多いのはX連鎖型で、男の子に起こります。遺伝子の名前でいえば、CD40リガンドという遺伝子の変化によるものです。
- ほかに、CD40、AID、UNGといった遺伝子の変化によるタイプ(常染色体劣性型)があり、こちらは男女どちらにも起こります。
- 遺伝子の変化はご両親から受け継ぐ場合もありますが、その人だけに新しく起きた変化の場合もあります。親御さんのせいではないことが多い点も知っておいてください。
リスク要因
- 家族に同じ病気の人、または免疫不全と診断された人がいる
- 男の子(X連鎖型の場合)
- 血縁者の間の結婚がある家系(常染色体劣性型の場合)
- 赤ちゃんのころから感染症がとても多い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱が続く、息が苦しそう、ぐったりしている(緊急性が高いと感じたら119番へ)
- いつもと違う急な変化がある(意識、呼吸、顔色)
- 感染のサイン(発熱、赤み、はれ)がどんどん強くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 年に何度も中耳炎や肺炎、副鼻腔炎をくり返す
- せきや鼻の症状が何週間も続く
- 下痢や腹痛をくり返す、体重が増えない
- 血液検査でIgGが低い、またはIgMが高いと言われた
- 家族に免疫不全の人がいる
- かかりつけ医で「感染症が多いのが気になる」と言われた
診断
まずは血液検査で、抗体の種類ごとの量を調べます。IgMがふつうか多いのに、IgG・IgA・IgEが少ないというパターンがあれば、この病気を疑います。そこから、免疫の細胞の種類や数を調べたり、遺伝子の検査をしたりして、確定していきます。診断は主治医と、免疫の専門医が一緒に進めることが多いです。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(IgM・IgG・IgA・IgEなど抗体の量を調べる)
- ワクチンを打ったあとに抗体がちゃんと増えるかを見る検査
- リンパ球(免疫の細胞)の数と種類を調べる検査
- 遺伝子検査(確定診断のため。結果が出るまで数週間かかることがあります)
- 胸部レントゲンやCT(肺の状態を確認)
- 肝機能の血液検査(肝臓や胆管の合併症がないか)
診察で予想されること
検査の結果が出るまでには時間がかかることがあります。診断がつくまでは不安な気持ちが続くかもしれません。結果を聞くときは、ご家族と一緒に行くことや、聞きたいことをメモしておくことをおすすめします。遺伝子の検査を行う場合は、遺伝カウンセリングを受けられることが多いです。
治療
この病気は、からだの免疫の働きを根本から変えることは難しいものの、足りない抗体を補い、感染症を予防・早期治療することで、多くの方がふつうに近い生活を送れるようになっています。治療は一生続くことが多いですが、定期的な通院とセルフケアでコントロールしていきます。
自宅でのセルフケア
- 手洗い・うがいをていねいに行う
- 人混みや、感染症がはやっている時期の外出をできるだけ控える。必要ならマスクを使う
- 歯みがきなどで口の中を清潔に保つ(口の中の感染を防ぐため)
- 予防接種は、必ず主治医に相談してから受ける(生ワクチンが危険な場合があります)
- 発熱や体調の変化があったら、自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関に連絡する
- 生ものや加熱が不十分な食べ物を避け、食事の衛生に気をつける
- 動物のふんの世話や、水槽・土いじりのあとは手をよく洗う
- 規則正しい生活と十分な睡眠で、体の負担を減らす
医療治療
治療の中心は、足りない抗体(免疫グロブリン)を点滴や皮下注射で補う治療です。これにより感染症にかかる回数を減らせます。加えて、感染症を予防するための抗菌薬を続けることや、感染症にかかったときに早めに治療することが大切です。根治を目指す選択肢として、造血幹細胞移植(骨髄移植など)が検討されることがありますが、これは重症度や年齢、合併症などをふまえて専門医とよく相談して決めるものです。具体的な薬の種類や量は、必ず主治医が一人ひとりに合わせて決めます。
手術が検討される場合
この病気そのものを手術で治すことはありません。ただし、合併症(たとえば慢性の中耳炎や副鼻腔炎、気管支の変化など)に対しては、耳鼻科や呼吸器科で外科的な処置が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
感染症をくり返しやすいため、日々の生活では「感染を防ぐ」ことと「変化に早く気づく」ことが中心になります。通院は定期的に続きますが、学校や仕事、趣味など、ふつうの生活を楽しんでいる方はたくさんいます。体調の記録(熱、せき、下痢など)をつけておくと、受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と生活リズムを心がける
- ストレスをためこまないよう、自分なりの息抜きを持つ
- たばこの煙など、肺に負担をかけるものを避ける
- 保育園・学校・職場には、必要に応じて病気のことを伝えておくと安心
- 旅行や引っ越しの前に、主治医に相談しておく
- 家族も一緒に手洗いなど感染予防を心がける
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、栄養のバランスのよい食事で体力を保つことが大切です。生ものや加熱不足の食品は避け、衛生に気をつけましょう。运动(うんどう)は、体調がよいときは無理のない範囲で行うのがおすすめです。人混みでの激しい运动や、疲れがたまるほどの運動は控えめにして、体調に合わせて調整してください。
精神的健康と心の健康
感染症への不安、通院の負担、学校や仕事への影響などで、本人もご家族も気持ちが疲れてしまうことがあります。それは自然なことです。だれかに話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることもあります。つらい気持ちが続くときは、主治医や看護師、地域の保健センターやこころの健康相談の窓口に相談してください。もし自分や家族を傷つけたい気持ちがわいたり、追い詰められた感じがしたら、ためらわずに119番、または医療機関・相談窓口に連絡してください。
予防
生まれつきの遺伝子の変化が原因のため、発症そのものを防ぐことは難しい病気です。ただし、感染症を予防し、合併症を早く見つけることで、生活の質を保つことは十分にできます。家族に同じ病気の人がいる場合は、妊娠前や出産前に遺伝カウンセリングを受けて相談することができます。
ワクチン
予防接種は感染症を防ぐうえで大切ですが、免疫の働きが弱い方では、生ワクチン(弱めた病原体を使うワクチン)が危険なことがあります。必ず主治医に相談し、どのワクチンをいつ受けるかを決めてください。まわりにいるご家族が予防接種を受けておくことも、感染を広げないために役立ちます。
検診プログラム
新生児スクリーニングで見つかる病気ではありません。家族歴がある場合の遺伝カウンセリングや、定期的な血液検査・肝機能のチェックが、早期発見と合併症予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 重症の感染症(肺炎など)にかかり、入院が必要になることがある
- 感染をくり返すことで、気管支が広がってしまう変化(気管支拡張症)が進むことがある
- 肝臓や胆管の炎症が続き、肝機能が悪くなることがある
- 長く続く免疫の異常により、リンパ腫などのリスクが高まることがある
- 下痢や栄養の問題で、体重が増えにくい、成長がゆっくりになることがある
長期的な見通し
高IgM症候群はまれで、一生つきあっていく病気ですが、悲観する必要はありません。足りない抗体を補う治療や感染症の予防を続けることで、多くの方が学校や仕事、家庭生活をふつうに送っています。早期に診断され、専門医と定期的にかかわるほど、合併症を防ぎやすくなります。治療の進歩はこれからも続いていきます。不安なことは、ひとりで抱えずに主治医に何でも聞いてください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.