多毛症(たもうしょう)——体の毛が濃い・多いと感じたら
概要
多毛症は、本来あまり毛が生えない場所に、必要以上に長く濃い毛が生える状態です。男性にも女性にも起こります。男性ホルモンの影響でひげのような毛が女性の顔などに生える「男性型の多毛」とは、仕組みが少し違います。多毛症は、生まれつきの体質によるものと、あとから薬や体の病気などが原因で起こるものがあります。
重要な事実
- 生まれつきのもの(先天性)と、後から起こるもの(後天性)があります
- 全身に広がることも、顔や腕など一部だけのこともあります
- 多くは健康に害のない状態ですが、見た目の悩みが大きくなることがあります
全身の毛が濃くなるタイプはまれです。一方で、一部だけ毛が濃い、薬の影響で毛が増えた、こすれる場所だけ毛が濃くなった、といった軽いタイプは比較的よくみられます。
症状
- 呼吸が苦しい、顔やのどが急に腫れている(別の緊急事態の可能性があります)
- けいれん、意識がもうろうとする、激しい腹痛を伴う(まれな代謝の病気の可能性があります)
- 急に全身の毛が濃くなり、同時に激しい頭痛や視野の変化がある
- ⚠数か月のあいだに急に毛が濃くなった
- ⚠声が低くなる、にきびが急に増える、生理が乱れる・止まるといった変化がある
- ⚠薬を飲み始めてから毛が濃くなった
- ⚠体重が急に減った、疲れやすい、動悸がするなど、体調の変化を伴う
- ⚠子どもの毛が急に濃くなった、または生まれたときから広い範囲に毛が多い
一般的な症状
- 顔(額・頬・あご・口の上)、背中、胸、腕、脚などに、長く濃い毛が生える
- うぶ毛が長く濃くなる(軟毛性多毛)
- 体の広い範囲の毛が濃くなる、または一部だけ濃くなる
- 以前と比べて毛の量や長さが増えた
- 毛を処理すると肌が荒れやすい、毛のうに炎症が起きる
子供の症状
- 生まれたときから全身または一部に毛が多く、うぶ毛が長く残る
- 背中や顔の毛が目立つ
- 成長とともに目立たなくなることも、反対に濃くなることもある
- 歯ぐきや歯、顔の形に特徴がある場合は、生まれつきの症候群の一部のことがあるため小児科で相談を
高齢者の症状
- 加齢による毛の生え方の変化はよくあることですが、急に濃くなったときは薬の影響や体の病気を確認します
- 飲み始めた薬の後に毛が増えたと感じたら、医師や薬剤師に伝える
- 閉経の前後で顔の毛が濃くなることがありますが、急な変化は受診の目安になります
原因
主な原因
- 遺伝・生まれつきの体質(先天性の多毛症)
- 一部の薬の副作用
- 皮膚への繰り返しの刺激や摩擦、炎症(ギプスで固定していた部位、こすれる部位など)
- 栄養不足(極端なダイエット、食事がとれない状態など)
- 甲状腺や副腎など、ホルモンを作る臓器の病気
- まれな全身の病気や、免疫の異常が関係する状態
- はっきりした原因が見つからないことも多い
リスク要因
- 家族に同じような体質の人がいる
- 一部の薬を長く使っている
- 極端な食事制限や急な体重減少がある
- ホルモンの病気がある、または疑われている
- 皮膚を強くこする、毛を抜き続けるなどの刺激を繰り返している
- 妊娠・出産・閉経などホルモンが大きく変わる時期
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 毛が急に、広い範囲で濃くなった
- 声の変化、にきびの急増、生理の乱れなど、ホルモンの変化を思わせる症状がある
- 薬を始めた後に毛が増えた
- 子どもに広い範囲の多毛がある
- 体重減少、疲れやすさ、動悸など全身の不調を伴う
定期受診を予約すべき場合:
- 見た目のことが気になって、日常生活や人づきあいに影響している
- 毛の処理で肌が荒れる、かゆい、ぶつぶつができる
- 自分の体質や遺伝について知りたい
- 妊娠を考えている、ホルモンの状態を調べたい
診断
まず問診で、いつからか、どの範囲か、家族に同じ体質の人がいるか、飲んでいる薬、食事や体重の変化、生理の状態などを伺います。そのうえで皮膚を診察し、毛の分布や長さ、肌の状態を確認します。必要に応じて血液検査などで、原因となる病気がないかを調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(ホルモンの値、血糖、栄養状態などを調べる)
- 皮膚や毛の拡大観察、毛の顕微鏡検査
- 超音波検査や画像検査(ホルモンの異常が疑われるとき)
- 尿検査(まれな代謝の病気が疑われるとき)
診察で予想されること
多くの場合は診察と血液検査で済みます。結果が出るまで数日から1週間ほどかかることがあります。はっきりした原因が見つからないことも多く、その場合も肌のケアや毛の処理の相談を続けながら経過をみていきます。
治療
治療の柱は2つです。ひとつは、原因となる病気や薬の影響があればそれを取り除くこと。もうひとつは、見た目の悩みに合わせて毛のケアを工夫することです。多毛症そのものを根本から治す飲み薬は限られているため、多くは肌にやさしいケアを組み合わせていきます。
自宅でのセルフケア
- 毛の処理は肌を傷つけない方法で行い、処理の前後にやさしく洗って保湿する
- カミソリは清潔なものを使い、刃は早めに交換する
- 毛抜きやワックスの使いすぎで毛のうに炎症を起こさないよう注意する
- 除毛クリームは、まず腕の内側などで少量試してから使う
- 極端な食事制限や急な体重変化を避ける
- 飲んでいる薬は自己判断でやめず、医師や薬剤師に相談する
医療治療
医療機関では、原因となる病気があればその治療を行います。毛の処理については、医療レーザー脱毛、電気脱毛、脱毛ワックスや除毛クリームなどがあり、毛の色や肌のタイプ、部位によって向き・不向きがあります。ホルモンの異常が関係している場合は、その治療が検討されることもあります。どの方法を選ぶか、薬を使うかどうかは、医師があなたの状態に合わせて判断します。
手術が検討される場合
手術が必要になることはほとんどありません。まれに、ホルモンを作る腫瘍など原因となる病気が見つかった場合に、その治療のために手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
毛の処理は時間もお金もかかり、肌トラブルも起きやすいため、無理のない方法を選ぶことがいちばん大切です。ひとつの方法に決めず、部位や季節によって使い分けてもかまいません。
生活習慣のアドバイス
- 肌を清潔に保ち、処理の後は保湿を欠かさない
- きつい下着や衣服で肌をこすらない
- 睡眠や食事のリズムを整え、ストレスをためこまない
- 大事な予定の前日ではなく、余裕をもって処理を行う
- 処理の方法に迷ったら、皮膚科やエステの専門家に肌の状態を相談する
食事と運動
特定の食べ物で毛が薄くなるという確かな根拠はありません。極端なダイエットは栄養不足から多毛を悪化させることがあるので、バランスのよい食事を心がけましょう。適度な運動は体重管理とストレス軽減に役立ちます。
精神的健康と心の健康
見た目の悩みは、恥ずかしさ、自信の低下、人に会うことへの不安、気分の落ち込みにつながることがあります。これは「気にしすぎ」ではなく、十分に相談する価値のある悩みです。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口(保健所・精神保健福祉センターなど)を頼ってください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわず救急(119)や医療機関に連絡してください。
予防
生まれつきの多毛症は予防できません。後から起こるタイプは、原因(薬の影響、栄養不足、皮膚への刺激など)を取り除くことで予防したり改善したりできる場合があります。急な変化があったときは早めに相談しましょう。
検診プログラム
多毛症のための決まったスクリーニング検査はありません。気になる変化があれば、診察と血液検査で確認できます。ホルモンの病気や薬の影響が疑われるときは、かかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 処理を繰り返すことで、毛のうの炎症、色素沈着、かき傷からの感染などの肌トラブルが起きる
- 見た目の悩みから、不安や気分の落ち込み、社会生活の制限につながることがある
- 原因となるホルモンの病気や栄養不足が見つからないままになる
長期的な見通し
多くは健康に影響のない状態で、毛のケアを工夫しながらふつうに生活できます。原因となる病気が見つかった場合も、治療で改善が期待できます。悩みを一人で抱えず、医療機関と相談しながら自分に合う方法を見つけていくことが、いちばんの近道です。
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最終更新: 2026年10月24日
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