副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)
概要
副甲状腺(ふくこうじょうせん)は、首の前にある甲状腺の裏側に、米粒くらいの大きさで4つほどくっついている小さな臓器です。ここから出る「副甲状腺ホルモン(PTH)」は、血液中のカルシウムの量を調整する大切な働きをしています。副甲状腺機能亢進症は、このホルモンが必要以上に出てしまい、血液中のカルシウムが高くなりすぎる状態です。カルシウムは骨や神経、筋肉、心臓の働きに関わるため、多いままだと骨がもろくなったり、腎臓に負担がかかったりします。
重要な事実
- 原因の多くは、副甲状腺にできた良性(心配の少ない)のこぶ(腺腫・せんしゅ)で、ホルモンが出すぎることで起こります。
- 血液検査で「カルシウムが高い」と指摘されて見つかることが増えています。自覚症状がない人も少なくありません。
- 治療の中心は、必要に応じて行う手術と、定期的な検査による見守りです。多くの場合、きちんと対処すれば生活の質は保てます。
まれな病気ではありません。特に閉経後の女性や高齢者では比較的よく見られ、血液検査の普及により、症状のない段階で見つかる例が増えています。小児ではとてもまれです。
原発性(げんぱつせい)と呼ばれるタイプは、40〜60歳代の女性に多く見られます。慢性の腎臓病がある人では、続発性(ぞくはつせい)という別のタイプが起こりえます。年齢や性別を問わず起こる可能性はありますが、若い人では遺伝性の要因が関わることもあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして目覚めない
- けいれんが起こった
- 強い吐き気・嘔吐が続き、水分を口から取れない
- 脈がとても速い・不規則で、胸の苦しさや息苦しさがある
- 筋肉の強いけいれんや麻痺のような症状が出た
- ⚠脇腹や背中に突然の激痛があり、尿が出にくい、血が混じる(腎臓結石が疑われます)
- ⚠数日続く嘔吐や下痢で水分が取れず、尿の量が減っている
- ⚠急に強い脱力感が出て、日常生活が難しい
- ⚠発熱とだるさが強い
一般的な症状
- 強い疲労感、だるさ、なんとなく元気が出ない
- 筋力が落ちた感じ、階段がつらい、立ち上がりにくい
- 食欲がない、便秘が続く、吐き気がする
- のどが渇く、尿の回数や量が増える
- 気分が落ち込む、イライラする、集中しにくい、物忘れが増えた気がする
- 骨や関節の痛み、腰や背中の痛み
- 脇腹や背中に突然くる激しい痛み(腎臓結石のことがあります)
- 特に症状がなく、健康診断の血液検査で見つかる
子供の症状
- 身長の伸びが悪い、成長がゆっくりになる
- 骨の変形や、歩き方・姿勢の変化
- 疲れやすい、活気がない、学校で集中できない
- 吐き気や食欲低下、体重が増えない
- 小児では非常にまれなため、まずは小児科での相談が大切です
高齢者の症状
- 物忘れや集中力の低下、ぼんやりする時間が増える
- 気分の落ち込み、意欲の低下、食欲不振
- 脱水ぎみになる、だるくて動きたくない
- 転びやすくなる、骨折しやすくなる
- 脈の乱れ(動悸)や血圧の変化
- 症状がはっきりせず「年のせい」と思われて見逃されやすい
原因
主な原因
- 原発性:副甲状腺そのものにできた良性のこぶ(腺腫)がホルモンを出しすぎる。4つのうち1つだけのことが多い
- 原発性:複数の副甲状腺が大きくなる過形成(かけいせい)という状態
- 続発性:慢性の腎臓病などで、体が「カルシウムを増やそう」としてホルモンを出し続ける
- ビタミンDの不足や吸収の悪い状態が長く続くことによる続発性
- まれに副甲状腺のがんや、遺伝性の体質(家族性)によるもの
リスク要因
- 閉経後の女性、60歳以上の人
- 慢性の腎臓病がある人
- ビタミンDが不足しがちな生活(日光を浴びる時間が少ない、食が細いなど)
- 家族に同じ病気の人がいる
- 首のあたりに放射線治療を受けたことがある
- 特定の薬(気分の調整に使う薬など)を長く服用している(主治医に確認を)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 健康診断で「血液中のカルシウムが高い」と指摘された
- 脇腹・背中の激痛や血尿など、腎臓結石のような症状がある
- 骨の痛みが続く、身長が縮んだ、軽い転倒で骨折した
- 強い倦怠感と尿の増加、のどの渇きが続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすさ、便秘、気分の落ち込みが長く続く
- のどが渇く、尿の回数が増えた気がする
- 骨粗鬆症(こつそしょうしょう=骨が弱くなる状態)と言われたことがある
- 家族に副甲状腺の病気の人がいる
- 血圧が高い、腎臓の数値が気になる
診断
まず血液検査で、血液中のカルシウムと副甲状腺ホルモン(PTH)の値を確認します。カルシウムが高く、PTHも高い、あるいは下がらない場合は副甲状腺機能亢進症が疑われます。原因が原発性か続発性かを見分けるために、腎臓の働きやビタミンD、リンの値も一緒に調べます。その後、副甲状腺の位置や大きさを画像で確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:カルシウム、アルブミン(カルシウムの計算に使います)、PTH、リン、ビタミンD、腎機能
- 尿検査:24時間の尿を集めて、カルシウムがどれくらい出ているかを調べる
- 骨密度検査:骨がどれくらい丈夫かを調べる
- 首の超音波(エコー)検査:副甲状腺の大きさや位置を見る
- シンチグラフィやCT検査:手術を考えるときに、どの副甲状腺が原因かを詳しく調べる
- 必要に応じて遺伝の相談
診察で予想されること
診断までに何回か通院して検査を重ねることがあります。検査の多くは痛みがなく、その日のうちに終わります。結果が出るまで不安な気持ちになるかもしれませんが、担当医に「この検査は何のためにするのか」をその都度たずねて、納得しながら進めると安心です。
治療
治療の選び方は、カルシウムの高さ、症状の有無、年齢、腎臓や骨の状態によって変わります。根本的な治療は手術ですが、症状が軽く数値も安定している場合は、生活に気をつけながら定期的に検査して見守る方法が選ばれることもあります。続発性の場合は、原因になっている腎臓病やビタミンD不足のケアが中心になります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめに取る(1日に何度も、少しずつ)。脱水はカルシウムを上げるきっかけになります
- 塩分を控えめにする
- 便秘がちなら、食物繊維や水分を意識し、無理のない範囲で体を動かす
- カルシウムやビタミンDのサプリメントは、自己判断で始めず必ず医師・薬剤師に相談する
- 転びにくい環境づくり(夜間の照明、手すり、滑りにくい床)
- 症状や体調の変化をメモして、診察のときに伝える
医療治療
手術をしない場合や、手術が難しい場合には、カルシウムの値や骨の状態を保つためのお薬が使われることがあります。たとえば骨からカルシウムが出てくるのを抑える種類の薬や、ホルモンの働きを調整する種類の薬などです。どの薬が適しているかは体の状態によって変わるため、主治医とよく相談して決めます。定期的な血液検査で数値を見ながら調整していきます。
手術が検討される場合
血液中のカルシウムが明らかに高い、腎臓の働きが低下している、尿路結石を繰り返す、骨密度が低い、若い年齢である、といった場合は手術がすすめられます。手術は、原因になっている副甲状腺を摘出するもので、多くの場合、首の小さな切開で行われます。手術後はカルシウムが下がりすぎないかを確認するため、しばらく通院が必要です。手術の適応は担当医とよく相談して決めてください。
この病気と共に生きる
定期的な血液検査と骨密度のチェックを続けることが、日常生活を穏やかに保つ鍵になります。数値が安定していても自己判断で通院をやめず、かかりつけ医と長く付き合っていくイメージを持つとよいでしょう。
生活習慣のアドバイス
- 水分をこまめに取り、脱水を避ける
- 適度な運動を無理なく続ける(散歩など)
- 十分な睡眠と、ストレスをためない生活リズム
- 喫煙は控えめに、飲酒はほどほどに
- 日光を適度に浴びる(ビタミンDづくりのため。長時間の日焼けは避ける)
- サプリメントや市販薬を始める前に医師・薬剤師に相談する
食事と運動
特別な食事制限が必要とは限りませんが、塩分を控えめにし、バランスよく食べることが基本です。カルシウムを極端に減らす必要はないことが多いものの、サプリメントで大量に取るのは避け、食事からの摂取を中心にしましょう。運動は骨を丈夫にし、気分転換にもなります。ウォーキングや軽い筋力運動など、自分のペースで続けられるものを選び、転倒しないよう無理は禁物です。具体的な食事や運動の量は、主治医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
カルシウムが高い状態が続くと、気分の落ち込みや不安、疲れやすさが出ることがあります。「気持ちの問題」と決めつけず、体の状態と心の状態はつながっていると考えてください。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口、専門の医療機関に話してみてください。気持ちが追い詰められていると感じたら、すぐに信頼できる人や医療機関に連絡を。身近な人に危険な様子があれば、ためらわず救急(119)を呼んでください。
予防
副甲状腺にできる良性のこぶによる原発性のタイプは、生活習慣だけで防ぐことは難しいとされています。一方、慢性の腎臓病やビタミンD不足から起こる続発性のタイプは、もとになる病気のケアと、バランスのよい食事・適度な日光浴である程度リスクを下げられます。
検診プログラム
症状がなくても、健康診断で「カルシウムが高い」と言われたら、そのままにせず医療機関で相談してください。腎臓結石を繰り返した人、骨粗鬆症と言われた人、慢性の腎臓病がある人は、主治医にカルシウムとPTHの値を一度確認してもらうとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 骨がもろくなり、骨折しやすくなる(骨粗鬆症)
- 腎臓に石ができやすくなり、痛みや腎機能の低下につながる
- 尿の量が増え、脱水ぎみになる
- 血圧が上がる、心臓や血管への負担が増える
- 便秘、吐き気、食欲低下などの消化器の不調
- 気分の落ち込み、集中力の低下、眠りが浅くなる
- まれにカルシウムが急に高くなり、意識がもうろうとする危険な状態になる
長期的な見通し
多くの場合、適切に検査と治療を続けることで、症状は改善し、骨の状態も回復していきます。症状がないまま見つかった人でも、定期的にフォローしていれば慌てる必要はありません。心配なことは診察のたびに聞いて、自分に合ったペースで付き合っていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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